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頑張ってね、小林君!  作者: もう無理だよ
154/211

154_私とヒロ君と大忙しの本選大会


私の名前は花崎詩織。23歳、女、独身、彼氏なし。




12月7日――


小鳥の交流会が終わってヒロ君に電話する。


「今回の大会で気になる人とか…いたりする?」


『興味があるのはドッグタグのライア君かな』


「ドッグタグの…ライア君?」


『そう、鈴木來亜君っていう子で…昨日、優斗とトレバトで対戦したんだけど、いい勝負しててさ…』


「ふぅ~ん…」


(優斗君ならライア君って子、知ってるかな?今度、探りを入れよう…)


『ライア君って礼儀正しくて、カッコ良くて、絶対に花崎も好感が持てると思う。この間も話したんだけど面白くてさ…ペラペラ…』


「ふぅ~ん…」


(すぐに優斗君に電話して情報を聞き出そう)


私は確信している。絶対に優斗君はライア君って子の情報を掴んでいると思う。



さっそく優斗君に電話する。


『こんばんわ、どうしたんですか?』


「いま大丈夫?どうしても優斗君に確認したいことがあって…」


事情を話す。


『ライアさんですか…?僕と同じ雑誌モデルでドッグタグに所属しています』


なんだか優斗君は歯切れが悪い。


『確かに…小林さんはライアさんに好印象ですね。でも…僕としてはあまり…いい印象はなくて…一緒に働いているので嫌な面も見えちゃってる気もしますが…』


「うん、うん」


優斗君の話しを聞く限り、ライア君は気を許せない相手だと認識する。


「分かった…教えてくれてありがとう」


『あの…僕も詩織さんに聞きたいことがあって…眠れる森の小鳥はどうですか?やっぱりトラのマーチの交流会とは違うんでしょうか?』


優斗君はリーダーとして、他のチームの交流会に興味がある、と話してくれる。


「そうだね…小鳥が特殊なチームなのかもしれないけど…トラのマーチとは全然違うよ」


今度のトレバト本選大会の時に説明するね、と約束する。





12月21日――


小鳥チームの代表としてトレバト本選大会に出場する。大会前にマネージャーからチームの方針や説明を受ける。


「それじゃ、最後に…チームのリストバンドはしてるよね?」


マネージャーことハンサムガールの高橋星羅さんに、腕に付けているリストバンドを見せる。


「はい。大会に出場するメンバーは必ず付ける必要があると芽衣ちゃんから聞いてます」


リストバンドにはチームのロゴが入っていて、レースの羽が付いている。階級が『飛鳥』なので青色だ。


「大会に出場するルールについて回覧板もチェックしました」


「了解です」


他にも細々としたルールは後ろにピッタリとくっついている野原芽衣ちゃんに教えてもらっていた。


「あとは他のチームやファンの人に接する時は、とにかく感じ良くしてほしいんだ」


「はい…愛想良く振舞うのが大事ってことも聞いてます」


愛想を振りまくのは得意じゃないけど、リーダーの市川さんの真似をすればいいと思っている。


「よろしく。何か分からないことがあったらすぐに言って下さい。あとこれ…芽衣に付けてもらってください」


白い羽の髪飾りを受け取る。大会に参加するときのアクセサリーがあるらしい。お礼を言って芽衣ちゃんに渡す。


「小鳥のチームってアクセサリーが可愛いよね」


「この髪飾り、メンバーの一人が手作りしてるんです。個人に合わせて作るので一点物なんですよ。今回、花崎さんがどんな髪飾りを付けるのか楽しみにしているメンバーやファンも多いです」


デザインが細かいし、ハンドメイドなんて大変だね、と話を続ける。


「私のために作ってくれたなんて嬉しいな…お礼を言った方がいいよね?次の交流会の時にその子と話せるかな…?」


「うーん…それは……」


芽衣ちゃんが難しい顔で悩んでいると携帯が鳴る。ヒロ君からだった。


『観客席から優斗と応援してる。頑張れ!』


(ヒロ君が私に注目してる!やったね!!)


すぐにメールの返信をする。

芽衣ちゃんとの会話はすっかり忘れてしまった。




「第1回戦は「眠れる森の小鳥」VS「黒猫のタンゴ」でーす」


司会進行役の案内に従いステージ上を歩く。


対戦する「黒猫のタンゴ」は男子高校生軍団だ。子供みたいに見える。そして、黒のお揃いのTシャツは可愛い。右腕にあだ名が明記されている。


対戦前、選手同士で握手するのが決まりだ。


「よろしくお願いします」


手を差し出すと相手選手から質問された。


「花崎さん、眠れる森の小鳥に移籍したんですね?トラのマーチで何かあったんですか?」


「えっ…?」


対戦相手の子は無邪気な笑顔だった。


「えっと…別に何もないですけど…」


軽くお辞儀して、愛想を振りまいてみる。


「あのっ…!対戦、よろしくお願いしま~す」


手をパチッとやる市川さんの仕草を真似してみたけど、対戦相手の高校生は変な顔で固まってしまった。


(市川さんの真似しても私じゃ可愛くないのかも…?)


顔を引きつらせながら、席に座る。


(ハァ~慣れないことはしちゃいけないな…)




対戦が終わり、観客席にいるヒロ君と優斗君に手を振ってステージを降りる。


「花崎さん、お疲れ様でした!」


芽衣ちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくる。


「ステージから降りる時、笑顔で客席に手を振ってて…愛想を振りまくのは苦手って仰ってましたけど完璧でしたよ」


「そ、そうかなぁ…?」


(ヒロ君と優斗君に手を振ってただけなんだけど…まぁいっか…)


芽衣ちゃんの後に続いて控室に入る。


「あっ!花崎さ~ん、この後、雑誌のインタビューがあるから一緒に来てくれる?」


リーダーの市川菜月さんだ。


「…雑誌のインタビュー…ですか?」


「そうそう~。芽衣から聞いてない?」


私は伝えました、小声が聞こえる。


「えっと…大会に出場するにあたりルールが多すぎて…芽衣ちゃんから聞いたかもしれませんが、覚えていません」


「そっか~」


両手をパチッとする仕草は可愛いのに、なんだか怖い。


「説明したって言ってもさ~花崎さんが理解してないんじゃ伝わってないってことだよね~。それって意味あるのかなぁ~芽衣?」


「…はい…」


「じゃあ~移動中に私から説明するね!」


腕を組まれる。


「ゲーム雑誌にトレジャーバトルの記事が掲載されてるんだけど、今回は私達をメインに扱うってお話しなの。記者の質問に答えたり、少しおしゃべりするって感じだよ。あぁ、写真も撮られるかな~?」


「…雑誌に掲載されるって…すごいですね」


改めて眠れる森の小鳥が人気の高いチームだと認識する。


「すごくないよ~。人気の高さだったら、「ドッグタグ」や「青い淡水魚」の方が上だもの。あんまりゲーム雑誌って読まない?」


「そうですね…トラのマーチにいた頃は雑誌取材なんて聞いたことないですし…」


(ゲーム雑誌か…全く読んだことはないな…興味もないし…ヒロ君が出てれば別だけど…)


「あ~そうだ…以前…トラのマーチの小林さんに聞いたことがある…」


「ヒ…小林さんに?な、何をでしょうか?」


「雑誌のインタビューを受けないってことだよ~。ほらっ…リーダーの広瀬君がモデル活動してるでしょ?そのことで…事務所の許可が下りてないからメディアは断わってるって聞いたなぁ~」


「そう…なんですね…」


(知らなかった…優斗君は知ってるのかな…?)


「…ねぇねぇ、ずっと聞きたかったんだけど…小林さんと何かあったから…ウチに来たの?」


「…えっ?」


「だって~小林さんが皆の前で花崎さんに告白するからさ~しかも大声で…。花崎さんは逃げながら断わってたし~あんなことがあったら普通はチームに居づらいって考えちゃうよねぇ」


「あれは事故というか…それに…小林さんとは話し合って今では普通に接しています」


「そうなんだ~?」


話していたら会議室に到着した。


「ここで1時間の取材と写真撮影が行われるから」


「はい…」


中は写真撮影ができるスペースと簡易的なイスとテーブルがある。


「菜月、私達のインタビューは終わったから。化粧なおしてくる」


ミーシャさんと桜井未来さんだ。二人は先にインタビューを受けたようだ。


「未来、化粧室に案内して?」


「何で一人で行けないのよ?美紀さんといたいからパス…」


ツインテールを左右に振って桜井さんは断わっている。


「未来…ミーシャを案内してあげて。一応ナビ役ってことになってるんだから…」


杉本さんの一声で桜井さんは渋々承諾する。




インタビューと写真撮影が終わった。さすがに少し疲れたなと思う。


「花崎さん、お疲れ様です!お昼休憩ですが…」


「お昼か…あんまり食欲なくて…どうしようかな…?」


ピロピロリーン

ヒロ君からメールだ。スカートのポケットから携帯電話を取り出す。


『大会が終わったら少し話せる?挨拶に行きたいんだけど…時間あるかな?』


もちろんあるよ、と速攻で返信する。


「芽衣ちゃん…やっぱりお腹すいてきた。食べに行こう!」


「はい…あの…恥ずかしいんですけど…お弁当を作ってきたので…花梨と3人で食べませんか?」


「お弁当…?食べる、食べる…。手作りのお弁当って嬉しいな」


その後、最上花梨さんと合流して、お弁当を食べる。美味しくて温かいスープも用意してあって芽衣ちゃんの女子力の高さに驚いた。




午後――


「まもなく第3回戦を開始します~」


ドッグタグとの対戦をずっと待っていた。荒くれ者…いえ、不破さんとロン毛の帽子のお兄さん…いえ、増田さんと軽く挨拶する。


そして…噂の腹黒君(鈴木來亜)。


「初めまして、鈴木來亜です」


金髪センター分けの男の子…第一印象はいいかもしれない。そもそも顔が良い。


「初めまして、花崎詩織です。今日の対戦、楽しみにしてました」


力を入れて握手する。


「俺との対戦を…ですか?嬉しいです」


笑顔が輝いている。


(これが…万人を虜にさせるという…ライアスマイル?)


私も一瞬ポッーとした。


「詩織さーん、ファイトです!!」


優斗君の声で現実世界に引き戻された。危なかった。観客席に座っている優斗君に手を振る。


「あの…広瀬君と仲が良いんですか?」


「えぇ…同じチームでしたから…」


「そう…ですよね」


含みのある言い方だなぁ…と思う。まぁいいや…腹黒君(鈴木來亜)をフルボッコしようと決めていた。


対戦が始まってガンガン攻めたけど、案外うまいな、と思う。


(まぁ…それでも私の方が上だけど…)


腹黒君との対戦は意外と楽しかった。




試合は2-1でドッグタグの勝ち。


その後、すぐに3位決定戦がある。『眠れる森の小鳥』VS『竜宮の召使』だ。


「芽衣ちゃん、3位決定戦が終わったら解散だよね…?」


大会が終わったらヒロ君と優斗君に会いたいと思っていた。


「解散…?いえ…3位決定戦と閉会式が終わったら、眠れる森の小鳥が主催しているファンミーティングがありますよ」


「…ファンミーティング?」


「はい、笑ってハイタッチしていれば大丈夫ですから」


(ちょっと待って…ファンミ?そんなの聞いてない)




2008年12月21日、知らない人と笑顔でハイタッチすることになるなんて…小鳥に入って一番の驚きだった




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