17話 吸血鬼の動き
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時は少し遡り、吸血鬼の住むハンプ島で一人の男吸血鬼がいきなり頭を抱えた。男は一人部屋の中にいたので誰も気づかない。
「うそだろ……。ルサンが死んだ?」
男吸血鬼の名前はエンカル。ルサンと同じA級吸血鬼で王女争奪戦に参加している。2人は仲が良かった。
「倒したのは人間……。それもまだ少年…だと…」
エンカルが頭の中で観た映像はルサンの最後だった。
「王に伝えるか。いや、人間に負けたと話すとルサンの親や兄妹はここでは暮らせない。どうする?」
エンカルは悩んだ。
ーーーしかし、エンカルは一時間後には王の間に行き跪いていた。
王とエンカルの他には誰もおらず、王が話しかけなければネズミの足音も聞こえる静けさだ。
「エンカル、どうした?俺に話したいことをいいなさい」
王の声は透き通った声でその声を聞くと安心した気持ちになる。その声を聞くとエンカルの悩みは消える。王に問題を解決してもらいたくなり話す。
「はい、実は一時間ほど前に私の脳にルサンからのレターが届きました」
「ルサンは争奪戦の第一走者ではないか。まさかもう上限の100人を殺したのか?」
「いや、そうではありません。ルサンは人間に殺されました」
エンカルは自分の発言による王の言葉を予想していた。それはまず驚く。その次にルサンをバカにすると予想したが王の反応は違った。
「そうか!」と最初は驚いた所はあっていたが表情は違っていた。王の表情は楽しそうであった。
「人間がついに吸血鬼を殺す時代になったのか!いや面白い時代だ!お前達にも緊張感が生まれるな!そうだろ、エンカル」
予想もしないと言葉にエンカルは戸惑いながら応える。
「え、あ、は、はい。私めもより一層鍛練に励み、姫の理想の男になって見せます」
「その心意気だ」
「はい、私はこれで失礼します」
「少し待て」
「は、はい」
そういうと王は紙に文字を書き始め、紙をおりエンカルに渡す。
「今から争奪戦の参加者で集まりルサンが殺されたことを話しなさい。そしてこの手紙を読みなさい」
エンカルは片ひざをつき頭を下げ両手で手紙を受け取った。手紙を受け取るとエンカルは王の間を出ていく。
エンカルが出ていった後に王は一言呟いた。
「いや見たかったなー。人間が吸血鬼を殺すところを」
数分後、A級吸血鬼が住んでいる獄参棟の会議室に王女争奪戦に参加している4人が集まった。星の絵が描かれた円卓の机に顔を合わせる4人。物々しい雰囲気ではなく和気あいあいとした雰囲気だった。
「エンカルが俺たちを集めるなんて珍しいな。エンカルはいつも大事なことでも秘密にするのに」
そう話したのは胸に一番星のバッチをつけた吸血鬼リーズマンである。雰囲気が王に似ており王女の花婿はリーズマンで決まりという声もある。
「とても重要な話だから。さっき王に話したらお前達にも話してこの手紙を読むようにいわれたんだ」
「王に言われてらエンカルも従うしかないね」
「で、どんな話なんだ。面白いのか面白くないのか。面白い話なら笑いも取れよ。ハハハ」
自分の言ったことで笑ったのは二番星のバッチをつけた吸血鬼ヘスス。ヒジョウに明るい性格で5人の仲を深めた第一人者である。
「ヘススは面白くなくても笑うだろ。愛想笑いも得意で王に気に入られて5人の中に入ったって説もある」
「それを言ってるのはファーディ、お前だけだぞ。ファーディ、お前昨日も女と一戦交えてたんだってな。王が怒るんじゃないのか」
「いや、そんなことないさ。むしろ王はその調子だと言ってくれたよ。王はセックスも戦いだと言っていたからね。王が何事にも戦い好きで助かったよ」
ファーディは2番目に花婿として評価されている。かなりのイケメンとテクニックで他の女吸血鬼達は彼が選ばれないようにと願っている。
「ほんと、俺たちが揃うと話が脱線するな。ごめんエンカル、大事な話をしてくれ」
まとめ役のリーズマンが言うとエンカルは神妙な顔になり話し始めた。
「始めにルサンが死んだ」
空気が一瞬で代わり聞いた三人は互いに目を合わせる。
「面白くない冗談だぞエンカル。ルサンが死ぬわけないだろ。と言うより人間の島で殺された吸血鬼なんて今までいないんだぜ?」
「ヘスス、本当だ。ルサンが最後にレターで知らせてくれたんだ。間違いない」
リーズマンが大きく息を吐きエンカルに問う。
「人間に殺されたのか。俺たちは他のA級吸血鬼に恨まれているからそいつらの仕業じゃないのか?」
「それはない。あれは人間だった。それにまだ若かった。年齢は17から20ぐらいだと思う」
静かなでシーンとした空気が流れる。そういう時にも話を切り出すのが一番星をつけたリーズマンである。
「エンカル、お前が見た情報を全て教えてくれ。細かいことも全部だ」
その言葉にエンカルは応え喋りだした。
10分経ちエンカルの話は終わる。終わるとリーズマンが口を開く。
「少年は銀の剣を持っていたということは血伐隊に合格したということか」
「そういうことになるね。今年は誰もが入隊出来る年だから実力は分からないけどさ」
「ルサンを倒したということでおおよそ予想がつく。それに一番の気がかりはルサンの電撃が効かなかったというところだ。なぜだと思う、ヘスス?」
「そんなこと聞かれても俺には分からないさ。面白く出来ない質問だよ」
ヘススの代わりにファーディが話す。
「リーズマン、効かなかったのかは分からないさ。その少年は体全体が血で染まってたんだろ。何か特別なことをして効かなくなったとも考えられる」
女好きのファーディの言葉にリーズマンも確かにと思った。
「ファーディ、お前が引かれるくらい女好きで良かった。女好きではなかったらもっと回りの男からの評価高くなって俺の一番星を付けていたと思うよ」
「ありがとう。でも俺はその少年の後ろにいた2人が気になるね。特に女の子の方。可愛い感じ」
「それは分からないが女も銀の剣を持っているしもう一人の男も弓矢を持っていた。多分この三人で行動してるんだろう」
「まーそんな感じたな」
「そんな感じだと思う」
ヘススとファーディは話に飽きてきていた。いつ終わるのかや早く王の手紙を読めと思っていた。
「ヘススとファーディが暇そうにしてるから、ここでルサンを忍んで祈ろうか」
リーズマンが言うとヘススとファーディはドキドキしたが表情に出さずに祈りを捧げた。
「よし、それでは王からの手紙を読もう」
「ああ、そうだなえーと……」
エンカルは王の手紙を手に持ち目をやる。
「えーと……。王の戦い好きには困ったものだよ」
「王女争奪戦の内容を変更する。ルサンを殺した少年の首を持ってきたものが勝者とする」
その言葉に全員苦笑いをした