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<ケテル編> 193.代替半身

193.代替半身



 「次が来るぞ!」

 「キリがありません!次の攻撃に耐えきった後、こちらも攻撃を仕掛けましょう!」

 「その意見には賛成だね。破壊出来るか分からないが、あの棘を少しでもへし折れればこの攻撃の雨の量を少しでも減らせるよ」


 ヒュプノスの合図にティアマトが反応し、ペルセウスが同意した。

 ケテル連合部隊は銀の棘の球体(スピニースフィア)の攻撃に備えて構えた。

 無数の棘に蓄積された光子が超高熱を帯びて一斉に放たれる


 バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュゥゥン!!


 バババババババババババババババババババババババババババババン!!


 ケテル連合部隊の面々は凄まじい速さで動き光球を上空や真下に弾き返していく。


 「うおおおおお!」

 「うぐぁ!」

 「怯むんじゃねぞ!神の力ってのはその程度かよ!」

 「舐めるなぁ!!」


 バババババババババババババババババババババババババババババン!!


 光球一斉放射のあまりの威力に皆限界を迎えつつあった。

 セプテントリオンは既にミノス、オリオンが絶命していた。

 エークエスもエアが超高熱に耐えきれず蒸発して消滅していた。さらには油断して致命傷を負ったラハムとそれを助けようとして隙を突かれたラフムが被弾し、地上へ落下してしまっていた。

 ツィゴスも影響を受けており、タナトス、オネイロスが致命傷を負って地上に落下していた。

 それによって取りこぼされた光球が数発方々に散っていき、そのうちの三発が変風塔バベリアに飛来してきた。


 「防ぐぞ!」


 シルゼヴァの言葉にヘラクレス、シア、ワサン、ロプスが武器を構えて備える。


 バシュン!バゴン!ドゴン!


 見事弾き返し変風塔バベリアへの被弾を防いだ。


 「今回までは何とか防げているが、そろそろ向こうで防いでいるやつらも限界だろう?いい加減ヤバそうだな」

 「ヘラクレス、まだマスターを信じられないの?いい加減殺すわよ」

 「わ、分かったって!信じてるさ。俺ぁただ今目の前で起こっていることにコメントしてるだけだ」

 「それが無意味だって言ってるのよ」

 「フランシアの言っていることも単なる妄信って訳ではなさそうだ」


 シルゼヴァが遠くを指差して言った。

 その先にはメタトロンがいた。


・・・・・


 グググ!グギギ!


 「あがぁ!」

 「さぁカエーサル。半身としての役目を果たすのだ」


 メタトロンはまるでカエーサルの胸の中から何かを取り出そうとするかのようにさらに裂けた胸を開いていく。

 限界を越えたのか、カエーサルは意識を失った。

 首が頭部の重さを支えられず、カエーサルの頭は後ろにだらしなく倒れ緑色の長い髪が風に靡いている。

 次の瞬間、カエーサルの裂けた胸の隙間に深い闇が見えた。

 闇というより何もないまさに無という表現が適切な空間が見たのだ。

 そして無の奥からゆっくりとまるで目のような2つの光が現れ次第にはっきりとした輪郭を見せる。


 「な、なんだこれは‥‥?!」


 メタトロンは目を見開いてこれ以上ないほどの驚きの表情を見せた。

 カエーサルの胸を開いている手は震えていた。


 「貴様の申し入れを拒絶する。これ以上の攻撃は無意味だ」


 「うぐっ!!」


 突如、破壊的周波数のような声がメタトロンの頭に響いた。

 頭が割れそうになる衝撃の中、言葉は確実に聞き取ることができた。


 (な、何者だ?!)


 ググググ!


 カエーサルの開かれた胸が勝手に閉まっていく。


 「さ、させん!」


 メタトロンはカエーサルの胸を再度開くジェスチャーを見せる。


 「な、私の力が及ばないだと?!」


 グググ!


 カエーサルの胸は徐々に閉じていく。


 「やむを得ん!」


 メタトロンは直接指をカエーサルの裂けている胸の部分に突き刺した。

 そして思い切り力を込めて開いていく。


 「去れ」


 ズパン!!


 「ば、馬鹿な!」


 メタトロンの両手が一瞬にして切断された。


 ドン!


 意識のないはずのカエーサルからメタトロンの腹部目掛けて蹴りが飛んできた。

 メタトロンに弾かれるようにしてカエーサルは後方に落ちていく。


 (な、何と言うことだ!一体何が起こったのだ!)



 ズガガガガン!

 ガギギギン!


 「だめだ!この棘切ってもすぐに再生しちまうぞ!」

 「次が来るぞ!備えろ!」


 バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュゥゥン!!


 バババババババババババババババババババババババババババババン!!


 「ぐあぁぁ!」

 「こ、ここまでか!」



 「!!」


 背後ではケテル連合部隊が銀の棘の球体スピニースフィアの光球攻撃を防ぎきれずかなりのダメージを負っていた。


 ドッゴォォォォォン!!


 防げなかった光球が遠方で被弾し大きな爆発が起こった。

 防ぎきれなくてもその方向さえ変えられればそれぞれの拠点となっている都市への攻撃は免れることができたのだが、今回は二発全く触れることさえ出来ずに逃してしまった光球があった。

 ひとつはジジギーンの方向だった。


 「何と!我らの拠点が!」

 「許せません!」

 「あの大天使は何をしている?!」


 ドッゴォォォォン!


 そしてもう一つは人域シヴァルザの方向だった。


 「この調子じゃ次はさらに被害が拡大するぞ!」

 「だが、動きたくてもあのブラックホールの力が強まっていて、引っ張られて思うように動けなくなっているのです!」

 「言い訳なんて聞きたくねぇ!神なら神技シンギ使って何とかしろよ!」

 「無責任なことを言うな半神風情が!」


 ケテルの危機に対抗すべく集められたケテル連合部隊は、一時は結束が見られたものの、窮地に追いやられると勢力ごとの言い争いに発展してしまう脆弱さを持っていた。

 それを見たメタトロンはいよいよケテル完全消滅を防ぐ限界危険水域に到達したと理解した。


 「スノウ‥」


 キュィィィィィィィィィィン‥‥‥


 天界デヴァリエで神の咆哮生成器を操作しているスノウは突如自身の精神世界へと引き摺り込まれた。


 「!!‥‥ま、またか?!」

 「すまないスノウ」

 「ミトロ!」


 背後から話しかけてきたのはメタトロンだった。


 「一体これは?!」

 「安心してくれ。時を極限まで遅くしてお前の精神世界へと転移してきた。そう長くは保っていられないがな」

 「時を遅く?!‥‥ていうか、コードYHYAを起動するんじゃなかったのか?!一体何が起こっている?!」

 「そうか、お前には見えていなかったのか」

 「何がだ?!」

 「カエーサルの中に何か得体の知れない存在が巣食っている。あれは極めて危険な存在だと判断した。今後ハノキアにおいて最悪の脅威となろう。各世界を守護する仲間たちには後で伝えておくが、最後にお前だけには伝えておかなければと思ってこの時間を作った」

 「最後?!‥‥な、何言ってんだよ!最後って何だ?!何をする気だ?!」

 「スノウ、聞くのだ。私が見たあの存在‥‥完全なる “無” だった。あの虚無に飲み込まれたら魂そのものが消滅させられる。だが、今はまだ表に出て来られない状態のようだ。何かに寄生しハノキアを飲み込むだけの力が蓄積されるのを待っているかのようだった。‥‥スノウ、あれを目覚めさせてはならない。カエーサルを消滅させるのだ。カエーサルを殺してもだめだ。カエーサルごと消滅させなければならない。頼んだぞ」

 「無?!カエーサルに寄生している存在?お前一体何を見たんだ?!」

 「どうやら時間が来たようだ。これからエヘイエーを発動するが、私はその憑代の代替半身となる。私には十分な資格がないからほんの数秒の顕現となるだろう。スノウ、私の合図でコードYHYAを起動してくれ」

 「お前、それって‥‥」


 徐々にメタトロンの姿は透けてきた。


 「さらばだスノウ。使命を全うする事のためだけに機能してきた私の殺伐とした日々の中、お前とあの子との3人で過ごした時間は何よりもかけがえのないものだった。‥‥ふふふ、今のお前にその記憶が届いていないのは残念だが、いつか思い出してくれ‥‥」


 メタトロンの姿は消えた。


 フシュゥゥゥゥゥゥン‥‥


 「スノウ!コードYHYA発動だ!」


 意識が現実世界へと戻ってきた瞬間、メタトロンの指示が飛んできた。


 「いやだ!」


 スノウは複雑な思いからコードYHYAの発動ボタンを押すことを拒絶した。


 「やむを得ん」

 「な?!」


 メタトロンのその言葉の後、勝手にスノウの指が動き出した。


 「や、やめろ!」



 “ピピピッピ‥‥コードYHYA起動‥‥議会アッセンブリ承認を求めます‥‥‥”


 女性の声で何かを言い始めた。

 これまでの操作ではなかったものだ。


 “メタトロン‥‥承認、カマエル‥‥承認、ミカエル‥‥承認、ラファエル‥‥承認、ハニエル‥‥承認、‥‥‥他の承認者の返答なし‥‥半数を越えたため、本申請を承認とみなします”


 (何だこれは?!)


 “コードYHYA発動”


 ヴゥゥゥン‥‥ガコン!ガシン!ヒュンヒュン!ガシン!


 神の咆哮生成器が異様な形状へと変形した。


 “代替半身確認‥‥照射”


 フシュン‥‥


 小さな音と共に何かが発せられた。


 眩い光の雫のようなものがメタトロンに向けて落ちていく。


 ピチョン‥‥


 メタトロンに光の雫が当たり、メタトロンを包んだ。

 次の瞬間メタトロンを包み込んだ光の雫は遥か上空へと凄まじい速さで登っていった。


・・・・・


 ガシィ!


 地上のとある場所でカエーサルがジン・ザン達によって受け止められた。


 「なんと!ここまでの出血!意識もないぞ!」

 「カエーサルさん助かるんですか?!」

 「助かるのかではないぞ!助けるんだ!」


 大量の血を吐き、胸が裂かれたことで大量に出血しており瀕死の重傷で白目を剥いて意識を失っているカエーサルを見てジン・ファミリーの面々は驚いていたが、突如カエーサルの体を支えているジン・オクとジン・ミレの腕が凄まじい力で掴まれた。


 「いで!」

 「きゃ!」


 掴んだのは白目を剥いて意識がない状態のカエーサルだった。


 「ガッハーレリごとブラックホールを消すつもりか。させぬ」


 ガッバァ! 


 カエーサルの胸が突如裂け始めた。


 「きゃぁ!」

 「うわぁぁ!」


 カエーサルの裂けた胸の中に底知れない闇を見て全員驚きの表情を見せ後退りした。


・・・・・


 「次の攻撃が最後でしょう」

 「言い方間違えているよ。攻撃が最後じゃない。攻撃に耐えられるのが最後だね」


 ネメシスの言葉にペルセウスが返した。


 「おい、ペルセウス!お前が諦めるとはどういうことだ?!こいつを何とかしないと俺たちもいずれ消されるだろう?!」

 「だが、これ以上は限界だ。あのブラックホールの威力も相当強まっている。次の攻撃を防ごうとする時にはおそらく私たちは吸い込まれてしまうよ」


 『!!』


 「ちくしょう!何とかならねぇのか!あの大天使め、俺たちを騙したってのか?!」

 「見るのだ。そうでもないぞ」


 落胆するケテル連合部隊の中、アプスーが上空を見るように促した。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥


 ブラックホールによって黒雲の壁が吸い込まれているため、青空と太陽が見えているのだが、その空が一気に夜になった。


 「?!‥‥いきなり夜になったぞ?!」

 「どうなってるのでしょう?!」


 戸惑うケテル連合部隊の面々。


 「一体何が起こるってんだ?!」


 変風塔バベリアでその光景を見てるヘラクレスが言った。


 「分からん。分からんが恐らく何かしらの決着がつくぞ」


 シルゼヴァが冷静な表情で答えた。

 すると、突如空が夜明けのように明るくなり、光の筋が降り注いだ。

 光の筋は銀の棘の球体(スピニースフィア)とブラックホールを包んでいる。


 「え?」

 「何だ?!」


 ケテル連合部隊の者たちの脳に直接語りかける声が聞こえてきた。


 「この場を去れだって?!」

 「あの大天使からの指示だね!この場を去らなければならない何かが起こるんだ!」

 「急ぎましょう!」


 ケテル連合軍の面々は地上に落ちて倒れた同胞たちを抱えて方々に散って避難した。


 パァァァァァァ‥‥‥


 降り注ぐ光の筋が徐々に強くなり眩い光の柱となった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥


 「な、何だよありゃぁ‥‥」


 ヘラクレスが目を見開き口を大きく開けた状態で言った。


 「まさか‥‥あれは神の呼吸器(エヘイエー)


 シルゼヴァが呟くように答えた直後、空から巨大な口が出現した。


 「カハァァァァァァァァァァァァァァァ」


 積乱雲を発生させるかのように息を漏らしながらその巨大な口はゆっくりと開いていった。






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