表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/1110

<ティフェレト編>42.合流

42.合流



 スノウたちはノーンザーレから離れ、グコンレン領の小都市コンレゴーにきていた。

 EVを街から少し離れた森の中に隠し、コンレゴーの入り口付近にある宿屋に部屋を取っていた。

 ノーンザーレには戻ることができない上、ノーンザーレの東側に出るのはロアース山から遠ざかってしまうため、危険とは知りつつもラザレ王国と敵対しているグコンレン領に入ったのだ。


 クラス5の魔法ウィリウォーの反動で眠りについていたスノウはコレンゴーまでの道中で目を覚ました。

 急に膨大な魔力を消費した反動だが、スノウの異常な回復力で30分程度で通常モードで復帰している。

 ソニアは依然眠りについたままだった。

 ズタズタになった腕とぱっくりえぐられた脇腹は応急処置としてエスティの回復魔法で止血され、目を覚ましたスノウによってすぐに可能な限りの回復魔法をかけられたため、すっかり綺麗に治癒している。

だが出血も多少あったためか意識は依然戻らない。


 「べっぴんソニア目ぇ覚めねぇなぁ‥‥大丈夫だよなぁ‥‥」


 「ゴーザ意外と気が小ちゃいのね。大丈夫よ。出血が多少あったから意識を取り戻したら少しずつ栄養をつけていけば大丈夫」


 「そうなのか?スノウ?」


 「ちょ!何あなた!あたしのいうことが怪しいとでも言うの?!あたしこれでももっと酷い傷を負ったスノウを治したんだからね!」


 「そうなのか?スノウ?」


 「きーー!!!」


 「はは‥‥」


 「ソ、ソニア!!」


 「目を覚ました!べっぴんソニアが目ぇ覚ました!あああ!!」


 「ちょっと‥笑わせ‥ないでください‥‥まだ体力が戻ってないから‥‥」


 「大丈夫か?ソニア?ソニックも無事か?」


 「スノウ‥‥大丈夫‥‥です。ソニックは寝かせています‥‥。ああ見えて怒ったら手が付けられない性格ですから‥‥」


 「そうか!無事ならいいよ。さぁ、もうしゃべらずにゆっくり寝るんだ。ちゃんと回復魔法はかけてある。あとはお前たちがゆっくり休むこと。今はそれに専念するんだ。いいね?」


 「はい、マスター」


 そういうとソニアは気を失うように眠りについた。

 一瞬回復したソニアを見てレンは、ホッとした顔で床にへたり込んだ。


 「よかったっす‥」


 落ち着いたスノウは改めて状況を確認する。


 「この街は、大丈夫なのか?」


 「そうだな、この入り口近くにある宿屋から出なければ大丈夫だろうな。ここは冒険者も泊まる宿屋だ。ラザレ王国と敵対はしているがこのあたりはグコンレン軍の支配も薄い。ラザレ王国出身の冒険者もよく使っているが、宿屋も商売だからな、ある程度黙認しているってわけだ」


 「そうか。ソニアを回復させるにはもってこいの場所ってわけか。だが、長居もできないな。ソニアが回復し次第、すぐにロアース山に向かうぞ」


 「そうね」


 「みんな今日はもう寝よう。色々あり過ぎた。一応交代で見張りを立てるが最初はおれが見張るからとにかく寝てくれ」


 エスティたちはやはり疲れてたのだろう、すぐに深い眠りについた。

 結局スノウが夜通し見張りをした。

 仲間にしっかりと休んでほしいという思いからあえて交代はしなかった。

 スノウは宿屋の窓から夜空を見ていた。


 (こういうの今時流行らねぇか‥‥。しかし綺麗な星空だな。東京じゃぁこんな星空なんてどんなに晴れたって見えないよな。越界してからだいぶ経っているが、こうやってしみじみと夜空を見上げるなんて初めてかもな‥‥)


 スノウはここまで色々あったと思い返していた。

 アレックスたちが今どうしているかも常に頭の片隅にあり、すぐに駆けつけられないジレンマというかもやもやがあるが、集中力を切らす要因にもなっていると自覚しているため、とにかく取り組む順番を意識するようにしていた。

 まずはこのティフェレトを救うこと。

 そして越界の手がかりを掴みホドに戻る。

 常にこの明確な優先順位を意識しながら思考を巡らせていた。

 意識していないと判断を鈍らせるからだ。


 「この世界もいずれ東京のように星がみえなくなるのかねぇ」


 束の間の脳の休息に感傷に浸っているスノウ。

 すると何かに気づく。


 「ん?」


 (なんだ?あの光‥‥)


 スノウは目を凝らす。


 「まさか‥‥隕石か?!」


 まだ断言は出来なかったが、数日もすればはっきりするだろうとスノウは思った。



・・・・・


・・・



 スノウはEVでコンレゴーから少し離れた場所でひとり立っていた。

 涼しい風が通る。

 しばらくするとロアース山の方角からひとつの影が見え始める。

 影は次第に大きな翼を広げた白く輝く姿に変わっていく。


 セリアだった。


 セリアはスノウの少し上で静止しゆっくりとスノウの目の前に降りてくる。

 風でスノウの銀色の髪が靡く。

 セリアが着地すると同時にその背中から何かがスノウに飛んで抱きついてくる。


 「スノウー!!」


 ケリーだった。

 スノウの顔写真がついている免許証がチェーンにくくりつけられており、それをネックレスのように首から下げていた。


 「ケリー!元気だったかい?」


 「うん!元気―!スノウは?顔疲れてるー」


 「ははは、よくわかるね。ケリーがいなくて寂しかったんだよ」


 するとホワイトドラゴンから羽の生えた猫に変化したセリアがスノウの頭の上に乗っかってきた。


 「マスター!私の前でケリーと仲良くするのはやめていただけませんか?少し胸がもやもやします」


 「お前なぁ‥‥」


 スノウはホワイトドラゴン討伐、悪魔との戦い、ドワーフの里と激しい戦闘が予想されたため、ケリーを一時離脱させており、唯一信頼できる人物、リクドー医師の家に匿ってもらっていたのだ。

 そしてその後、セリアが仲間になったあとケリーを引き取り、ケリーをセリアに任せロアース山で氷漬けになっている製鉄神ブロンテースの様子を見に行ってもらっていた。

 ホワイトドラゴンであるセリアと一緒にいれば何より安心だったからだ。


 「マスター、ソニック殿の音魔法による効果は絶大ですね。仮死状態のまま見事なまでの氷の彫刻になっておりました。当然見つからないように地中に埋めてあります」


 「そうか、ありがとう」


 「ソニックとソニアは?」


 「ああ、大丈夫だよ。でもちょっと大怪我してしまってね。今は休んでるんだ」


 「かわいそう‥‥ケリー怪我治るようにおまじないするー!」


 「そっか、ありがとう!ケリーは優しいな」


 セリアは少し不機嫌な顔でスノウの頭の上で髪の毛に顔を埋めた。


 「あ、そうだ。なんかお空が変なんだよ?」


 「そうですね。おそらくはスメラギ氏が言っていた通り隕石が近づいているのだと思います」


 「やはりそうか。昨晩夜空を見ていたら、見慣れない光を見たんだ。星というには近いというか。なんか変な感覚になったんだ」


 「おそらく同じ対象に抱いている感覚でしょう。あと1週間もすればもう少し確かな情報を得られるはずです」


 「なんかお腹のところがぎゅーっとなる。これもっとぎゅーっとなるってこと?」


 「そうですね。私も同じような感覚で少し苦しい感じです。でも慣れるしかありませんね。私とあなたは思念を飛ばしたり感じ取ったりできる能力がありますから、このティフェレトが騒ついているのを感じ取ってしまっているのだと思います」


 (隕石が近づいていることによる引力で何か変化が出ているってことか?そういえば地球でも月の引力で潮が満ち引きするし、生物に影響をきたすという話があるからな。急がないと‥‥)



・・・・・


・・・



 数日後。


 ソニアはだいぶ回復し、1人で起き上がれるまでになっていた。

 食事も徐々にとれるようになっていることから数日もすればほぼ全快するだろう。

 スノウたちはコンレゴーから少し離れた草原へEVで出向き、テーブルを広げて食事をとっていた。

 セリアとケリーがいるため、コンレゴーの宿屋にある食堂で食べることができないからだ。

 ホワイトドラゴンのセリアは翼の生えた子猫に変化できるため、翼さえうまく隠せば問題ないが、ケリーはハルピュイアの姿から変化できないため、草原にやってきたのだ。

 スノウのサポートのおかげでソニアは問題なく出かけることができている。

 いつまでも寝ていては滅入ってしまうというものだ。

 スノウたちとしてはソニアックがなぜ国宝を盗んだ罪で処刑されるに至ったのかを知りたかったのだが、ソニアックの回復が最優先だったため、あえて聞いていなかった。

 本人たちもまだ記憶が曖昧らしく思い出せていないようだった。


 「おいしー!みんなでご飯!」


 ケリーは久しぶりの仲間との食事で嬉しそうだ。

 セリアは不満そうだがミルクを飲んでいる。


 「まぁしかしなんだ!こうやって全員揃って飯食うってのもいいな!やっと揃ったって感じだ!」


 ゴーザも嬉しそうに話を始めた。


 「そうだな。いつの間にか仲間が増えた。元々エスティとおれの2人だけだったが、ケリーが加わり、いつのまにかレンがついてきて、ゴーザが仲間になり、ホワイトドラゴンのセリアも俺たちの仲間になった。そしてソニアとソニックもおれたちの元に戻ってきてくれたわけだ」


 「そうね。気づけば仲間が増えたわね。変なのが多いけど」


 「はぁーー!!?アネゴ!明らかにオイラを見て言ってますよね?!」


 「そんなことないわよ。あなたが自覚してるからそう受け取ったのね。ちゃんとわかっているじゃない!えらいわレン」


 「褒められてねーっす!オイラの活躍の数々を見たらアネゴよりオイラの方がすごいと思いますがね、へっへっへ!」


 「はぁ?!あなた馬鹿だわね!レンの分際であたしより活躍しているですって?!」


 「もうやめなぁ!お前ぇたちふたりともよくやってるって。俺が言うんだから間違いねぇ!」


 「あんたは黙ってて!」

 「黙っててくださいっす!」


 「だいたい、ゴーザ!あなたはあたし達に面倒ばっかりかけて全然活躍してないじゃない!」

 「そうっすよ!ちょっと強いからって上から目線ですけど、ゴーザの旦那意外と役立たずっすからね!」


 「なぁにぃ!!」


 「あははは。ゴーザやくたたずぅー」


 「なんじゃぁ!?ケリーの嬢ちゃんまでー!」


 「はぁ。やかましいですね。静寂を乱す会話は単なるノイズ。ノイズは嫌いなのです。これ以上ノイズを発するなら許しませんよ」


 セリアは一瞬でホワイトドラゴンの姿になり、喉に力を溜め込み始めた。


 ドン!!


 「うるさい!!」


 スノウがテーブルを叩いて吠える。

 一瞬で全員が黙る。


 「楽しい食事がどうしてこうなる?!ええ?!おとなしく食えねぇのか、お前らは!」


 「わ、悪かったわよ」

 「すんません‥‥」

 「さーせん」

 「申し訳ございません」

 「あはははー」


 「反省しているか?」


 「はい」

 「はい!」

 「はい‥‥」

 「はっ」

 「あはははー」


 (あんたたちのせいで怒られたじゃない!)

 (元はと言えばアネゴがいけないんすよ!)

 (そうだ!俺は巻き込まれただけだ!俺は悪くねぇ)


 キッ!!


 スノウの人睨みでエスティ、レン、ゴーザの3人は背筋を伸ばす。


 「じゃぁ座れ」


 一同は言われるままに座った。


 「ははは。なんかいいですね」


 「どうしたソニア?」


 「いえ、なんか賑やかで楽しくて。昔を思い出します」


 「昔?」


 「ええ。子供の頃、我が師であり、父であったゼノ、そして兄弟子レーノス。他の弟子たちを囲んで賑やかな食事をしたことを思い出して‥‥」


 「あ、あのぉ。食べてもよろしいでしょうか?」


 「そうか」


 (無視―――!!!???)


 「は?!思い出した‥‥」


 「ん?!何をだ?」


 「私たちに国宝を盗んだ濡れ衣を着せた男を‥‥」


 「ねぇさん、それについては僕から話しましょう」


 ソニックが割って入る。


 「僕たちは大司教様よりリュラーの従属血判を返上させていただくお願いに上がったのです‥‥」


 ソニックはゆっくりと何があったのかを話始めた。



・・・・・


・・・



ーー白の塔、ユーダの部屋ーー


 「いいでしょう。あなたを私の守護リュラーの任から解き放ちましょう。ですが、最後に一度だけ、私のお願いを聞いていただけないだろうか?」


 「も、もちろんです。どのようなご指示でしょう?」


 「あるものを取ってきてほしいのです。この世界を救う大切なものなのですが‥‥」


 「世界を救う?」


 「そうです」


 「それはどう言ったものなのでしょうか?」


 「王城に保管されているとある楽器です」


 「王城?!」


 「そうです。その楽器を使うことがこの世界を救う唯一の方法なのです。それがあればこの世界を圧政や貧困から救うことができるのです」


 「で、ですが、王城と言うことは王の所有されるものなのでは?」


 「そうですね。ですが、元々はマッカーバイ家の物。つまり所有権は私にもあるということです」


 「‥‥‥‥」


 「行ってくれますね?」


「だ、大司教様‥‥で、できません。私たちはリュラー。いかに従属血判に縛られる身であろうとこの国、そして王に反くような行為は‥‥できません」


 「そうですか。わかりました。無理なお願いをしてしまいましたねソニア、そしてソニック。あなた達は今から自由です。スノウさんのところへ行ってあげなさい」


 「大司教様?!。あ、ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」


 「いいのです。あなたは既に十分に私に尽くしてくれました。これからはあなたの宿命に身を投じて自分の信じる道を進みなさい。たくさんの困難があるでしょう。それを乗り越えることもまたあなたが自分の信じる道を進む証明なのですから」


 そしてソニア、ソニックはユーダのリュラーではなく、1人の剣士として歩み始めることなった。


・・・・・


―――旅立ちの夜―――


(なんだろう‥‥この感じ)


 ソニックは嫌な予感を抱いていた。


 「大司教様‥‥まさか別の者に?!」


 ソニックは、不安を払拭するために王城前に来ていた。


 「大司教様‥‥もし別の誰かに王城の楽器を盗ませるようなことをお考えなら僕たちはそれを止めねばなりません‥‥」


 ソニックは王城の外壁を飛びながら伝って国宝が安置されているとされている塔が見える位置にある王城の屋根で見張っていた。

 だが、不安な感覚をよそにしばらくの間、何の動きもなかった。


 「気のせい‥だったか?」


 (ソニック‥‥もう行きましょう。私も同様の不安を感じているけどさすがに王の宝を盗むなどと大司教様もお考えを改められたのよ。それに王城に盗みに入るなど、王の剣ナザ・ルノスが許さないでしょうしね)


 「だけど‥‥僕には大司教様の目がそう簡単にあきらめるような感じには見えなかったんだよ」


 (わかってるわよ!わかっててそんな大それたことする者はいないって言ってるの!だいたいナザの強さは知っているでしょ?!)


 「分かってるよ!あの屈辱的な大敗、忘れたくても忘れることなどできない!全く‥‥思い出すのも腹立たしい!」


 (あははは、そうね。あんたボッコボコにされたものね)


 「はっ!?」


 ソニックは国宝が保管されている塔から異様な気を感じ取った。


 「姉さん!」


 (ええ!)


 ソニックは塔の方に飛んだ。

 塔に着地する直前、鉄格子の窓が壊れフードを被った人影が現れる。


 「!!」


 シャファー!!!


 人影から剣撃が凄まじい速さで繰り出される。


 ガキキィィン!!!


 ソニックは剣をそれを受けるが剣撃の力の強さで吹き飛ぶ。

 空中で回転しながら元いた屋根に着地する。


 「姉さん!」


 (ええ、ありえない‥‥)


 人影は逃げようと城の屋根づたいに走っている。


 「逃すか!」


 ソニックは音魔法で氷の道をつくり、そこを滑るように人影に向かって走っていく。

 それに気づいた人影は振り向き様に先ほどと同様の凄まじい速さの剣撃を繰り出す。

 その速さにソニックはついていけないが、氷の音魔法で相手の腕を凍らせ動きを鈍らせる。


 シャバン!!


 ソニックの剣撃が人影のフードを切り裂いた。

 そこから見えた顔にソニックとソニアは驚愕する。

 そこにいたのは、死んだはずのリュラー、兄弟子であり “音速” の二つ名を持った男、レーノス・ムーザントだったのだ。




ティフェレト編もまもなくクライマックスに突入します。



3/18修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ