表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
919/1109

<ケセド編> 176.越界

176.越界


 バシュゥゥゥゥゥ!!


 浮き上がった地面の側面から蒸気が噴き出る。

 ヘラクレスはさらに針を回していく。

 すると、せり上がった地面がさらに上がっていく。

 もう1回転すると、せり上がった地面の下に螺旋階段が現れた。


 「開いたな」

 「ああ」

 「下へ降りてみよう」


 スノウたちは螺旋階段を下っていく。

 降りると直径20メートルほどのドーム状の空間となっていた。

 中央に黒曜石のような質感で作られた細長い直方体があった。

 全員が内部に入ると、入り口が自動で閉じられ、天井が光り出した。



 「すごいな天井全体が明るいぞ」

 「質感は壁だが、光を発している。こんな技術日本にもなかったな。明らかに魔法じゃないことを考えると相当高度な科学文明によって造られたものに思える」


 スノウは天井を見上げながら言った。


 「こっち見てください!」


 ソニックの発言に皆声のした方へと集まる。

 そこは中央の直方体だった。

 ドーム室内の中央にあり丁度へそのあたりまで伸びている黒曜石で出来ているような見た目の直方体だが、突如上面に文字のようなものが浮かび上がったのだ。

 スノウがその文字に触れるとドームの壁面に360度全方向一斉に何かが映し出された。


 『!!』

 「これ、ヒンノムのいろんな場所じゃないですか?」

 「まるでライブカメラだな」

 「ここで監視しているやつがいたとか?」

 「あそこを見ろ」


 皆シルゼヴァの指さす方を見た。

 そこには円の図形が横一線に並んでいる画面があった。

 円一つ一つに文字とも記号とも言えるものが添えられている。

 その中の一つが赤くハッチングされていた。


 「‥‥ケ‥セド‥‥読める‥なぜか読めるぞこの文字!」

 「マジかスノウ!俺には全くさっぱり読めん文字なんだが!」


 ヘラクレスの発言に皆軽く頷いている。

 どうやらスノウ以外には解読できない文字のようだった。


 「いや、読めるだけじゃない。おれはこの文字をどこかで見たことがある‥‥たしかティフェレトの禁断区域‥‥あそこにも超高度文明の名残りみたいなのがあった。これは同じ超古代文明が造ったものなのかもしれない」

 「超古代文明か。なるほど興味深いな。おそらくこれがスメラギの言っていた装置なのだろう。スクリーンに映し出されたもの見ながら越界したい場所を選択し飛ばしてくれるようだな。他には何と書いてあるのだ?」

 「ネツァク、ティフェレト、ケテル、ビナー、コクマ、ゲブラー、マルクト‥‥ホド‥ホドが選択肢にあるってことか!」

 「ここケセドを加えて9つ。やはりこれはハノキアを示しているようだ。確かスメラギの話では、越界のためにコードを解析するとか何とか言っていたな?膨大な情報量を処理する必要があるということだが、誰がそれを解くのだ?言っておくが俺ならば出来るがやらんぞ。面倒だからな」

 「ははは‥大丈夫だ。演算能力に長けているやつにお願いするつもりだ。今から呼んでくる。しばらくここで待っていてくれ」


 そう言うとスノウは地下ドームから出て行った。


・・・・・


 3時間後。

 ドーム空間に突如転移魔法陣が出現した。


 シュバババァァン‥‥


 その中から出てきたのはスノウだった。

 そしてその後からもう1人。

 出てきたのはアラドゥだった。


 「遅かったじゃないか」

 「退屈で死にそうだったぞ」

 「アラドゥ!アラドゥじゃないか!なるほど、アラドゥなら膨大な情報をちゃちゃっと計算してくれそうだな」


 スノウが連れてきたのはアラドゥだったのを見て、ワサンとヘラクレスが腕を組みながら言った。


 「アラドゥ、早速ですまないが、この画面を見てくれ」


 スノウはハノキアが写されているスクリーンを示した。


 「‥‥‥‥」


 アラドゥは形状を七角形に変化させた。

 直方体の装置らしきものも観察している。

 アラドゥの体から小さな立方体が連なって無数の触手のようになったものが出現し、黒い直方体の装置に触れ、操作し始めた。

 スクリーンに映し出されている映像に変化が現れ始めた。

 平面に映し出されている映像が、突如ホログラムのように立体的になってせり出てきた。

 ハノキアの9つの世界を示している球体が立体的に配置され、それらを結ぶ線が走りだす。


 「仕組ミハ理解シタ。ドノ世界ヘ行キタイノダ」

 『!!』


 あっという間にアラドゥは古代の装置の仕組みを理解し操作できる状態となった。


 「ハノキアにある世界のどこにでも越界できるのか?」

 「ソウダ。ハノキアノ世界一ツ一ツノドノ世界ヘモ行クコトガデキル。。ソコニハ36通リノ “ルート” ガ存在スル。ソシテ、スメラギノ理論ニアル根源世界(ルートワールド)ト、並行世界(パラレルワールド)デ2通リ、合計72通リノ “ルート” ガ存在スルコトニナル。ソノ “コード” ハ全テ理解シタ」

 「72通り‥‥そんなにあったんだな。だが今まで並行世界(パラレルワールド)に紛れ込まなかったのは奇跡だな」

 「いや、わからんぞスノウ」


 シルゼヴァが割って入ってきた。


 「今まで辿ってきた世界の中には並行世界(パラレルワールド)もあったかもしれん。俺たちが気づいていないだけでな。並行世界(パラレルワールド)の収束に出会わなかっただけという可能性だ」

 「おれが辿ってきた道、例えばホドも並行世界(パラレルワールド)だった可能性があるってことか?!」

 「その通りだ」

 「‥‥‥‥」


 スノウはむしろホドでの出来事が並行世界(パラレルワールド)であって欲しいと思った。

 三足烏(サンズウー)・烈によってレヴルストラ1stは壊滅状態に追い込まれエントワが命を落とした歴史が何者かが作り上げた並行世界(パラレルワールド)の部分的な出来事であれば、根源世界(ルートワールド)では別の歴史が流れており、レヴルストラ1stの面々は無事でいる可能性があるからだ。


 「とにかく行き先を選べスノウ。俺たちはお前の決定に従って共に越界する覚悟だ。アラドゥのお陰で根源世界(ルートワールド)並行世界(パラレルワールド)が選択できることが分かった。これは大きな安心材料だ」

 「安心スルノハ危険ダ、シルゼヴァ」

 「どういう意味だアラドゥ」

 「コノ装置ニアル越界プロセスノアルゴリズムニ組ミ込マレテイル変数ニ、気ニナル情報ガアルノダ」

 「それは何だ?」

 「“フォードメーカー” トイウ存在ダ」

 「フォードメーカー!」


 スノウは驚きの声をあげた。


 「そういえばスノウ、お前はフォードメーカーとやらに遭遇していたな」

 「ああ。おれが会ったのは2体。ネミナータってやつとマハビラとかいうやつだ。ネミナータは痩せこけて悲しい顔をした不気味なやつでティフェレトからホドへ越界しようとしたおれをゲブラーへ送った。マハビラは腕が4本ある怒りの顔をしたやつでケテルからネツァクへ、しかもおれだけ皆とは違う時間軸へと飛ばした。厄介なやつらだ」

 「ネミナータ、マハビラ、パルシュヴァナータ、リシャバナタ。コノ4体ガ“フォードメーカー” ト呼バレテイル。72ノルートノドコニ出現スルノカ規則性ハ無イヨウダ。是等ノ目的ヤ遭遇条件ハ不明デアリ動キヲ読ムコトハ不可能ダ」

 「運任せってことかよ。だが、次にそいつが現れたら俺の拳で吹き飛ばしてやるぜ」


 ヘラクレスは力コブを盛り上がらせて言った。


 「時間軸のブロックを選択することも出来るか分からない。だが、おれ達はホドに向かう。遠回りしたが、きっとこのメンバーが揃うことがホドに戻る必要条件だったんじゃないかと思うんだ。何となくの感覚だが、次はフォードメーカーの邪魔は入らない気がする」

 「オレはお前と一緒ならどの世界でも構わない。ホドに戻ってエントワを救いたい気持ちは強いが、そのチャンスはいずれやってくるんじゃないかって思うんだ」

 「ワサン‥ありがとう。やはりおれはホドに行きたい。どんな状況が待っているにしろ、ホドにいる仲間たちがどうなったのかを知るまで次の一歩を踏み出せないんだ」

 「分かったぜスノウ。オレはお前に着いていく。それだけだからな」


 スノウは軽く頷いた。


 「それじゃかアラドゥ、おれ達をホドへ送ってくれるか?」

 「了解した」


 そう言うとアラドゥは黒い直方体の操作盤を操作し始めた。


 ボワァァァァン‥‥


 床に円形に光る場所が出現した。


 「ソノ円ノ中ニ立テ」


 スノウ達はアラドゥの指示に従い光る円の中に立った。


 「ソレデハカウントダウンヲ始メル。準備ハ良イナ?」

 「もちろんだ」

 「スノウ、フランシア、ワサン、ソニックトソニア、シンザ、ルナリ、シルゼヴァ、ヘラクレス、アリオクヲ、ホド根源世界(ルートワールド)ヘト越界転送スル。コレヨリ、カウントダウン開始‥10‥‥9‥‥8‥‥7‥‥」

 「アラドゥ!」

 「6‥‥5‥‥4‥‥」


 スノウの声に反応することなくアラドゥはカウントダウンを始めた。


 「アラドゥ!ありがとう!感謝する!」

 「3‥‥2‥‥1‥‥」


 最後にアラドゥは八角形の形状に変化した。


 「0」


 バシュゥゥゥン‥‥ヒュゥゥゥゥゥン‥‥


 スノウ達の姿はゆっくりとかき消えた。




いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

これで一旦ケセド編は終了です。

また戻ってくることになりますがまだまだ先の話です。

次話からはホド編 第2章がスタートします。

皆さんに楽しんでいただけるよう頑張りたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ