9話 歓喜
吸血鬼の葬儀
吸血鬼は死ぬと十字架に縛り付けられて葬儀を行われる風習があるそうだ。
ジャンとジュリアはメーリから言われて旧王城の城下町リーブの広場に吸血鬼ローズを掲げた。掲げた場所は噴水の近くで、噴水に太陽の光りが照らされている。
「綺麗だねー」
「綺麗か?噴水は綺麗だけど吸血鬼は腹が斬られてグロいぞ。それと本当にこんな風習があるのか?」
「そんなの分からないよ」
「……。まー、そうだな」
綺麗と言っているジュリアに対してジャンは疑問に感じていた。2人は噴水の前で話しているのではなく物陰に隠れて見ている。理由はこの後の人々の反応を見るためである。
朝7時 噴水前で商売をする白髪のおじさんがくる。
「キタキタ!」
ジュリアは楽しそうである。おじさんは噴水に近付くにつれて歩くのが早くなり頭の考えと目の情報が一致したと確信すると走って噴水前に来た。吸血鬼の死体をずーと見ているおじさん。だんだん目が大きくなり口も開いて大声で叫んだ。
「吸血鬼が死んでるぞー!!!」
城下町全体に響き渡りそうな大声で叫ぶと近くに住んでいた住人たちが窓を開けたり外に出たりするもの。やがて野次馬の声でザワザワとしている噴水前は人だかりが出来ていた。
「やったぞー!」
「神様は人間の味方だ!」
「血伐隊がついに殺ったのか!」
歓喜するもの泣いているもの様々だった。その光景を見てジャンは自分達がしたことは間違いではないと思った。ジュリアとハイタッチしてその場から立ち去ろうとしたがある声が聞こえて止めた。
「こいつをどうやって殺そうか。みんな考えてくれ!」
「そんなの1人ずつ踏んでいって、滅多刺ししたり、最期には火をつけて殺そうぜ!」
その言葉に歓声があがる。
「ジャン、私の心のほうがみんなに近かったみたいね」
「そうみたいだな」
ジャンは複雑な表情をして立ち上がる。
「みんなの所に行くのはダメだよ。僕が殺りましたなんて言ったら私たちの計画が失敗に終わるからね」
「別に行かないよ。みんなの気持ちが良く分かったし、行こぜジュリア」
「行くって何処に?」
「血伐隊試験会場だよ」
「早くない!?まだ3時間はあるんだけど」
「早めに行ったほうがいいんだよ。それに観たいだろ、旧王城をさ」
「うーん、確かに観たいかも。でもその前にごはん食べよ!お腹ペコペコだから」
「確かに言われるとお腹空いてきたな。ここはグラタンがおいしいお店があるってメーリさんいってたからそこにするか」
「いえーい!グラタンサイコー!」
2人は朝からグラタン3人前を食べてさらにテイクアウトでチーズハンバーガーを2つ買って旧王城に到着した。受付を1番に済ませると2人はもう1つの受付所が見えるベンチに座った。
「ハンバーガーもウマウマだね!」
早速、ジュリアはハンバーガーを頬張っているのを見てジャンは質問した。
「ジュリア。昨日メーリさんと話したこと覚えているか?」
「当たり前じゃない。新しい仲間の狙撃手のことでしょ。一語一句覚えているよ」
ハンバーガーを食べながらジュリアは話し始めた。
今から遡ること12時間前夜8時なんだけど。
「メーリさん、明日の弓使いの件はどんな人を仲間にしたほうがいいですか?」
ジャンがテーブルで酒をのみ酔っぱらっているメーリさんに話しかけた。メーリさんはアラフォーになり恋人は酒という悲しい人になったと私は思っている。絶対に言わないけど。あとこの人を反面教師して私は頑張ろうと思っている。でも、戦いに関しては見習おうと思ってるけどね。
「どんなって、好きな奴にすればいいだろーが、ジャンちゃーんの」
酔っ払いおばさん出現だ!
「真剣なんですよ。今後僕たちと行動してみんなが知らない吸血鬼のことを弓使いには話すんですよ」
メーリさんはお酒を飲むのを止めて私を呼んだ。
「ジュリアもこっち来て私を助けてよ」
「相談なんだから真剣に聞いてあげればいいのに」
「あんたはそんな真面目なキャラじゃないでしょ。どっちかって言うと私に似てるわよ」
心から否定するけどめんどくさいので止めた。ジャンもジャンだよね。こんな状態のメーリさんは役立たずなの分かってるのに。この後の吸血鬼殺しに緊張してるのかな?私が殺すから緊張しなくてもいいのに。殺したらハイタッチするの楽しみにしてるんだからね。さっさとジャンの質問を終わらせる技を使って真夜中にそなえよっかな。
「私からの意見も言うよ!ジャン、いいよね?」
「そうだな。メーリさんの意見より重要かも知れない」
「ジャンちゃん悲しいこというねー。ちゃんと答えるから2人とも座りなさい」
これが技!酒飲みメーリさんは自分に話しかけられるとふざけるけど、話が自分の方から逸れると結構真面目に答えるんだ。寂しがりな女かも。
「では、どういう人がいいですか?」
「まず、最低条件は上位3位までの奴だな」
「それは、分かってますが。性格的なのはやっぱり吸血鬼には深い怨みがある人物のほうがいいですか?」
「怨みは関係ない。どんな理由でも血伐隊に入ろうと思ってる奴だ。裏切りはしないし協力するだろう」
「そうですか」
「性格はあるぞ。それは怖がりな奴だ。お前たち2人は勇気があるのは良いことだが無茶をすることがある(誰に似たんだが)。だから一度立ち止まって考える奴を選ぶんだ」
ジャンはそれを聞くと自分で考えを整理するために少しの間黙るがスッキリした表情で頷いた。私はジャンにとってメーリさんは先生であり母でもあると思う。男ってマザコンだから母のいうことは聞くもんね。ジャンだって本当は考えを決めてたに違いないし。
でも、私は1つだけ条件があった。
「ジャン!私は1つだけ条件があるよ!」
「なんだ。ジュリア?」
「変態男だけはダメだからね。私若くて可愛いから!」
なぜか数秒の間沈黙が流れた。だけど優しいジャンは了承してくれた。メーリさんは「あんたに変態は、よってこないわよ」とか言うからムカついてアルコール度数50%のお酒を飲ませて酔い潰してやったよ。良かったねメーリさん、もし変態男が仲間になったら襲われてるかもよ。
その後に私たちは吸血鬼を倒しに行ったのであるさ。
「って感じかな」
「お前の心の声まで俺に話さなくて良かったのに」
ジャンはジュリアの話しに苦笑いをしていた。
「つい女優の血が騒いでね」
「…。まあ、いいよ。ジュリアが俺をずっと見ながら話してる間に発見したから。ビビリな奴」
「そうなんだ!どんなビビリなんだろう?」
ジュリアのせいで長くなったかも。