<ケセド編> 159.復活
159.復活
ヒュゥゥン‥‥スタ‥
「スノウ!」
「シルゼヴァ!ヘラクレス!」
ガシッ!!
スノウはシルゼヴァ達のところへ着地すると二人と兄弟握手を交わした。
「この時をどんだけ待ち侘びたか、この野郎!」
「お前のいない旅はスリルがないつまらんものだったぞ」
「相変わらずだな二人とも!」
ケテルからネツァクに越界する際に逸れて以来の数年ぶりの再会だった。
「しかしよく小片の破壊者を倒せたな」
スノウの嬉しそうな顔で言った言葉にヘラクレスはドヤ顔になったがその直後脇腹にシルゼヴァの強烈なパンチが入った。
ドス!
「うぐっ!」
「お前の!」
ドス!
「功績!」
ドス!
「じゃ!」
ドス!
「ない!」
ドス!
「だろうが!」
ヘラクレスの腹にシルゼヴァの強烈なパンチが何度も叩き込まれた。
その懐かしい光景が見られてスノウは嬉しくなった。
「積もる話もあるがこいつの回復もある。一旦仲間のいるところへ行きたいんだがもちろん一緒に来るよな?」
スノウは背中に背負っているシャーヴァルを目で示しながら言った。
「当たり前だろう。無意味な質問をするなスノウ」
「ははは、そうだよな!」
スノウはシャーヴァルを背負って風魔法で浮遊し始めた。
シルゼヴァもまた風魔法で浮遊し始めた。
「お、おい!もしかして俺を置いていくつもりじゃないだろうな!」
「置いていくつもりはない。お前も飛んで付いてくればいいだけのことだ」
「俺が魔法使えねぇの知ってんだろ!」
「使えないのではない。下手なのだ。それも恐ろしくな」
「う、うるせぇ!俺を背負ってけシルズ!」
「お前は馬鹿だ。俺が何故お前を背負わなければならんのだ。お前は飛べない芋虫をいちいち背負って飛ぶのか?」
「例えの意味がわからねぇんだよ!兎に角背負ってけ!」
「断る。俺の背中は俺だけのものだ」
「はぁ?!意味分からねぇ!」
ヒュゥゥン!
「ハークお前は自慢のその足で走って来るがいい」
スノウとシルゼヴァはワサン達がいる方へと飛行して向かった。
「ふ、ふざけんなぁ!」
ガララ‥‥
ヘラクレスの大声に小片の破壊者の残骸が崩れた。
「しかたねぇ。走るか‥」
ボコポキ!ポキポキ!
ヘラクレスは指を鳴らして準備運動を始めた。
「‥‥‥‥」
一瞬辺りが静寂に包まれた。
「いや、おい!どこに行けばいいんだよ!」
ガララ‥‥
ヘラクレスはツッコミを入れたが小片の破壊者の残骸が崩れただけであった。
・・・・・
「スノウ!おお!シルゼヴァじゃないか!」
仲間のいる場所へと飛行してきたスノウとシルゼヴァをワサン達が出迎えた。
「しかし突然あの怪物が崩れるとは!スノウ、お前がやったのか?」
「いや、シルゼヴァとヘラクレスの二人だ」
「ははは‥‥最早人じゃねぇな」
「当たり前だぞワサン。俺は半神だ」
「い、いやそう言う意味じゃないんだがな」
ワサンは苦笑いした。
「その者は誰じゃ?」
イリディアが前に出てきて言った。
横にカディールがおり、警戒している。
側にいるだけでシルゼヴァの戦闘力の高さが分かったのだろう。
スノウが紹介し始めた。
「彼はシルゼヴァだ。そして後から大男が来るがそいつはヘラクレス。二人とも神の血を宿す半神でおれ達レヴルストラの仲間だ。二人とも恐ろしく強いが仲間だから警戒の必要はない」
「そうか。安心したぞ。小片の破壊者を破壊したのも彼等か?」
「そうだ」
「そうか。シルゼヴァとやら、妾はイリディア。そしてこちらの者は従者のカディールじゃ。世界の危機を救ってくれた事、礼を言う」
「礼は不要だイリディア。俺には小片の破壊者などどうでもいい。小煩かったから破壊しただけのことだ。お前は蝿が目の前を飛んでいたら払い除けるだろう?それと同じだ。だから礼など不要だ」
『‥‥‥‥』
イリディアはカディールと顔を見合わせた後、スノウを見た。
スノウは苦笑いしていた。
「あっはっは!何とも豪快な男じゃ!惚れてしまいそうだわ!」
「そうだろうな。皆俺に惚れるぞ」
「いや、それはないぞシルゼヴァ。お前に付いていける女性は見たことがないからな」
「鈍感なお前が言うなスノウ」
「はぁ?!おれは鈍感じゃないぞ」
『いいや鈍感だ‥‥』
シルゼヴァ、ワサン、ソニック、シンザが口を揃えて言った。
「お、お前ら‥」
「はっはっは!愉快な仲間じゃのう。じゃがキュリアの団欒はそれくらいにしてお前が背負っている男はシャーヴァルか?」
「ああそうだ」
スノウはゆっくりと地面にシャーヴァルを寝かせた。
被っている兜に複数付いている目は全て閉じられており、本人は気絶していると思われた。
「ふざけた兜を被っているな。脱がすか」
ワサンがシャーヴァルの兜を脱がそうとするが脱がすことが出来なかった。
むしろ周囲の皮が兜の内側と一体化しているかのように引っ張られている。
「何だこれ」
イリディアは兜を調べた。
「ふむ。興味深いな。おそらく複数の目を視神経と繋いでいるのじゃろう。頭部の一部が兜と一体化しているのかもしれぬな」
「何だかよく分からんが不気味な技術だな。それよりこいつ助かるのか?」
「分からない。回復魔法も効かない。おそらく胸に埋まってるこの大きな赤い結晶体が原因だと思う」
スノウの言葉に反応し、イリディア達はシャーヴァルの胸に埋まっている赤色結晶を見た。
「何と禍々しい。こやつの血液で出来たもののようじゃが、濁り、得体の知れぬものが混ざりあっておる。しかもこの結晶、体と神経で繋がっているようじゃ。強引に引き抜いたら死ぬ」
イリディアの言葉に皆複雑な思いでシャーヴァルを見ていた。
「自業自得だな。世界をこんなにまで破壊し尽くしたんだぜ?その報いと言われても仕方ねぇよ」
「この世界を手に入れるのに自分の全てを賭けたんだ。悔いもないだろう」
ガバッ!ガシッ!
突如ライドウが前に出てシャーヴァルの兜を掴んで持ち上げた。
「貴様、ハチ様やアラドゥ、兄弟達に何かあってみろ!八つ裂きにしてやる。楽には死ねねぇから覚悟しておけ!」
ガシッ‥‥
「止めるのかお前!」
シャーヴァルの兜を掴むライドウの手をスノウが軽く掴んだ。
スノウは首を横に振りながら言った。
「止めないさ。こいつには責任をとってもらう。だから今は殺すな。こいつがしでかした全ての罪を目に焼き付けさせてからじゃなきゃダメだってことだ」
「くっ!」
ライドウは手を離した。
「ククク‥‥」
『!』
気を失っていたと思われたシャーヴァルは目を覚ましていた。
兜にある複数の目が一斉に開き、ライドウを見ている。
「クカカ!全ての罪を目に焼き付けるだと?馬鹿馬鹿しい。この世界に罪も罰もあるものか。あるのは勝つか負けるか、支配するかされるか、そして生きるか死ぬかだ。勝って支配し生き続ける限りは何をしても許される。負けて支配されて死んだらそこで終わりだ。俺の目に焼き付くものなど何もない」
「貴様!!」
シャーヴァルの言葉に怒りを爆発させる寸前の状態でライドウが再び兜を掴んで引っ張り上げて叫んだ。
シャーヴァルはぐったりとしつつも微かに不敵な笑いを見せた。
「俺は間も無く死ぬだろう。そうすれば終わりだ。だが悔いはない。十分勝ち、支配し、生きた。楽しい人生だったぞ、クカカ」
シャキン!グィィ‥‥
「止めるなスノウ。俺は今こいつを殺す。俺たちの大事なヒンノムの世界をこんなにしやがって。その罪だけで死ぬには十分だ」
「待てライドウ!」
ヒュゥゥン‥‥
『?!』
ライドウの刃がシャーヴァルの首元に刺さる直前、突如遠くから風切り音が聞こえてきた。
皆一斉に空を見上げる。
ヒュゥゥン!ズドォン!
『!!』
ライドウの面前で何かが爆発したような衝撃が発生した。
周囲に土埃が立ち込める。
一同警戒する中スノウが風魔法で土煙を吹き飛ばす。
風に流されて土煙が去った後現れたのはヘラクレスだった。
「ふぅ‥上手く着地出来たぜ。俺を置いてけぼりにしやがったからな。少し驚かせてやろうと思ったんだがカッコよかったろ?ワッハッハ!」
『‥‥‥‥』
全員がヘラクレスとは別の場所に視線を向けている。
ヘラクレスはその視線の先を辿ってみるがそれは自分の左手だった。
正確には左手が触れている部分だったのだが、そこにはシャーヴァルがいた。
「マジか‥‥」
「信じられん‥‥」
「事故とはいえ呆気なかったですね‥‥」
ワサン、カディール、シンザがボソリと言った。
皆も頷いている。
何と着地の時にヘラクレスの左手がシャーヴァル胸にある赤色結晶体に当たっていたのだ。
ヘラクレス本人は気づいていなかったが相当な衝撃が赤色結晶体に与えられていた。
パリリン‥‥
『あ!』
赤色結晶体に亀裂が入った。
パキキ‥ピキ‥パリィィン!
『ああああ!』
赤色結晶体が割れてしまった。
「うぐぇぇ!がっばぁ!」
シャーヴァルは血を吐き出した。
急いでスノウとイリディアが回復魔法を施す。
砕けた赤色結晶体が溶けていくようにシャーヴァルの体に染み込んでいき、傷が塞がっていく。
シュゥゥゥゥ‥‥
完全に傷が塞がった。
「げっほげほ!‥‥‥‥」
シャーヴァルは胸の部分を触る。
「結晶体が‥‥傷も癒えている‥‥どう言うことだ?」
完治したように思える胸部に触れながら戸惑っているシャーヴァルを見てシルゼヴァが話しかけてた。
「赤色結晶体は元々お前の血液だ。ハークが着地と共にお前の結晶体に手をついた時、奇跡的に巨大な骨の蛇の神経触手を切断した形となったようだな。結晶体が割れた際に骨の蛇の神経触手が流れ落ち、そしてスノウとイリディアが回復魔法をかけたタイミングも適切だったのだろう。骨の蛇の神経触手がこの男の体内に入り込む前に傷を癒やしたようだ」
「つまり回復したってことか?」
「そうだ」
スノウはライドウを見た。
「この世界を破壊した罪と罰をしっかりと受けてもらえるぞライドウ」
「そのようだな。さっき言った事、俺は忘れてないからな」
「チッ‥‥愚民どもが‥‥。俺を生かした事を後悔する日が必ず来る。それまで精々支配者を気取っていればいい」
「口に減らないやつだな」
ライドウは怒りを抑えながら言った。
「これで全員揃ったな」
スノウが周りを見渡して言ったのだが、少し離れた場所でうなだれている3人の姿目に入ってきた。
「あそこで寝ているのは誰だ?」
スノウ言葉に振り向いたアールマンが答える。
「ジェイコブ総長だ。アリオクの神の毒を取り除くのに自らを犠牲にした」
「な!」
スノウはアリオクを見た。
まだ回復しきっていないようだが、傷は癒えているのが見えた。
「ジェイコブは?!」
スノウの言葉にアールマンたちは首を小さく振った。
それを見てスノウはジェイコブの横に近寄る。
寝かされているジェイコブの横で膝を付いて顔を覗き込んだスノウは不思議そうな表情を見せた。
「‥‥‥‥」
スノウはジェイコブをじっと見つめながら首筋の脈を確認する。
「何か変だぞ。確かに脈は止まっているし、体も冷たい。でも何故か生きている気がするんだ」
「気休めはよしてくれ」
「スノウよ。我らは副総長に続き総長まで失ったのだ。我らの苦しみを愚弄するような言葉は謹んで頂きたい」
アールマンに続きフィリップが涙ながらに訴えるように言った。
「いや、スノウの言うことは正しいやも知れぬぞ」
『?!』
イリディアが言った言葉に皆注目した。
「なるほど、これは面白いぞ。生きる屍。いや天使と同じような生命反応とでも言うべきか。何があったか知らんがこのニンゲンは最早ニンゲンではない。心臓を動かす機能は停止しているからそれを死と言うなら死んでいるわけだ。だが別のエネルギーが体を循環し始めている。つまり血液の循環とは別のエネルギーによって生きているのと同じ状態が保たれていると言う事だ。ニンゲンがこのような状態になるのは極めて稀だな」
いつのまにかジェイコブの横で体を調べていたシルゼヴァが言った。
その直後、突然ジェイコブは起き上がった。
ムク‥‥
『総長!』
アールマンたちは驚きの表情で叫んだ。
ジェイコブはゆっくりと立ち上がり自分の手のひらを見ている。
「どうだ?視力はあるか?」
シルゼヴァの言葉に反応したジェイコブはゆっくりとシルゼヴァの顔を見た。
「君は‥‥誰だ?」
『おおお!』
アールマンたちはジェイコブの側にいき、彼の手を取り復活を喜んだ。
「お前たち‥‥どうしたんだ?騒々しいな。ここは一体どこだ?」
状況が飲み込めないジェイコブとは裏腹にアールマンたちは涙を流しながらジェイコブの無事を喜んだ。
シルゼヴァはスノウイリディアの側に近寄り説明し始めた。
「あの物体は神か天使の何らかの武器やアイテムに触れたのか?」
「俺が話そう」
万全ではないアリオクが表情を変えずに話しかけてきた。
「お前は人族ではないな?」
「彼はアリオク。魔王だ。それも大魔王級のな。訳あっておれ達と行動を共にしている」
スノウがシルゼヴァにアリオクを紹介した。
「なるほど」
シルゼヴァは全く臆する事なくアリオクを見つめた。
それに対しアリオクが話を始めた。
「お前は半神だと言ったな。どこかそれ以上の何かを感じるがまあいい。改めて名を名乗ろう俺はアリオクだ。それでジェイコブに起こった事だが、俺に放たれた神の弓の武具シェキナーの弓矢に含まれた神の毒を彼が吸い出したのだ。吐き出してはいたが、少しでも体内に入ればその体は蝕まれる。ニンゲンであればほぼ死すほどの効力がある。だがイリディアが効果を弱らせたこととジェイコブ自身がその苦しみを乗り越えようと耐え抜いた結果、神の毒に抗えなかった体は機能停止し、抗い切った意識だけが残ったのだ。そして彼の意識は神の毒を中和して体内に定着させた。つまり、彼は不死の体を手に入れたと言うことだ」
「ほう‥‥ならば別途解剖でもするかな」
「ダメだって!」
「ほんの僅かな細胞を検体として貰えればいいのだ」
「その程度までだぞ!」
「分かっている。安心しろ」
シルゼヴァは嬉しそうにスノウに言った。
スノウは話題を変える意味も含め、全員に話しかけた。
「よし!次のミッションは別途考えるとして、一旦何処かの街へ行こう。状況を整理しておれ達にできる事を決めたい」
「それならば痛みの街ポロエテだ」
ライドウが割り込むように主張した。
「分かった。取り敢えずポロエテへ出発しよう!」
スノウ達はポロエテを目指して出発した。
いつも読んで頂き本当にありがとうございます。




