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<ケセド編> 74.調査隊

74.調査隊


 屍の街デフレテに拠点を構える元王のイーギル・グル・シャーヴァル総統率いるシャーヴァル軍。

 偽善の街クルエテに陣を敷くマーティス・ベルガー率いる神託者教会。

 無感動の街アディシェス統治する大魔王ディアボロス率いる悪魔の軍勢。

 シャーヴァル、ベルガー共にこの3大勢力は認識していた。

 だが、ディアボロスだけは第4の勢力を一番の脅威と感じていた。

 痛みの街ポロエテに拠点を置いているスノウ、魔女イリディア、武人カディール、万空寺の大範士シャルマーニ、そしてケルベロスの成れの果てハチ率いるクティロスたちの一団だ。

 当のスノウたちは自分たちがひとつの勢力になり得ている認識はなかったが、ハチの視た予知からディアボロス率いるアディシェス軍と無数の目を持つ古の軍隊、そして裏切りに塗れた者たちと戦うことになっているという認識だけはあった。

 そしてアディシェス以外については屍の街デフレテ、偽善の街クルエテを占拠することが予想できたため、どのような者たちが拠点を構えているのか調査しに行くことになったのだった。


――スノウたちに与えられた宿屋――


 宿屋の中で最も大きな部屋に全員集まっていた。


 「さて、誰が調査に行くかだね」

 「どうせ視えているんだろう?」


 スノウは何でもハチの予知に基づいて行動することに嫌気がさしていた。

 どこか操られている感覚があり不自由に感じていたのだ。


 ガタン!


 「貴様!ハチ様に向かって何て態度だ!」


 紅い甲殻のクティソスのライドウが席を勢いよく立って叫んだ。


 「やめておけライドウ。我らはスノウたちと共闘関係を約束した。それに認めたくはないが、彼らは我らよりも強い。そもそも我らの敵になり得る存在が他にいるのだ。いがみ合っている場合ではないぞ」

 「分かってる!だが、ハチ様への無礼の数々が俺には許せないんだ」

 「無礼とはお前こそ無礼だぞ。おれは別にハチを主人ともリーダーとも思っていない。立場はあくまで対等だ。おれから見ればハチもお前も同等だ。これはおれの目線であり、おれの理解だ。曲げるつもりはない。お前らの主従関係を押し付けられる義理もないからな。それに文句があるなら表へ出ろ。次は手加減しない」

 「何を!!」


 ライドウはスノウに掴み掛かろうとしたが、他のクティソスたちに抑えられた。

 ハチはそれを黙って見ている。

 

 「おい、ライドウ」


 黄色の甲殻のクティソスのベンテが椅子に浅くだらし無く座ったままドスの聞いた声で言った。


 「ハっさんの指示やろが。イキるのも勝手やが、俺らに迷惑かけんなら俺が黙ってねぇぞ」

 「なんだとベンテ!お前どっちの味方だ?!」

 「ハっさんとクティソスの味方や。やが、そこからはみ出るやつぁ俺は知らん。勝手にせいっちゅう話やが」

 「なんだと!」

 「やめろ!みっともないところ見せるんじゃないよ!」


 今度は白色の甲殻のサトが言った。

 女性の声ではあるが、重みというか凄みが感じられるものだった。

 その声にライドウもベンテも黙った。


 「あぁあ、サトちゃんを怒らせちゃったよ。面倒だよ?これ」

 

 ゴツン!


 「痛!何すんの!」


 「あんたまで調子に乗る必要はないの!」


 斜に構えた水色の甲殻を持った小柄なクティソスのカイトの発言にサトが窘めながらカイトの脳天にゲンコツを喰らわせた。


 「あの‥‥どうでもいいけどさっさと決めて休もうよ」


 やる気なさそうに発言したのは緑色の甲殻のウズメだった。


 「はぁ‥」


 バラバラな雰囲気の八色衆にイザナは頭を抱えながらため息をついた。


 「貴方が情けないなぁって顔するのも変よね?仲間なんだからもう少しぶつかってみなさいよ」


 イザナに言ったのは桃色の甲殻のベニだった。

 バツ悪そうにイザナは腕を組んで寝たふりをし始めた。

 八色衆と括られた8人はそれぞれが個性が強く、決して結束が固いとは思えなかった。


 「全く‥‥」

 「君たち‥‥戯れるのもそれくらいにしてくれよな?じゃないと怒りが‥‥限界を‥‥超えてしまうからねぇ!!」


 ハチの声が次第に大きく荒くなっていく。

 その声を聞いて八色衆は皆姿勢を正して黙って座った。


 シーーン‥‥


 ハ色衆が静まり返って数秒後、ハチの威圧的なオーラがおさまった。


 「さて、それじゃぁ調査に行ってもらう者だけど‥‥」

 「おれとそこの話の分かるやつ、ベンテと言ったか。彼と二人で調査に行くのはどうだ?」


 ハチが切り出す前にスノウが言った。

 どうにもハチの予知通りに動かされるのが気に食わないのだった。


 (どうせこれも既に視ているんだろうけど、あいつに言われる前に言えば、自分の意思に思えるからな)

「スノウ、提案ありがとう。だけど、もう一人追加させてもらえるかい?」

 「誰だ?」

 「ライドウだよ」

 「はぁ?!」

 

 べスノウとライドウが驚くなら分かるが真っ先に驚いたのはベンテだった。


 「ハっさん、何でですやの?!ライドウをスノウさんに近づけたら喧嘩になりますやが!俺いちいちそれ止めんの面倒やから勘弁すよ?!」


 そういうことかとスノウは理解した。

 ベンテは単に面倒を背負い込むのを嫌うだけの何事も簡単にこないしたい男なのだとスノウは自分の中のベンテの評価を上書きした。

 

 「僕の決めたことだよ。文句があるなら僕に言ってよ」


 (言ってるってのー!)


 ハチの無邪気な発言に全員が心の中でツッコミを入れた。

 結局スノウとベンテとライドウの3人で調査に出ることになった。


・・・・・


 移動すること1日。

 3人は偽善の街クルエテへと到着した。

 スノウだけでなく、ベンテ、ライドウの二人もリゾーマタの風魔法を使って飛行できるため、然程時間をかけずにクルエテに到着できたのだった。

 クティソスの二人はその姿を見られるのはまずいため、フード付きのローブを纏って姿が分からないようにして街へと入った。

  

 「スノウさん。調査すに入る前にクルエテにあるヨロズさんの店に寄るのがいいよ。ヨロズさんの店の従業員を逃すのもあるんやし、それにもし既に何らかの勢力がここに居座っているんなら情報も手に入るやろしね」

 「そうだな」


 スノウはベンテの意見に賛同しヨロズの店へと向かった。

 ライドウは終始不機嫌だった。

 高電圧フェンスで囲われた中心街の中にヨロズの店はあった。


「ごめんください」


 ガタタン!


 「出て行け!」


 ベンテがど店の扉を開けた瞬間、中から剣先が飛び出てきた。

 同時に奥から大声で威嚇する女性の声が聞こえてきた。


 「おわ!」


 ベンテは思わず仰け反って避けた。

 その表紙にろフードがめくれてベンテの顔が露わになった。


 「ベンちゃん?!」

 「その声、まさかユキちゃんかい?!」


 ベンテがユキちゃんと呼んだ女性はユキノミコという名のヨロズ屋の店主だった。

 女性だがガタイがよく、剣を持った構えもそれなりに剣術を鍛えたことが窺えるものだった。


 「さ!早く中へ!」


 3人は中へ通された。


 「一体何があったんやが?そんな物騒なもん客に向かって振り回し取ったら客足遠のくやろがい」

 「あんたは知らないんだね。今この街はおかしなことになってるんだよ」

 「何があったん?」

 「突然現れた神託者ベルガーとかいうやつがこの街を乗っ取っちまったんだよ」

 『!!』


 3人は驚いた。

 だがスノウだけは別の驚きの反応だった。


 (神託者!まさか神託院フラターの者か?!)


 3人はユキノミコに話を聞くことにした。


いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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