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<ホド編 第2章> 63.海の怒り

<レヴルストラメンバー>

・スノウ:レヴルストラのリーダーで本編の主人公。ヴィマナの船長。

・フランシア:謎多き女性。スノウをマスターと慕っている。どこか人の心が欠けている。ヴィマナのチーフガーディアン。

・ソニック/ソニア:ひとつ体を双子の姉弟で共有している存在。音熱、音氷魔法を使う。フィマナの副船長兼料理長。

・ワサン:根源種で元々は狼の獣人だったが、とある老人に人間の姿へと変えられた。ヴィマナのソナー技師。

・シンザ:ゲブラーで仲間となった。潜入調査に長けている。ヴィマナの諜報員兼副料理長。

・ルナリ:ホムンクルスに負の情念のエネルギーが融合した存在。シンザに無償の愛を抱いている。ヴィマナのカウンセラー。

・ヘラクレス:ケテルで仲間になった怪力の半神。魔法は不得意。ヴィマナのガーディアン。

・シルゼヴァ:で仲間になった驚異的な強さを誇る半神。ヴィマナのチーフエンジニア。

・アリオク:ケセドで仲間になった魔王。瑜伽変容ゆがへんようを止めるべくアドラメレクと戦っていた。

・ロムロナ:ホドで最初に仲間となったイルカの亞人。拷問好き。ヴィマナの操舵手。

・ガース:ホドで最初に仲間になった人間。ヴィマナの機関士。ヴィマナのエンジニア。

63.海の怒り


 バリボゴォォォォン!!


 甲羅が割れ、直径100メートルほどの大きな穴が開き、そこから大量の海水が滝のように流れ始めた。

 空に続いている異世界へと続く水の管も徐々に薄れて消え始めた一方で、ホドの干上がった海域に凄まじい勢いで海水が流れ込んでいく。

 

 ドッゴォォォォォン!!


 海底やホドカンを支える崖に激しい大量の海水の衝撃が襲う。

 

 「まずいな‥‥あんなのがホドカンの土台に何度も当たればホドカンが崩壊しそうだ‥‥。ラファエル、必ず約束は守ってもらう。あんたに会うためにはどうすればいい?」

 「心の中で呼び掛ければ私に届くはずです。そうすればすぐさま駆けつけるでしょう」

 「信じていいんだな?」

 「悪魔のように扱ってはなりませんよ、スノウ・ウルスラグナ。天使は裏切りません」


 表情を変えずにスノウは素市(もとし)へと向かった。

 スノウが移動している間も大量の海水が流れ込んでおり、超巨大な津波が四方八方に広がり、凄まじい畝りを発生させている。

 海面は半分程度まで戻っているが、太陽フレアのように畝り跳ねている海面はホドカンを包み込まんとするほどの大波を形成し始めている。

 

 ヒュゥゥゥゥゥゥン‥‥スタ‥


 「スノウボウヤ!」

 「何とか瑜伽変容(ゆがへんよう)の完遂を止めることができた」


 素市(もとし)に展開された巨大障壁の縁に降り立ったスノウはそこにいるフランシア、アリオク、ロムロナに険しい表情で言った。

 

 「だが、見ての通りの状況だ。あの亀の甲羅に開いた穴から大量に海水が吹き出している。その影響でとんでもない量の海水が凄まじい力とともにホドカンを襲ってくるはずだ」

 「ホドカンを支えている壁面の岩も守らなければならないだろう。ホドカンほどの重さを支えている支柱の役目を果たしている土台が海水の凄まじいパワーで打たれる場合、土台が削られるか大きな亀裂が入るか、いずれにせよホドカンを支えられなくなる危険性がある」

 「役に立つか分からないけど、バリアを拡大してはどう?」

 「それしか思いつかないな。さっそく取り掛かろう」


 スノウ、フランシア、アリオク、ロムロナはエレメント系の巨大な壁をホドカンの下部にある岩壁の一体に形成した。


 「流石は魔王ねアリオクくん。エレメントウォールの強度が格段に上がったわよぉ」

 「いや、これでも十分ではないだろう。ロン・ギボールの体に取り込まれた海水だ。簡単に止められる力ではない」

 「万事休すね」

 「他のホドカンも危険だな」

 「素市(もとし)以外は多少距離が離れている。被害は免れないだろうが、壊滅することはないだろう」

 「素市(もとし)が最も危険なのか」

 「ヴィマナは大丈夫なのかなぁ」

 「!」


 ロムロナの不安の言葉が出るまでスノウはヴィマナのことを忘れていた。

 シルゼヴァに任せていたので安心しきっていたのだが、流石にこの状況でヴィマナが無事なのかは分からないと改めて気づいた。


 「すまない、おれはヴィマナを見てくる。ここは任せていいか?」

 「大丈夫ですマスター!お気をつけて!」


 フランシアの言葉の後、アリオク、ロムロナも頷いた。

 それを確認したスノウは凄まじい速さで緋市(あけし)に向けて飛んでいった。


 「スノウボウヤ、全く忙しいわねぇ。でもこんな困難に狼狽えもせずに立ち回るんだから大したものだわ」

 

 小さくなっていくスノウの姿を見ながらロムロナが言った。


 ヒュゥゥゥゥゥン‥‥


 「あそこか!」


 海面からヴィマナの影が見えた。

 海底の岩壁を背にしてヴィマナをアースウォールで固定し、甲羅の心臓方向には素市(もとし)に展開しているエレメントウォール同様に防御壁を形成していた。


 「リュクス聞こえるか?」

 “はい、スノウ船長”

 「無事か?」

 “今のところ損傷箇所はありません。海水がヴィマナ航行水位を下回る危険があったため、シルゼヴァチーフの指揮のもとヴィマナを岩壁に固定しました。そして、これから発生するであろう巨大な津波や海水の衝撃を防ぐ防御壁を展開しています”

 (流石シルゼヴァだ‥‥)


 スノウは安心した。


 「それで、防ぎ切る確率は?」

 “58%です。その場合、ヴィマナは航行不能となる確率が30%を超えることになります”

 「これだけのことをやってもその確率か」

 “現在さらに防御壁を分厚く展開しております”

 「分かった。おれも防御壁の展開に参加する」

 “承知しました。クルーの皆さんにお伝えします”


 スノウはリゾーマタの空気系クラス1魔法のオキシプレスで圧縮空気を自身の頭部に形成するとそのまま海へ潜って行った。


 (スノウか)


 シルゼヴァがヴィマナを囲むように防御壁を展開していた。


 (手伝おう)

 (助かる。防御壁の厚みを倍以上にしなければならない)


 スノウとシルゼヴァはジェスチャーで会話した。


 (魔法で防御壁を形成し、それをルナリの負の情念のエネルギーで強固な状態へと変質させている。だが、バリアの形成に時間がかかるため、間に合わない可能性があるのだ)

 (了解だ)


 スノウは防御壁を形成し始めた。


 (どうやら時間切れのようだ)


 シルゼヴァが指差した方向を見ると、凄まじい勢いの海流の畝りが襲ってくるのが見えた。

 その上の海面には超巨大な津波が襲ってきている。


 (リュクス、シルゼヴァとルナリをヴィマナへ転送しろ)

 (承知しました。スノウ船長は?)

 (おれはここでなんとか食い止める)

 (承知しました)

 

 スノウは左手でアースウォールを展開し、右手でリゾーマタの爆裂系クラス4魔法アトミックデトネーションを発動した。

 スノウの右手から放たれた爆裂魔法は強烈な海流の畝りに向かって進んでいき、凄まじい爆発を巻き起こした。

 だが、海流の畝りは一瞬切れたもののその力を失うことなくすぐに凄まじい勢いでスノウとヴィマナに向かって迫ってくる。

 まるで海の怒りのようだった。


 (面白ぇ!)


 とてつもないプレッシャーに襲われたスノウは負けてたまるか、という思いが込み上げ、全身に力が漲るのを感じつつアトミックデトネーションを連発した。

 凄まじい爆発で海流の畝りと爆裂魔法がぶつかっている場所の海面にいくつもの水の柱が立ち上った。

 超巨大な津波は割れて崩れていくが、その勢いは失われていない。

 ロン・ギボールの力に触れた海流の畝りは通常のそれとは桁違いの力を有していた。


 (うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)


 さらなるアトミックデトネーションの連発で海流の畝りが押さえ込まれてきた。

 海流の畝りが容赦無く突き進んでくるが、スノウの放った爆裂魔法で先へ進むことが出来ない。


 (押さえ込んだか?!)


 安堵しつつあったスノウは次の瞬間死を覚悟した。

 海流の畝りの周囲から別の畝りが襲いかかってきたのだ。

 

 (マジか‥‥)

 (諦めるとは情けないぞスノウ)

 (この程度で何意気消沈しているのか)


 スノウの両隣にシルゼヴァとルナリが現れた。

 シルゼヴァの指示で二人が転送されたのだ。


 (お前ら!)

 (さて、障壁は任せたぞスノウ。俺たちはあの畝りを潰す)

 (おう!)


 シルゼヴァとルナリは好き放題暴れまくるように魔法と負の情念の攻撃を複数の海竜に向けて放った。

 それでも襲いかかってくる海流の畝りがヴィマナに届く寸前。


 (リュクス、転送だ。俺たち3人をヴィマナに送れ)

 (承知しました)


 海竜の畝りに飲まれる直前、スノウ、シルゼヴァ、ルナリはヴィマナに転送された。


 ズン‥


 「スクリーン!」


 ブリッジに転送されたスノウはスクリーンに状況を映し出すよう指示した。


 ズガガガガガガガガ!!!


 凄まじい振動がヴィマナに響く。

 一同はバランスを崩すがスクリーンからは目を離していない。

 

 「リュクス!障壁の残存状況は?!」

 「第1波の衝突で37%を消失。巨大な海流の畝りは残り2波です。計算上ではヴィマナに大きな損傷が発生する確率が48%です」

 「リュクスもう一度おれを海中へ転送しろ!」

 

 ガシ!


 「リュクス、キャンセルだ」

 

 スノウの肩を掴んで言ったのはシルゼヴァだった。

 

 「スノウ、大丈夫だ。耐えられる」

 「しかし!」

 「スノウ、問題ない。シルゼヴァ、我、そしてお前が作った障壁だ。そう易々と壊されまい」

 「そういうことだ」


 ルナリとシルゼヴァは自信溢れた笑みで言った。


 「分かった」


 スノウはそう言うとスクリーンに目を向けた。


 「第2波が来ます」


 ズガガガガガガガガガガガァァァン!

 

 ふたたびヴィマナが大きく揺れる。


 「続けて第3波が来ます」

 (耐えてくれ‥‥)


 ズガガガガガガガガガガガァァァァァン!!


 これまでで最も大きな振動がヴィマナを襲った。


 「リュクス!報告だ!」

 「障壁完全に崩壊。ヴィマナへの影響‥‥特に大きな損傷はなし。棚から皿が落ちて割れた程度です」

 「ふぅ‥‥」


 スノウは胸を撫で下ろした。


 ポン‥


 シルゼヴァは何も言わずに笑顔でスノウの肩に手を乗せた。


・・・・・


 一方、素市(もとし)ではアリオク、フランシア、ロムロナが迫り来る津波と海流の畝りに備えてエレメントウォールを重ねがけていた。


 「第1波が来るわ!」

 

 フランシアの言葉にアリオクとロムロナは急ぎ何度もバリアオブアースウォールとバリアオブウォータウォールを重ねがけ、最後にフレイムウォールを展開した。

 それを待たせるかと言わんばかりに、超巨大な津波が複雑な畝りとともに襲ってきた。


 「海が怒っているわぁ‥‥」


 ロムロナが恐怖の表情を見せつつ言った直後、超巨大津波がフレイムウォールの障壁を襲った。

 

 バシュォォォォォォ!!


 フレイムウォールの熱によって海水が蒸発する。

 だが、その威力はおさまることなく、障壁に激突した。


 バギバギバギバギ!!ビギギギン!!


 一気に障壁に大きな亀裂が入っていく。


 「第2波が来るわ!そのあとすぐに第3波が来る!」

 「壁が持たないわよぉ!」

 「魔法で補強するんだ!俺はあの海流を何とか剣で防いでみる!」

 

 ロムロナとフランシアはバリアオブアースウォールの壁を展開するが、補強するが時間がないため壁の厚みが薄くなってしまう。


 「これじゃぁ焼石に水だわよぉ!」

 「無いよりマシだわ!魔力緩めないでロムロナ!」


 必死に障壁展開している二人に対し、アリオクは第2波の前に立ちはだかり、魔刀獅子玄常(ししげんじょう)を構えていた。


 ブワン!!


 アリオクの凄まじい一振りが飛ぶ斬撃となって第2波の超巨大津波に向かって放たれた。


 ドッゴォォォン!!


 凄まじい斬撃の衝撃波によって超巨大な津波が真っ二つに割れていく。

 

 「やったわ!」

 「いや、ダメだ!ロン・ギボールの力が込められている津波だ。抑えきれない!」

 

 魔王アリオクの力をもってしても超巨大な津波は抑え込むことが出来ないでいた。


 ドッゴォォォォォォォン!!


 第2波の超巨大津波が障壁を破壊し、素市(もとし)を支える岩壁に打ちつけた。

 

 ドゴゴゴゴゴォォォォォォ‥‥


 巨大な都市ホドカンが揺れる。

 

 「第3波が来る!」

 「バリアはないわよぉ!」

 「仕方あるまい!出来る限り足掻いてみせよう!」


 アリオクが獅子玄常を構えて再度超巨大津波に向かって飛ぶ斬撃を放とうとした瞬間。

 

「アブソリュート・ゼロ最大出力!」


 キュィィィィン!!

 バギバギパキパキパキパキパキィィィィィン!!


 突如目の前まで迫っていた第3波の超巨大津波が凍りついた。


 『!!』


 アリオク、フランシア、ロムロナの3人は驚いた表情で背後を見た。

 そこにいたのは体にマダラを巻きつけたソニックだった。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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