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【完結】幼馴染の彼女は隷属された囚われ聖女。魔王の俺は絶対この国許さない!  作者: 安ころもっち
第一章・魔王と聖女

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21 復活

Side:リザ


突然ゴトリと大きな音がしてエステマ様との会話が途切れた。


「どうしたんですか!何かあったんですか!」

呼びかけているが反応は無い。


だがその通信具からエステマ様がマリア様の名を呼ぶ声が聞こえてきた。真理様の解放の魔力がエステマ様の元まで届いた?じゃあ、もしかして……マリア様も、解放された?

まだそうだと決まったわけではないのにそれを期待してしまう……


でも今は真理様だ。

ただの魔力切れだとは思うけど……私は真理様に魔力回復ポーションを飲ませる。自分がそんなことも忘れるほど動揺していたことに腹が立つ。


「真理様!飲んでください!さあ!ごっくんして下さい!ごっくんって……早く、飲んで……」

だめだ。完全に気を失っている……


「真理様、失礼しますね」

私はポーションを口に含み……ううう、不味い……口の中に不快感を覚えながらも真理様の口から直接流し込んだ。


「うっ!うう!う、う、う!」

「真理様!」

真理様が目を開け私の肩をパンパンと叩いていたので真理様から離れる。


「リザ!リザ!口の中が!ゲ〇のようなのが口の中に!そしてリザにチューを、チューがー!」

「真理様、落ち着いてください。魔力回復ポーションです!意識を失われていたので……」

私はアッポジュースを手渡すと、真理様が真顔になって動きを止めた。


「そ、そうね。人命救助、人工呼吸みたいなものか……」

「人工呼吸?ですか?」

「あっいいのいいの。ありがとねリザ、ふぅ、やっぱこれ美味しいね。少しだけ楽になってきたかも……で、今ってどうなってるの?」

そう言いながら真理様は自分の首に手をあて動きを止める。そして……


「リザ!やっぱり夢じゃなかった!取れてる!取れてるよ首!いや違う首輪!」

「そうです!そうですよ真理様!解放されたのですよ!本当に、ありがとうございます……」

混乱する真理様に少し噴き出しそうになりながらも、私はまた涙が溢れてしまう……


「お礼を言うのは私だよリザ!」

そんな私を真理様は抱きしめてくれた。真理様はやっぱり暖かい。


そして響き渡る轟音……部屋全体、いやきっと城全体が揺れているような振動を感じた。さらに肌がびりびりとするような禍々しい魔力の圧力を感じている。


……何が起こったの?

私は手早く用意していた荷物を魔法袋に入れ、少し足元が覚束おぼつかない真理様を支えながら部屋を出た。


◆◇◆◇◆


Side:セメタガリン・ロズベルト国王


「なんだ?」

我は忌々しくも衰え、重い体を起こした。


そろそろ起きねばならんと思っていた矢先、突如感じる何とも言えない暖かな魔力につつまれそう声をあげる。


「なんだ?なんなんだ?」

我の中で何かが壊れる感触を覚えた。これは……


「これは!戻る!戻ってきた!時が……きたっ!」

我の中の力の根源、懐かしい体に纏いし黒いオーラが溢れ出てくる。力を……取り戻したのだ……


「ついに、この世界を取り戻すことができる!」

懐かしき我の体……黒く逞しく、そして魔王たる我に相応しい溢れ出る魔力。


遂に復活を迎えた我は天に向かって両手を突き出し、一気に力を放出し、城の天井もろとも吹き飛ばす。久しぶりの感覚に口元は緩んでいた。


「なんとも爽快な空よ!」

城の上部全てを吹き飛ばし、爽やかな朝日が見える。


「魔王様!魔王様も無事復活なさったのですね!」

宰相であるガリント・サレコウベ、いや死神のネルガルが嬉しそうに声を弾ませこちらへやってきた。


「ああ、ガリント、いやネルガルよ。お主もちゃんと戻ることができたのだな」

「はい。久しい体、魔力が漲っております!魔王様の様に今すぐ全ての魔力を解放したいほどにうずいております!」

大きな髑髏の鎌を持ち、闇を携えたであろう黒いくぼんだ瞳でこちらも見つめるネルガル。その体は骨が見えるほどであるがまた黒きオーラをにじませている。懐かしい姿に安堵する。


しかし全力で魔力を解放はやめてほしい。此奴こやつの魔力を全て解放するのであれば、多少なりとも我にも被害が及びかねない。我の次に巨大な魔力を持った存在がこのネルガルなのだから。


「派手にやりましたね、魔王様」

遅れてアレックス、黒騎士のラマシュトがやってきた。


「ラマシュトか……やはりお主の見た目には慣れんのぉ。あの姿の方が良かったのではないか?」

「ひっどいなー!まあ、あれはあれで良かったけどな!やっぱりこの体でなきゃ!」

全身が黒い鎧に包まれた、同じく黒く禍々しいオーラを放っている。その胸元は慎ましいながらも膨らみを見せている。性別的にはメスだがどちらにも成れる器用な奴だ。


「はーやっとすっきりした感じだ!じゃあ早速クソ勇者、殺しに行こうぜ!」

そう言いながら持っている黒剣こっけんでかろうじて残っている床にガシガシと穴をあけてゆくラマッシュト。


黒剣こっけんの大きめの柄にある赤い宝玉が光を放っている。そこに封じられている製作者である魔族の魂が血を吸いたいとその意思を示しているのだろう。

しかしラマッシュトの言う勇者はすでにこの世にはいない……


「まあ良いではないか。すでにあの忌々しい勇者はいない。今代の勇者は女、それも弱い。思うがまま存分に嬲ってやれば良いだろう」

「分かってるよ魔王様……女であれ同じ勇者だ。俺様に嬲られる理由も充分にあるってもんだ!」

そういって厭らしい顔を見せ口元を舐めるラマッシュトを見て、やはり本当にメスなのか疑わしく思える。


「しかし我の力もまだ完全には戻り切っておらぬからな。さっくりと勇者を殺し、我が城へと戻ることにしよう」

「そうしましょう。こんな魔素の薄い場所、何時までも居たくはないですからね!」

「そうだな。魔王様の仰せのままに、だ」

こうして復活を遂げた魔王とその側近たち。


その三人は魔族特有の魔力操作によりふわりと浮かび城の上を漂っていた。そして周りを注意深く見渡している。己の敵を探し出すように……


◆◇◆◇◆


Side:真司


「なんだあれ……」

俺は王都の南、元の拠点があった林の中から王都の空が光を放っているのを確認して、さらには暖かい魔力に包まれる。なんだか懐かしさを感じる魔力……まるで真理と抱き合ったあの時のような……


多分、いや絶対そうなのだろう。俺は溢れ出そうな涙をこらえていた。


そんなことを思い暫く惚けていたのだが、そうゆっくりもしていられない。ミーヤが俺の首筋をポンポンと肉球で叩いてくれたのでなんとか意識を戻し、クロにまたお願いしてまたがると、城までの道を急がせた。


◆◇◆◇◆


昨夜、夕食が終わりそろそろ寝ようかと思った頃、ミーヤから光が点滅している通信具を手渡された。

エステマからもらったものだ。当然相手はエステマだろう。


それにしても胸袋に収納していてもその魔道具の反応が分かり、そっと俺に手渡してくれるミーヤ。その能力はとどまることを知らない。チートすぎるだろうと思ってしまう。


そう思いながら通信具を操作するとエステマの声が聞こえた。


『真理ちゃんが明日、解放を使う』

「どういうことだ?」

『真理ちゃんのスキルだ。多分だけど真理ちゃんの首輪も外せそうなスキルだ。成功したら真理ちゃんも自由になれるだろう!』

「本当か!」

俺は嬉しさのあまり爪が食い込むほど拳を握り締めた。


『まだ確実じゃないぞ。一応スキルの説明には全てを解放とあるらしい。多分そう言う事だと思う』

「じゃあ!じゃあ、今すぐ迎えに行っていいってことだな!」

俺は今すぐ駆け出した衝動を抑えていた。


『だから待てって!まだ本当に外せるかは分からないから大人しくしていてくれ!こっちだって時間が無いのは一緒だ。何かあって王側に邪魔されたらかなわんからな。様子を見ていてくれ。何かあれば連絡するから』

「いや、とにかく王都の近くまで行く。大丈夫だ。目立つことはしないよ。真理の首輪が解放されたのならすぐに連絡してくれ。俺が迎えに行く!」

『分かった。だが本当に目立つなよ!警戒は充分すぎるぐらいしておいてくれ!』

俺は通信具から聞こえるエステマの声を半ば無視してミーヤに手渡すと、王都へ向かうための準備を始めた。


「動ける奴らは王都の、そうだな。南の森へ行くぞ。俺は先に行く!クロ、頼む!乗せてくれ!」

俺はクロに最敬礼で頼み込んだ。


『仕方ないわね、緊急事態のようだからサービスしとくわ』

「すまん。頼むよ」

俺はそっとクロにまたがるとクロは何も言わずに王都の方を目指して走り出してくれた。


俺の倍、いやそれ以上に速い。もはや測定不能と思える速度で景色が移り変わっていく。以前言っていた『振り落とされなければ』と言うクロの言葉を思い出す。しかし今は全くそんな感じはしない。


クロが放出する黒く禍々しい魔力で覆われているように感じ、クロに守られているのだろうと推測した。


「クロ、ありがとうな」

『なによ!聞こえないわ!お礼なら肉がいいわ!』

なんだしっかりと聞こえてるじゃないか。このツンデレめ。そう思いつつもクロに深く感謝した。


しかし振り落とされる心配はないのだが揺れの方はかなり酷い。王都近くまでは数時間かかるだろう。もうすでにちょっとだけ気持ち悪くなってきたが……クロの上で吐いたりしたら……確実に殺られるな俺。思わず身震いをする。


『ねえ……あんたトイレ我慢してたりしないわよね?』

「何言ってんだ!そんなわけないだろ!ちょっと武者震いしただけだ!ほんとだからな!」

俺の言葉にクロからの返答はなかった。


冷や汗も出てくるがそれを拭ってまた王都の方も見つめる。

もうすぐ真理に会える……

真理を助け出した後はこの国をどうしてくれようか……


いや、この国にも良い奴がいっぱいいるのが分かってしまったからな。数日前に俺の元をたどり着いて泣きながら謝罪を繰り返してくれたドンガのことを思い出していた。

今更この国をどうこうしようとは思わない。俺の恨みの対象はあの王、そしてその関係者のみだ。俺はそいつらを絶対に許しはしない!


結局明け方には森まで到着し眠れぬままにそこで夜を明かした。

今のところたどり着いているのは風吹鷹かぜふきだか火喰鷲ひくいわしの3体と、肩にはミーヤ、そして影鼠かげねずみがそれぞれに付いている程度だ。


朝にはもう少し増えるだろう。

だが留守番させても良かったかもな。すんなりと事が進めばすぐにエステマのところへと移動する約束になっていた。向こうにも解放したい誰かがいるらしい。


クロは大量の焼肉を満喫してすでに寝息を立てていた。


俺はまだ少し混乱する頭の中で王都の方角を何時までも見つめ、眠れぬままに朝を迎えることになった。

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