<ケセド編> 152.大天使ザドキエル
152.大天使ザドキエル
スタ‥‥
スノウはイシュタルたちの側に着地した。
「誰だあの4枚羽根の天使は」
「あれがザドキエルだ」
スノウの目線の先に浮遊しているのは美しい大きな4枚の翼を持ち、長い白髪を風に靡かせて眩いほどの荘厳な光を発している大天使ザドキエルだった。
「ザドキエル‥‥主天使の長‥‥」
「あれが登場したということはいよいよ大群が押し寄せてくるね」
「主天使軍か」
「そうだ。すまないが第2陣に合図を送ってくれるか?」
「待て」
スノウはイシュタルの依頼に待ったをかけた。
「第2陣は主天使軍が登場しきってからにする。やつらがどれだけの火力と攻撃方法を持っているのか分からないからな」
「なるほど、その通りだな。それじゃぁこちらかも先ほどの光の矢のお返しをしなければならないな。それこそやつらの手の内を全て出させるほどにね」
イシュタルの言葉に反応し、アリオクが前に出てきた。
「先陣は俺が担おう」
ズン!
アリオクが魔長刀、獅子玄常を地面に突き刺した。
そして着ている黒い着物の上半身だけを脱いだ。
「ふん!」
青白いが筋骨隆々な体にさらに力が入り、血管が浮き出ている。
背中を丸めるような体勢をとると、突如背中が隆起してきた。
ドボォォシュアァァ!
背中から悪魔特有の蝙蝠のような見た目の巨大な翼が生えた。
体液が翼が生えるのに合わせて飛び散った。
その姿はまだ真の姿ではないと分かってはいたが、魔王たる禍々しさと貫禄が見てとれた。
まるで人間であるような錯覚を持っていたスノウたちはアリオクが魔王であることを再認識した。
ガシ‥
アリオクは獅子玄常を握り、しゃがみ込むと凄まじい跳躍を見せた。
ヒュゥゥゥン!
「ザドキエル!」
上空のザドキエル目掛けて飛行しながらアリオクは魔長刀振り上げた。
「貴方は魔王アリオク。我らが主に背いて堕天させられ土を舐めた旧神。何故ここにいるのかは後で聞くとして、まずは私に刃を向けようとしていること、後悔させてあげましょう」
ビュァァン‥‥
ザドキエルは右手に突如美しく金色に輝く長棒を出現させた。
ギュワァン‥‥ガシッ!
ガキィィィィィン!!
アリオクの魔長刀の一太刀を金の長棒で受けた。
キィィン!!
ビュァァァァン‥‥
アリオクがザドキエルを長棒ごと跳ね返した直後、周囲に複数のザドキエルが出現した。
「合計20体。大方キュリエルの作り出した幻影だろう。そのような小細工、俺には効かない。月風」
バシュゥゥゥゥゥゥゥ!!
シャババババババババババン!!
アリオクは魔長刀を凄まじい勢いで一振りすると三日月の状態の斬撃エネルギー発せられ、20体のザドキエルを切断し消し去った。
グザリォ!
「!」
アリオクの腹部から光る矢が食い破るように飛び出て来た。
「あのような幻影で貴方をどうこう出来るとは思っていませんよ。ほんの一瞬隙が出来れば良かったのです」
「不覚。だが、たかが矢だ」
「おっと。無理に引き抜かない方がいいですよ。神の作りし矢です。あのルシファーにも傷を負わせたことのある矢と言えばその威力は分かるでしょう?」
「シェキナーか」
「ほう、博識ですね。アベルに鍛えさえ我が主人が名を刻まれ力をお注ぎになった弓矢です。流石にルシファーを殺すことは出来ませんが、傷をつけたことによって隙が生まれ、ルシファーは敗れました」
「あの方を追い詰めたのはミカエルだったはずだが?」
「ふん!全く真実を知らない者には吐き気がしますね。直接的には小賢しい盗人ミカエルの攻撃がルシファーを堕としたとなっていますが、それが出来たのは全て我が主人の力が宿りし神の剣を隙をついて突き刺しただけのこと。宝物庫から盗んでまで‥ですが。従ってあれは盗人の大罪を犯した罰すべきアークエンジェルです」
「随分とお怒りじゃないか」
「お喋りが過ぎますね。少し黙っていてもらいましょう」
「!!」
突き刺さっている矢が光り出す。
声にこそ出さないがアリオクの全身には凄まじい激痛が走っていた。
ズバァッ!!
「うぐぁ!」
突如ザドキエルが呻吟した。
「くっ‥貴方は‥‥!」
背後にスノウがフラガラッハを振り上げた状態で浮遊していた。
美しい翼の一枚がスノウの斬撃によって斬られていた。
「お前こそ隙だらけだ」
怒りの表情をみせつつザドキエルは距離をとった。
3枚の翼となったが飛行に影響はない。
「貴方は‥‥アノマリー、スノウ・ウルスラグナ。そう言えばこの地に紛れ込んでいましたね。異世界から来た魔王アモンの体を乗っ取った厄介なニンゲンを逃した罪は非常に重い。他者の精神世界へ意識を移す力はニンゲンには過ぎたもの。神への冒涜です。あれはあれで対処しますが、まずは貴方です。このように背後から斬りたてるとは。まるでミカエルのようですね。狡賢く傲慢だ。まさにニンゲンそのものです」
「褒め言葉を受け取っておく。シア頼む!」
「はい!」
ガシッ!
フランシアはアリオクを掴み地上へと戻った。
「もう油断はありません。油断がないということは隙も生まれない。隙がなければ貴方ごときが私に傷を負わすことは二度とない。断言しましょう。二度とありません」
「だろうな」
「随分と物分かりがよいですね」
「勘違いするなよ。傷なんかで済む攻撃はしないって意味だよ。お前に一撃を喰らわす時はお前が死ぬ時だ」
「クカカカ!ニンゲンの分際でこの主天使を束ねる大天使の私を殺すと言うのですか?身の程知らずもそこまで来ると喜劇です」
バシュオォォォォォォ‥‥ドッゴォォン!バリバリバリ!
突如黒雲が天を覆い、凄まじい暴風豪雷雨が吹き荒れ始めた。
キュリエルの能力であることは明らかだったが、スノウはそれを止めることが出来ずにいた。
何故なら目の前のザドキエルから凄まじい殺気のオーラが放たれていたからだ。
ブゥゥワァァァァン‥‥
弓を構えたザドキエルはゆっくりと1回転した。
1回転の軌道に静止画を記憶させているかのように無数のザドキエルが回転の軌道を描く形で出現した。
『さぁ死になさい、スノウ・ウルスラグナ。神の意に背く不敬の者よ。貴方に神の慈悲は与えられない』
無数のザドキエルが一斉に矢を放った。
「ちっ!」
スノウは凄まじい速さで飛行し始めた。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!
まるで追跡弾のように無数の光る矢がスノウを追いかける。
ババババババババババァァァン!!
スノウは飛行しながらジオ・エクスプロージョンを複数放ち矢を消し去ろうとする。
「ちっ!」
だが、光る矢は消えることなくスノウをさらにスピードを上げて追いかけてくる。
ドドドォォォォン!
スノウはリゾーマタ複合バリアクラス4魔法のバリアオブオールエレメンツを放った。
火・水・土・風のエレメントで防御する高等バリア魔法で、複雑な属性攻撃を防ぐことが可能な防御壁だ。
バドゴォォォォン!!
「これもだめかよ!」
バリアオブオールエレメンツの壁は光の矢で破壊されてしまった。
ギュゥゥゥゥン!!
スノウは方向を変えて地面に向かって凄まじい速さで降下し始めた。
無数の光の矢もスノウを追って飛んでいく。
「おおお!」
ギュウゥゥン!!
スノウは地面スレスレで方向を変えた。
ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス!!
殆どの矢が地面に突き刺さった。
残る光の矢は3本に減っているが、スノウをさらにスピードを上げて追跡してくる。
「これはどうだ!」
スノウは右手からリゾーマタ雷系クラス4魔法ゼノスを発動した。
無数の超電撃の矢が3本の矢に向かって飛んでいく。
ズドゴゴォォォォン!!
凄まじい超電撃の破壊波が3本の光の矢を捉え直撃した。
光の矢は消え去った。
「馬鹿な!神の矢が消し去られるなど!」
ザドキエルは驚きの声をあげた。
ズザァァ!!
スノウは地面に着地してイシュタル達のところへと駆け寄った。
既にフランシアがアリオクを連れて戻っており、イシュタルが光の矢の能力を解除しようと複数の魔法を詠唱している。
スノウはその状況を横目で見つつ上空に浮遊しているザドキエルとキュリエルを見た。
「随分と手こずらせてくれましたね。でももう終いです」
そう言うとザドキエルは右手をあげた。
そして何かの号令のように手を振り下ろした。
ギュワァァァァァァン‥‥
黒雲で覆われている空の一部が一気に開け澄み渡る青空が見え始めた。
「出よ我が精鋭達よ」
パァァァァァァァ‥‥
突如開けている青空が見える空間から大きな光の筋が差し込んできた。
スノウたちはその光の筋を見上げていた。
その中で驚いたようにライドウが小声で言った。
「おい、あれ光の筋じゃないぞ。無数の光っている何かの集まりだ。まるで無数の光が川を作っているような感じだ」
「何?!」
スノウはスメラギスコープで光の筋を見た。
「!!」
スノウはスメラギスコープをポーチにしまいながら言った。
「来たぞ」
「主天使軍ですね?」
「ああ」
スノウ達は武器を握りしめて防御体勢をとりながら光の筋を見上げた。
スノウ達の視界の先にある光の筋を遮るようにザドキエルが浮遊しながら言った。
「さぁイシュタル。そしてニンゲンたち。神の意に背いた罪を悔いて死になさい」
ザドキエルは3枚の美しい翼をはためかせながら右手を挙げて号令をかけた。
「我が精鋭達よ!神に背く不届き者たちに裁きの鉄槌を下します!」
『オオオオオオオオオオ!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥‥
高いとも低いとも分からない不気味な声が大波となって押し寄せるような雄叫びが地面を揺らした。
いつも読んで下さって本当にありがとうございます。




