グレイ
自分のこともよく理解っていないのに、他人のことを理解ろうなんて烏滸がましいと、君は言う。笑顔の裏では何を考えているのか分かったもんじゃないし、他人ってまるで宇宙人だよねと、君は笑う。僕はハッとする。
そうか、君はあまりにも可愛いと思ってはいたけど、地球外生命体だったわけか。君の白くて柔らかい肌も、艶のある黒くて長い髪も、すぐ口をつき出す変な癖も、僕の名前を呼ぶ澄んだ声も、この世のものではなかったんだ。これで納得がいった。
別に、宇宙人でもいいよ。何考えてるか分からなくてもいいよ。何億光年向こうの星から、わざわざありがとうね。グレーのベールの奥にある顔が、もし笑ってくれているなら、とりあえず今はそれでいいよ。