153_僕と兄さんと大会観戦
僕の名前は広瀬優斗18歳、男、彼女なし。アルバイトは雑誌モデル。高校3年生
12月21日――
小林さんと待ち合わせしてトレバト大会本選の会場に到着する。すぐに『竜宮の召使』リーダー、橘さんと会う約束があり、小林さんが会場のパンフレット片手に案内してくれた。
「優斗~小林さん~こっち、こっちー」
待ち合わせ場所では潤君が手を振っている。隣にいる背の高いスラッとした人が『竜宮の召使』のリーダー、橘誠さんだと紹介された。
「初めまして、広瀬優斗です」
「いや~写真と実物はちゃいますなぁ。実際に見た方が何倍もきれいな顔立ちやで」
「ありがとうございます。『竜宮の召使』は今日の本選大会に出場しますよね?応援してます」
「おおきに~」
橘さんは楽しい人だった。
「そうそう、俺、ずっと疑問に思てることあって…」
橘さんの疑問は小林さんが答えてくれるようだ。愛想を引き出して対応している。
「花崎詩織さんってトラのマーチを辞めて眠れる森の小鳥に移ったんやでな?ネットでは有名な話しやったけど、俺…信じられんで…今日の大会でやっと信じることができました」
「…どうして信じられなかったのでしょうか?」
「花崎さんってトラのマーチの看板娘って感じで…小林さんとも仲が良う見えたのに…なんで眠れる森の小鳥に移ったんやろうって不思議やったんです」
「その件は俺からも説明したやないですか~」
潤君が呆れている。
「えー信じられへんねん…せっかくトラのマーチのリーダーさんとマネージャーさんにお話しする機会があるんやし直接聞きたかってん…俺もリーダーとして今後の参考になるかも分からへんし…」
「小林さん、すんまへん…橘さんに教えたって下さい」
「教えるといっても…チーム内で問題が起こって辞めた、という話しじゃなく本人がもっと強いチームに移りたい、という理由です」
「ほんまにそうなんや…」
「俺もそう言うてるのに…全然信じてもらえへん…」
僕達が話していると、『青い淡水魚』の№2、関泉さんと№3、岩田雨月さんが橘さんと潤君を連れて行ってしまった。
あっという間の光景に僕は立ちすくむ。
「…小林さん…今のは…?」
「俺は橘さんの気持ちが分かる気がする……そろそろ大会が始まるし、俺達は応援席に移動するか?」
「そうですね…そうしましょう…」
第一回戦と第二回戦を観戦して、お昼の時間になった。
昼食は吉川さんと田中さんとインドカレーを食べて、午後は一緒に観戦することになった。吉川さんは僕たちと一緒に観覧席に行くと言う。
「吉川さんも観覧ですか?」
「そう、俺はレギュラー争いに負けたんや」
「負けた…?それじゃあ3番手って…もしかして………」
嫌な予感がする、と吉川さんの答えを聞く。
「ライア君になったんばい」
(やっぱり…そうか…)
僕は自然と肩が落ちたけど、隣で座る小林さんは興奮している。
「そうなんですか…?ついにライア君…吉川さんに勝ったんですね!強くなってましたもんね…俺…ビックリして…春樹さんからセンスがあるって話しは聞いてましたけど…ペラペラ…」
この前の僕とライアさんの対戦を見て、小林さんは一段とライアさんに興味を持つようになってしまった。
「そうなんだよ。キングもライア君のこと気に入ってて、色々と教えてあげてるみたいだよ」
「そうですか。まだまだ成長途中って感じですし、これからが楽しみですね!」
「だよねー。ウチのチームじゃキング2号ってあだ名もあるんだよ」
「さすがライア君!」
田中さんと小林さんの会話をモヤモヤしながら横で聞いていた。
『まもなく第3回戦を開始します~』
司会者のお笑い芸人が呼び込むと、音楽が流れる。左側から「ドッグタグ」、右側から「眠れる森の小鳥」が出てくる。
第3回戦――「ドッグタグ」VS「眠れる森の小鳥」
不破 虎牙 VS 市川 菜月
増田 栄吉 VS 杉本 美紀
鈴木 來亜 VS 花崎 詩織
歓声が上がる。今日一番の歓声かもしれない。
(詩織さんとライアさんの対戦…?)
さっきまでモヤモヤしてたから、僕は詩織さんにエールを送る。
「詩織さーん、ファイトです!!」
思いのほか大きい声になったかもしれない。詩織さんが僕に気づいて手を振ってくれた。
「…優斗、ライア君も手を振ってるよ?」
小林さんに言われライアさんを見る。青筋立てながら僕に手を振っていた。
「優斗とライア君は本当に仲良しだな」
「…そうですね。最近の僕達って本当に仲良しです!」
優等生顔を作ってライアさんに手を振る。
対戦が始まる。
市川さん、杉本さんは慎重にプレーしているけど、詩織さんだけはアクセル全開、エンジン全開のパワープレーが続く。
「花崎さんってまた強うなった?」
吉川さんと田中さんが驚いているけど、僕は不思議に思わない。元々の感覚が鋭かったし、これからもまだまだ伸びると思う。
「ライア君も急に上手くなりましたよね?最初の頃の印象しかなかったので驚きです」
「ドッグタグに入って急成長したって感じだよ。ライア君ってああ見えて努力家なんだよね」
田中さんはライアさんがドッグタグに入る前からトレバトを教えていて、ずっと近くで見てきたそうだ。
「チームのトップ達が皆ライア君ば好いとーし、彼って印象よかね。カッコイイし~」
みんな、ライアさんにノックアウトされてる、と僕は残念に思う。
不破さんが余裕で勝利し、次に詩織さんが勝って、慎重派の増田さんが勝利して試合は終わった。
「ドッグタグ」VS「眠れる森の小鳥」2対1でドッグタグの勝ちだった。
第4回戦――「青い淡水魚」VS「竜宮の召使」
平田 清 VS 橘 誠
関 泉 VS 多田 颯太
岩田 雨月 VS 石上 亜須磨
『それでは第4回戦を始めます。出場者の皆様はステージにお越しください』
お互い握手して、対戦が始まる。白熱したバトルと見ていたら、小林さんからコソッと質問される。
「優斗…もし宮永さんが平田さんと勝負したら…どっちが勝つと思う?」
「うーん…いい勝負になると思います。紗希さんはとにかく素早いので、平田さんの命中率が勝敗を分けると思います」
「そっか…。大会が終わったら、2月に開かれる大会のエントリーに行こう?」
「はいっ!」
「青い淡水魚」VS「竜宮の召使」3-0で青い淡水魚の勝ちだった。
決勝戦が終わって、僕たちは大会本部に顔を出す。
「2月に行われる大会のエントリーをお願いします」
事務員さんが紙を渡してくれる。
「必要事項を記入して、大会費用と一緒に提出して下さい」
「分かりました」
小林さんが受け取って記入する。
「メンバーはどうする?マネージャー枠は俺として、選手は6名記入できるけど…」
「そうですね…僕、真一さん、渉、紗希さん、八谷茉莉さん、潤君で登録をお願いします」
「…宮永さんは大会に出場すること、何か言ってた?」
「紗希さんは大会に出てみたいって言ってました。2月の大会、予定が合えば参加してくれると思います」
「そっか、了解です。とりあえず記入して、また交流会の時にメンバーに話しを聞いてみよう?」
「はい、よろしくお願いします」
エントリー用紙を提出して、僕たちは詩織さんに挨拶に行く。
眠れる森の小鳥のメンバーが一か所に集まっている。その中に詩織さんがいた。
「今って話しかけても大丈夫なんでしょうか?」
「うーん…分からない…」
どうしましょうか、と悩んでいたら、詩織さんが僕達に気づいてくれた。
その後、話しの流れで詩織さんと詩織さんのお世話係と名乗る野原芽衣さんとレインボーケーキを食べに行くことになった。
2008年12月21日、大会を観るのは楽しいけど、やっぱり出場したいな、と思う
大会が終わった後の詩織ちゃんとユウ君の会話――
「大会お疲れ様でした」
「優斗君~応援ありがとう。ねぇねぇ、鈴木ライア君って芸能人だったんだね、少し緊張しちゃったけど、優斗君の声援のおかげでやる気出たよ!」
「それなら良かったです!僕、絶対に詩織さんに勝ってもらいたいなって思ってました」
「そうだよね、ヒロ君の関心がこれ以上、腹黒君(ライア君)にいかないように、フルボッコしたよ!」
「はい、詩織さんの勝利は見てて気持ち良かったです」
「でしょ~?私、優斗君から腹黒君(ライア君)の話しを聞いて、絶対に許せないって思ったんだよね」
「詩織さん…!これからも情報共有していきましょうね」
「うん、また何かあったら連絡してね!私も目を光らせておくから…」
「ありがとうございます、詩織さん!」




