19話 ジャンの計画
弓使いのクレインはジャンの言うこれからの計画に興味深々である。
「僕の考えだとジャンとジュリアは島に来るA級吸血鬼達を一体ずつ殺していくんだね」
「まあ、そういうことになるよ。現に一体殺したしね」
「その後はどうするんだ?5人殺しても吸血鬼たちはいなくなる訳じゃないし」
「その後は吸血鬼の住むエイル島に乗り込んで吸血鬼達を全滅させるんだ」
「マジ……」
全滅という残酷な言葉を平然というジャンに対して少し怖じ気付いてしまったクレイン。
「マジさぁ。そんな驚くことではないだろ」
「そうだけど。さすがに無理じゃないか?5人倒した後は相当身体に傷を負っているだろうし、何人いるか分からないエイル島に乗り込むなんてジャンらしくない考えだと思うけど」
その疑問にジュリアがチチチッっと口をならして答える。
「クレインは勘違いしてる。乗り込むのは私たちもだけどアンタや他の血伐隊メンバーもだよ!」
クレインは開いた口が塞がらず頭のなかで考えを巡らせる。最後に思ったのは自分たち人間が吸血鬼の島に行っても死ににいくようなものだという考えだった。
「俺たちが行っても邪魔になるだけだろ」
殺されにいくとは言えず邪魔になるという言葉を使うクレイン。クレインは世界を救いたいのではなく自分の小さなコミュニティーにいる人たちを救いたいのである。
「大丈夫だよ。普通の人間にも吸血鬼を殺せる武器を開発してある」
「マジ……」
「地下室にあるから今から見せてあげよう」
ジュリアはシャワーを浴びるといって地下室には行かず、ジャンとクレインが地下室に降りる。地下室にいく階段は隠し扉になっていてクレインはその扉が開くのを見て少し興奮した。階段はらせん状になっていて意外と深く掘っているんだなとクレインが言うとジャンは色々と部屋の高さが要るからねという。そして扉の前に着き、ジャンが扉を開けるとクレインは驚いた目をキラキラさせながら部屋を見渡した。
「たくさんの剣に盾もある!おー、弓矢もあるじゃないか!」
「どうだすごいだろ?」
剣や盾は血伐隊の人数分揃っていた。
「すごいすごい。でも、これがあっても銀の剣があるからいいんじゃないのか?」
「この剣や盾には俺とジュリアの血がコーティングされてるんだ。俺の持ってる剣とほぼ一緒さ」
「あ、ほんとだ。つーことは、この剣は銀の剣より吸血鬼に対する殺傷力があり、盾には吸血鬼の攻撃を弱める特性があるんだな」
「そういうこと。血伐剣の効果は2度の戦いで検証済み。この剣があれば腕のたつ血伐隊員は吸血鬼を殺せる。盾と弓ははまだ試す必要があるけどさ」
「ほーそれはスゲーや。なんか一気に時代が動きそうな感じだな」
「最も時代を動かせることがあるんだ」
「なんだそれは?」
「クレイン、お前が今からエイル島に乗り込んで一体吸血鬼を殺して欲しいんだ。この血伐弓を使ってね」
ジャンはクレインに弓を差し出す。しかし、クレインは少し固まった後に二歩下がった。
「ちょ、まてまてまて!俺にそんな大役できねーよ。全員で行く時は賛成だけど俺1人はムリ!」
「じゃー、ジュリアも連れてくか?」
「そういう問題じゃ……」
「何でそう怖じ気づいている。この大役を成功させれば弓部隊の結成に大きく前進できるんだぞ。一度の成功は大きな自信になる。その自信をお前が弓部隊の隊長としてつける必要があるんだ!」
「俺が隊長?」
「そうさ、あの時いた弓使いで一番美上手いのはお前だった。というか、お前しか合格してないが。メーリさんが今全国から弓使いを集めている。中々集まらないがお前が倒したら集まるはずだ!どうだ!行ってくれるか?」
「……考えさせてくれ」
「そうかそれじゃ……」とジャンが話してる途中に扉がバンと大きな音がして開く。2人が振り向くとジュリアが怒りの表情をしてクレインをみていた。
「ジュリア風呂にいったんじゃ?」
「ジャンがエイル島の話をすることは分かっていたからクレインがどういう反応をするか気になってついてきていた」
「じゃ、今の僕の答えはどう、どうですか?」
「全然ダメ!もう私も着いていくから行くっていいなさい!返事は!」
「はい!」
「ジャンも相手の気持ちを考えるのはいいけどここっていう時はもっといわないとこれから血伐隊員を率いなきゃならないんだから!返事は!」
「はい!」
ジュリアの行動によって3人はふたてに分かれて行動することになった。ジャンは次の吸血鬼の対決に備えての修行。クレインとジュリアはエイル島にいき吸血鬼を倒すこと。明日には行動が開始される。