第37話 邪神王陛下に栄光あれ!
創造神イクトシャスは怒りに震えていた。
人間達が、イクトシャスが授けた魔法とスキルの力を、ないがしろにしているのだ。
「許せぬ……! 許せぬぞおおおおおおお!」
この創造神である自分が与えた力を拒否するという事、それすなわち神への反逆!
「人間どもよ、滅ぼしてやろう!」
イクトシャスは地上を目指し、神々の世界から降下を始めた。
* * *
俺は久しぶりに顔を合わせた弟子達と、楽しく宴会をおこなっていた。
辺りには桜が咲き誇っており、絶好の花見日和となっている。
この桜は、別の国から蠅が持ち帰って来たものに気を込めて、何百本も植林したものだ。
「しかし、結局邪神のやつ現れぬな。……やはり、本当に俺が邪神なのだろうか?」
弟子たちが爆笑する。
「当然でございまする! 創造神が与えた力を否定し、これを排斥する。まさに邪神のおこないではございませんか! がはははは!」
他の弟子達も、うんうんとうなずく。
確かに言われてみれば、俺がやっている事は神への反逆か。
そんなつもりはまったくなかったのだが。
「もしかしたら創造神が怒って、地上へ降臨するかもしれませんね。ひひひひ!」
「創造神か……さぞかし強いのだろうな。うーむ、ちょっと期待してしまうかもしれん」
結局俺は、現世に戻ってから敗北を知っていない。
いや。それどころか、まともに戦う事すらできていない。みんな弱すぎるのだ。
「御師様と神の戦い、見てみたいんこ!」
「あーん! ルシフェル様の本気で戦うところを見たら、大洪水になってしまいそうですわー!」
「ぶぶー、想像しただけで卵を産みたくなってきます」
リャマ・ムームーは嬉しそうに首を縦に振ると、突然耳がピクッと立った。
そして天を見上げ、じっと一点を見つめる。
そして何かに気付きハッとすると、俺の袖を咥え引っ張った。
「む、何か来るのか……?」
俺は空を見つめる。
カッ!
空に閃光が広がったかと思うと、雲がなくなり、空は一瞬で真っ暗になる。
異様に星々がよく見え、まるで宇宙空間にいるようだ。
「これは……本当に来たのかもな……邪神が」
その瞬間、ぬっと天に巨大なヒゲヅラのジジイが現れた。
この大きさ、もしかしてこの星と同じくらいあるんじゃないか? それくらいデカい。
「我は創造神イクトシャス! このワシが授けし力を捨てる事、それすなわち神への反逆! その罪、全人類の死をもって償うが良い!」
さすが神! 相当な威圧感だ!
現に弟子たちは全員、固まって声すら出ていない。
きっと世界中の人間達も同じような状態だろう。
「創造神イクトシャス! ルシフェル邪神王国国王にして、気の道の創始者である、ルシフェル・イザヤが貴様を滅してくれよう!」
イクシャトスの超巨大な目がギョロリと俺を捉える。
「貴様かああああああああああああああああ!!!! 『気』などという訳の分からぬ力で、人間達を惑わした邪神は!!!!」
「邪神は貴様だ! 生まれ持った力のみで人が評価されるなど、おかしいではないか! そんな世界を作ったお前こそ、真の邪悪である! その罪、死をもって償うが良い!」
イクシャトスの眼が充血し、青筋が立つ。
「死ねええええええええええい! 羽虫がああああああああ!」
一つの大陸くらいの大きさはありそうな拳が、俺に降って来る。
「ぬんっ!」
俺はそれを両手で受け止めた。
体の半分が地面にめり込む。
地表にも気を張っていたのでこれくらいで済んだが、それがなければこの星は割れていただろう。
「ふんっ、神とはそんなものか? ――食らえ! 努力キャノン!」
「カァッ!」
俺の両手から発射されたエネルギー波は、イクシャトスの咆哮でかき消された。
「ほう……やるな……」
「少しはできるようだが、所詮は羽虫。神と人間の力を思い知るが良い!」
イクシャトスは拳を振りかぶった。
――来る!
だが、当方に迎撃の用意あり!
「神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神ィッ!」
「ライライライライライライライライライライライライッ!」
イクシャトスと俺のパンチがぶつかり合う。
パンチ力は互角!
だが俺は、この星を守る為に地面に気を張らなくてはいけない。
その分、俺が不利だ。このままでは押し負ける。
「――皆の者! 閣下に気を送るのだ!」
「はい!」
息臭太郎の一声で、弟子達が俺に気を送る。
――いや、それだけではない! 世界中のみんなが、俺に気を送ってくれている!
「ほう! 大したものだ! だが、我が力がこんなものだと思うなよ! ――神神神神神神かみゃあああああああああああああああああああ!!!!」
なんだと!? まだ本気を出していなかったというのか!?
俺のラッシュはどんどん押されていく。
「気を……! もっと気を集めなくては!」
俺の声にリャマ・ムームーが反応し、次元の門を開く。――どういう事だ?
「主様! もしかしたら、この星以外にも気があるのでは!?」
俺の脳に雷が落ちる。
そうか! この全宇宙から気を集めればいいのだ!
俺は遥か宇宙の彼方までに意識を向けた。
「来る! 来るぞおおおおお! とてつもない気がああああああああ!」
この力、今までとは桁違い!
ざっと1億倍といったところか!
「な、なんだ!? その凄まじい力は!?」
「イクシャトスよ、地獄がお前を待っているぞ! 食らえ! 超努力キャノン!」
俺の両手から、とてつもないエネルギー波が発射された。
「そ……そんな……神であるこのワシがああああああああああああああああ!!!!」
創造神イクシャトスは消滅した。
* * *
その頃、遠く離れた銀河の彼方で。
大銀河帝国は、ついに完成させた。
一つの銀河を破壊できる超兵器「ギャラクシーバスター」を。
大銀河帝国提督は、ギャラクシーバスターを搭載した、超巨大銀河級戦艦スターデストロイヤーに搭乗していた。
「提督、発射準備完了しました」
「うむ。では目標、ヒシュカ銀河!」
「目標! ヒシュカ銀河!」
連邦の拠点は、ヒシュカ銀河に多く存在している。
そこを、このギャラクシーバスターで消滅させれば、大銀河帝国の勝利は決定的となる。
「ふふっ。4000兆の人間が宇宙の藻屑となるところ、しっかり見届けようではないか」
「はっ! では発射用意、5秒前――」
大銀河帝国提督は何故か、今までの思い出が走馬灯のように蘇り始めた。
完全勝利を目前にして、感傷にふけっているとでもいうのか?
「4……3……2……」
提督は、目の前に一筋の光が迫って来るのが見えた。
あれは何だ?
「1……はっ――」
超巨大戦艦スターデストロイヤーが、謎の光に飲み込まれる。
それが彼の最期の記憶だった。
* * *
あれから俺は弟子たちに、宇宙の気を取り込む修業をさせた。
「うむ、今のお前達なら、あの創造神にも十分勝てるだろう」
「はっ!」
――ウィン。
次元の門が開く。
「では行くとしよう。邪神らしく、善なる神々を滅ぼしに行かねばな」
リャマ・ムームー曰く、創造神イクシャトスを滅ぼした事で、他の神々が大層お怒りらしい。
俺達を滅殺しようと、神の軍勢を編成中との事だ。
ならば、こちらから先手を打って出ようという訳である。いざ出陣だ!
「神が何体いるのかは知らんが、皆殺しにしろ!」
「邪神王陛下の敵は皆殺し!」
「邪神王陛下の敵はウジの餌!」
「心臓を抉れ!」
「串刺しにしろ!」
「ルシフェル邪神王国に栄光あれ!」
俺は、颯爽と次元の門へと飛び込んだ。
これにて完結です。
最後まで読んでくれた読者の皆様、本当にありがとうございます!




