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<ホド編 第2章> 21.漆市ダンジョン最深部

21.漆市ダンジョン最深部


 「間も無く漆市(しつし)への転送域に入ります」


 リュクスがアナウンスしてきた。

 リュクスとはヴィマナのシステム内にあるAIの人格型超高度演算機能である。

 口頭での航行指示を受けて実際に航行してくれたり、ナビゲーション、ヴィマナ内の物理的状況やシステムの状況を報告したりしてくれる上、スノウ達の知り得ない情報データベースを元にした人同様以上の会話が可能だ。

 現在はスノウ達の指示に基づいてオートパイロットで漆市(しつし)へ航行しており、目的地の近くに到着したのだった。


 「リュクス、漆市(しつし)をスキャンは出来るか?」

 「スキャニング機能は現在使用不可です。意識共有機能は使用可能ですので、クルーが実際に巡った場所についてのマッピングは可能となります」

 「つまり、おれ達が実際に訪れた場所だけは記録できるってことか」

 「はい。最大で5名まで同時に記録が可能です。ヴィマナ内で予め記録対象者を登録頂くことが必要となります」

 「分かった。今回はおれ、ロムロナ、ルナリの3人だ。登録頼む」

 「登録完了しました」

 「ロムロナ、ルナリ、準備はいいか?」

 「大丈夫よん」

 「いつでも出動可能だ」

 「よし、それじゃぁリュクス、転送頼む」

 「転送指示受領。転送します」


 キュウィィィィィィィィィィィィン‥‥


 リュクスが起動したお陰で、転送はリュクスが行えるようになった。

 しかも転送ルームでなくとも転送可能となっている。

 さらには転送可能域であればリュクスとの思念波による遠隔連絡が可能となっているため、これまでのようにいちいちスノウが戻って転送対応する必要がなくなった。


・・・・・


ーー漆市(しつし)ーー


 「ここは?」

 「ここは漆市(しつし)の地下街跡ねぇ。世界蛇と会った場所からは離れた場所みたいねぇ」

 「この先に結界杭があるかどうかは分からないってことか」

 「そうだわねぇ」

 「考えても仕方あるまい。一つひとつ調べて結論づけるだけであろう?」

 「その通りだルナリ。よし、先に進もう」


 スノウ達は地下街跡を進み始めた。

 このエリアには何か特別な力が働いているのか、空気が存在し地上と同様に進むことが出来ている。

 光が入らないため徐々に周囲が暗くなっていく。

 スノウとロムロナはサイトオブダークネスを展開した。

 ルナリは暗闇でも問題なく視界が確保できている。


 「この地下街跡相当広いな」

 「漆市(しつし)は元々アリの巣状に洞窟が広がっていたのを街に変えて行ったって言われてるからねぇ。まぁ地下街跡ってことは人が生活していた場所だったってことだから、特にトラップとかもないわね。魔物は出るかも知れないけどねぇ」

 

 スノウ達はさらに進んで行った。

 1時間ほど進むと完全に地下街跡ではなくなりダンジョンと化していた。

 魔物も頻繁出現するが、その度にルナリが軽々と殲滅しており、その圧倒的な強さにロムロナは驚いていた。


 「そろそろ階層的には地下50階くらいには到達している感じだな。複雑な分岐もないし、魔物もルナリ相手だからあまり感じないが、それなりに強い。おそらく、最下層に近づいているんじゃないかと思うんだが」

 「そうねぇ。このダンジョンには見覚え無いからなんとも言えないけど、漆市(しつし)の他のダンジョンと比べたらもう最下層に到着していてもおかしく無い経過時間だわねぇ」

 「スノウ、前方に大きな扉が見えるぞ」


 視界の構造が全く違うルナリはかなり遠くの暗闇をはっきりと認識できる。

 500メートルほど進むとルナリの言っていた扉をスノウ達も認識出来るようになった。


 (ルナリの視力は異常だな。ホムンクルスの視界がそもそも性能がいいんだろうけど、それに負の情念の力が加わっているからな。こう言う場所ではより一層頼りになる)


 スノウ達は扉の前に到着した。


 「いかにもこの先にボスが待ち構えているって感じだな」

 「でもソナー系魔法は反応しないわよ?」

 「魔法の結界でも張られているのかな。とりあえず入ってみるか。戦闘になることを前提にして中へ入ろう。準備はいいか?」


 ロムロナとルナリは頷いた。

 スノウは扉に手を掛ける。


 ギギギギィィィ‥‥


 ゆっくりと扉が開いていく。

 

 ボッ‥ボッ‥‥ボッボッボッ‥ボッ‥


 扉の中の空間は真っ暗闇だったがスノウが足を一本踏み入れた瞬間に無数の明かりが灯り出した。

 

 「何だ?!勝手に明かりがつき始めたぞ。しかも部屋の中心には魔法陣が描かれているぞ」

 「随分と異質な感じだけど、よく見ると雑な魔法陣だわねぇ」

 「何の魔法が刻まれているか分かるか?」

 「さぁね。ニンフィーなら分かったかも知れないけど」

 「我にも分からん。だがこれを描いた者は危険な存在だろう。残穢が残っているからな」


 スノウはしゃがんで魔法陣を調べてみる。


 (魔力を流し込んでみるか。念の為バリアはかけておこう)


 スノウはロムロナとルナリを含めてリゾーマタの複数エレメントのバリアを展開した。

 そして魔法陣に魔力を流してみる。


 キュィィィィィィィン‥‥


 耳鳴りのような音が聞こえ始めた。

 スノウは思い立ったかのように小さな石を拾い、魔法陣へと投げ込んでみた。


 ヒュン‥‥シュン!


 石は魔法陣の上に入った瞬間に消えた。

 

 「なるほど。やはりこれは転移魔法陣だな。しかも脆弱な感じがする」

 「入ってみる?」

 「何処に出るか分からない。しかも戻れない可能性が高いな。一度リュクスの通信可能域まで戻ってからこの状況を伝えた上でこの怪しげな転移魔法陣に入るか」

 「そんな悠長なことは言ってられないんじゃない?仲間が窮地に立たされているかも知れないんでしょう?」

 「その通りだが、だからと言っておれ達がどうなってもいいわけじゃないからな」

 「分かってるわよぉ。となれば、全員で入ってみんな死んじゃったら大変だし別々に行動するのが良さそうねぇ。まずあたしが行くわ。漆市(しつし)のダンジョンは海に沈んでいる場所もあるからねぇ。あたしならいきなり海に出くわしても問題ないから」

 「我も問題ない。我には呼吸は不要だからな。我も行けるぞ」

 「おい‥‥勝手に‥‥」


 スノウは一瞬迷ったかがロムロナ、ルナリの意見はもっともだと思った。

 確かにいきなり海底にでも放り出されたらスノウには大きなダメージを被るリスクがあるがロムロナとルナリであれば問題ない。

 スノウは自分が役に立たない状況だと思い少し苛立った。


 「となると、死ぬリスクがあるのはおれだけか。結界杭に辿り着き仲間を救えなければ意味がない。今回は二人に頼らざるをえないな。海底に出たとして魔法は使えるか?」

 「あたしは問題ないわ」

 「魔法か。我は魔法は得意ではないが、この力ならいけるな」


 ルナリは手のひらから負の情念の触手を出した。


 「やはりロムロナにお願いしたい。どこに出るか分からないし、一方通行の魔法陣の可能性が高いから、たどり着いた場所で所在を知らせるなら魔法が使えた方が色々と都合良さそうだからな。ロムロナ、行けるか?」

 「勿論だわよぉ!張り切っちゃおうかしら!ご褒美はスノウボウヤからのアレとかコレとか?」

 「ご褒美はないよ」

 「あら残念。まぁいいわ。それじゃぁ行ってくるわねぇ」


 ロムロナは魔法陣に魔力を流し込んだ。

 そして親指を立ててゴーサインを出すと魔法陣の中へと入って行った。


 キュィィィィィィィン‥‥


 ロムロナは地面に吸い込まれるようにして消えた。


 「さて、暫く待ってから音沙汰なかったら一旦ヴィマナに帰還しよう。万が一戻って来ることも考えてメモは残すが」

 「それは我に任せるがいい。ロムロナだけが感知できる念を刻んでおく」

 「そんなことが出来るのか。頼んだよ」


 それから1時間ほど待ってみたがロムロナが帰って来る気配がなかったため、スノウ達は一旦ヴィマナに帰還する事にした。


・・・・・


 (ここは何処かしらねぇ。でも予想的中ね。あたしが来てよかったわぁ)


 ロムロナは海中にいた。

 天技である両生特性を活かして海中でも普通に呼吸が出来ることと、かなりの水圧から水深は深い場所なのだと思われた。

 何も見えない暗闇にいるロムロナはサイトオブダークネスを詠唱し発動した。


 「!」

 (ここは!)


 腐食の進んだ状態ではあるが、豪華な椅子や装飾が並んだ部屋であることが分かった。

 だが豪華と言っても元老院やアレックスの血筋であるヴォヴルカシャ家が王政を担っていた頃の豪華さではなく、全く異質なものだった。


 (これって、もしかして遥か昔の王朝時代のもの?!まさか永劫の地、テラエテルナが沈んだ場所?!)


 ロムロナは周囲を調べる事にした。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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