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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第二章・魔王vs魔王

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04 提案

「みんなにも、色々話さなければならないよな……」

軽く洗面所で身なりを整えた俺は、神様から聞いた話を共有しようと思っているのだが……神から聞いた……頭おかしい人扱いされそうで憂鬱だ。


でも言わなきゃいけないことも事実なのでため息をつきつつもみんなが集まっているであろう応接間へ向かった。


応接間のドアを開けるとそこにいたクリスチアにみんなが食堂に居ると教えられ一緒にその食堂へと移動した。


「おはよう」と軽い挨拶をしながら食堂に入ると、真理は俺の腕に抱き着きつつ自分の座っていた隣へと誘導され、席に座るとすぐに食事が運ばれてきたのだが……ご飯があった。


感動しながらも口にする。紛れもなくご飯であった。


「エステマ!これは?」

「ああ、お米、ご飯ってやつだろ?」

「そうだ!俺も何気に探したがどの街にも売っていなかった!」

茶碗に盛られた白く輝くそれを指差し確認した俺は、気づけな少し泣きそうになっている。というか涙出てた。


「そうだろうね。これは東の小さな島で作っている特産品だ。とは言ってもこの世界の主食はパンだからね。特別に仕入れないと入ってはこないよ。君たちの世界の主食だったんだろ?」

「そうか。エステマ、ありがとな!」

俺はエステマの顔も見ずにお礼を言うと、久しぶりに味わう米の味を堪能した。


そして何気に完成度の高い豆腐と揚げの入ったみそ汁を飲み干した。おかずはお肉と魚、そして良く分からない美味いソースがついたのとサラダだったが、やはり米は何にでも会うことを再確認できた。

そしてご飯を5杯お代わりしたところでお腹が限界値を迎えたので今日のところはと諦めた。真理はお代わりをお願いする度に「子供みたいだよ」と言って笑っていた。それにまた幸せを感じて箸が進んだ。


というかナイフとフォークとスプーンだったけど……

今度、箸を自作するか……


そして限界となったお腹をさすりながらも応接間へと移動する。


「じゃあ、そろそろ今後の動きを決めようか」

「ああ。それならまずは俺から……昨日、神と話してきた」

予想通りではあるがみんなの視線が痛い。


「真司?大丈夫?もう少し寝てようか?」

「真理、頼むからその目は止めてくれ。俺は病気とかじゃないからな?」

「だ、だって……」

「俺は何度か意識が無い間に自称神ってやつと話しているんだ」

頼むからそんな目で見ないでほしい……


突き刺さる視線に耐えながら話をつづけた。


「最初は城から飛ばされ、クロにこっぴどくやられて逃げた後。意識を失った時にそいつが出てきて召喚された経緯を聞いた」

「本当、なんだな?」

エステマが心配そうに俺を見ている。


「本当だ。魔王、メビオスって名らしいがあれが国王として真理を召喚するタイミングで気付き、大急ぎで俺も一緒にひっぱってきたって言っていた」

「たしかに……魔王はメビオスって名だったはずだが……」

「そして俺にチート能力、つまり神が色々配慮をしてスキルを付与してくれたようなんだ」

またも皆の視線が痛い。


「つまり真司さんは選ばれた存在だと……」

「いや、茉莉亜まりあさん?その目、やめてくれます?」

本人はそんな気はないだろうが、茉莉亜まりあはワクワクするような目をしてそんな事を言うものだからかなり恥ずかしくなってきた。


「そ、その証拠かは分からないがステータスには 『異世界語』が最初からあったし、『魔軍』という魔王特有の眷属化するためのスキルの他にもう一つ、『神の加護』という成長速度促進のスキルもある」

「な、なるほど……」

まだ半信半疑のようなエステマと、俺を羨望の眼差しで見てくる真理。可愛いな。


「とりあえず、魔王メビオスの封印の過程も簡単に聞いている」

「なんだって!それは俺の受け継いだ記憶にもなかった奴だ!」

エステマが立ち上がってこちらも見ている。


「勇者パーティーは全滅、そして倒し切れずに最後の手段で用意していた方法、封印の短剣で勇者の命と引き換えに封印、依り代であったあの王と宰相?あと聖騎士に分散して乗り移らせて自死するつもりだったようだ」

「自死……」

「封印間近に魔王の側近二人が一緒に付いてきたせいで、結局三人ともあと一歩のところで乗っ取られて自死することができなかったと……」

俺の言葉にエステマが力なく椅子へと腰を落とした。


「本当に俺も知らない話だぞ?それは、本当なのか?」

「その自称神ってのが嘘を言っていなければな」

「確かにそれなら辻褄はあうな……」

顎に手をあて何かを考えているエステマ。先代勇者の記憶を受け継いだと言っていたが、そういった事象については引き継がれていないのかもしれない。


「話を続けるぞ」

「ああ。続けてくれ」

「それで、メビオスの今のステータスは3000ちょっとらしいが、魔界と呼ばれるエリアの魔人はほぼ全て眷属らしい。その影響毛魔王の能力が数十倍に膨れ上がっていると見て良いとも言っていた」

「数十倍、だと?」

エステマたちが目を見開き驚いている。まあそうだろう。ただでさえ負けている数値が数十倍だ……


「そしてメビオスたちは今後はかなりやばい方法で能力アップもするだろうとも言っていた」

「そんなのそうやって倒すんだよ……俺だってまだ1500前後だぞ……それの倍、さらには数十倍の能力なんて……」

青い顔で泣きそうなエステマを見てやっぱりこういう感じが素なのではないかと思ってしまう。


「まあそこは真理と、茉莉亜まりあさんに頑張ってもらおうと……」

「あっ!ホーリーライトか!」

「ああ。二人にはとにかく魔力特化で上げてもらってダブルで使えばかなりの力を封じることができると言っていた」

「そうか!そうだな!」

エステマが真理と茉莉亜まりあと交互に見ながら笑顔を見せていた。


「あとは魔界の東側にいくつか街があるから……そこを襲ってかたっばしから魔人を眷属にしろってさ……」

「なんだか強盗みたいだな」

俺もそう思う。


「俺もそうは言ったんだけどな。時が来たらそいつらも一緒になってこの大陸に攻めてくるのに何を躊躇してるんだ?ってよ。数の奪い合いに勝てなきゃみんな死んで終わりだそうだ」

「たしかに……」

「だから俺がぶん殴ってねじ伏せて……あとは平和に慎ましく生きて貰えばいいんじゃないかなと思ってる」

それを聞いてエステマが噴き出した。


「ぶはは!そうだな。別に殺すわけじゃないし魔人が慎ましく平和にか……」

「神から聞いたのはそんなもんだ」

「わかった。じゃあ次は俺からな」

色々思うことはあるだろうがエステマも気持ちを切り替えることができたようだ。


「今の話を聞いて若干の修正が必要かもしれないが、マリアはまだレベルが上がっていないから……リザと、そしてイザベラも一緒にペアリングして王都の魔窟に篭ってレベル上げしてほしい」

「分かりました」

「分かった」

イザベラと茉莉亜まりあがうなづいている。


「あとそれには真理も付いて行ってくれ。真理の方はレベルも上がっているからペアリングは無しでとにかく結界なんかで魔物の攻撃を防ぐことを意識して魔力を上げてほしい」

その言葉に真理がうなづき、どうやら魔王メビオスの戦いに参加予定の女性陣の、当面の予定が早くも決定されたようだ。


「それと真司、お前は俺と一緒に魔界の街に行くぞ。飛行艇の中ででも、武器や防具への正しい魔力の通し方を徹底的に教えるから、それを常時展開しながら魔人狩りしながら、徹底的に能力値を上げてほしい」

「ああ、分かった」

そんな事を話していると真理が俺の腕にギュっとしがみ付いた。そしてエステマの方もジッと見ていた。


「ど、どうした?」

「エステマさん、真司は、私のですからね?」

「なっ、何の心配をしてるんだ!」

真理の言葉に慌てて反論するエステマ。


「真理?」

俺は真理の顔を両手で挟んで見つめる。いったい真理は何を心配してるんだ?


「お、俺がその、エステマなんかと変なこととかするわけがないだろ?」

「なんかとはなんだ!」

エステマが何か言ってる。


「変なことって何?年頃の男女が二人っきりで愛を育んじゃったりして勢いに任せて過ちを犯しちゃったりするようなこと?」

「な、な、なにを……」

ちょっと真理の目が怖い。そしてエステマが混乱している。ちゃんと俺の様にしっかり反論してほしい。


「いや待て待て。真理?無いからな?そんなこと無いからな?」

俺は真理の両肩を掴んでそう言い聞かせる。いくらエステマと二人で修業するとしても、エステマがかなりの軽装なビキニアーマーだったとしても……


いやほんとはもうちょっと厚着してほしいところではある。フルプレートアーマーとか……そして真理ごしに見えるイザベラ、ハンカチをガシガシしながらこちらを睨まないでほしい。


「分からないよ。真司だって男の子だし。その、た、た、た……」

「た?」

「うっ……た、たま……」

「たたま?」

「うう。たまってたり……」

顔を真っ赤にしながら消え入りそうな声でそう言う真理に俺まで顔が赤くなってしまう。


「何言ってるんだ!頼むから真理はそんな変なことは脳内から消せ!お前が考えちゃ考えちゃだめな奴だ!」

焦る俺は真理を抱きしめ落ち着かせるように頭を撫でた。そしてエステマから大きなため息が聞こえた。


「なあ、出発は数日ずらすから二人は真司の部屋でまったりするか?そこまで必死に急ぐこともないだろう?まあよろしくやってくれよ……なんか俺も疲れてきたし……」

「真司と……二人で?」

エステマがまた可笑しな提案をするものだから顔を上げた真理があたふたとしている。いったいどんな想像をしているのか……と言いつつ多分俺もさらに顔に血が集まるのを感じる。


いや、さっきからこの部屋熱いなって思ってたんだよ。ほんと冷房もっと効かせてほしいものだ。


「じゃあ私はエステマちゃんたちとまったりしちゃおうかな?」

「マリアまで変なこと言うなよ?」

茉莉亜まりあがこの波にのっかり面白そうな提案をしていた。よし、流れは向こうだ。俺はこのまま気配を消そう。


「そうですね!エステマ様、ここはマリア様の言う通り私たちでまったり部屋に篭るべきかと!ね、クリスチア」

「それもいいですね。そうしましょエステマ様」

イザベラもそれに乗っかり狩人の様に目を光らせていた。


クリスチアもその流れに乗るようだ。


「はー。じゃあ3日ほど休息日だ。各自勝手にやってくれ。俺は……魔窟潜って頭冷やしてくる……」

「ああんエステマ様ぁ」

不貞腐れるように部屋を出ていったエステマを見てイザベラが体をくねらせ追いかけてゆく。


やっぱりイザベラがガチっぽいなと思いつつ、結局10分程度の時間を使って真理を抱きしめ宥めながら落ち着かせることとなる。ニヤニヤしながらそれも見ているクリスチアの視線と、淡々と片付けをしているリザに気づかないまま……


結局、本当に3日ほど部屋でまったりと過ごした俺たち。

何も無いよ?ただ抱き合って眠るとかそんなもんで……だが疲れは取れ、修行に身が入る気がしたので良かったのだろう。


早く魔王メビオスを倒し、平穏な日々を真理と生きて行かなくてはと改めて心に思った数日間だった。

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