<ケテル編> 177.攻撃の先に現れた者
177.攻撃の先に現れた者
「ゴルォォォォォォォォォ!!臭うぞ‥‥懐かしい臭いと余所者の臭いだ‥‥」
地鳴りのような声が響く。
ヒゥゥゥン‥‥‥ズガガガン!!
ドッゴォォォン!!ガカカカン!
エークエス、ツィゴスの神々が一斉にクロノスに攻撃を仕掛ける。
「ぬおおおおおおお!」
ガラララララア!!
岩で出来ている巨体が少しずつ削られていく。
まるで鱗を剥がされるように、体から岩が削られ剥がされていく。
グオォォォォン‥‥ドッゴォォォォォォン!!
巨大な腕が振り上げられてまるで目の前の全てを一瞬で払い飛ばすように腕を横振りする。
その凄まじい攻撃と暴風によってエークエスとツィゴスの神々はいっぺんに吹き飛ばされていく。
「何という力!」
吹き飛ばされたエークエス達は大きな輪に変化したシャマシュによって上手くキャッチされて何とか体勢を整えた。
一方同様に吹き飛ばされたツィゴスの神々はニュクスの作り出した闇の空間に逃げ込んだことでダメージを最小限に留めることが出来た。
「対象の動きは大きく遅い!攻撃するなら今だ!」
シャマシュの号令の下、エークエスの神々が一斉に攻撃を仕掛ける。
その巨体だけでなく、下半身が地面に埋まっている状態のクロノスは確かに動きが制限され遅かった。
ドゴゴゴゴガガァァァン!!
ラフムやラハム達の物理攻撃に加え、六つの目から体を溶かす光を放つアプスーや灼熱の光線を照射しているシャマシュが特殊攻撃を放ち、クロノスの岩の塊のような体が更に破壊されていく。
「我らも遅れをとってはなりません!一斉に攻撃です!」
ネメシスの号令の下、ニュクスの作り出した闇の空間から飛び出したツィゴスの神々は一斉に攻撃を開始した。
神話級の武器を手に携えてツィゴスの神々はクロノスの体を破壊していく。
ギゴゴゴゴォォォン!!
「グヌォォォォォォォォ!!」
耐えかねたクロノスはまるで暴れるかのように両腕を振り回した。
ドガガガガがァァァァン!!
凄まじい轟音と共に地面が波打つようにして激しい地震と衝撃波が巻き起こり神々は再度大きく吹き飛ばされてしまった。
ズッザァァァァン!!
「まさかこれ程とは‥‥!?」
ラフムが言った。
「恐れてはならない我が子らよ。恐れこそがやつの好物なのだからな。我らの攻撃は着実に効いている。攻撃の手は緩めてはならない。ここからは分散して戦う。シャマシュよ、空から攻撃だ。同時にラフムとラハムは左右に分かれてあやつを撹乱しつつ直接の物理攻撃だ。我が援護をするから思う存分暴れて良い。その隙をついてエアよ、ネルガルを潜ませてやつの体に染み込め。その後あの岩の体の内部からネルガルの闇煙の力であやつの体を破壊し尽くせ。外側と内側の両面からあやつを破壊し尽くす!」
アプスーの明確な指示に一同は頷いてすぐさま行動に移った。
一方ツィゴスはニュクスの指示の下、分散せずに集中的に戦う策に出たようだった。
「よろしいので?」
ネメシスがニュクスに質問した。
「よい。力の温存じゃ。あやつらに倒させるか、ギリギリまでクロノスの命を削らせる。最後は妾達が総攻撃をかけて一人勝ちじゃ」
「それがよい!流石は母上だ!」
ヒュプノスが言った。
ツィゴスの神々の基本的な力は不能感情や深層心理への働きかけでである上、本来であればその力は魔力によって発動するのだが、このケテルでは魔法が使えず、魔力による能力効果もかなり抑えられてしまう。
そのためツィゴスの神々が能力を使う場合は生命力を燃料として発動する。
クロノスに対して負の感情や深層心理に働きかける能力を使う場合、凄まじい生命力消費が必要となる。従って、ニュクスは極力エークエスの神々に戦わせる手段をとっているのだった。
当初は物理攻撃の連携で本来の力を取り戻していないクロノスをタルタロスの深淵に送り返し、もし通用しない場合の奥の手として温存していた力なのだがエークエスをうまく利用できることになったお陰で有利に立場にいた。
ドゴゴゴォォォォォン!
ガッガガァァァン!!
方々から攻撃を繰り出すエークエスの旧神達と一点集的に攻撃を繰り出すツィゴスの神々の総攻撃により、クロノスの岩の体が更に破壊されていく。
ガガガラララァァァン!!
「ぬぅぅおおおおおお!我の体が朽ちていくぅぅ!!」
地鳴りのような声が響く。
エークエス、ツィゴス両陣営の神々は手応えを感じていた。
下半身が埋まっているクロノスは罠にかかった獲物でありその凶暴性から迂闊に近づくと致命傷を負ってしまうが、慎重かつ冷静に対処し攻撃すれば、かなり戦闘が有利に進められる状況だったのだ。
クロノスの体は出てきた当初に比べて一回り小さくなっていた。
それだけクロノスの体の至る所が破壊されているのだ。
ドゴゴゴォォォン!
再度クロノスの巨大な腕がエークエス、ツィゴス両陣営を襲う。
『ぐあぁぁ!』
『がっはぁ!』
細くなってきた腕による攻撃は軽くなったからなのか速さを増しており逃げ切ることが難しくなっていた。
一方で攻撃の重さは軽減されているのか周囲の破壊のレベルは下がってきている。
クロノスの攻撃を受けた両陣営は体勢を整えるべく距離を取った。
「あれだけ削ってもこれ程の破壊力‥‥」
「巨体が縮んだとは言えまだ山よりも大きいのだ。この破壊力も頷ける」
「怯むな。もう少しだ。後少しなのだ」
シャマシュ、ラフムの言葉にアプスーが返した。
その言葉に力を漲らせたエークエスの神々は再度戦闘体勢を整えた。
ガラララァァァァン!!
突如クロノスの体が大きく崩れ始めた。
「あれネルガルの闇煙の力じゃないの?!」
「凄いぞ!一気に畳み掛ける!」
ラフム、ラハム、そしてシャマシュは一斉攻撃を仕掛けるべくクロノスに向かっていった。
それを追うようにしてアプスーも向かって行った。
「フハハ健気に頑張っているではないか!」
「あのまま倒せるものかねぇ」
ヒュプノスの言葉にオネイロスが返した。
「倒せずともよい。クロノスを弱らせさえすればな」
ニュクスが笑を浮かべながら言った。
「さぁ我らも攻撃です。もしクロノスが倒れれば標的をエークエスどもに切り替えてこの場を制します」
ネメシスの言葉に従ってツィゴスが再度一斉攻撃を仕掛けた」
ドッゴォォォォン!!
ガガガァァァン!!
「ぬおおおおおお!!」
クロノスの地鳴りのような重低音の悲鳴が響く。
両陣営の神々は畳み込むようにして一斉攻撃を続けた。
ドゴゴゴォォォン!!
凄まじい爆音が轟く。
この戦いを人間や亞人が見ていたとすれば、如何に自分達が恐ろしいもの達、つまりエークエスやツィゴスの神々を相手にしていたのだと後悔したに違いない。
それだけ人智を超えた戦いが繰り広げられていた。
ドッゴォォォォン!!
ガガガァァァン!
バララララァァァァァ!!
いよいよクロノスの体が大きく破壊され始めた。
まるで倒壊するビルのように全体が崩れ始めた。
ツィゴスの神々は神話級武器を強く握りしめ一斉に攻撃しはじめた。
ドッガァァァァァァン!!
まるで巨大な山が爆破で弾けるようにクロノスの体が吹き飛んだ。
凄まじい爆風と煙が充満する。
砂煙は超巨大な風の砂嵐のようだった。
ズゾォォォォッッォォン!!
突如噴火のように地面から無数の大きな岩が上空に吹き飛ばされた。
『!!』
両陣営の神々は予想に反する光景に思わず驚きの表情を浮かべた。
超巨大な風の砂嵐のように巻き上がっていた砂煙が一斉に消えたがそこにはクロノスの姿はなかった。
「倒した‥‥のか?!」
「それにしては妙な感じだけど?!」
「完全に崩れたじゃねぇか。これで生きていられるのはアンデッドくらいなものだろう」
ヒュプノス、オネイロス、ケールが怪訝そうな表情でクロノスがいた所を見つめていた。
その言葉に不安そうな表情を浮かべているネメシスが言った。
「おかしいです。気配が消えていない。いや、それどころか膨れ上がっている‥‥」
「上じゃ!皆闇に潜れ!」
ニュクスの声に一同は慌てて彼女の発生させた闇の池に飛び込んだ。
ヒュゥゥン‥‥ファッサァァァ!
50メートルほどの巨大な物体が空から落下してきたが地面スレスレで止まり、砂埃を大量に巻き上げた。
「あ、あれは?!」
ネメシスが闇の池から顔を上半分だけ出して驚愕の表情で言葉を発した。
ネメシスの目線の先にいたのは、50メートルはあろうかという巨神が腕を組んだ状態で宙に浮いていたのだ。
その姿は全身に全く毛のない人間のようで肌の色が暗い灰色をしていた。
そして空に見える星のように浮いている黄色い目が不気味に光っており見るものに恐怖を植え付けた。
「異界の旧神、そしてカオスの子らよ‥‥我の本来の姿を取り戻してくれたようだ。礼を言うぞ」
『ぐあぁぁぁ!!』
恐ろしい内容の言葉が頭の中に響くように発せられ一同は驚愕の表情を見せた。
不協和音のような声が刺すように聞こえるため頭が割れんばかりの頭痛に襲われたが、耳を塞いでも頭の中で響くため皆苦痛に歪んだ表情で悶えた。
「あ、あれは?!‥‥あ、頭が割れそうです!」
ネメシスの言葉にニュクスが返す。
「迂闊じゃった。あれこそがクロノス本来の姿じゃ‥‥」
この不協和音の声に全く表情を変えずに言ったニュクスの言葉にツィゴスの神々は言葉を失っていた。
3/27修正




