5話 未来への投資
「きゅ、吸血鬼!?な、何でここにいる!?」
女吸血鬼はベッドに寝ている俺に顔を近づけ話す。この時初めて顔をみたが男の吸血鬼と動揺に人間と区別はつかない容姿をしていた。年齢は二十歳前後であろう。
「レイ、あなたに頼みたいことがあって城から出てきたの」
女吸血鬼は城から出てきたと言うが俺は吸血鬼がどこに住んでいるかは知らない。だか、女吸血鬼は大変だったんだぞと、言わんばかりな顔をしていたので城に住んでいる吸血鬼は人間界同様に偉い吸血鬼だと思った。その次に頼み事が気になったので問いかけてみた。
「頼み事?なんだそれは。それに聞きたいことが山ほどあるんだ吸血鬼にはな!」
後に女吸血鬼はこの会話の時、俺の声が震えていたと振り返っていた。そんなことは恥じることはない。むしろ冷静な対応を取っていたほうである。
「聞きたいことを言ってみなさい。レイ」
話し方と雰囲気で分かる。こいつは位の高い奴だ。
「ま、まず、何でお前は俺の名前を知っている。それに女の吸血鬼なんているのか。初めて見たぞ。何で吸血鬼が朝行動して部屋の中にいるんだ」
「質問は3つか。答えてあげる。その前に今度お前と言ったら殺すわよ。それに私の名前はジャリネット」
ジャリネットから質問の答えを聞いた俺は絶望した。
1.男と女の関係は人間世界と同様ということ。
同様なので女吸血鬼がいるのは当たり前だが、女吸血鬼はほとんどいないため価値が高い。
2.吸血鬼が朝動けないというのは嘘。日を浴びても平気。何で朝、昼に襲わないかということは、この時点ではゲームとだけ言って教えてくれなかった。
3.吸血鬼たちには人間世界でいう魔法のような能力を持っている。全員が持っているわけではなくて、魔法を持っている吸血鬼は自らのことをS級吸血鬼あるいは上級吸血鬼と言う。
俺は特に2.3が衝撃的だった。日を浴びても平気だなんて。唯一の弱点だと思っていたことなのに。昼に行動しない理由がゲームのためだと。人を殺めることをゲームだと言っているのか吸血鬼は。城のなかでゲームの事で盛り上がっているのか!沸々と怒りが沸いてきた。
魔法のような能力を持つ吸血鬼は噂レベルでも聞いたことがない。本当なのだろうか?ランクも同様だ。
「俺は、吸血鬼についてなにも知らなかったんだな」
思わず声が出てしまった。
「そう落ち込むことはないよ、レイ」
ジャリネットはそう答えたが信用はできない。
「どういうことだ?ジャリネット」
「名前を読んでくれるのね、ありがとう」
かわいいと思ってしまった。普通に美人な女性に見える。
「私が吸血鬼に勝てる方法と武器の製造を教えてあげるわ」
言葉には自信が溢れていた。俺は起き上がりジャリネットを逆に押し倒した。
「本当なのか!ジャリネット」
彼女は少しにヤリとしながら答える。
「本当よ、知りたいなら私のお願いを聞きなさい」
「そのお願いとはなんだ?」
「それは私との子供を作ることよ」
何を言ってるんだと率直に思った。これはハニートラップか。いや独身で大した地位のない俺にそれはない。
「そんなことしてどうする。ただの興味本位か?」
「そんなことないって。子を作ることによって人間たちに希望が生まれるんだから」
言っている意味はさっぱり分からないが俺の体は落ちる寸前だった。それを感づいたのかジャリネットは俺に抱きつきキスをしてきた。
俺の理性は吹き飛んだ……。
あー、神様。俺はこの後、どうなってしまうんだ。