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宿屋に到着

「ここが僕が泊まっている宿屋だよ」


 ギルドを後にした僕たちは宿屋にやってきた。

 その宿屋には大きな看板があり『勇凛』とでかでかと書かれている。


「へー。お金がない割には綺麗なところじゃない」

「うん。ここの女将さんが優しくて色々と安くしてくれてたりするんだ」

「ふぅん」


 少し話をしてから宿屋に入った。


「ただいま。リーナさん」

「あら、おかえりー、アシェル。……そちらの女性は?」

「えっと色々あって一緒に旅する仲間みたいな人です」

「ルイスよ。よろしく」

「ええ。よろしくね」


 ルイスの素っ気ない挨拶に対して、微笑みながら返すリーナさん。 

 リーナさんはここの女将さんをしている。

 

「じゃあリーナさんそういう事でもう一部屋借りれるかな?」

「ええ——」

「ちょっと待った」


 ルイスがリーナさんの言葉を遮って話を止めてきた。


「あんたお金ないんでしょ?」

「う、うん。でも二部屋借りるくらいのお金はあるよ」

「何日分?」

「えっと。三日分くらい……」

「そのままでいいわ」


 僕が大体の所持金を答えると、ルイスはリーナさんにそう言っていた。


「いやいや。流石にヤバいでしょ」

「何がよ。節約できるところで節約しないと」

「それはそうだけど……」


(いくらドラゴンとはいえ見た目は普通の女の子なんだよな)


「もう諦めたら?」


 僕が悩んでいるとリーナさんにそう言われた。


「で、でも……」

「ルイスちゃんも引く気ないわよ」


 リーナさんがそう言ったのでルイスの方を見てみると、階段の方へ向かっていた。


「ちょっとどこに行くの!」

「どこってアシェルの部屋に決まってるでしょ。リーナって人に場所は聞いたし」

「リーナさん!」

「お金がないのは事実だし良いんじゃない?」

「はあ……。分かりました」


 流されるまま部屋は変わらず一部屋になってしまった。



***



「少し狭いけど充分ね」


 ルイスは部屋を見渡して納得した様に頷いた。


「本当に良いの?」

「まだそんなこと言ってるの。お金が貯まれば二部屋借りれば良いでしょ。今は我慢よ」

「う、うん」


 まだ、納得はいってないけどお金はないし、ルイスの言葉に頷くしかなかった。


「それじゃあ、色々話しましょうか」


 部屋に常備されている椅子に座ったルイスはそう言った。僕も話が長くなると思ったのでベッドの上に座った。


「じゃあ【神器召喚】のスキル説明からお願い」

「分かったわ」


 そう言ってスキルの説明を始めた。


「まず前にも言った通りに、基礎能力や魔力量の上昇よ」

「それなんだけど。どうしてこんな名前のスキルなのに基礎能力とか上がるの?」


 名前的に武器を召喚して戦う様なスキルなのに。


「まぁそれは二つ目の効果を説明したらわかるわよ」

「へー」

「二つ目は武器を召喚するんだけど。

その中でも召喚できる武器は、神話や伝承に登場する武器だけなのよ」

「えっ! それってめちゃくちゃ強く無い?」


 そんな逸話を持った武器たちを召喚出来るなんて強すぎる。


「ええ。そうよ。だからスキルで能力を上げる必要があるのよ」

「……。どういうこと?」

「はぁ……」

「えっ! そんなダメなこと言った?」

「言ったわよ」


 ルイスは一つ大きなため息をついて、僕を呆れた様に見てくる。


「どんだけ努力しても人は神まで届かないでしょ。だからよ」

「あー! そういう事ね。それなら僕ももっと強くならなくちゃいけないって事だよね」

「ええ。1を二倍、三倍しても大して力はないけど」

「ひ、ひどい」

「でも、100を二倍、三倍したら相当な力になるでしょ」


 言い方は少しきついけどルイスの言ってる事は正論だ。素の僕の力を底上げしなきゃダメって事か。


「それの手助けの為に一つ目の能力がいるわけ」

「なるほどね」

「そして、それだけの力を手に入れた後、もう一つの関門があるわ。こっちの方が大変かもしれないわ」

「そ、それは……?」


 ルイスは脅かす様に言ってくるのでゴクリと唾を飲み込みながら聞いた。


「武器の召喚ね。私もその方法は知らないけど、死ぬ気でやらないと無理って賢者様が言ってくらいだしね」

「そうなんだ……」


 難しそうだけど仕方がないよね。楽して強い力が使えるなんてそんな都合のいい展開なんて、来るわけないし。

 スキルが手に入ったんだし、後は頑張ればなんとかなるんだ。

 それだけで僕は頑張ることができる。


「スキルの説明は大体終わりね。他に聞きたいことは?」

「大丈夫かな。訊きたいことは訊けたと思うし」


 また訊きたい事があったらいつでも訊けるしこれくらいで良いかな。


「ルイスは何かある?」

「そうね。最近のことはわからないけど、アシェルに訊くより街にいた方が色々情報は入りそうだし」

「……ルイスって何気に僕のこと信用してないよね」

「そ、そんなことはないわよ」

「何でそんなに動揺してるの?」


 ルイスは誤魔化す様に目線を横に逸らして、頬をポリポリとかいていた。


「まぁ、そんなことはどうでも良いんだけど」

「良くないけどね。——それでどうしたの?」


 ルイスは追い詰められバツが悪くなったのか、話を強引に戻してきた。


「私がいた時に比べて、人の魔力量が減ってるなって。いくらDランクでもあんなには弱くなかったはずだし」

「そうなんだ」

「何かあったの?」

「うーん」


 人が弱くなる様な出来事……か。昔話とかで考えれば良いのかな。

 そうやって少し頭を捻らせていると一つの出来事を思い出した。


「一個なら心当たりがある……かも」

「それは何?」

「えっと、何年か前に読んだ本に、丁度100年前、強い魔物がゴッソリ居なくなったって書いてあったんだ。だからそれのせいかも」

「ふーん……。じゃあドラゴンは?」

「見たことある人の方が珍しいと思うよ」

「…………」


 ルイスは僕の答えを聞いて拳を顎につけて考える様な仕草をしていた。


「なるほどね……。もしかして——」


 途中までは聞こえていたルイスの声も聞こえなくなった。その後も何か呟いていたが聞こえず一人で解決していた。


「何か分かったの?」

「まぁ。それはその時になったら話すわ。——私も取り敢えず訊きたい事はこれくらいかしらね」

「うん、分かった」


 ここで話がひと段落ついた。まぁお互い気になるところはあるだろうけど、取り敢えずはこれくらいで良いだろうって感じなのかな。


「じゃあお風呂に入って寝る?」

「お風呂に入るのは賛成ね。だけど、これから何するかを色々話さないといけないし、お風呂から出たらまた話しましょう」

「う、うん。そうだね」


 少し疲れていたけど、明日やることを決めておくことは大事だし仕方がないよね。

 そのため、先にお風呂に入ることにした。


「でもお風呂はこの部屋にあるやつの一つだけだから、先入って良いよ」

「そうなのね。ならありがたく入らせて貰うわ」

「着替えとかって持ってる?」

「ええ。確かこの中に……」


 そう言ってルイスが手を伸ばした方向には、空間が削れた様に丸く穴が開いていた。


「……ルイス。それ何?」

「ああ。これは収納魔法よ。両手も開くから便利よ。——あ、あったわ。それじゃあね」

「う、うん」


 ルイスが手を振ってくるので僕も手を振って見送った。

 最初に比べて驚く度合いは小さくなったけど、まだまだビックリする事ばかりだ。

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