ギルドに着いたら
「へー、アシェルの住んでる街ってここなのねー」
そう言って辺りを見渡すルイス。しかしその様子は、僕がこの街に始めて来た時とは少し違っていた。
「私がいた時より随分と変わってるわね」
「ルイスってこの街にいたの?」
「場所的にそうだと思うけど」
「へー、そうなんだ!」
なんか違うと思ったらそう言う事だったのか。
確かにガチャに一番近いのはこの街なんだし、来たことあってもおかしくないか。
「アシェルってさ今冒険者ランクどれくらいなの?」
街を眺めるのをやめたルイスはそう訊いてきた。
「……最低ランクのFだよ……」
冒険者ランクはF〜Sまであって最低のFにいると笑われると思ったからか、声は自然と小さくなっていた。
「そうだろうと思ったわ」
と、ルイスは呆れることもなく平然とした顔で返してきた。
「なんでそう思ったの? そんなに自信満々で言われると少し傷つくよ」
ルイスの言葉に対して、僕は少し落ち込んだ。
「ごめん、ごめん。でも帰りに魔物を見つけた時にめちゃくちゃ怯えてたでしょ。しかもあんな弱い魔物に」
『グサ』
心の中でそんな効果音が聞こえた気がした。ルイスの言っていることが正しくて、ぐうの音も出ない。
(自分では分かってたけど、他人に言われるとやっぱり傷つく。……まあルイスは人じゃないんだけど)
心の中でそんなくだらない事を考えていると、「でも」とルイスは付け足してきた。
「今まではスキルを持ってなかったんでしょ?」
「うん……」
「だけど、さっき【神器召喚】っていうスキルを手に入れた。だからアシェルはSランクまでいけるわ」
「本当!」
「ええ、でもそれ相応の努力は必要よ」
ルイスはそう言って微笑んだ。
僕がSランク冒険者に……。
「ありがとう! ルイス!」
「ちょっ!」
僕はいつのまにかルイスの手を掴んでそう言っていた。
「ありがとう! 色々教えくれて。おかげで希望が見えたよ」
「別に、大袈裟よ……。——それよりあれ、ギルドじゃないの?」
ルイスは無理矢理、話を変えて僕から見て右方向に指を指していた。
その方向には少し遠いけど、ギルドが見えていた。
話が変わると少し落ち着いた。Sランク冒険者になれると聞いて興奮していたみたいだ。
「なになに?」
「何かあったの?」
と周りから聞こえて来たので、周りを見てみると人だかりができてきた。
「ルイス。これってどういう……」
「どういうも何も、さっきのアシェルの声が大きくて人が集まってきたのよ」
「…………」
その瞬間、急に恥ずかしくなり、ルイスを引っ張ってその場を逃げるようにギルドに向かった。
(だからあの時ルイスは無理矢理、話を変えてたのか)
そんな事を今更気づきながら。
***
全速力で向かっていた為、思った以上に早くギルドに着いた。
「街は変わってるのにギルドはほとんど変わってないのね」
ギルドに入ったルイスの一言目がそれだった。
確かにギルドは結構古いけどもっと他に言う事ないのかな。
それから受付に向かうために歩いていると、ギルドの様子がおかしい事に気がついた。
(僕がギルドの中に入ってもいつもは見向きもされないのに、今はめちゃくちゃ視線を浴びてるんだけど)
その理由は考えるまでもなかった。
「うん? どうかしたの?」
僕がルイスの方へ見ても何も気にした様子はなく平然と歩いていた。
ライスを見習おうと、僕も気にせずルイスについて行こうとに歩いていると、横から「よう!」と誰かに呼ばれた。
「エドルさん……」
僕がそう言って見た方向には、図体がでかく、大きな剣を腰につけている男が立っていた。
「アシェル。お前、今日も薬草採取か?」
「う、うん……。そうだけど」
僕に話しかけてきた男はエドルという。
万年Fランクの僕を見てはちょっかいをかけてくる。今回も多分そんな事だろう。そう思いながらエドルの話を聞いた。
「あんな可愛い娘どこで見つけたんだよ」
そう言ってルイスを指差した。
それに対してルイスはあからさまに嫌な顔をしていた。
「ちょっと指差すのはやめた方が……」
ルイスを怒らせたら何が起こるかわからないので、やめさせようとエドルを注意した。
「なんだお前! 可愛い娘とったからって良い気になってんのかよ!」
いつも通りに話したつもりがエドルには気に障ったらしく、怒ってきた。
完全な逆ギレだ。
そして別の所へ行ったので終わりかと思ったら、エドルはルイスの方へ一直線で向かっていった。
「なあなあ、お嬢ちゃん。あんな奴とじゃなくて俺と一緒に居ようぜ」
「あんた誰?」
「俺はDランク冒険者のエドルだ。こいつなんか万年最低ランクなんだぜ。それよりマシだろ」
ルイスにそんな事を言うエドル。僕と話していた時と口調が変わっていた。
その言葉を聞いたルイスは少し怒ったように
「嫌よ! あんたよりアルトの方が何倍も強いわよ」
と、言った。
さっきの指差しと言い怒りが溜まってたみたいだ。
でもさっきおかしい事を言っていた。
「は! こいつが俺より強いわけないだろ」
「ぼくもそう思う」
僕がエドルより強いわけがない。腹立つけど認めるしかない。強かったらこんなことされ続けてない。そんな事ををルイスに伝えると、
「大丈夫よ。今まではスキルがなかったからでしょ。でも、あのガチャで手に入れたんだから勝てるわよ」
「ええ! そんな事あり得るのかな……」
僕は自信が持てず小さく呟く。
「あり得るのよ。【神々の加護】は難しい魔法ばかりだけど、一個だけ使える能力があるから」
「そうなの⁉︎」
確かに一つでも魔法を使えたら少しはやり合えるかもしれない。
そんな事を話していると、エドルが話しかけてきた。
「おい! じゃあ勝負しようぜ。俺とアシェルで。俺が勝ったらその娘を貰うぜ」
「私はいいわよ」
今まではエドルに話しかけられても嫌な顔をしていたルイスが、今は不敵に笑っていた。
「えー! そんなこと言われても。実戦は早いよ」
「大丈夫だから自信持ちなさい!」
「わ、わかった……」
そう促されて、エドルと勝負することになった。でも本当に勝てるのかな……。
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