なかなおり
学校からの帰り道、私とあっちゃんは、なぜかけんかをしてしまった。
林を通り抜け、栗畑を通り過ぎるうちに、私たちは、横並びから縦一列になっていた。私は、あっちゃんの交通安全のランドセルカバーを見ながら、のろのろ歩いていた。
むっつり黙って歩いていたあっちゃんが、立ち止まって振り返り、まゆをつり上げて言った。
「れいちゃんみたいに かわいくない子、さくらようちえんには いなかったよ!」
私も、かっとなって言い返した。
「あっちゃんみたいに ほっぺがまっかな子、みどりようちえんには いなかったよ!」
あっちゃんはほっぺをふくらませ、ぱっちり二重の目をいよいよきらきらさせて、私は私で、みつあみした耳の後ろがじんじんしてきて、結局ふたりとも泣いてしまった。鼻をぐずぐずいわせながら、お互いの間を空けて歩いていく。
しばらくして、十字路の信号待ちでいっしょになった。信号待ちの時間が、いつもより長く感じる。そして、どちらからともなく、
「ごめんね」
と言い合った。
気まずい顔を見合わせたら、おかしさがこみ上げてきて、ふたりして笑った。
横断歩道を渡り、チヨコレイトのじゃんけんをしながら、帰っていく。
2022年10月4日 改訂