表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3話 ジャンの血

「ハハハハ、死ぬのを待つとは薄情な女だな。死んだ後、俺に命乞いでもするのか。悪いが俺は人間の女に興味がないんだ」


 上級吸血鬼はジャンの首根っこを右手で掴みながらメーリに話しかける。


「メーリさん……。こいつを……倒すんだ」


「これまた面白い子供だな。言っていることが不可能なことばかりだ。俺は倒せない。何か言うことはないのか、女」


 メーリはただ立ち尽くしている。だが口もとは微かに動いている。


「1,2,3,4,5,6」とメーリは数を数えている。


 ジャンと上級吸血鬼は薄暗い空間で正確な表情は見えず、ただ立ち尽くしているメーリにしか見えなかった。


「そこでそうして突っ立てろ。いやーしかし、今日は子供の血を2人も飲めるとはいい日になったな」


 そういうとジャンの血を飲み続ける上級吸血鬼。


「やめろ、吸血鬼。死ぬぞ」


 メーリはやっと話しかけた。吸血鬼は血を飲むのをやめてメーリの方を向く。


「お前はこいつが死ぬまで待っているんだろ。早く見せてやろうと思って俺は吸っているんだ。親切だろ俺は」


 そう言って上級吸血鬼は血を吸おうとするとメーリは再び話し掛ける。


「死ぬのは吸血鬼。()()()()()()


 その発言に吸血鬼は眉を曲げ、不気味なものを見るような目でメーリを見る。


「俺が死ぬ?何をいってるんだ?」


「いや、死ぬんだ。あと10秒で」


 メーリはカウントダウンを始める。上級吸血鬼はメーリの方をずっと見ている。嘘だと確信しているからだ。カウントダウンが終わって絶望するメーリの顔を見てみたいと思った。


「3、2、1、0」


「うっ……なんだこれは?!」


 上級吸血鬼は苦しみだしジャンを突き飛ばした。ジャンも何が起こっているのか分からず上級吸血鬼の苦しむ姿を見ている。


「メーリさん、これは!?」


 上級吸血鬼は立つこともできなくなり片ひざをつき心臓を押さえている。何が起こったかを知ってそうなメーリの方に目線を向けている。


「女、これはなんだ!教えろ」


「誰が教えるか。しぶとい奴……。さっさと死んで」


 それから数十秒後、あっけなく上級吸血鬼は死んだ。その亡骸をメーリは二三度踏みつけた後、地下室に一時運ぶとジャンに言う。ジャンはまだ放心状態であったがメーリが頭を叩くと正気に戻った。


「そうだ、キコは大丈夫なのか!」


 ジャンはキコの方を振り向き近づいて上半身をそっと持ち上げる。微かに息はあるが顔が青白くなっている。


「メーリさん、キコは大丈夫なのか」


「安心しろ、血のパックを持ってきている。これには吸血鬼に噛みつかれたときに減った血や栄養を補充できる薬が入っている。私が点滴をうつ」


「そんなものが、いつの間に……ってメーリさんが点滴を打ての!?」


 メーリはキコに点滴を施した。その手付きは素早くジャンは昔看護師をしていたのかと思うほどであった。


「これで安心だ。ジャン、キコはこのままにしといて吸血鬼を地下室に運ぶぞ」


「は、はい(トイレだけど仕方ないか)」


 メーリと一緒に吸血鬼を地下室に運んでいる最中、ジャンはなんで死んだかを聞こうと思ったがそれは少し落ち着いてからにしようと思った。運び終えると2人メーリの部屋に移動した。メーリは椅子に座り、ジャンはベットに腰を掛ける。


「なんだ、なんで吸血鬼が死んだのか聞かないの?」


 メーリの方から話をし始めた。


「聞こうと思いましたけど、聞くに聞けなくて」


「ジャンらしくないな。私は話したくてウズウズしてるのに」


 ジャンはメーリの顔を見ると少しウキウキしているのが分かる。ジャンはメーリさんはなにか隠していると思っていたがこの事だったのかと思い始めた。


「そ、そうですか。じゃー聞きますよ。なんで死んだんですか?」


 メーリは少し間を空けてジャンの目をじっと見る。 ジャンはドキドキしている。


「それはジャン、あなたが()()()()()だからよ」


「……。またまた、ご冗談を。ハハハハ、……マジですか?」


「マジのマジよ」


「ハハ……。うーん、どう言うことですか?」


「意外と冷静で面白くないわね。私はもっと取り乱すかと思ったのに」


「いや、驚いてますよ!ただ意味が分からないですよ。俺がなんで半分吸血鬼なのか。なんで吸血鬼は俺の血を飲んだら死ぬのか。分かんないだらけです」


 ジャンは下を向き大げさに頭を抱えた。その姿を見たメーリは満足そうな顔をしていた。


「理由を知りたいでしょ」


「それはそうですよ。ここで教えないのは教育者失格です」


「どういう意味なのそれ。教えてもいいけど、あなた血滅隊に入る目標は変わらないわよね?」


 メーリの顔が真剣な表情に変わる。ジャンは一呼吸おきハッキリとした口調で答える。


「はい、それは変わらないです。例え自分が吸血鬼でも」


 それを聞くとメーリの顔は穏やかになった。少し安心している表情にも見てとれた。


「なら教えましょう。まずはなんであなたが半分吸血鬼なのかをね」


 そういうと、メーリは引き出しから一冊の薄い本を出してジャンに投げた。なんだと思うジャンは質問するとその本のなかにあなたが半分吸血鬼になった理由が書かれていると言われた。


「この小説は誰が書いたんですか?表紙は手書きだし」


「あなたのお父さんよ。説明するより本の方が分かりやすいと思ったんだって。ほらあなたのお父さん、記者になりたがってたでしょ」


「知らないですよ」


「さすがツッコミ早いねー。まあいいや、世界に一冊しかない小説だからゆっくり読みなさい」


 返事をするとジャンは小説を読み始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ