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<ホド編 第2章> 41.グルトネイとアーリカ

41.グルトネイとアーリカ


 ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!


 ヴィマナ内にこれまで聞いたことのない警報が鳴り響いている。


 「リュクス、警報を止めてくれ」

 「承知しました」

 「ロムロナ、お前の知っている情報を全て教えてくれ」


 スノウはスクリーンから目を離さずにロムロナに言った。

 スクリーンに映し出されている黒い楕円形の無骨な塊のまるで海面に見える黒い島のような巨大な物体が巨大船グルトネイだというのだ。

 そしてその周辺には棘のようなものが数本生えているこちらも船とは思えないような形状の中型の船が何隻か並走していた。

 そのスピードは決して早くはなくヴィマナであれば容易に追いつき追い越すことも可能だった。


 「知っていることって言ってもね‥‥あたしが小さい時に海を荒らしていた巨大海獣を倒したのが巨大戦艦グルトネイと戦闘船アーリカだったの。戦闘船アーリカには特殊な鋼鉄で作られた鋭い巨大なツノがついていて、海獣を周りから囲んだ後、全船が海獣に向かって突進してそのツノを刺したのよ。海獣は激痛で暴れだしたわねぇ。あまりの暴れようにアーリカが大きく振り回されているからさすがに壊れるんじゃないかと思ったんだけど、壊れるどろこか、海獣が海に沈んでもびくともしない船体で、全く壊れなかったわ。低圧の水深だったら潜水も出来るみたいなのね。そして海獣が弱ってきたところに巨大戦艦グルトネイがすごい光線を海獣に向かって放ったのよぉ。その威力たるや凄まじくて海獣の体半分が一瞬で焼けて消えちゃったわ」

 「魔法か?」

 「分からない。多分魔法じゃないと思うわ。魔力の波動が感じられなかったからねぇ」


 その言葉を聞いてスノウの頭にスメラギの存在が浮かんだ。


 (科学‥‥古代の遺物、もしくは神が作った高度な武器‥‥神の滅祇怒(メギド)‥‥いずれにしてもこの世界の人間が造れるもんじゃないな‥‥スメラギさんがいればあれの正体が何かの予想もつくんだろうが‥‥いずれにしても巨大な海獣を一瞬で蒸発させるほどの火力の攻撃手段を持っているということはヴィマナで近づくのは危険だな‥‥)


 「よし、作戦通りおれ、シア、シンザ、ルナリの4人で‥」

 「待ってスノウボウヤ」

 「何だ?まだ何かあるのか?」

 「いえ、さっきの話はあたしが見た巨大船グルトネイと戦闘船アーリカの話よ。でもスクリーンに映っているあれ、ちょっとというかかなり違うわ」

 「何が違うんだよ」

 「戦闘船アーリカで言えばツノの数が増えているわよ。あたしが見た時は一本だけだけど、あれには数本生えているわよね‥‥巨大船グルトネイなんか、色が真っ黒だし大きさが倍くらいあるわ。あの大きさで放つ光線って、想像もつかない規模だわねぇ‥‥もしかしたらホドカンひとつ滅ぼせるかもしれないわぁ」

 「はぁ?!」


 ロムロナの発言に驚いたブリッジにいる全員がスクリーンを見た。


 「リュクス、解析できるか?今のロムロナの言った内容が実装されているとしたら、ホドカンひとつ滅ぼすほどの威力はあると思うか?」

 「スノウ船長、私に思考はありませんので思うということはありません。情報をもとに推測される事象を可能性の高さ順に申し上げることは可能です」

 「それで頼む」

 「海獣のサイズが不明ですが、そこは最大規模の海獣のサイズで代用する前提で、そのサイズを一瞬で蒸発させる熱密度を考慮、巨大船グルトネイを側面視で2倍とした場合、直径が2倍、面積にして約4倍と仮定すると、光線の影響範囲も4倍、海獣を一瞬で蒸発させた温度を考慮し、ホドカンの直径と構成物質の耐熱温度から影響度を計算‥‥結論はホドカンを破壊することは可能です。ただし条件があります。光線の照射時間が30秒以上であること、そして光線の照射回数が4回は必要です」

 「十分だリュクス、ありがとう」

 「いえ、ご質問に回答しただけです」


 スタ‥‥


 シルゼヴァがブリッジの後方からスノウの横にジャンプして着地した。


 「どうするスノウ。ホドカンとはニンゲンが支配している国で生活レベルから言えば大した兵器を持っていないと勝手に思い込んでいたが、明らかに身の丈以上の玩具だ。上手く使いこなせるかも怪しいものだが、それ以前にあれだけの兵器を持っているならなぜロン・ギボールにそれを使わないのか。理由はふたつ。ロン・ギボールに対して既に使っていて、効き目がなかったか、もしくはあやつらが光線を扱えないかだ」

 「その通りだシルゼヴァ。幸いここはまだ素市(もとし)からかなり距離がある。仮に光線を放たれたとしても素市(もとし)に当てるのは難しいはずだし、届くかも分からない。ふたつの理由のどちらかが正しいのかを確かめるのに丁度いい。光線を扱えないなら、素市(もとし)にとっての脅威にはならないだろうし、ヴィマナに危険が及ぶ可能性も下がる。仮に放てたとしたらあれを何とか結界内に誘導してロン・ギボールに破壊させりゃぁいい」

 「そうだな。まぁそう簡単な話ではないと思うが、いずれにせよここで指を咥えていると素市(もとし)は滅ぶことになるかもしれん」

 「ああ」

 「ということで俺も行くことにするぞ」


 「偉そうに言ったがあれは自分が戦闘に出たいがための前振りだぜ?シルズはそういうところあるからなぁ」


 シルゼヴァの発言にヘラクレスは眉を顰めて隣にいるシンザに耳打ちした。


 「聞こえてるぞハーク。あとで特別稽古をつけてやる」


 ヘラクレスは、シルゼヴァに見えないようにおちゃらけた表情を見せた。

 戦闘は空中戦か海中戦であり、ヘラクレスにとっては不利な戦いになるためくやしいのもあって皮肉を言ったのだった。


 「シルゼヴァ、いいのか?」

 「ああ、構わん。ガースもリュクスもいる。それにヴィマナは一定の間隔を保ちかつ、深く潜航させる。グルトネイと戦っている者たちを転送できる距離を保ってな。スクリーンで戦闘状況を観て危険が迫ったらその時点でリュクスにヴィマナへ転送させる。それでいいなリュクス」

 「もちろんです、シルゼヴァチーフ」

 「よ、よし!じゃぁシア、シンザ、ルナリ、シルゼヴァ出撃の準備をしてくれ。リュクスおれ達の出撃準備が整ったらおれ達をグルトネイの上空に転送できるか?」

 「もちろんです」

 「よし、おれ達を転送したらその後は転送可能距離を維持した状態で潜航し、スクリーンで戦況を観ていて、メンバーに危機が迫ったら転送を頼む」

 「承知しました」


 皆それぞれ準備をしに自室へ戻ったり、持ち場へ戻り作戦に備え始めた。


 「ん?どうしたロムロナ?」


 ロムロナは自分の手を見て何か悩んでいる様子だった。


 「いえ、あたし水中の戦闘が得意だから水中に出るのだと思っていたけど、グルトネイの上に飛ばされるんだとしたらスノウボウヤ達みたいに空を飛べないとまずいでしょ?やったことないから出来るかなぁと思ってねぇ」

 「何つまんないこと言ってんだよ。お前、おれの魔法の師匠だぜ?」

 「あら、言うじゃないのぉ。でもねぇスノウボウヤ、魔法って制御が難しいのよ?本当はさぁ」


 ボッ


 ロムロナは人差し指を立てると指先に炎を灯した。


 「この炎、リゾーマタの炎系クラス1魔法のフレイムレイなのよ?」

 「!‥‥なるほど‥‥」

 「理解してくれたみたいねぇ。普通に放てばそれなりの威力がある魔法だわ。それをここまで抑えるのって大変なの。魔法式は魔法技量に合わせて魔力を自動調整して魔法を発動させる構成だから詠唱した瞬間に魔法の規模はその人その人で決まっているのが通常だわね。操れるとしてもフレイムレイの方向を曲げるとか、重ねて詠唱して発せられる本数を増やすとかだわ。確かカヤクの部下のダイナかマイトがそれと似たようなことをやっていたわねぇ。でも詠唱できる魔法の威力を縮小するのは難しいのよねぇ。圧縮はできるけど、規模そのものを小さくするのは魔法式の構成に反しているんだから。あたしはこの小さな灯火を作るのに十数年かけてるんだから。しかもどういう理屈でこんな芸当ができるのかも分かっていないのよねぇ」


 スノウは何故自分やレヴルストラの仲間がある程度魔法の威力を操れるのか今になって疑問に思った。


 (ソニアックが使う魔法は音魔法だ。音は小さければ威力も小さくなる。シンザの炎魔法はいわゆるリゾーマタの炎系に特化したものと見ていいが、普通に暖炉に火を焚べるのに小さな炎を発動していたっけ‥‥。もしかするとおれはそういうのを当たり前に見て来たから魔法とはそういう制御できるもんだと思い込んでいたのかもしれない。変にイメージが凝り固まっていないのか‥‥)

 「ロムロナ、魔法式ってのは書き換えられないのか?」

 「!‥‥またとんでもないこと言うわねぇ‥‥でも確かに‥‥魔法式を読み解けば魔力量を調整するような式の変更もできるかもしれないわねぇ‥‥気づかなかったわよ」


 ロムロナは両手を前に出した。


 「デストロイウィンド」


 ボファァァァ!!


 凄まじい風がブリッジに吹き荒れた。

 色々な小物が吹き飛ぶ。

 ロムロナは目を閉じて、脳裏に浮かぶ魔法式を読み解き始めた。


 「‥‥‥‥なるほどねぇ‥‥これでどうかしら」


 ボボボボッファァァァァァ!!


 威力が数倍に跳ね上がった。


 「あらら‥‥でもここがこうなら‥‥これでどうかしら?」


 ホシュゥゥゥワァァァァ‥‥


 ロムロナの両手から発せられる風は微風に変わった。


 「おお!さすが師匠だ!」

 「ウフフ、あたしを褒めてくれるなんてもしかして今ので惚れちゃったのかしら?いいのよ?キスしてくれても」

 「断る」

 「ウフフ!でもありがとうねスノウボウヤ。また一歩魔法の深淵に近づいた気がするわ」


 スノウはロムロナに抱きつかれる前に戦闘準備のためブリッジから逃げるように出て行った。

 それをロムロナは優しい笑みで見ていた。


 「ありがとうねスノウボウヤ」


・・・・・


 それから5分後、スノウ達はブリッジに集合していた。


 「準備はいいな、みんな」

 『おう』

 「それじゃぁリュクス、転送を頼む」

 「承知しました」


 キュィィィィィィィン‥‥


 スノウ、フランシア、シンザ、ルナリ、ロムロナ、シルゼヴァはブリッジから掻き消えるように姿を消し転送された。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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