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<ホド編 第2章> 28.潜入

28.潜入


 「おい、大丈夫かニトロ」

 「大丈夫ですよ。回復してくれたのはキセキです。あいつの回復魔法の効果は高いですから、俺の切れらた指が全部元通りですよ」

 「俺もだ。胸抉られて骨が出てたんだが、すっかり元通りだ。だからといってあんな拷問二度とごめんだがなぁ。痛すぎるって」

 「本当ですよ。気を失っても水ぶっかけられて起こされるんでしょうしね」

 「まぁな。でも俺たちみたいな育ちをした者は拷問で気を失うことはないからなぁ」

 「確かに。眠っている間に情報吐かされるなんて間抜けなことできませんからね」

 「ふぅ‥‥ってことで俺、少し眠っていいか?寝不足でな」

 「何言ってるんですか!あんた今まで寝てたでしょ!俺拷問から解放されて以降ずっと起きてたんですよ」

 「そうだったか?」

 「信じられないなこの人‥‥」


 ガチャ‥‥


 何者かが部屋に入ってきた。


 「!‥‥お前、キライか?」


 部屋に入ってきたのは第3分隊副分隊長のキライだった。

 恐ろしく高い鼻の上に何か尖ったトゲのようなものがくっついた顔の男で、実は腕が3本あり、3本目の腕は服で隠れているため分からない。

 第3分隊はギョライが分隊長を務める隊だ。

 かつてホウゲキが連隊長を務めていた頃の三足烏(サンズウー)・烈には3つの分隊があった。

 第1分隊はジライが分隊長を務めており、主に素早い動きと爆裂系の魔法を使いこなす分隊だ。

 第2分隊はカヤクが分隊長を務めており、炎魔法を突き詰めた者達で構成されていた分隊だ。

 そして第3分隊がギョライが分隊長を務める隊でメンバーは銃や投擲具など遠距離攻撃を得意とする隊だった。

 既に第2分隊は解体され、第1と第3分隊に吸収されていた。

 

 


 「カヤクにニトロ。よくのうのうと戻って来られましたね。ウチの隊に押し付けられて、本当に迷惑なのですよ」

 「キライ‥お前、随分と偉そうだな」


 ガン!


 「いて!」


 キライは至近距離でパチンコをカヤクの額に向けて放った。


 「私は副分隊長ですよ。口を慎みなさい。貴方たちは第3分隊隊員見習い候補なのですから、私には敬語を使うことです。そしてギョライ様のことは神と崇めなさい」

 「‥‥‥‥」

 「‥‥‥‥」


 カヤクとニトロは怒りを抑えて無言になった。


 バサッ‥‥


 キライは机に何かを置いた。


 「これはギョライ隊の一員である証です。服につけておきなさい」

 「分かった」

 「こちらは当面の貴方たちに対する指示事項です。雑用ですが、しっかりと対応しなさい。期限がありますから気を付けるように。守れなければペナルティがありますからお忘れ無く」

 

 ダン!


 キライは荒っぽくドアを閉めて出て行った。


 「‥‥‥‥」


 グシャリ!ポイ!


 カヤクは指示事項が書かれた紙を丸めて捨てた。


 「ああ!」


 ニトロは慌ててそれを拾いテーブルの上でシワを伸ばし始めた。


 「カヤクさん、ダメでしょ!羊皮紙ならまだしも、これ紙ですよ?!こんなことして破れて文字が見えなくなったりしたらどうするんですか!ペナルティー祭りですよ?!」

 「気分が悪い」

 「はぁ?!何子供みたいなこと言ってんのあんたは!」


 ニトロは手で口を押さえながら小声で話を続けた。


 「俺たち、レヴルストラに認めてもらうんでしょうが。大人になりなさいよ全く。拷問耐えられるのに、なんであんな大したことない対応にイライラしてんのか、信じられませんよ、全く‥‥」

 「お前が読んで俺に教えてくれ。俺は少し寝る」

 「マジで殴りたいわ‥‥こっちは寝てないっつってんのに‥‥」


 不貞寝し始めたカヤクにイライラしながらニトロは指示書を読み始めた。

 この世界の紙を作る技術は高くないため、シワが出来ると文字が掠れてしまったり、場合によっては破けてしまう。

 そのため、重要な内容の書や長期に渡って残すべき書き物は基本的に羊皮紙を使う。

 ニトロは丁寧にシワを伸ばして中身を読んだ。


 (これ、カヤクさんが読まなくてよかったわ‥‥)


 ニトロは綺麗に折って自身のポーチにしまった。


・・・・・


 「間も無く素市(もとし)に到着します」


 リュクスが伝えてきた。

 スノウ達は無事にヴィマナに帰還し、一旦素市(もとし)に戻ることにしたのだ。

 

 「おい大丈夫なのか?」


 ブリッジにフランシアが入ってきた。

 アロケルの守護していた結界杭の中で魔力と生命力を抜き取られていたため休んでいたのだが、若干よろけながらブリッジに入ってきたのを見て、ワサンが心配して声をかけた。


 「大丈夫だわ。生命力は既に魔法で回復しているから。魔力回復は寝ていても起きていても変わらないの。それよりマスターの側にいる方が回復早まるのよ」

 「そ、そうか」

 「シア、無理せず寝ている方がいいじゃないか?」

 「いえ、少しでもマスターの側にいたいの。お願いです」

 「分かったが、そこに座っているといい」


 スノウはフランシアを船長の椅子に座らせた。


 「ねぇちょっと、あの子、やっぱりスノウボウヤの彼女なの?」


 ロムロナが小声でワサンに問いかけた。


 「彼女かどうか知らないが、自分のことスノウの永遠の伴侶だって言い張ってるな。だが、肝心のスノウはそういうの全く疎いというか、鈍感というか。てか、スノウのやつ恋愛したことないんじゃないか?」


 ワサンも何故か小声で返した。


 「そういうあなたも恋愛したことないでしょ」

 「フハハ。オレを甘く見るなよロムロナ。オレには愛する女がいるんだぜ」

 「え?!マジでぇ?!ウソじゃん」

 「ウソじゃねぇよ」

 「奥手のあなたが?!夢の話をしてるんじゃないのぉ?」

 「アホか!そんなガキみたいなことあるか!いいかよく聞けロムロナ。ネツァクって世界で酒場をやっている女店主のイルダってのがオレの愛する女だ。もちろん向こうもオレを好いている‥‥と思う‥‥」

 「ハハァァン、なぁるほどねぇ」


 ロムロナはニヤニヤしている。

 

 「な、なんだよ」

 「初恋ね。随分と可愛い顔するじゃないワサンボウヤ。いいわよ、お姉さんが聞いてあげるわよ。恋愛相談ってやつね」

 「いらねぇよ。それに今はあいつのことを考えている場合じゃねえんだ」

 「あら、そうこうしている内に別の男にとられちゃうかもよぉ?」

 「そうかもな‥‥」


 ワサンは悲しそうな表情で言った。


 「だが、いいんだ。オレはあいつが幸せになってくれるならそれでもいい。本当はオレが幸せに出来ればいいんだが、オレにはやるべきことがある。それが完遂するまで、あいつに会いに行くことはない。だが、もし、オレを待っていてくれるなら、その時は‥‥その時は全力で幸せにする‥‥なんてな」

 

 バシィ!!


 「いで!」

 「ワサンボウヤ。あなたなかなかいい男じゃないの。いいわ、あたしが120%応援してあげるわよ。仮に他の男とくっついていたって大丈夫。あたしがいればねぇ。事故死に見せかけて殺してあげるから」


 「おい、そこの2人。恋愛談義はそれくらいにして上陸準備してくれ」


 「!」

 「あらぁ聞いてたのぉ?」

 「丸聞こえだよ」


 ワサンは顔を赤らめて無言でブリッジから出て行った。

 数分後、荷物をまとめて戻ってきたのだが、恥ずかしさが消えないらしく、終始無言だった。


・・・・・


――素市(もとし)――


 スノウ、ソニック、ロムロナ、ワサン、フランシアの5名はヤガトのいるFOCsを訪れていた。

 彼の執務室にはパンタグリュエルの団長であるグレゴリも来ていた。

 グレゴリは丁寧に挨拶した。


 「本題の前に自己紹介ですね。僕はグレゴリ・ズールーです。ホド第2の規模のキュリアのパンタグリュエルの団長を務めています。レヴルストラの皆さんには返しきれない恩があるのですが、スノウさんのお仲間もレヴルストラの一員になりますから精一杯サポートさせて頂きます」

 「パンタグリュエルの規模は事前にスノウから聞きました。その若さで立派にまとめ上げているなんて尊敬しますよ。えっと、僕はソニック。それから‥‥」


 ソニックはソニアと交代した。


 「私はソニアよ。ソニックの双子の姉ね。私とソニックはひとつの体を共有する少し変わった体質なの。今後ともよろしくねグレゴリ」

 「少し‥‥ですか、ははは‥‥よろしくお願いします、ソニックさん、ソニアさん」

 「私はフランシア。マスターの永遠の伴侶となる者よ」

 「え?!」


 グレゴリは顔を真っ赤にして言葉に詰まっている。

 落ち着いているグレゴリも流石に色恋の経験が少ないのか、上手く応対出来ずにいた。


 「ま、まぁとにかく、皆おれの仲間だ。よろしく頼むよ」


 スノウは苦笑いしながら言った。


 「わ、分かりました。それでは早速本題に入りましょう」


 レヴルストラ、FOCsのヤガト、パンタグリュエルのグレゴリの会議が始まった。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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