<ホド編 第2章> 20.三足烏
20.三足烏
「俺は三足烏の中でも分隊長という立ち位置だったから、正直組織全体とか、中枢でどうなっているとかってのは、言えないが、俺たちの知っていることを全て話そう」
カヤクとニトロは三足烏について話し始めた。
「組織の起り、目的は正直分からない。聞いたところによると、相当大昔から存在した組織らしい。例えば2000年以上前とか。トップは総司令のジクウという人物だが、見たことはない。その存在は連隊長レベルでも知らされていないらしい。皆知っているのは名前だけだ。ただ下剋上のようなものはない。何故なら絶対に逆らってはならないと言われているし、逆らうにも本人に辿り着けないからだ。あのホウゲキですら、問答無用で従っている。その下に大隊長、参謀、副参謀ってのがいる。この3人も謎だが、基本的にこの3人が三足烏の活動の方向性を決め、各連隊に指示を出していると言われている。三足烏という組織は疑問を持っちゃならない。上層部に疑念を抱いた瞬間に消される可能性がある。こそこそと謀反を企てたりするだけで翌日消されることだってあった。それこそ何もなかったかのように扱われてな。総司令だけじゃなく、上層部の3名の正体を探ることも御法度になっている。その下に連隊が4つ存在している。一つはホウゲキが連隊長を務める烈。二つ目は黙、三つ目は迅。連隊としてはこの3つだが、参謀直轄の部隊がある。それで合計4つ。各連隊は連隊長が頭で、いくつかの分隊長がリードする分隊が存在する。俺はホウゲキ連隊長率いる烈の第2分隊の分隊長だった」
カヤクの説明を補足するようにニトロが話し始める。
「各連隊の人数はまちまちですが、ざっくり1000から3000です。ですが、それだけの人数が出るほどの戦争はなかなかありません。普段は鍛錬をしつつ普通に生活しています。もしくはスパイとして様々な組織に潜り込んでいますね。ミッションの多くは少数精鋭で動くものが殆どですから分隊単位でも活動している隊とそうでない隊がいたりします。カヤクさんの第2分隊は汚れ仕事が多かったんで、結構色々と活動はしていました」
「汚れ仕事ってお前‥‥いや、確かにそうか‥‥。ジライのやろうはそんなことしねぇし、ギョライの隊は暗殺専門だし、フンカのやろうに至ってはコソコソしていたから何をやっているのか分からなかったしな‥‥」
カヤクとニトロの説明にスノウが割って入る。
「謎の組織か。総司令ジクウに3人のコアメンバー。その下に烈、黙、迅、参謀直下の隊。ホウゲキが烈の連隊長。他の連隊長は?」
「黙の連隊長はジュウってやつだ。だがやべぇのは元連隊長のワームって男だな。迅の連隊長はザンエイってやつだ。得体の知れないやつで俺もよく知らない。参謀直下の隊は謎だ」
「なるほど。ジュウってのとワームって奴は異世界で会ったことがある。それほど強くはなかった記憶だな」
「黙か。正直奴らは大して戦力はないって評価だった。強い者に尊敬の念を持つホウゲキはガン無視していたしな。俺が見てもあれは連隊をなすには弱すぎると思うほどだ。昔はかなりの手練がいたようだが今はそうでもないようだな」
「今、蒼市を仕切って封鎖しているジライはどうなんだ?元老院との関係は?」
「ジライ‥‥イケすかない奴だよ。相手の欠点を探してはその隙をついて罠に嵌めて気づいたら相手は勝てなくなっているっつー姑息な手を使う‥‥ってだけ言うと弱っちぃ賢さだけのやろうに聞こえると思うんけど、戦闘力は高い。間違いなく烈の中じゃぁ、ホウゲキに次いで2番目に強えぇ」
「確かジライは研究所で造られた人造人間だって話だったな」
「その通りだ。繰り返しになるが、やつの強さはスピードと頭脳に裏打ちされたその動きだ。剣技、魔法の使い方、どれもピカイチだがスピードとその動きからきてる。正直俺は勝てないが、あのフォルネウスを一撃で倒したスノウなら楽勝だよ」
「最後に元老院についてだ。あの組織は一体何なんだ?」
「元老院。俺たちもよくは知らないが、総司令ジクウと繋がってるって噂で、元老院本部はホドにあるわけじゃない。元老院には何人かいるらしくそのうちの一人がいるだけだ。ホドの元老院は確か‥‥何て名前だったか‥」
「ガレム・アセドーですよ。スノウさん、人類議会って知ってますか?」
「知ってるよ。おれの訪れた異世界で登場したぞ」
「そうですか。あれも怪しい組織らしいんですが、元老院は人類議会とも繋がってるらしいですよ」
「そうなのか‥‥」
スノウは人類議会のマスターヒューのカエーサル・ガイリウスを思い出していた。
彼はケテルにいた人間だが、神をも手玉に取るほどの切れ者であり、いつのまにか忽然と姿を消している。
元々掴みどころのない性格の男ではあったが、元老院との繋がりがあるとなると警戒した方が良いとスノウは思った。
「大体分かった。それじゃぁお前らは蒼市で潜入調査を頼む。だが少しでも裏切りを感じるようなところがあったら敵と見做す」
「それで構わねぇ。これは俺たちがあんた達の役に立つことを証明するチャンスだ。しっかりと元老院、三足烏の動きを掴んで、結界杭と奴らを倒すのに必要な情報を持って帰るよ」
スノウ、ロムロナ、ルナリは漆市ダンジョンへ、シルゼヴァ、ガースはヴィマナに残り整備にあたり、カヤクとニトロは蒼市に潜入調査に向かうこととなった。
ウルズィーとグレゴリは引き続き自身の率いるキュリアの維持、体制再構築に注力し、FOCsのヤガトは結界杭の情報収集に努める。
グレゴリとヤガトを降ろしたヴィマナは、まず蒼市に向かった。
シルゼヴァの整備のおかげで転送可能域が広がったため、三足烏に見つからないようにかなり離れた場所でカヤクとニトロを小型の船で降ろした。
その後ヴィマナは漆に向かって出航した。
・・・・・
会議室でスノウは一人、今後の作戦について整理していた。
「マダラ、起きてるか?」
「勿論だ。どうした主人よ」
「今向かっているのは漆市だが、そこには世界蛇ヨルムンガンドがいる。おれ達は越界を繰り返してきたから数年経過しているが、ホドに戻ったタイミングは越界から2ヶ月後。おれ達がホドでヨルムンガンドに会ってから然程時間は経過していない状態。つまり間違いなくヨルムンガンドはこの先にいるということだ」
「ふむ。だが戦うわけでもあるまい。寧ろ会わないようにしてダンジョンへ向かうのでも良いのではないか?」
「かもな。だが奴は世界蛇。ハノキアの至る所に指蛇を放っていておれの行動を把握している可能性がある。おれはあいつを半ば騙して世界蛇の牙シェムロムを入手したようなもんだ。どんな恨みを買っているか分からないからな。警戒した方がいいと思うんだ」
「なるほど。それは警戒が必要だな。そこで我に頼み事か?」
「ああ」
「分かった。元々あやつの分霊体であった我ならば、少しはヨルムンガンドの気配や感情も把握できよう。既に完全に切り離されている身だからあやつに操られる心配もない」
「頼んだ。今やつと戦うなんて事になったらアレックスを救うどころの話じゃなくなるからな」
「懸命な判断だねぇ」
オボロが話に割り込んできた。
「あんなもんと張り合うだけ労力の無駄だよ。奴は獣神だ。近寄らない方がいい」
「獣神?」
「そうだ。小童が戦ったフィニクスは、獣神よりも格下。眷属みたいなもんさ。強さはフィニクスとは雲泥の差だと思いな」
「なるほど。あのフェニックスより遥かに強いのか。今なら少しは上手く戦えそうだが、ヨルムンガンドは別格という事だな」
スノウには時間がない。
フランシア達他のレヴルストラメンバーが窮地にいるやも知れないのだ。
(焦っても仕方がない。今は行動と情報収集だ。一つ一つ対応するんだ)
スノウはホログラムに映し出されたホドのマップに結界杭を記した。
「緋市と素市に結界杭‥‥今更だが、4つのホドカンはほぼ正方形の位置に配置されているんだな。4つのホドカンに結界杭があるとしたら、その中、つまり正方形の中に何かを閉じ込めとうとしている、もしくは正方形の中を守っているって事だよな‥‥そしてこの点が巨大亀‥‥正方形の中にいる‥‥関連はあるかもな」
これ以上は推測でしかないため、スノウは考えるのをやめ、漆市到着までの間休養を取る事にした。
(しかし、おれがヴィマナの船長か‥‥そんながらじゃないし、やっぱりこの船の船長はアレックスだよな)
「待ってろよアレックス」
スノウはそのまま眠りについた。
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