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プロローグ

頑張って毎日投稿しますので、よろしくお願いします。


 胸から生えた銀の輝きを目にした時、クロアは理解した。

 仲間達の裏切り、そして己の終わりを。


 剣を握る人間の英雄が懺悔するように言葉を吐き出す。


 「クロア、君は紛れもなく我々の中で最も強き者だった。恐らくは我々四人が束になろうと、君には届かなかっただろう・・・今、君が深く傷ついているこの瞬間を除いて」


 「何を・・・言っている!」


 剣が引き抜かれ、栓を抜いたように血が吹き出す。振り向き際に攻撃を放つが、既に敵の姿は残っていない。

 直後、闇色の泥人形達がクロアに纏わりついてきた。


 「これは・・・」


 「《厄災神》が居なくなった後の世界、共通の敵を失った私達が手と手を取り合う為に、貴方達、龍族は邪魔なのよ」


 夜の睦言のように囁く魔族の王、彼女が残った隻腕でクロアの動きを封じる為の魔法陣を組んでいた。

 その気になれば、一国の軍隊を丸ごと操り人形に出来るほどの力がクロアの肉体を拘束する。


 「邪魔だと?龍族が何をしたっていうんだ!」


 怒りと共にクロアの周囲に力が満ち始める、が、それはすぐに霧散してしまう。


 「何もしていないわ。けれど、貴方達の力は強すぎる。大きすぎる力は存在するだけで拮抗を崩す」


 妖精族の賢者が諭すように言った。

 彼女の妖力がクロアの力を散らしたのだ。


 「可能性で、俺達を終わらせるつもりか!」


 泥人形を打ち砕き、満身創痍の肉体を引きずって仲間だった者達へと足を進める。

 勝ち目は無い、だが、一人でも多くを道連れにしてみせる。

 しかし、無情にもその身体を無数の光の槍が撃ち抜いた。


 「グッ」


 「幾らでも非難してくれて構わないよ。だが、拮抗のみが許す調和というものが存在する事を知っておいて欲しい。

 四種族が力を合わせなければ対抗出来ない、そんな力を持つ種族が存在していては、力関係が歪んでしまうのだ」


 天霊族の巫女が神託のように告げる。

 彼女の周囲に浮かぶ光球は、彼女の意思に従い、その姿を鎖に変えるとクロアを縛った。


 「この程度で!」


 鎖を千切ろうとした瞬間、巨大な一本の槍によって胸を貫かれ、クロアは夥しい量の血を吐き出して、項垂れた。


 「・・・言い残す言葉はあるか?」


 英雄が剣を突き付ける。周りでは各種族の頂点達がクロアの一挙手一投足から目を離すまいと睨む。

 万事休すーーそう悟り、龍族の奇跡と呼ばれた男は笑った。


 「何も・・・ないな」




 遥か昔、後に《厄災神》と呼ばれる存在がこの世界に産まれ落ちた。

 《厄災神》は産まれた時から、全身に消える事のない『黒炎』を纏っており、その炎は自らを産んだ母親を始めとして、焼いた物全てを《厄災神》の眷属として作り替えた。

 

 そして、自らの産まれた村全てを『黒炎』で焼き尽くした《厄災神》はいつしか、世界の半分を『黒炎』で飲み込んだ。


 このまま、《厄災神》に飲み込まれるのを待つしか無いのか、と。

 世界が絶望に包まれた時、立ち上がったのは五人の勇者だった。

 

 一人の犠牲を出しながらも、見事に《厄災神》を討ち果たした、後の世で『抗いし者達レジスタンス』と呼ばれる事になる彼らの名はその功績と共に、世界の中央に存在する巨大な石碑に刻まれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『英雄』 アルス・ウェスタ


 『魔王』 ジャガーノート


 『賢者』 エルフ・ディオ・フローネ


 『導者』 オリオン・アヴローラ


 『奇跡』 クロア・エリトニオス



 《厄災神》を討伐せし者達の名をここに刻む

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この物語はここから五千年後、少数の龍族の暮らす小さな村に一人の少年が振ってきた所から始まる。



 「ねえ、何か落ちてきたよ?」


 少女が両親に振り返る。


 「どこに落ちたんだい?」


 父親に聞かれた少女が、窓の方に指を差す。


 「庭に」


 「庭?何か落ちた音なんて聞こえなかったけどなぁ」


 母親が料理を中断して、振り返る。


 「一応、見に行ってきたら?」


 「私も行く」


 「はいはい、服を着ていきなさいね」


 父親と少女が裏口から庭に出ると、背の短い芝生の生え揃う庭の中央に月明かりに照らされた少年の姿がみえた。


 「おい、大丈夫か君!?」


 男性が走って近寄る。近づいて見てみると、少年の姿は燦々たる有様だった。

 全身は血塗れ、身体のあちこちには多くの傷跡があり、特に胸の数が酷い。


 「生きてる・・・の?」


 「ッ、今は生きているが、このままでは死んでしまう。ユウナ、お母さんに頼んで医療セットを持ってきてくれ!」


 「分かった!」


 少女が走って家の中に戻っていくと、意識を失っていた少年が呻く。


 「意識が戻ったのか!無理をするなよ、絶対に助けてやるからな!」


 「あ・・な、た・・・は?」


 「私は、ベン・アルバート。医者だ。君は?」


 医療行為は意識があった方がやりやすい。その基本に従ってベンが尋ねる。考え事をさせて、意識を保たせ続けるためだ。

 少年が答える。

 

 「クロ、ア、エリ・・・トニオ、ス」


 

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