表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/39

第6話 地獄の王の誕生

 裁きの間。


「貴様は飲酒の罪で地獄行きだ!」

「はあ!? 私、お酒なんて一滴も飲んだこと無いわよ!?」


「いや、お前は酒で酔わせた男の醜態を笑った。それは立派な飲酒の罪になる!」

「馬鹿じゃないの! なんでそれが飲酒になんのよ!」


「黙れ! さあ鬼よ、この女をさっさと地獄へ連れて行くのだ!」


 閻魔大王の命令に従い、鬼は地獄に繋がる扉を開けた。

 その瞬間、鬼が遥か彼方まで吹き飛ばされる。


「な、何だ!? 牛頭! 馬頭!」


 護衛である2匹の鬼が武器を構えた途端、閻魔大王の目の前にいくつもの鬼の首が投げ込まれた。


「ひ、ひいいっ!」


 恐怖に歪んだ鬼の首と目が合ってしまった閻魔大王は、イスから転げ落ちた。


「……久しぶりだな息臭親父。40万年ぶりくらいか?」

「な……お前は……」


 地獄の扉から、鬼を羽交い絞めにした人間が姿を現した。


「も、申し訳ありません……閻魔大王さ――」

「道案内ご苦労」


 ゴキッ!

 まだ少年と言っても良いくらいの男が、鬼の首をへし折った。


「牛頭! 馬頭! 奴を殺せ!」


 2匹の鬼はうなずくと、のっしのっしと少年に近付いていく。


「お、他の鬼よりデカいな。ホブゴブリンくらいの強さはありそうだ」


 閻魔大王は腹を抱えて笑う。


「がははははは! ホブゴブリンだと!? 牛頭と馬頭は最強の鬼だ! その力は普通の鬼の5倍! ドラゴンの首すら簡単にへし折るの――」


 ブシャアアアアッ!

 牛頭と馬頭の首がゴロゴロと床を転がり、切断面から血が噴水のように噴き出ている。


「他の鬼と変わらないじゃないか……地獄には、見掛け倒しの奴しかいないのか?」

「へ……?」


「おい息臭親父。お前にはたっぷり教育してやるから、覚悟しておけよ?」

「ひ、ひぃ! 鬼ども! 何としてでも奴を殺せええええええ!」

「はっ!」


 裁きの間にいる42人の全鬼が、少年を取り囲む。



「――3秒やる。死にたくないものはどけ」


 その凄まじい殺気と迫力に半数の鬼が思わず後ずさり、もう半数は金棒を振り上げたまま硬直する。

 閻魔大王もゴクリと唾を飲み込む。


 たかが人間風情に、何故ここまで恐れてしまうのか。

 しかも奴は、史上最悪の無能者だったはずだ。こんな事ありえない。



「3秒経った。――では死ね」


 少年は左右の腕を水平に振るい、手刀を放った。

 金棒を振り上げていた鬼の首が、床にゴロリと転がり落ちる。


 生き延びた鬼達は、その場で失禁した。



「息臭親父、お前には地獄の苦しみを味わせてやる」

「黙れい! もっとも神に近い存在であるこのワシに、人間風情が敵うものか!」


 少年はふっと笑い近づいて来る。


「神の眷属だと? お前ら地獄の者達は、ハッタリだけは達者のようだな」

「おのれ……! 死ねい! 獄炎!」


 閻魔大王の両手から炎が噴き出す。

 この炎はただの炎ではない。いかなる存在も焼き尽くす地獄の火炎なのだ。

 これを食らえば、燃えカスすら残らない。


「がはははは! どうだ! これが閻魔大王様の力よ! …………へ?」


 炎が消えると、そこには仁王立ちの少年がいた。


「ぬるい……ぬるすぎる……」

「ひ……ひいい……! も、もう一度だ! 食らえ!」


 閻魔大王は再び獄炎を放った。


「カァッ!!」


 しかし、少年の叫びで地獄の炎は掻き消されてしまった。


「な、なんなんだ今のは!?」

「ただの気合だ。――さあ、今度はこちらの番だぞ……?」


「ひ、ひいいいいいいいいい!!」


 ジョバババババ!

 閻魔大王は盛大に失禁した。



     *     *     *



「せいっ! せいっ! せいっ! せいっ!」

「ぐぼっ! ごはっ! おぐっ! ぶぎゃっ! やめんが! ぐぞ人間め!」


「ははは! いいぞ! そう簡単に従順になられては面白くないからな! 俺等は何十万年も、これ以上の苦しみを受けて来たんだ! きっちりその分お返ししてやるぞ!」


 俺は閻魔大王もとい息臭太郎に馬乗りになり、顔面をボコボコにしていた。

 といっても力加減は最小だ。ちょっとでも力んでしまうと、こいつ等はあっさりと死んでしまう。


 正直ドブさらいギルドの、9歳のクソガキより弱いのではないかと思う。

 下手すればチワワ以下という可能性すらある。


「まったく……こんなに弱いという事を、もっと早く知っていれば、さっさと制圧していたのに……」


 まあ、おかげで気の力を得る事ができたのだからよしとするか。


「おので! おのでえええ!」


 息臭太郎はまだ反抗的な目をしている。

 これはまだまだ教育が必要だ。


 俺は息臭太郎をむんずと掴み上げると、再び地獄へと降りて行った。




「ぎゃああああああああああ!! いでええええええええええ!!」


 息臭太郎は針山の上でのたうち回る。


「お前の愚かな裁きで苦痛を味わされた、全ての人々に謝罪しろ。この針の山では、鶏や豚を食べただけで殺しの罪を着せられた人が大勢いた。おかしいとは思わないのか?」

「ぐわあああああああ! 全知全能である、このワシの判決は絶対じゃあああああ! ――うぐっ」


 息臭太郎が死んだ。

 俺は蘇生官にアゴをやって合図する。


「はっ! 活活!」


 この蘇生官は、息臭太郎より柔軟性がある。

 息臭太郎が俺にあっさり敗北すると、すぐに俺を地獄の王として崇め、忠誠を誓った。


 息臭太郎が生き返る。


「ぎにゃあああああああ!!」

「家畜を殺して食う事が罪なのであれば、それは人が生きる事を否定する事になる。お前は生命を侮辱している」


「黙れ黙れ黙れえええええ! ぐえっ……」

「活活」


 息臭太郎が血を噴き出しながら暴れ回るのを後目に、俺は新任の補佐官から巻物を受け取る。

 ちなみに前任者は、血の池地獄を満喫中だ。


「なになに……薄めた酒を売っても地獄行き。酒を高値で売っても地獄行き。……しかも殺人より罪が重いって……本当馬鹿だなお前は」

「うるざい! うるざい! うるざい! うる――」

「活活」


 俺は大きなため息をついた。


「……これは教育しがいがあるな」


 ここまで読んでくれた読者の皆様、そしてブクマと評価をしてくれた読者の皆さま、ありがとうございます!


 少しでも面白い、続きが早く読みたい!と思いましたら、

 ↓にある☆☆☆☆☆から「評価」と「ブックマーク」をよろしくお願いします。


 ブックマークはブラウザではなく↓からしていただけると、ポイントが入りますので作者がとても喜びます。


 評価とブクマは作者の励みになりますので、お手数かとは思いますが、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ