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<ホド編 第2章> 65.災後

<本話の登場人物(レヴルストラメンバー以外)>

【ラファエル】:ホドの守護天使。黒いスーツに身を包んだ金髪の女性の姿をしている。

 65.災後


 ――ヴィマナ――


「本船を固定しているアースウォールの破壊は全て完了です」


 リュクスの報告を受けてスノウたちはスクリーンに映し出された周辺海域を見た。

 これから素市(もとし)へ向かうのだが、その前に瑜伽変容(ゆがへんよう)を経てホドの世界がどうなったのかを知っておく必要があるためだった。

 そこには昨日までとは違う全く別世界が広がっていた。


 甲羅の心臓と化したロン・ギボールは依然として同じ場所にいた。

 上空1000メートル付近に巨大な甲羅状の球体があり、それを支える4本の長い足が海底まで伸びている状態だ。

 甲羅のあちこちから伸びているハノキアの異世界へと繋がるはずだった管は途中で切れてしまったのか、甲羅の心臓から垂れ下がっている。


 そして何より全員を驚かせたのは、海水面が下がったことで顕になった陸地だった。

 かなりの距離があるためか霞んでいてはっきりとは見えないが、周囲に陸地が取り囲むように続いている。

 全域が海であったホドは湾というより陸地に囲まれた超巨大な湖のような状態になっていたのだ。

 ヴィマナの位置からはホドカンの状態を確認することは出来なかったが、海面に浮いている構造ではないホドカンは海水面が下がったことで隆起したように見えるはずだった。

 ヴィマナであれば転送が可能なため、ホドカンへの出入りは容易だが、通常の船での出入りはほぼ不可能とみていい。


 「随分と変わり果てたホドの探索はいずれ行うとして、まずは素市(もとし)にいる仲間と合流だ。リュクス、素市(もとし)までの航路は確保できそうか?」

 「海水面の低下影響をこれまでの航行で得た海底形状データと照合した結果、ヴィマナが航行不能となる場所は確認出来ませんでした。結論としては素市(もとし)緋市(あけし)蒼市(そうし)漆市(しつし)への航行は問題なく行えます。留意すべき点はホドカン間を結ぶ列車のアレトガの線路がおそらく破損していることかと推測されます。破損している場合、航行の妨げになるため撤去が必要です」

 「分かった。アレトガの線路に気をつけて素市(もとし)に向かってくれ」

 「承知しました、スノウ船長」


 ヴィマナは素市(もとし)に向かって進み始めた。


 ――素市(もとし)――


 素市(もとし)の状態は瑜伽変容(ゆがへんよう)前から然程変化はなかった。

 甲羅の心臓から傾れ込んできた大量の海水で生じた巨大津波からホドカンを守るための巨大な障壁がそのまま残っているだけで、その殆どがグルトネイによって破壊された状態だった。

 幸いなことに復興に向けて建てた家やライフラインはそのまま残っており、ダンジョン51階層に避難している住民たちの一部が地上に戻ってくることが出来た。

 ワサンたちは復興作業が出来る者を中心に地上へと連れてきた。

 久しぶりの地上に期待感を膨らませていた住民たちはかつての素市(もとし)から大きく変わってしまった街の風景に絶望したが、新たに建てられた家々や部分的に機能しているライフラインを確認すると、街の復興に向けて希望と意欲を取り戻した。


 「間も無くヴィマナがここへ到着するはずです。スノウ達と合流したら次の行動を決めましょう。それまでは現在の資材等で出来る復興作業を行いましょうか」


 レヴルストラメンバーはソニックの指示に頷き、復興作業を手伝うこととした。

 皆、アリオクが無事に戻ってきたことを喜び、詳細はスノウ達と合流してからとなった。

 アリオクも復興作業を手伝うことになったが、ロムロナは恐怖すべき存在の魔王が人間の生活を確保するための復興作業を手伝っている目の前の光景が信じられずにいた。


 「ねぇソニックボウヤ」

 「何ですか?」

 「あのアリオクくんは本当に魔王よねぇ?」

 「ええ、そうですけど」

 「そうよねぇ。あの禍々しいオーラは間違いなく魔王なんだけど、なんであたしたちと行動を共にして、こんなニンゲン社会の復興作業を手伝ってくれているのかしら。しかもあんなニンゲンみたいな姿のまま」

 「さぁ‥‥考えたこともないですけど、僕らの仲間だから‥‥ですかね」

 「仲間ねぇ。何で魔王があたしたちの仲間になったわけ?魔王に何か得でもあるのかしらねぇ。基本的に欲求を餌に人族を利用して彼らの目的を果たす生き物だから、ニンゲンなんて利用価値があるかないかだけの存在でしかなくて、救う救わないという概念が全く当てはまらないはずなのにねぇ」

 「さぁ‥‥僕には分かりません。スノウが彼を仲間だと認めたということは仲間なんですよね。彼にどんな目的があって、僕らを利用しているのかはあまり興味がないです。もしスノウが彼を認めていなければ話は別ですけどね」

 「またスノウボウヤ基準か‥‥本当にみんなスノウボウヤを信用しているのねぇ‥‥」

 「当たり前です。僕らのマスターですからね。精神的に繋がっているというか、理屈じゃないんですよね。おっと、この手の話になると姉が話したがるので、このくらいにしましょう」


 ソニックは復興作業に戻っていった。


 (スノウボウヤに一体何があったのかしらねぇ)


 複雑な笑みを浮かべながらロムロナも復興作業に戻っていった。


 ・・・・・

 ――1日後――


 ヴィマナが素市(もとし)への転送可能域に到着した。

 航行可能高度範囲が狭まったことで、安全な航路がどこかを確認しながら進んできたため、到着が遅くなったのだった。


 キィィィィィィィィン‥‥


 スノウ達が素市(もとし)の復興エリアに転送してきた。


「マスター!」

「スノウ!」


 フランシアたちはスノウのところに駆け寄った。


 「みんな無事だったみたいだな。街の復興エリアも破壊されていない。とりあえず一人も欠けずに街を守り切ってくれてありがとう」


 スノウの言葉に皆誇らしげな表情を見せた。


 「ヴィマナには緋市(あけし)から調達した建設資材が積んである。リュクスに転送させるから、資材置き場を作っておけ」


 シルゼヴァは素市(もとし)の復興作業チームに依頼した。


 「おれ達はヴィマナに戻って作戦会議を行いたいと思う。アリオクが戻ってきてくれたことで情報も増えた。ロン・ギボールの動きを踏まえアレックスを救う作戦を立てたい。10分後に集合だ」

 『おう!』


 ・・・・・


 ――ヴィマナ会議室――


 ヴィマナの会議室にスノウ、フランシア、ソニック、ロムロナ、ワサン、シンザ、ルナリ、シルゼヴァ、ヘラクレス、アリオクが集まっていた。

 ガースは機関室をみているため欠席となっているが、久しぶりのレヴルストラ全員集結となった。


 「まずはあのロン・ギボールの状態、あれに一体何が起こっているのかをアリオクから説明してもらいたい。その上でアレックスをどう救うのかについてみんなと議論して作戦を組み立てたい」


 スノウの言葉に皆頷くとアリオクが話し始めた。


 「俺はこのホドへ越界した直後、魔王のオーラを感じた。その魔王とはアドラメレク。彼はこのホドを根城にしている魔王であり、貪欲の権化だ。海しかないこのホドに飽き飽きしていた彼はホドを留守にしがちだったのだが、珍しくホドに滞在していたため、俺はアドラメレクに接触した。いきなり攻撃されたがな」

 「あんたも魔王だろ?アドラメレクとはどっちが格上なんだ?」


 ワサンが無邪気に質問したが、その様子をロムロナは目を丸めて緊張しながら聞いていた。


 「格とは強さとは関係ないから回答になっているのか分からないが、同格とみてもらっていいだろう。魔王となった時に格が決まる。その格が俺とアドラメレクは同格なのだ。戦闘力で言えばアドラメレクの方が強いと思う。俺は魔王といっても単独行動をとっている。軍は保有していないし、管轄している世界や区域もない。戦えば総力戦となり負けるだろうな。1対1であれば分からないがな」

 「なるほど‥‥」


 アリオクはそのまま話を続ける。


 「その後、アドラメレクが結界を作ってロン・ギボールを閉じ込めていることに気づいた俺はふたたび彼に接触したのだ。彼はすでに瑜伽変容(ゆがへんよう)を発動し始めていたから、俺は彼から情報を得る目的を瑜伽変容(ゆがへんよう)を止めることに変更して戦闘覚悟で接触した。案の定戦闘となり、そこにスノウがやって来たというわけだ」

 「あの時か」

 「瑜伽変容(ゆがへんよう)というのは何なのですか?」


 ソニックが質問した。


 「瑜伽変容(ゆがへんよう)‥‥。ハノキアのそれぞれの世界には必ずその世界を守護する存在がいる。ホドでいえばロン・ギボールがそれに当たる。他の世界の守護の存在は口にしてはならないという契約があるために言えない。その守護の存在とは元々は “とある存在” の体の一部なのだ。その体の一部をハノキアの各世界に根付かせるために、コアを抜いた状態にしてある。コアと器に分けたということだ。そしてホドで言えば、器はロン・ギボール、コアはアレックスということになる」

 『!!』

 「瑜伽(ゆがへんよう)とはハノキアの各世界に散らばった器とコアが融合し、“とある存在” の体の部位に戻り、さらに全ての体の部位や器官が元の状態に戻っていくことを指すのだ」


 皆アリオクの話している内容が難しく理解に苦しんでいたが、アレックスについては何となく理解した。


 「アレックスは瑜伽変容(ゆがへんよう)の影響で贄になっているんだ。アレックスを救い出すためにはまず瑜伽変容(ゆがへんよう)ってやつを止める必要があった。運良くこの世界の守護天使であるラファエルがおれにコンタクトしてきたことで、止めることが出来たんだが、あの通り中途半端な状態だ。今あの状態からアレックスを救い出すことはできないらしい。アレックスを救い出す術はラファエルから聞き出さなければならないという話だ」


 皆何となく話を理解した。


 「アレックスボウヤを救うにはラファエルから情報を得る‥‥あの黒服の女ねぇ。イマイチ信用ならない存在だけどねぇ‥‥」

 「その “とある存在” というのは誰なんですか?」


 ソニックの質問にアリオクが反応した。


 「それは言えない。言えば俺の存在が消える。だが、ハノキア全世界に跨って影響している存在だ。それだけでも相当な存在なのだと理解出来るだろう」

 「逆にそんなのがいるのが信じられないといった感じですね‥‥でもとりあえず僕らが今やるべきことはラファエルに接触してアレックスさんを救出する方法を聞いて、それをベースに作戦を立てるということですね」

 「その通りだソニック。ラファエルはおれに約束した。瑜伽変容(へんよう)を止めることはやつの要望でもあったからな。おれにアレックスを救う方法を教えることを約束してもらっている。この後ラファエルを呼び出そうと思う」


 「呼び出すなどと‥‥悪魔のように扱うのは良い行いではありませんね」


 『!!』


 突如スノウの背後に黒いスーツを着た金髪の女性が出現した。

 ホドの守護天使ラファエルだった。


 「約束を果たしに来ました」


 一同はあまりの荘厳なオーラを前に言葉を発することができないでいた。



いつも読んでくださって本当にありがとうございます。

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