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<ケテル編> 167.オリンポス図書館

167.オリンポス図書館



 「ふたつの要件は許可できない。どうだいシンプルだろう?」


 ペルセウスは自信に満ち溢れた表情で答えた。

 それに対してスノウもまた自信に満ちた表情で答える。


 「シンプルだ。だがもっとシンプルな方法もあるな。例えばこのままあんたらを皆殺しにするっていう案だ。そっちの方がこの時勢に合ってると思わないか?」


 それに対して同じく笑みを見せてテセウスが言葉をかぶせてきた。


 「グッドな提案だな。じゃぁ今この場で殺し合いだな。どうだペルセウス。こいつら程度倒せなくて俺たちの理念を貫き通すなんざ無理な話だと思うぜ」


 「わっはっは!面白ぇ展開になりそうだ!」


 ヘラクレスも腰に手を当てて満面の笑みで答えた。

 それを見たペルセウスが頭をかきながら皆の真ん中に歩いてきた。


 「全く‥‥つくづく戦闘バカの集まりだね」


 そう言いながら周囲を見渡す。


 「我らの戦力を少し甘く見ているようだ、スノウ君。この場にいない戦力をアテナ神だけだと思っていたら大間違いだよ」


 「どういう意味だ?」


 スノウは質問した。

 それを受けてペルセウスが一瞬笑みを浮かべて指を鳴らした。


 パチン!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!! 


 突如地面が揺れだした。


 「なんだなんだ?!地震か?!」


 ペルセウスの背後の地面が盛り上がる。


 バッゴォォォォォォン!!


 大きな影が地面から這い出てきた。


 「ほう‥ギガースか」


 ヘラクレスが顎を触りながら言った。

 10メートルはあろうかという巨大な影がペルセウスの背後に立っている。


 バッゴォォォォォォン!!


 突如ギガースと呼ばれた巨人が凄まじい速さで巨大な拳をスノウに向けて振り下ろした。


 「こいつ殺していいのか?」


 スノウは巨人の肩に乗りこめかみにフラガラッハを突き立てている。


 「構わないけど君も死ぬよ」


 スノウの背後にペルセウスが空中に浮遊している状態で剣を突きつけていた。


 「やってみろよ。タダじゃ死なないぜ」


 「はっはっは!流石はスノウ君だ。いいだろう。この条件ならどうだい?あくまで我らと対等な立場での共闘関係だ。我らが君たちに依頼をすれば君たちは共闘を受ける。そして逆に君たちが我らに共闘を依頼すれば我らもそれを受ける」


 ペルセウスのその申し出に対してスノウが応える。


 「その関係に裏はないのか?おれ達はその共闘関係に加えて図書館での本の閲覧と禁断区域の居住をお願いしているんだぜ?一見フェアじゃないように見えるがお前が素直にそれを容認するとも思えない」


 「疑り深いねぇ。図書館で本を見たい?好きにすればいいよ。我らは1ミリも被害を被らない。そもそもここの図書館はオリンポス神のものだったわけだし、私が許可するしないの話じゃない。禁断区域もそうだ。そこにニンゲンが住んだとしても、我らに被害はない。気に食わなければ皆殺しにしてしまえばいいわけだしね」


 「‥‥‥‥」


 スノウはそれを黙って聞いている。


 「まぁゆくゆくは我らの目指す世界を作る上でニンゲンは邪魔になる。その時は全力を持って君たちを潰しにかかる。それまでの期限付きの許可ってわけだ。どうだい?信じたかい?」


 「いいだろう」


 「グッド!それじゃ図書館に案内しようじゃないか。ミマース、有難う。戻って警備を続けてくれ。さぁセプテントリオンのみんなもそんな殺意丸出しのオーラを引っ込めて仲良くやろうじゃないか。期限付きとはいえ、彼らとは仲間なんだからさ」


 「ふん‥‥」


 テセウスを始め、セプテントリオンの面々は不満そうに神殿へと戻っていく。


 「命拾いしたなヘラクレス。一旦勝負はお預けだぜ。さっきの打撃でお前の攻撃は大したことねぇって分かったからな。収穫としては十分だ」


 「そうか。そりゃあ楽しみだな」


 ヘラクレスは腕を組みながら、大胸筋を異様に盛り上がらせて笑顔で答えた。


 「ちっ!相変わらずふざけた野郎だ」



・・・・・


・・・



 スノウ達はオリンポス神殿の前にいた。


 「でかいな」


 ワサンが見上げながら言った。


 「そりゃぁそうだぜ。オリンポスの神々っていやぁプライドだけは一丁前だからな。そりゃぁ豪華に作るぜ」


 スノウはヘラクレスの側に寄って小声で話しかけた。


 「ヘラクレス。お前まさかここでアテナ神を殺そうとか考えてないよな?」


 「お、バレたか」


 そう言いながらヘラクレスの腕のバングルをスノウはずらした。

 そこには膿のようなものが発症しており、相当な痛みを伴っていることが見て取れた。


 「ティアマトのやつ、全く面倒なことしてくれたもんだぜ。その内肉だけじゃなく骨も蝕んでいくだろうぜ」


 「!」


 スノウはヘラクレスの顔を見た。

 全く怯えや恐れはないが、少し悲しそうな表情を見逃さなかった。


 「この手の血の盟約は目的が達成されれば呪縛は消滅するからな。この腕が千切れる前に何とか解除できれば完全に治癒するだろうぜ」


 「ヘラクレス‥‥」


 パァン!


 「まぁよ、お前が気にすることじゃねぇ。これは俺の問題だ。くれぐれもお前は馬鹿な真似するなよ?リーダー」


 ヘラクレスは無傷の方の手でスノウの背中を叩きながら言った。


 ポン‥


 スノウはそれに対して肩をかるく触れて前に出た。


 「さぁ、まずはバルカンの体だ」


 スノウたちは神殿内の図書館を目指して中へ入っていった。

 神殿内の廊下はまるで巨人の住処のように天井が高い。

 しばらく歩くと、ヒッポリュテが現れた。


 「さぁこちらです」


 そう言いながら右の扉から入るように促された。


 「そっちに行ったら何があるんだ?」


 「それはあなた方は知る必要のない事です。ペルセウスさんが共闘という指示を出したので従っていますが、本質的には敵同士。それをお忘れなく」


 スノウたちは扉の中へ入っていく。

 しばらく歩くと巨大な扉が現れた。


 「こちらです」


 ギィィィィィィィ‥‥


 巨大な扉がゆっくりと開く。

 その奥には異常に広い空間が広がっていた。

 その壁全てに本が格納されている。


 「フフフ。さぁどうぞ。心ゆくまで読書に励んでくださいな」


 ヒッポリュテは笑いながらそういうと、扉付近の椅子に座って本を読み始めた。


 「マジかよ‥‥万は超える数だぞこの図書館‥‥オレは本を読むのは苦手だから、警備にまわるぜ」


 ワサンが眉を潜めながら言った。


 「だめよ。これだけの蔵書なんだから全員が手分けして探さないと。マスターが無駄な時間を過ごす事になるでしょう?」


 「‥‥‥‥」


 ワサンは苦い顔を見せた。


 トーン‥トーン‥トーン‥


 突如シルゼヴァが壁をうまく蹴りながら上層階の本棚に向かっていった。


 「シルズはああ見えて意外と読書家だ。表情には見えないがかなりキュンキュンしているはずだぜ。まぁだからと言ってあいつがバルカンの体を取り戻す方法の書かれた本を探すはずもないがな」


 「ま、まぁとにかく片っ端から見ていくしかないだろう。さぁみんな頼んだぞ」


 スノウ達は一斉に本を読み始めた。



・・・・・


・・・



 読み始めてから8時間。

 ここには様々なジャンルの本があった。

 読めない文字で書かれた本や読めるのだが内容が難しく理解ができない本がたくさんあった。

 特に神々の歴史を綴った本は読み応えがあった。

 ティタノマキア、ギガントマキアといった神々と怪物や巨人族との戦いなどが綴られていた。


 (ギガースはこの戦いを通して従えられたとみていいだろうな。他にも下僕として従えている可能性のある怪物もいるかもしれない。セプテントリオン‥‥いや、ペルセウスか‥‥アテナ神をうまくつかって怪物や巨人を操っている可能性がある‥‥これは探ってみる必要がある)


 スノウはオリンポス神の面々やなぜゼウスが全能神として君臨しているのかについて理解し、ゼウスが姿を消した今ペルセウスが事実上オリンポスを牛耳っているのではないかという結論に至った。

 7半神。

 一見弱小勢力に見えるこのセプテントリオンだが、その背後には未知なる存在がいるのだと警戒心を強めた。


 「マスター」


 シアがとある本を持ってきた。

 それは分厚い魔導書だった。


 「アルザリアの書?‥‥これは?」


 「恐らくこのケテルは遥か昔、魔法が普通に使えた世界だったのだと思います。その頃に使っていた魔導書ですが、書かれている内容は過激な秘術が多数書かれています。例えば神の精神を操る魔術や土地を呪われた忌地へ変える秘術、生物を一瞬で溶かす術や巨人に変える秘術など、恐らくこれは禁書扱いされていたのだと思います」


 「まさかここに?」


 「ええ、恐らく」


 そう言ってシアはアルザリアの書をペラペラとめくっていった。


 「ここです」


 スノウはシアの指し示すページに目を通した。


 「これは!」


 そこに書かれていたのは魂を物体に宿す禁術だった。生物から魂を抜き出し、それを物体に転移させるというもので事例として書かれていたのは強力なドラゴンの魂を指輪に封じ込めるというものだった。


 「確かにこの秘術なら何か物体にバルカンの魂を移せる。バルカンに体を与える事ができるってことか」


 「はい。ですが、ケテルでは難しいかもしれません。やはり魔法を使える世界でないとこの禁書そのものが使えないようです」


 「そうか‥‥」


 スノウはヒッポリュテの方を見た。

 本を読むのに集中している。


 ビリリ‥‥


 スノウは魂を物体に移す方法が書かれたページと周辺のページをまとめて破いてポーチにしまい込んだ。


 「よし、もう少し探しているフリをしてから一旦ここを出よう」


 スノウたちはしばらく本を探すフリをしてから一旦集まった。


 「見つかったのか?」


 ワサンが聞いた。

 それに対してスノウは小さく頷いた。


 「もうここには用はない。戻って禁断区域への移住を進めよう‥‥どうしたシルゼヴァ?」


 「ここは素晴らしい場所だな。少し待っていろ。俺はこの場所を自由に使っていい許可をとってくる」


 そういうとシルゼヴァはヒッポリュテの方へ歩いていき、何かを話始めた。

 ヒッポリュテは首を横に振っているが、シルゼヴァがヒッポリュテの首を持って締め上げた。


 「あちゃぁ。シルズの言い分を断るとああなるって知らねぇみたいだな。ヒッポリュテ死ぬかもしれねぇぞ」


 「おいおい呑気か!ここで揉めるのは困る」


 スノウはシルゼヴァのところへ言ってヒッポリュテを下ろすように言った。


 「ゲホゲホッ!わ、分かりました‥‥許可しましょう‥‥ですが図書館だけですよ‥‥ゲホ‥‥」


 「おやおや、どうやら目的は達成したようだね」


 ペルセウスがやってきた。


 (気配を感じられなかったぞ‥‥)


 スノウは背中に冷や汗が滴るのを感じた。


 「まぁな。だがケテルでは使えないようだ。無駄足じゃないが一旦グザリア跡へ帰る」


 「そうか。それじゃこのコインを持って行ってくれ」


 そう言いながらペルセウスが小さなコインを渡してきた。


 「それは意志に反応するコインだ。例えば私が君たちを呼びたいと思うとすると‥‥」


 「熱!」


 「というわけだ。熱を発して知らせてくれる。その時はこの神殿に来て欲しい。もちろん君たちが私たちの力を借りたい時は呼んでくれて構わない。私たちには情報網があって君たちのいる場所は把握しているからしばらく待ってくれれば駆けつけるよ」


 「監視してるってことか」


 「まぁ、そうとも言うね」


 「分かった」


 そう言ってスノウたちはグザリア跡へ戻って行った。





花粉症が超絶悪化して体調が酷く悪いため次のアップは少し遅れます(頑張ります‥‥次は恐らく日曜日になるかと思います‥‥)。

いつも読んで下さってありがとうございます。

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