6話 家族
「そこまで読めば十分でしょ」
メーリはジャンから小説を取り上げた。ジャンは悲しそうな顔をしてメーリを見るがそれでもメーリは表情を変えない。
「何でですか!これからいいとこなのに」
早口なジャン。
「これ以上は18歳未満は閲覧禁止よ」
「どんなことが書かれているんですか?」
「白々しいわね。そんなの分かってるでしょ。それよりも今の所まで読んで分かったこと言ってみなさい」
「僕のお父さんはレイ、お母さんは吸血鬼のジャリネット。僕は半分人間で半分吸血鬼のハーフ。そして、お母さんが言っていた吸血鬼に勝つ方法は僕の血が関係しているんですね」
ジャンは先ほど死んだ吸血鬼を思い浮かべて話した。
「そう、正解。あなたのお父さんはことが終わってから、それらを教えてもらったそうよ」
「僕の血を武器にして倒す方法も書かれているんですか?」
「書いてあるわ。本当に使えるかどうかはあなたの血を使わないと分からないけどね」
「使ってもいいですよ!なんならもっと早く言ってくれればよかったのに」
「それはダメよ。あなたの覚悟を聞かないといけないから。あなたが本当に血伐隊に入隊して吸血鬼を倒す覚悟があるのかないのか」
「あります!」
「即答ね。分かった。血伐隊には年齢制限がある。試験を受けられる18歳までの8年間私が先生になって鍛えあげるから」
「大体想像できてました。父さんの弟子のメーリさんですもんね。ここに入所したのもメーリさんがここに勤めているのも父さんの指示なんですよね」
「当たりよ。ここまでの道のりは案外簡単だったけどここからは難しいから」
「うーん」
メーリはジャンがどこか迷っている顔をしていると感じた。もしかして血伐隊に入隊する悩んでいるんではないかと感じ再度確認する。
「迷っているのか?」
「血伐隊に入隊することですか?いえ、それは楽しみのなくらいです」
「じゃ、どうしてそんな顔をしている。私はこれでもジャンを生まれたときから見ているんだ」
「さすがメーリさんですね。悩んでいるのは小説が気になるからですよ。メーリさん」
「お前の頭はまだ小説のことか。子供でも男だな」
「女の子も女ですよ。小説の続きのページから数ページにわたって紙がすごくシワシワになってるますね。相当読み込んだのでしょ。どんな内容なんですかね。メーリさん」
ジャンはニヤつきながらメーリの顔を見る。メーリは小説を体の後ろに隠してジャンを睨み付ける。
「ジャンは年の割には感が鋭くてこっちは大変。そんなジャンならこう言ったら分かるでしょ。20才の頃の私にはその数ページが丁度大人の世界の体験だったのよ」
「ありがとうございます。メーリさんとこれから深い話をできると思います」頭を下げて言うジャン。
「その方法は今後使用しないほうがいいわよ。特に同年代の子にはね」
「分かりました。小説の続きはメーリさんが許可をくれるまで待ってます」
「了解。それにしても、親のそういうのを見たいと思うものなのね。男の子だからなの?」
聞かれたジャンは複雑な表情で考える。
「うーん、違うと思います。僕は小説を読んでも両親の話とは思えなくて。……家族ってどんなのか分からないですから」
それを聞いたメーリはジャンの頭を擦り柔らかい表情で話す。
「……そう。あなたに家族ができたらどういう変化があるのか興味があるな」
「ハハッ、メーリさんがお嫁さんになってくれるんですか?」
「バカね、違うわよ。あなたには兄妹がいるのよ」
「えっ……。えーーー!!!」
「今からあなたは双子の妹の所に行き、2人で私の修行を受けるの」
唐突な話しにジャンは動けず固まっていた。今日の出来事に頭が回らなくなってきていた。それを見ているメーリは嬉しそうだった。
(はーっ。やっとジャンに本当のこと言えた。今まで黙ってた私えらいぞ!)と小声で言う可愛いメーリだった。