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<ケテル編> 182.深淵の怪物

182.深淵の怪物



 「あれは‥‥ティアボロス!!」

 「ディアボロス‥‥なぜあの大魔王がここへ?」

 「さぁな。だがやつもおそらくこのケテル沈没を防ぎたい者のひとりなんだろう。理由はどうあれクロノスを敵対している側には間違いないだろうな」

 「おい、ディアボロスの横にいるあの10メートル級の巨人は何だ?!まさかあれでクロノスと戦おうっていうんじゃねぇだろうな」


 シルゼヴァとヘラクレスはオーラでディアボロスの存在を感じ取っていたが、ワサンはオーラではなく視力で捉えていたため、もうひとつの巨人の存在まで気づけたのだ。

 シルゼヴァはワサンの肩に手を置き両目を閉じた。

 そして額の第三のサードアイでワサンが見ている映像を視始めた。


 「ほう‥‥あれはへカントケイルだな」

 「はぁ?!ヘカトンケイルっていやぁタルタロスの番人じゃねぇか!まさかディアボロスの野郎、ヘカトンケイルを手懐けやがったとでもいうのか?!」

 「手懐けたかどうかなどどうでもいい。問題はあいつが何かをしようとしているかどうかだ。今この瞬間、俺たちは行動を決めなければならない。何かをしようとしているディアボロスの行動を見守るか、それを無視してクロノスを止めにかかるかのどちらかだ。こうしている間にもあの巨神は変風塔バベリアに近づいているのだからな」

 「その通りね。私はディアボロスを無視してクロノスを止めにかかる方を選ぶわ」

 「俺もだ」


 シアとワサンが言った。


 「俺も異論はない。当然ハークもだな」


 何かを言おうとしたヘラクレスは言葉を飲み込んで残念そうな表情を浮かべた。


 「よし戦闘体勢をとれ」


 レヴルストラの面々は武器を手に構えを取った。


・・・・・


 白いスーツに身を包み褐色の肌から見える地獄の触手を思わせるタトゥーが襟元や袖口が見える男は隣に立っている巨人に何やら指示を出していた。

 その男はディアボロスだった。

 その直後、ディアボロスの耳から蠅が飛び出した。

 ケテルの暴風の中でも全く影響を受けずに平然と定位置で飛んでいる蠅が頭に響くような声で話しかけてきた。


 「こいつ1体で連結の魂糸こんしは引けるのか?」


 その言葉にディアボロスが返す。


 「大丈夫だ。このヘカトンケイルには悪魔を数体食わせてある。元気はつらつってやつだ」

 「ふはは。相変わらず洒落がえげつないなお前は」

 「時間も差し迫っている。引っ張りだすぞ」


 そう言うとディアボロスは短剣を出した。

 そしてその短剣を握りしめた。


 ブシュ‥‥


 手のひらが切れて血が滴っている。

 それを思い切り自分の前に振り撒いた。


 ババッ!


 ディアボロスの血が風に流され散っていき地面に付着していく。

 その血が付着したところに微かに光るロープのような線が見え始めた。


 「ヘカトンケイル。そこだ。そのロープを持て」


 体に無数の目を持つ巨人、ヘカトンケイルは指示されるままに屈んで微かに光り輝くロープを握った。


 「よし。そのまま持ち上げてアルカ山を向いてそのロープを手前に引け。アルカ山の地下深くに眠るものをひっぱりあげろ」


 ヘカトンケイルの全身の筋肉が盛り上がり血管が浮き出る。


 「オゴォォォォォォ!!」


 うめき声を上げながら更に筋肉を盛り上げる。

 ロープを握る手からは深緑色の血が滴っている。

 全身にある無数の目は鬱血し苦しそうな表情を浮かべているが、まるで洗脳されているかのようにロープを引き上げるのをやめない。


 グググ‥‥グググ‥‥


 「さぁ引け。引っ張りだぜ」


 グググ‥‥グググ‥‥‥ググググ‥‥


 光るロープはちぎれそうなほど細くなっていく。


 「おいまさか切れるなんてことはないだろうな?」


 蠅が言った。


 「ある訳ないだろう。魂同士を繋ぐ糸‥」


 ブヂィィィィン!!


 「はぁ!?」

 「なにぃ?!」


 輝く糸は凄まじい音をたてて切れてしまった。


 「おいおい冗談だろ!」


 ディアボロスは怒りの表情を見せて言った。


 「使えねぇ巨人だな。殺すか?」


 蠅が言った。もちろん巨人とはヘカトンケイルのことである。


 「いや、そんな暇はねぇ。仕方ない。俺の軍を出すしかねぇ。せっかくの計画を狂わせやがって。しかし切れるはずのない連結の魂糸が切れるとは‥‥クロノスかあっちかどちらか分からねぇが魂が崩れているか消失してしまっているとしか思えねぇ」

 「それこそ扱えねぇんじゃねぇのか?」

 「いや起こしちまえば‥」


 グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 突如大地震が発生した。


 ドッゴォォォォォォォォン!!


 凄まじい轟音と共に大地が大きく割れていく。

 まるで隕石が落下してクレーターが発生しているかのように地面が大きく跳ね衝撃波が広がっていく。


 ヒュゥゥゥゥ‥ドガァァァァ!!


 凄まじい衝撃波にも関わらずディアボロスと蠅は微動だにしない。


 「フハハハハハァ!きっかけは作れたようだぜ。自ら出てきやがったからなぁ!」


 オゴォォォォォォォォォォォォォ‥‥


 裂けた大地から何者かのうめき声が聞こえてきた。


 ドッバァァァァァァァン!!


 数本の巨大な触手が地面から這い出てきた。

 一本一本がまるで生きているかのように不規則に蠢いている。


 ガガガガガァァァン!!


 更に地面が割れていく。

 それを遠方から見ていたレヴルストラメンバーは先ほどの衝撃波に耐えてその様子を見ていた。


 「何が起こった?!」


 ワサンが叫んだ。

 装甲馬車の位置からはこの大地震の震源は見えず、凄まじい地割れと噴火のような状況しか確認できていなかったのだ。


 「ここは危険ね。変風塔バベリアの方へ退避した方がいいわ」

 「そうだな!おい、バリオス!クサントス!生きてるか?!」

 「我らをみくびられては困ります!」

 「そうだぜ!いつでもいけるぜ!」

 「よしもう少し南でクロノスを迎え撃つぜ」


 兄弟の半神馬のバリオスとクサントスは馬車を南に向けて走り出した。


・・・・・


――ツィゴス領 神の島――


 ビキィィィィン‥‥


 「おおおおおおああぁぁぁぁ!」


 突如ニュクスが叫び出した。


 「母上!如何なされた?!」


 ツィゴスの神々が驚いてニュクスの下までやって来た。


 「きぃぃやぁぁぁぁぁ!」


 ニュクスを知る者には想像のできない奇声を発して狼狽えているため、皆その姿をみてどうしたらよいか分からない状況となっていた。


 「母上?!」

 「どうなされたのだ?!」


 ニュクスは錯乱したかのように頭を抱えて歩き回っている。

 ネメシスやヒュプノス、オネイロスたちは顔を見合わせている。


 ビタッ!


 突如動きが止まった。

 目は血管が浮き出るように見開いたまま、口からはよだれを垂らした状態で口元が徐々に広がっていき、まるで口が裂けていくようにして笑みを浮かべた。


 「そ、そうか!そうじゃったのか!ウハハハハハハ!」


 不気味な笑い声が響いた。


 「ま、まさか母上はクロノスの出現によって気が触れてしまわれたの?!」

 「だとすれば我らはこれからどうすれば良いのだ?!」

 「かくなる上は禁忌を犯してでも越界するしかない」

 「馬鹿な!このケテルを捨てる気か?!ここには我らの求めるアレがあるのだ」


 するとニュクスが裂けそうなほど口を開いて不気味な笑みを見せながらネメシスたちの肩を抱くようにして覆い被さってきた。


 『!!』

 

 「安心するがよい」

 「どういうことで‥‥しょうか?」

 「クロノスを殺す絶好の機会が訪れたということじゃ。さぁ支度せい。再度出向く。ケテルは妾たちツィゴスのものであることを思い知らせてやるわ!」


 『??!』


 突如上機嫌になったニュクスを見てヒュプノスたちは不安を禁じ得なかった。


・・・・・


 「よし止めろ。ここでクロノスを迎え撃つぜ」


 ヘラクレスの指示で馬車が止められた。

 レヴルウトラメンバーは馬車から降りて、ゆっくりと変風塔バベリアへ向かってくるクロノスを迎え撃つべく武器を手に取った。

 その中でシルゼヴァだけは何かを考え込んでいるような表情をしていた。


 「どうしたシルズ?」

 「いや‥クロノスに加えて何かとてつもない存在が現れた感覚があるのだ。クロノスと同等の‥‥いや、それ以上の存在」

 「おいおい冗談だろ?!あんなのが何体もいてたまるか!今回はお前の気のせいだろう?!」


 「いやそうでもないぞえ」


 『!!』


 突如背後から女の声が聞こえた。

 レヴルストラメンバーは一斉に振り向いた。


 「お前はニュクス!」


 突如レヴルストラの背後に現れたのはニュクス率いるツィゴスの神々だった。

 レヴルストラメンバーは一斉に武器を構えた。

 その中で威嚇しようとしているヘラクレスを抑えてシルゼヴァが話しかけた。


 「そうでもないとはどう言う意味だ?」


 「おやおや、突然変異の半神があれを感知できないとはのぉ。まよいわ教えてやろう」


 ニュクスは口が裂けそうなほどの笑みを浮かべながら言った。


・・・・・


 数本の巨大な触手が地面から這い出てきた。


 ガガガガガァァァン!!


 地面が更に裂けていく。


 ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!


 触手が地面を掻き分けるようにして中から巨大な何かが現れた。


 ズゴゴゴゴゴォォォォォォォォォン!!


 巨大な光る目がふたつ、裂けた地面のそこから見えた。

 そして地面をかき分けるようにして巨大な手が現れそのまま大きな山のような影が一気に地上に現れた。


 ゴゴゴゴゴォォォォ‥‥


 ビギィィィィィィィィィィィン!!


 凄まじい破壊のオーラがケテル中に広がった。

 そのオーラに気づいたのかクロノスはゆっくりと向きを変える。


 ズゴゴゴゴォォォォォォォン!!


 「ブォォォォォォォォォォォン!!」


 突如現れたもう1体の超巨体の存在は5本の巨大な触手を上手く使って地中から這い出てその全貌を露わにした。

 首はないが、その付け根部分には二つの目が光っており、鎖骨部分には大きく裂けたような口がついている。

 腕は4本ついていて背中には巨大な翼がついており広げると山を丸ごとつつでしまうのではと思うほどの大きさだった。

 下半身には巨大な5本の触手が生えておりそれぞれが独立して生きているかのように蠢いている。


 「ゴロォォォァァァァ‥‥貴様もまた出てきたか‥‥」


 クロノスは突如現れた巨大生物を前にして言った。


・・・・


 「おい‥‥あれって‥‥」


 レヴルストラがいる辺りからも突如現れた巨大生物が見えた。

 その巨大生物を見たヘラクレスが驚愕の表情を見せながら言った。

 それに乗っかるようにしてニュクスが口を開いた。


 「そうじゃ。あのゼウスをも平伏させた荒ぶる嵐の顕現テュポーンだ」


 『!!』


 一同はデュポーンと呼ばれた巨大な怪物を見て驚愕の表情を見せていた。




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