12話 A級吸血鬼の進化
【ジャン達が知っている吸血鬼の特性と能力と弱点】
1・昼までも行動できる(太陽に弱くない)
2・変身が出来る(A級以上)
3・家に招き入れられた時だけ血を吸える(勝手に入った時は吸えない)
4・変身以外に魔法のような能力を使える(S級の吸血鬼だけ)
5・ジャンとジュリアの血を飲むと死ぬ(血伐剣も同様の効果がある)
夕方6時
ジャン達3人は試験会場である旧王城から数十キロ離れた別荘地に移動していた。移動方法は蒸気機関車であった。理由はお金は気にしなくてよくなり、ただ乗りたかったというジュリアの思い付きだった。3人は別荘地に着くと別荘を即時現金で買い夜までくつろいだ。
夜9時
オイルランプを部屋中につけ、3人は玄関の外で座っている。別荘地にはよく吸血鬼が現れると噂になり誰も近付かなくなっていた。そのため明かりがついているのはジャン達の別荘だけである。弓使い・クレインは吸血鬼がこんなところに現れるかと思ったが2人が現れると言う。理由を聞くとジャン「吸血鬼にも試験がある」と言われた。「どう言うこと?」と聞いたがこれ以上は仲間になってからと言われ聞くのをやめた。
「ここまでの歩道にもガス灯もつけてもらったんだ。こんな分かりやすい誘いに乗ってこないはずがない」
「ガス灯のおかげで戦いやすいし分かりやすいね」
「急に襲ってはこないのか?」
「あいつらは人間を舐めている。大胆に現れて紳士的に挨拶するさ」
「本当か?」
「ほんと、……言ってるそばから姿が見えてきたね」
昨日殺したローズと同じタキシードを着た吸血鬼がやってくるのが分かった。3人は立ち上がり待つ。吸血鬼は話が聞こえるギリギリの距離を保ち話しかけてきた。
「君たちは銀の剣を持ってるね。おや、銀の弓まで持ってる子までいるじゃないか。僕は運がいいね」
「弓の情報も持っているのか、早いな。銀の剣は家の中にあるのによく分かったな」
ジャンとジュリアの使用する剣は血伐剣であり、銀の剣は部屋に置いていた。
「吸血鬼は人間より上なんだ、当たり前だよ。私たちは銀の剣を感じるように出来ているんですよ。それに今は大切な時期なんでね」
大切な時期とは王女争奪戦のことだと2人は確信しているがあえて言わなかった。
「大切な時期とは知らないが俺たちを今から殺すことには代わりないんだろ?」
「それはそうです。君たちは血伐隊に入って意気込んでるようだけどそれも今日で終わり」
「それは分からないさ。クレイン見ていてくれ俺が倒すから」
ジャンは血伐剣を両手で持ち戦闘態勢になる。
「面白いですね。私の名はルサン。名前を言うのは礼儀です。古い伝統ですが」
吸血鬼ルサンも爪を伸ばし戦闘態勢になる。ルサンはローズと違い右手の爪を全て伸ばし、指をクチバシのようにして合わせる。その爪は武器のランスのような形になっていた。
2人の呼吸が合う時戦闘は開始した。
始めに仕掛けたのはルサン。一歩目で最速に達しジャンとの間合いを詰める。
「(私のスピードにはついていけるんですね。私をちゃんと見ている。)」
最初の攻撃はランス爪を斜めに振り下ろす。その攻撃はジャンには効かず受け止めた。受け止められたルサンだったがそのまま腕に力をいれて押しきろうとした。
「ほーう、力もあるんですね。私も結構力をいれて押し込んでますが耐えてます」
「それはどうも、あまり舐めないほうがいい」
ジャンも力をいれてランス爪を弾き、ルサンとの距離が拡がる。
「では、連続ではどうでしょうか」
再び間合いを詰めてくるルサン。ランス爪を振り、それをジャンが受け止め血伐剣を振る。その後も守備と攻撃を交互に行うがどちらもダメージを受けていない。2人の剣術は互角であった。
クレインはその光景を見て驚いていた。
「吸血鬼を今まで倒したことがないのはよく分かったよ……。こんなに早いなんて思わなかった」
「猪を射つのなんて非じゃないでしょ」
「……確かに。でも、その吸血鬼と互角に戦っているジャンは何者なんだ?」
「何者って……。うーん、救世主だよ」
「……。かっこいい言葉を言いたい年頃ではないと思うけど。それであってるかも」
再び距離をとるジャンとルサン。
「僕はもう少しやりあっても良かったけど」
額の汗を拭うジャン。
「意外とやりますね」
この時、ルサンの脳裏にはあることが浮かんでいた。あり得ないことだと思っていたが、もしやと思ったこと。ただの吸血鬼同士の小競り合いだと思っていた朝の吸血鬼の死体。
「もしかしてですが。あなた方か吸血鬼を殺したんですか?」
「……。そうだ。俺たちが殺して吊し上げた」
「ほーう、それを聞いて納得しました。死んだ吸血鬼は下の者だったので色々疑いましたがそうでしたか」
「下の者ってことは何級なんだ?」
「ほほーう、これはこれはまた驚きました。吸血鬼を拷問したんですか?いや、それだと言い方が違いますか。私が何級かを聞いてくるはずですね。ということは昔から知っていたということですか」
「そうだ。知っていた」
「知っていた理由を聞きたいですね」
「まずはあんたが何級かを知りたいな」
「私はA級ですよ」
A級という言葉にジャンは高揚した。これでA級なら吸血鬼を倒せる確率がぐんと上がると考えたからだ。
「ということはお前は魔法のような能力を持っていないんだな」
その言葉にも驚いたルサンだったが安心した表情を見せる。
「あなた方の情報は10年は古いものですね。安心しました。現在スパイが吸血鬼の中にいると思いましたがいないようです」
「どういうことだ?」
「10年前はS級しか魔法のような能力は使えませんでしたが、私たちは進化をします。今ではA級でも魔法のような能力を使えるんですよ!」
「お前はまだまだ強くなるのか!」
「その通りです!見せてあげましょう。力を!」
ルサンは指を少し噛み血を出すと唱える。
「血鬼唱 棺 名はルサン 血を雷剣に変える」
ルサンの血が地面につくと血が広がり穴が出来る。その穴から剣が浮きながら出てきた。ルサンが剣を持つと剣全体が雷で纏われる。
「君は死にますよ!」
2人の戦いが再び始まる。