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<ホド編 第2章> 48.扉

48.扉


 スノウ、フランシア、シンザ、ルナリはグルトネイの上空300メートル以上離れた状態で浮遊している。

 スノウが軽く手をあげたのを合図に4人はグルトネイに向けて魔法攻撃を放った。

 

 スバババババン!!ドッゴォォォォン!!


 グルトネイの外殻に達することなく魔法効果が発動し、凄まじい爆発が起こる。

 激しい黒煙の塊が膨張しながら畝るようにして上昇していく。

 グルトネイから見れば完全にスノウ達の姿が見えない状態になっている。


 「やはり届かないか。リュクス、これを破る手立てはあるか?」

 「スノウ船長。このバリアの構成を分析することができませんので手立てを申し上げることは出来ません。推測できることは2つです。ひとつは魔法そのものを寄せ付けない障壁は魔力で構成されていると思われる点です。魔法が外殻に着弾しないように魔力障壁で防いでいると思われます。もうひとつは、物理的な障壁で魔法の物理的効果、例えば爆熱や暴風、氷撃などを防ぐ物理的なエレメント系の防御を行う障壁がある点です。これらふたつの種類の障壁が折り重なって形成されている2層構造なのではないかと思われます」

 「なるほど。それを今から剥がすのは厳しい。時間もないしな。魔法攻撃はあくまで目眩しのためだ。破壊は作戦通りで行う」

 「スノウ船長、お気を付け下さい。生物機械を作り出すほどの高度な文明兵器を扱っている相手です。ソナー系魔法を使えるはずですからこちら側の動きは筒抜けと思って頂いた方がよいでしょう」

 「分かってる」


 バッ!


 スノウは右手を上げた。

 それを見たシンザとルナリは下降を始める。


 「シア!」

 「はい!」


 スノウとフランシアはリゾーマタのクラス4魔法を放つ。

 スノウは雷系魔法のゼノス、フランシアは爆裂系魔法のアトミックデトネーションを放った。


 ズバババ!!ズッドォォォォォン!!

 ギュゥゥン‥‥ドッゴォォォォォン!!


 凄まじい豪雷と灼熱の爆発がグルトネイを襲った。

 シンザはルナリによって守られた状態で大きく迂回しながらグルトネイに接近した。


 ヒュゥゥン‥‥ガシ!


 シンザとルナリはグルトネイの外殻にしがみついた。


 「ルナリ!頼んだよ!」

 「任せておくがいいシンザよ!だが油断するな!禍槌(カヅチ)が飛んでくるやもしれぬ!我から離れるな!」

 「うん!」


 ルナリは背中から無数の半透明の黒い触手を出し始めた。

 負の情念のエネルギーによって生成された触手はグルトネイの外殻に沿って伸びていく。

 そしてグルトネイを網の目が包むように触手を絡ませながら伸ばしていく。


 「禍槌(カヅチ)が来ます」

 『!』


 ヴィマナのソナーでグルトネイの魔力放出を感じ取ったリュクスがスノウとフランシア、シンザ、ルナリに伝えた。


 「シア!」

 「はい!」


 スノウとフランシアはシンザとルナリに禍槌(カヅチ)が放たれないように完全に囮の役割で攻撃を続ける。

 スノウは複数の巨大な岩石を出現させ、グルトネイに向けて落とす。

 リゾーマタの土系クラス3魔法ジオデストロックを同時に複数発動するのはかなり高度な技であり、魔法技量が高くなければ発動はできない。

 一方フランシアは無数の氷の槍を出現させた。

 リゾーマタの水系クラス1魔法のブラストレーザーで無数の槍を出現させ、同時に氷系クラス4のアブソリュートゼロを発動して一瞬で水の槍を凍結させて強固な氷槍を作り出した。

 この異種の魔法を同時に生成し、合成する魔法もまた高度な魔法技量を要する高難易度の魔法であった。


 バッ!


 フランシアは右手を振り下ろし、無数の氷槍をグルトネイに向けて放つ。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 ズガガガガガガガガガガ!!


 岩石と氷槍はグルトネイに着弾することなく数メートル離れた場所で破壊されていく。

 凄まじい砂煙とホワイトアウトのような氷の粒で視界が遮られるが、その中から無数の空気の畝りが見えた。

 次の瞬間。


 ズガガガガガガン!!


 スノウとフランシアは剣を振り回し始めた。

 何もないはずの場所を斬る度に何かを弾くような音が聞こえる。

 グルトネイが放った禍槌(カヅチ)だった。

 スノウとフランシアは禍槌(カヅチ)の軌道を読むためにあえて、岩石と氷槍を落とし粉々になった砂煙と氷の粒を撒き散らす攻撃を行ったのだ。

 だが、ほぼ光の速度の禍槌(カヅチ)を防ぐのは至難の業だった。

 ほとんど本能的に無意識の動きで禍槌(カヅチ)を弾いているが、禍槌(カヅチ)の数が多すぎて徐々に傷を負い始めた。

 スノウやフランシアのような高度な剣技を持つ者だからこそ防ぐことのできる技だった。


 「流石に多いな!防ぎきれないぞ!シア大丈夫か?!」

 「はい問題ありません!」


 ズガガガガガガガン!!


 禍槌(カヅチ)は止まることなく立て続けに発せられており9割ほどの攻撃を弾いているが残り1割は弾ききれず致命傷は避けているものの徐々に出血が増えてきた。

 一方ルナリの伸ばしている触手はグルトネイの約半分を覆うまで這わされていた。


 「シンザ、怪しい場所を見つけたぞ」

 「分かった!思念を送ってくれ!僕が確認してくる!」

 「今から我の触手で作ったバリアをお前に張る。禍槌(カヅチ)が来ても数度は防ぐことができるはずだがそう何度も持たない。時間をかけてはならんぞ」

 「分かってる!ありがとうルナリ!」


 ルナリから送られたグルトネイの扉があると思われる場所がシンザの脳裏に映し出された。

 同時にシンザの体に負の情念の触手が巻き付いて作られたバリアが張られる。


 「行ってくる!」


 シンザはグルトネイの外殻を凄まじい速さで走っていく。


 シュン‥‥バァァン!!


 一瞬光ったかと思うと、シンザは大きく吹き飛ばされた。

 グルトネイから禍槌(カヅチ)が発せられたのだ。


 「シンザ!」

 「だ、大丈夫だよルナリ!君のおかげでダメージはない!吹き飛ばされただけだ!」

 「ぬぅ!グルトネイめ!我のシンザを攻撃するとは許せん!」


 素早く体勢を立て直したシンザは素早く外殻を走り続ける。

 その後からルナリの負の情念の触手が伸びていく。


 バカカカカン!!


 禍槌(カヅチ)をルナリの触手が弾いていく。


 「うぐ!」


 シンザを守ることに注力しているルナリの脇腹に禍槌(カヅチ)がヒットし、脇腹を抉った。


 「どうしたのルナリ!」

 「何でもない!走れシンザ!」


 シンザは走りを止めず、目標の場所へと近づいていく。


 「あそこだ!」


 タタタタタタタタタタタタ!!


 スノウとフランシアの魔法攻撃の影響もあり、かなり走りづらい状況だが、様々な障害物を避けながら凄まじい速さでシンザは目標地点へと近づいていく。


 バゴォン!!


 「うっ!」


 禍槌(カヅチ)がシンザを襲う。

 ルナリのバリアのおかげで傷を負うことはないが、激しい衝撃で大きく吹き飛ばされる。

 すぐに体勢を立て直して目標に向かって突き進む。


 (これ以上はこのバリアは持たない!)


 シンザは動きを撹乱するように素早くジグザグに動きながら目標に近づいていく。


 ドォォン!


 シンザが上手く避けた禍槌(カヅチ)がグルトネイの外殻に当たる。


 (やはり禍槌(カヅチ)じゃこの外殻に傷はつけられないのか)


 ドォォン!

 ドォォン!


 徐々に禍槌(カヅチ)の攻撃が激しくなってきた。


 (もうすぐだ!)


 ズザザァ!!


 シンザはスライディングして目標地点へと到着した。


 ドンドン!ボシュアァァ‥‥


 「!」


 シンザは炎魔法のフレイムレイを発動した。


 ギュゥゥゥン‥‥


 一瞬だけ壁面が畝る。

 おそらく通常であれば扉が開くのだろうが、敵の侵入を防ぐセキュリティが発動したようで、ロックがかかった状態のようにフレイムレイを拒絶した。


 「間違いない!ここだ!ルナリ!当たりだよ!」

 「よくやったぞ我のシンザよ!リュクス!全員に伝えよ!グルトネイの扉は特定された!今から座標を送る!」

 「承知しました、ルナリカウンセラー」


 リュクスは全員にグルトネイの扉の場所が特定されたことを伝えた。


 「よし!シアこのまま攻撃を続け‥‥」


 ヒュゥゥゥゥゥゥン‥‥


 スノウとフランシアの下方に異常な魔力上昇を感じた。


 「来る!猛魅禍槌(タケミカヅチ)が来るぞ!!」


 ヒュゥゥゥゥゥゥン‥‥バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!


 巨大な白熱の光線がグルトネイから空に向かって放たれた。





いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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