クエストを受ける『ルイス視点』
ルイスはアシェルを宿屋に置いて、一人ギルドに来た。
「なあなあ、あの娘可愛くね?」
「辞めとけ。エドルみたいになるぞ」
ルイスがギルドに入るとコソコソとそんな会話が聞こえてくる。
昨日の騒動はもう広まっているみたいだ。
しかしそんなことを気にすることもなく、ルイスは受付に向かっていた。
「ギルドカードを受け取りに来たわ」
「あっ、ルイスさん。分かりました。これがギルドカードです」
「ありがとうね」
ルイスが受け取ったギルドカードは、Eという文字が書かれており、緑色だった。
「ところで、アシェルくんは一緒じゃないんですか?」
マヤはギルドカードを渡した後、アシェルの事を訊いた。
「今日は休んでもらってるわ。朝に色々トレーニングして疲れちゃったからね」
「そうなんですか!」
「ええ。だから今日は私一人でクエストに受けようと思ってね」
「なるほど」
マヤは納得したようで頷いていた。その後はすっかり仕事モードに戻っていた。
「では、どんな仕事をお探しで?」
「そうね……。Dランクまでの依頼を受けれるのよね?」
「はい。そうですね。自分のランクの一個上までですから」
「なら、この依頼をもらうわ」
ルイスはそう言って、掲示板に貼ってあった一枚の紙を剥がした。
「オーク十体討伐……。これ本当に受けるんですか⁉︎」
マヤは予想にしていなかったクエストだったため、声が大きくなってしまった。
「受けれるんでしょ?」
「受けれますが、これは報酬が割に合わないと言うことで、渋々ランクを落としたクエストですよ」
「大丈夫よ。それでも一番報酬がいいのがコレだし。だからそれでお願い」
「わ、分かりました。ですが気をつけて下さいね」
「分かったわ」
心配するマヤは強く注意するが、ルイスはそれを聞き流す様にあしらった。
そのままクエストに向かうため、ギルドを出ようとした。
「嬢ちゃん。それ一人で受けるつもりか?」
ギルドの出口付近でルイスは三、四人の男達に捕まった。
「何?」
「俺たちがついていってやろうか。でもその分の報酬は貰うぜ」
そう言って男はルイスの体を舐め回す様に見てくる。
「気持ち悪い」
ルイスは一言放つと無視してクエストに向かおうとする。
「おい! なんだよその態度は!」
しかしその態度に腹を立てたのか、男達はルイスを怒鳴り散らかした。
「や、辞めたほうが……」
怒鳴った瞬間、遠くの方からそんなヤジが聞こえてきた。
昨日のエドルトの乱闘を見ている者だけは、ルイスの味方なのだろう。
「もう辞めれねえよ! 力尽くで奪ってやる!」
男はそう言ってルイスの方へと拳を掲げて走ってくる。
「危ない!」
ルイスは振り向かず、ただただ歩いているだけだった。
しかしその数秒後男達は見るも無残な姿でギルドの外に放り出されていた。
それのせいでギルドが騒がしくなるが、ルイスはそんなことを気にせず、オークの居る森へと向かった。
***
「これで十体っと」
ルイスはオークを見つけたら殴り倒す。それの繰り返しで1時間もかからない間で、オークを討伐してしまった。
「うーん……。どうしようかしらね」
戻るのが早すぎたら色々疑われそうだったので、少し寄り道することにした。
「あのガチャの所にでも行ってみようかしらね」
ちょうど同じ森だったため、ガチャを見に行くことにした。
「確か……ここだったはず」
草木を掻い潜って、ガチャがあったであろう場所に到着した。
「ガチャってこれよね?」
ちゃんとガチャがあったので、近くに寄って色々調べようとした。
そして、ガチャが触れられる距離まで近づいた時、一つの光に包まれた。
「きゃっ!」
そしてルイスは気を失った。
「起きなさい。ルイス」
「う、うーん……」
ルイスは自分を呼ぶ声で目が覚めた。
そこは星々の中にいる様な幻想的な世界だった。
その中で一人異様な空気を醸し出す人物が居た。
「け、賢者様!」
ルイスはそう大声でこの人物の名称を叫び、呆けていた。
「ルイス。今は時間がありません。簡潔に話します」
「は、はい!」
まだ状況を完璧に飲み込めていないルイスだったが、賢者様に強く言われたため従うしかなかった。
「まず初めに私が現れた事についてです。ここに貴方を呼んだ理由は世界を救って欲しいのです。あのアシェルという者と共に」
「世界を……救う?」
急のことで理解ができなかった。
「そうです。今は安全そうに見える世界も、もうすぐ終焉に向かう事になるでしょう。それを防いで欲しいのです」
「どの様にすれば?」
「まずは、このガチャで仲間を集めるのです。心強い仲間が来てくれるはずです。そして、悪事を働いている人を止めるのです」
「分かり……ました」
はっきり言うとまだ理解はできていない。
しかし世界を救えと言うのが賢者様の指示ならば従うしか無い。
そう思って賢者様の言葉に頷いた。
「今はまだアシェルの強化に努めてもらって構いません。しかし、それが終わり次第エトワール王国に行くと良いでしょう」
「エトワール王国ですか……」
エトワール王国とは、この国の首都だ。
今自分たちが居る街から、馬車で約五日ほどかかる決して近く無い場所だ。
「それでは、またいつか助言ができる日が来るかも知れません。その日まで」
「ありがとうございます!」
「最後に」
「はい。なんでしょう」
「成長しましたね。ルイス」
「……ありがたきお言葉」
ルイスは嬉しさのあまり返事するのが遅くなった。
それのせいか、言い終わる頃にはガチャの前に戻ってきていた。
あの賢者様に褒められる日が来るなんて、思ってもいなかった。
かつて無いほどの嬉しさがルイスを襲った。しかし喜んでもいられない。
賢者様に言われたことを実行しなければ。
(早く戻らないと)
そう思ったルイスは急いで街へと戻った。