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<ホド編 第2章> 31.2つのクエスト

31.2つのクエスト


 ――翌日――


 スノウ、フランシア、ヤガトの3人はFOCsを訪れていた。

 表向きは大道芸公演のクエストを開始する手続きなのだが、そもそもヤガトが蒼市(そうし)のFOCsの支局長も兼任しているため、実際には手続きなどは不要で、真の目的は現在の蒼市(そうし)内で特に結界杭に繋がるようなクエストがないかを調べることだった。

 加えて現在の蒼市(そうし)の状況を把握するために、元老院の指示を受けヴォヴルカシャ政府からどのようなクエストが発行されているかや、元老院の圧政を受けて中流階級以下の民を対象にどのようなクエストがあるのかについても確認することにしていた。

 3人は支局長の執務室で全てのクエストの依頼書に目を通していた。


 「大した動きはありませんね。相変わらずの圧政、そして元老院に従わない者たちへの弾圧。見るに耐えない状況は悪化の一途を辿っているようにさえ見えます」


 ヤガトの言う通りで、FOCsは中立的立場を貫いていることもあり、受ける依頼に制限は設けておらず、ヴォヴルカシャ政府からの依頼もあれば、貧民街で貧困に喘いでいる子供の依頼まで様々で分け隔てなくクエストを発行しているため、蒼市(そうし)の現状を知ることが出来た。


 「全く胸糞悪い状況だな」

 「いっそのこと、私たちで潰しますか?」

 「三足烏(サンズウー)・烈の軍力が見えて勝てる見込みが持てたらそうしよう。それもないまま、このホドカン全域が戦場になるとなれば、多くの民が犠牲になるからな」

 「分かりました。やはりカヤク、ニトロの情報が鍵になりそうですね」

 「ああ。何とか接触出来ればいいんだが‥‥」

 「スノウさん、シアさんこれを見て下さい」


 ヤガトは1枚のクエストをスノウとフランシアに見せた。


 「クエスト受領期限は切れているみたいだが‥‥なるほど」

 「マスターの読み通りですね」


・・・・・・・・・


◾️ クエスト名:遠征団への参加

◾️ 内容:ホドで安全に航海ができる海域が確認された。漁業域が確保できる

     チャンスであり、その調査のために遠征に参加できる者を募集する。

     主任務は船内の雑用や戦闘補助となるので命の危険はない。

◾️ 期間:30日(遠征の状況によって延長あり。報酬反映前提)

◾️ 報酬:1年は労働不要となる程度のホドフィグ

     さらに海獣、魔物との戦闘で経験値を積むことができるメリットあり。

     遠征団には元老院直属の戦闘軍が参加するため、実際には戦闘に参加

     することは殆どなく、経験値だけが入手できる。


・・・・・・・・・


 「この遠征団は間違いなく緋市(あけし)素市(もとし)へ攻め込む軍でしょうね。クエスト募集期限が切れているところを見ると既に出発しているかもしれません」

 「その辺りの情報も得たいな。鳥を飛ばせれば早めにウルズィーやグレゴリに知らせることもできるだろうし」

 「鳥を飛ばさずともよいですよ。私だけが使えるFOCs内の情報伝達の方法があります。それを緋市(あけし)素市(もとし)のFOCsにいる部下からお二方へ伝えればタイムラグ無く伝達可能ですから」

 「おい‥‥そういうの小出しにするなよ。それ使えば、今回この蒼市(そうし)に大道芸人になってまで来る必要はなかったんじゃないか?」

 「それはありませんよ。この蒼市(そうし)へは情報伝達出来ますが、それを受け取って行動出来る者がおりません。何か行動を起こすなら、今回のように直接ここへ来る必要がありましたし、潜入するためにはこのように娯楽を提供する者に扮する必要がありましたからねぇ。諦めて下さい」

 「分かったが、何かムカつくな‥‥」

 「フフフ、お褒めの言葉として受け取っておきましょう。さぁ、残りのクエストのチェックを進めますよ。本日午後には第1回目の公演が予定されているのですから。それまでにここにあるクエスト全てを確認する必要があります」

 「おいちょっと待て。今日の午後なんて聞いていないし、そもそも何をやるんだよ。すり合わせや練習もなしにおれ達に何かやれってのか?」

 「プログラムは作ってあります。お二人なら全て即興で出来るものばかりですよ。なぁに、ご安心下さい。公演の進行は全て私が行います。お二人はその流れに従ってその通りに動いて頂ければよいのです」

 「安心出来るかよ‥‥失敗したらお前の首を斬り落とすからな」

 「どうぞ、ご自由に。フフフ」


・・・・・


 それからスノウ達はクエストを調べ切った。


 「気になるものは2つですね」


 テーブルの上に置かれたクエストは2つ。


・・・・・・・・


◾️ クエスト名:呪いのダンジョン

◾️ 内容:2ヶ月前からホド最大級のダンジョン”()”に不気味な叫び声が聞こえ始めた。

     ダンジョン大破壊以降、魔物のレベルが急激に上がったことから、踏破階層

     が20階となっているが、おそらくその先から聞こえてくるらしい。

     この原因を突き止めてほしい。

     もし、冒険者が助けを求めているなら救出してもらいたい。

◾️ 期間:なし(可及的速やかに)

◾️ 報酬: 3万ホドフィグ


・・・・・・・・


◾️ クエスト名:僕の街を救って!

◾️ 内容:最近僕の街の人たちがたくさん行方不明になっています!

     きっと誰かに拐われたのだと思います。

     誰か助けて!犯人を捕まえて!

◾️ 期間:すぐ

◾️ 報酬:10ホドフィグ


・・・・・・・・


 「ひとつめの呪いのクエストだが、このダンジョン”玻”ってのはどんなダンジョンなんだ?」

 「これは約3ヶ月前、レヴルストラと三足烏(サンズウー)・烈が激闘を繰り広げたダンジョンですよ。直後にスノウさんが越界した例の戦いです。蒼市(そうし)には無数のダンジョンがありますが、大きなものは3つです。ダンジョン”(じょう)”、ダンジョン "()”、ダンジョン” ()”です。その中で最も巨大なダンジョンがダンジョン玻になります」

 「2ヶ月前から‥‥おれが越界した後に何かがあった‥‥ということか」

 「結界杭が打たれ始めたのはもう少し後のような気もしますから、もしかしたら結界杭とは無関係のクエストかもしれません。どうしますか?」

 「一応受ける。藁にも縋りたいところだからな。こうしている間にもヘラクレス、アリオクは窮地に立たされているかもしれないし」

 「承知しました」


  スノウはふたつめのクエストにも目を通した。


 「今さらだが、ホドフィグの価値はどれくらいなんだ?」

 「そうですね。ここの宿代が一晩、ひとり100ホドフィグ程度ですからそれを基準に考えられてはどうでしょう?」

 「この宿が一晩100ホドフィグ‥‥」

 (日本で言えば少し広いビジネスホテル並みだな‥‥。確か1万円くらいだっだと思うから、この宿が100ホドフィグだとすると、1ホドフィグ=100円と見ておけばいいか。とすると、1件目は300万円か。かなり高いが、高レベルの魔物が出ている危険を伴うクエストだからだろうな。2件目は1000円‥‥誘拐事件の調査のようだが、報酬が低すぎる気がする)

 「1件目は結界杭の可能性があるからなるべく早めに潜ろう。このクエストは受けられるということでいいだな?」

 「もちろんです」

 「2件目は誘拐事件のようだが、報酬が安すぎるな。しかも表現が子供の依頼みたいに感じる。こんな誘拐事件はよくあるのか?」


 スノウの質問にヤガトが得意げに答え始めた。


 「誘拐事件は珍しいことではありませんが、対象は貧困街ですしょう。報酬が安すぎるのはそのせいです。ですが、依頼者の視点で言えば決して安い金額ではありません。おそらく文面から子供が依頼してきたのだと思いますが、貧困街の子供が捻出できる金額ではありません。1日家族4〜5人で生活するのに1ホドフィグも使えないのが貧困街ですから、その厳しい生活環境の中で10ホドフィグ捻出することの難しさはご理解頂けるかと思います。それだけ強い思いがあるのでしょう。また、この内容は数名の行方不明ではないようです。貧困街には相当な人数が住んでいますし、その貧しさから道端で亡くなったり、人知れず居なくなったりします。ですが、沢山という表現はその日常以上に人が消えていることが推測されます」

 「分かった。優先度は低いが、どこかきな臭い感じがするからこれも一応受けることにしよう。何より貧困街の子供が困っている10ホドフィグ程度の依頼を受ける奇特な冒険者もないだろうから救ってやりたい気持ちもあるしな」

 「承知しました。それでは当面の予定を整理しましょう。まずは本日の午後からの公演、これはしっかりと最高の芸を見せて頂きます。公演期間は10日間ですが、滞在期間は15日で確保しております。つまり5日の自由時間があるということです。3日後あたりから、定期的に休日を作って “呪いのダンジョン” クエストを受けましょう。一度で確認し切ることが出来るか分かりませんので、定期的な休日を使って対応となりますが、状況に応じて公演スケジュールを変えるようにします。ダンジョン玻のクエストが片付き次第、ふたつめのクエストを受ける。蒼市(そうし)を出る日は決まっていますので、それまでの時間で解決できるか‥‥となりますが」

 「それでいい。シアも異存ないか?」

 「はい、マスター」

 「それでは午後に控えている初回の公演に向けて準備を進めましょう、フフフ」

 「お前、おれ達をおちょくって楽しんでいるだろ」

 「そんなことは‥‥ございませんよ、フフフ」

 「このことは絶対に忘れないからな」


 気が重いまま午後の公演時間がやってきた。




いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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