14話 血は大事
人間を殴る音は響かない。見てる人間には音がないと効いてるようには感じられないが殴られる本人には異常なダメージがある。殴る人間にもダメージがある。しかし、殴っているのは人間ではなく吸血鬼だ。吸血鬼は殴っても自分の手は傷つかない。ルサンの手の甲についている血は全てジャンの血であった。
「整った顔が勿体ないですよ。これ以上殴ると顔は元には戻りませんよ」
ジャンの顔は血まみれで腫れ上がっていた。
「もう、ジャンを殴るのはやめてよ!言ってるじゃない!知っている人はメーリっていう女だよ!」
ジュリアは泣きながら叫んで答えていた。
「うるさいですねー。私は少年からメーリという言葉を聞きたいんですよ。そうしないと私の敗けなんですよ。吸血鬼には何事も負けられないプライドがあるんです」
「ジュリアは黙ってろ(あー顔の痛みでマジで死にそう。やっぱり少量の血を舐めてもやっぱり死なないか。致死量はどれくらいなんだろうか)」
「あなたは私が一番殴ったなかで耐久性がありますね。私も殴るのも疲れたので今度は電撃を流しましょうか」
「ビリビリは苦手だぜ……」
「声が小さくて聞こえませんね。まあ、いいでしょう」
「血鬼唱 流 雷爪」
「ぐあーーー!!!」ジャンは電流を流されて悶絶する。悶絶するが次第に声がでなくなっていった。
「反応しなくなりましたね。死にましたか?簡単には死なせませんよ。電流は止まった心臓を動かせるんですよ。知ってましたか?」
「知らねえよ」
「ほーう、生きてましたか。どうですか、教える気になりましたか?」
「……。そっちのことも教えてくれよ。お前は争奪戦に参加している5人の吸血鬼のなかでどのぐらいの強さだ?」
「それを知ってどうなるかと言うことですがいいでしょう。私は一番下ですよ」
それを聞いたジャンは不適な笑みを浮かべた。ルサンには諦めと絶望の表情に見えた。
「下でこの強さなのか。正直にビックリしたよ」
「段々と素直になってきましたね。一番下ですので一番先にこの島にきたんですよ。いやー、ラッキーでした。吸血鬼の情報を知ってる人間を私が捕らえたとなると評価が急上昇して私が王女の婿に決定してしまうかもしれませんね」
「それは良かったな。なあ、吸血鬼……」
「何ですか?」
「俺は諦めたよ。知っているのはメーリという女だ。最後にジュリアとクレインと話したい。いいだろ?」
「いいですよ。人間の安心した血を最初から最後まで飲めるのは余りありませんからね」
ジャンは2人が真後ろにいるためジュリアにクレインが起きているか問いかけた。
「クレインは起きているか?」
「いいえ、まだ寝てる。」
「ジュリア、クレインを起こしてくれ」
「それより諦めるって何よ!」
「いいから起こしてくれ。もう、痛くて限界なんだ!言うことを聞いてくれ!顔から血の雨が降っているみたいでもう自分の顔も見たくない。もう一度俺に血の雨が降ったらその時は確実に俺は死ぬ。その姿をよく見ていてほしいんだ」
「……。分かった」
納得するとジュリアはクレインを起こそうと声をかける。何度か呼んでいるとクレインは目を覚ましジュリアの方を見る。
「ジュリアは何で縛られてるの?」
「吸血鬼にやられたのよ。ジャンが話したいそうよ」
クレインはジャンの方を見ると息を飲んだ。顔面が血だらけで顔を背けるとジュリアに怒られる。
「クレインよくジャンを見るのよ」
「何で?あんな姿見たくない」
「耳を閉じずにジャンの最後の言葉を聞いてあげてよ」
「……。…うん」
「なんだい……ジャン」
「最後の1%にかける。お前の矢で吸血鬼の頭を撃ち抜いてくれ!」
それを聞いた吸血鬼は大笑いした。
「いやいや、何を話すかと思いましたが、1%は諦めてなかったんですね。言っときますが集中していれば避けられますよ」
「1%の賭けを信じるよ」
「分かりました。そこの少年、私に矢を射ってみなさい」
クレインはゆっくりと矢を射つ準備を始めるが手は震え顔は泣きそうであった。そのクレインにジュリアは小さな声で助言するとピタリと震えは止まり顔もキリッとした表情になった。
「ジャン。僕を信じてくれてありがとう。3…2…」
1のカウント前にジャンとルサンの戦いに大きな変化が現れた。
「なに?!」
ジャンが木の縛りを抜けてルサンに飛びかかる。しかし、ルサンは反応よく攻撃を避け距離をとった。
「どうして抜けられる?!」
ルサンの問いかけには一切反応しないジャンは攻撃を唱えた。
「血伐流線 剣 一血閃」
「その攻撃は私には届かないと分かっているはずです!雷動きを止めてもう殺します!」
ジャンが唱えた瞬間、ジュリアは道具鞄から赤い液体の入った瓶を一つジャンに向かってなげた。
「クレイン!あの瓶を矢で射って!」
「ああ!任せろ!」
クレインの放った矢は瓶に命中してジャンの体に液体がかかる。その液体は生きているかのようにジャンの体全体に広がっていく。
「血を被って何がしたいんですか!」
「血鬼唱 流 雷爪」
ルサンはこれでまた倒れると思ったがジャンには全く効いていなくジャンの攻撃は続く。
「どうして?!」
それがルサンの最後の言葉だった。ルサンは首を切られ即死した。
「はぁはぁはぁ。俺たちの血は何か変だと思っていたが想像以上に変だった」
王女争奪戦参加のルサンは初日で戦死した。
やっぱり一から書き始めると1話5日くらいかかるね。