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<ケテル編> 147.レヴルストラ再集結

147.レヴルストラ再集結



 「ソニック殿、あれはアイオリア後衛軍の最後尾でしょうか?」


 バリオスがソニックに質問した。


 「ええ、そのはずです。後衛軍の本陣は中央にありますが、この装甲馬車でいきなり向かっても警戒されますからまずは最後尾にいる部隊長に私から話を付けてきますので、スピードを落としてついてきてもらえますか?」


 「承知した」


 その後、一瞬警戒されつつも上手く立ち回ったソニックによって無事にアイオリア後衛軍の本陣に到着した。


 「スノウさんたち!」


 ロイグに跨ったフランが嬉しそうな顔でスノウたちのところへ寄ってきた。


 「元気だったか!フラン、ロイグ!」


 フラン、ロイグ、そして一緒にナーマに帰還し今回の戦いに参加しているアカルに加えてバンダムも参加していたのだが、この4名はアイオリア後衛軍に配置されていた。

 アネモイ剣士フリークであるフランはヘラクレスがいることに驚いており、自分の武具にサインすることをおねだりしていた。

 シルゼヴァ含めて改めてメンバーが紹介された後、元々のメンバーは久々の再開を喜んだ。

 風の大破壊ヴァシュヴァラ前に分かれて行動してきたレヴルストラメンバーが数か月ぶりに再集結した瞬間だった。

 だが再開できた喜びもあれば、失ったものの大きさにショックを受ける話もあった。

 バルカンのことである。

 バルカンがエターナルキャンドルに灯され消えない炎となった経緯をスノウは自分の口から説明した。

 突如降臨したゼウスによってスノウが受けるはずだった攻撃をバルカンが受け、今にも消えそうな種火の状態になってしまったのを、同じく瀕死のボレアス神が消えないように守りきり、ティアマトやニュクスとの交渉を経て消えない炎とした説明を受けてみな言葉を失っていた。


 「全くバルカンさんらしいですよね」


 シンザが悲しそうな顔に無理やり笑顔をねじ込ませた複雑な表情で言った。

 

 「そうだな。何より仲間を大切にし、友情を重んじたやつだ。頭悪いからそういう形でしか行動を選択できなかったんだろうぜ」


 ワサンが言葉を返すと皆目に涙を溜めながら頷いていた。


 「それにしてもこの蝋燭・・・・不思議だね。倒れそうなのに倒れないし、消えそうなのに消えないんだから」


 そう言ってエターナルキャンドルに近づいたフランめがけて突如スノウの左肩から火の玉が飛ばされた。


 ボワッ!


 「熱っ!」

 

 フランの手の甲に火の玉がヒットして、熱さに思わず手を引っ込めたフランは武器に手をかけながら火の玉が発せられた方に向いた。

 同時にロイグも武器を構えた。


 「きゅるるる!」


 『!』


 スノウの肩の上に紅い鳥が止まっていることに今更気づいて驚くフランとロイグだった。

 ずっとスノウの方の上で丸まっていたため、鎧の装飾だと思っていたのだろう。


 「ああ、すまない。こいつはフラマ。バルカンたちがこのケテルに降り立ってすぐ後に救った卵から生まれた朱雀の亜種の雛鳥だ。バルカンを親だと思っているらしくてな。フランがバルカンの炎に手を出そうとしたから怒ったんだろう」


 「そうだったんですか。ごめんよフラマ。僕はフランだ。バルカンとは友達なんだよ。だから怒らないでくれるかい?名前似ているからややこしいけど逆に親近感を持ったよ。君ともいい友達になれそうだ。よろしくね」


 「きゅるあ!」


 バッサッ!・・ピタ。


フラマはフランの頭の上にとまった。


「あはは!」


 フランは可愛いと思ったのか嬉しそうな顔を浮かべている。


 「なんだこいつは?随分と馴れ馴れしくフランの頭に乗ってるじゃねぇか。フランと仲良くすんなら俺にも筋通せよな?」


 なんの嫉妬か分からないがロイグが割って入ってきた。


 ブリッ・・・・ボトッ


 「ん・・・なんか背中に温かいものが・・・・げ!」


 フラマがロイグに跨っているフランの頭の上で糞をしたらしく、丁度位置的にロイグの尻の部分にボトッと落ちてきたのだ。


 「こ、このやろ!お前!」


 バササッ!


 「きゅるるぁぁぁぁぁ!」


 ロイグとフラマの喧嘩が始まった。


 「おお、ロイグやっちまえ!そいつは俺にとっても天敵だからな!」


 ヘラクレスが野次を飛ばす。


 「おいおいロイグやめろよ!落っこちるじゃないか!」


 跳ねるロイグの上でフランが落馬しそうになり怒り出した。


 『あはははははは!』


 その光景を見て、その場にいた者たちは笑い出した。

 久しぶりの笑いだったに違いない。

 周囲の平民兵も状況は分からないまでも、大きな笑い声につられて楽しそうな雰囲気になっていた。


 「フラマ、もうその辺にしておけよ?」


 「きゅるぅ!」


 スノウの言葉に反応したフラマがスノウの肩に着地して座った。

 ロイグが仕方なく攻撃を堪えると、フラマはロイグを馬鹿にするようにニンマリとした笑みを浮かべた。

 それを見たロイグは苦虫を嚙み潰したような表情でフラマを睨んだ。


 「あはは・・・・やっぱりレヴルストラはいいですね。賑やかで安心できます」


 ソニックは相当可笑しかったのか目に涙を溜めながら言った。


 「でも炎として生きているなら、復活させる方法だってきっとありますよね。要は魂の宿る炎が媒体とする体があればいいんですから」


 『!』


 ソニックのその言葉に一縷の望みを託すように目を輝かせた。


 「それについてはまず最初にやらなければならないことがある」


 スノウが切り出した。


 「おれ達が知るべきことはふたつだ。ひとつはソニックが言ったようにこのバルカンの炎を移す体の入手。そしてもうひとつはその移す方法を知ることだ。その答えがアルカ山山頂のオリンポスの神殿の中の図書館にあるらしい」


 『!!』


 「ってことはオレ達レヴルストラが取るべき行動はアルカ山山頂にあるオリンポス神殿にいく事だな」


 「そしてそれにはペルセウス率いるセプテントリオンと対峙する必要がありますね」


 「そうだ。この話・・・・実現するためにはおれ達だけで話をする必要がある。時間と場所を変えて作戦を練る」


 ワサン、ソニックの自分たちの進むべき方向を示すコメントに対し、スノウが返した言葉にレヴルストラメンバーは皆その意味を理解した。

 セプテントリオンと対峙するにしてもどういう立場で対峙するかによってバルカンの実体化への難易度が変わってくる。

 つまりどの勢力につくのが最も近道になるのかを決めて選択する必要があるのだ。

 部外者の多いこの場所ではそういった話は出来ないため、別途作戦の場を設けることにした。


 「とにかくまずはこの戦いを上手く治める方法を整理して進めよう」


 ソニックはそのスノウの言葉の意味を理解したのか、話を切り出した。


 「はい。現在は恐らく亜人域ロプスとの交戦中でアイオロスとしては前衛軍が戦っているはずです。指揮しているのはギルさんなので大局的に見て臨機応変に動いているはずなのでおかしな状況にはなっていないかと思います」


 「ギル?・・・・ああ、ギルガメッシュか」


 「はい、そうです。そうか、スノウとは面識がないかもしれませんね。彼はこれまでアイオロス神の護衛を務めていましたが、現在はアイオリア軍の総司令を務めてもらっています。僕は何度か稽古で手合わせをお願いしたことがあるんですが、全く歯が立ちませんでした。それくらいの強さを持った人です」


 「歯が立たないと言っても魔法抜きでだろう?」


 「はい。ですが、仮に魔法を使えたとしても、何と言うか戦いに対する経験の差というか、状況判断能力と先読みの力に長けているために攻撃をいつのまにか誘導されてしまったり、攻撃そのものを封じられてしまったりするんです。あれは一人で鍛錬して到達できるレベルじゃないので、恐らく同レベルの強者と何年も稽古や実践を重ねた経験から備わったものなのだろなって勝手に思っています」


 「なるほど。お前がそこまで褒めるということは本当にそうなんだろう。おれも一度手合わせを頼みたいな。ヘラクレスとどっちが強いんだ?」


 「ん?」


 突然話を振られたヘラクレスはきょとんとした表情でスノウの方を向いた。


 「だから、お前とギルガメッシュ、どっちが強いのかって話だよ」


 「ああ、そういう事か。うーん、正直言えば俺の方が強い。だが、戦ってどちらが最後まで生き残るかと言えばあいつだろうな」


 「へぇぇそうなのか!何でそう思うんだ?」


 スノウはヘラクレスの言った言葉の意味が理解できたのかもっと詳しく知りたいと思った。


 「ソニックが言った通りだよ。俺もあいつも生まれながらにして強い。だが、その成長の仕方が違うって言えばいいか。俺が信じるのは個の力だ。個の力をどこまで引き上げられるのかを突き詰めてきた。だが、あいつはどうすれば勝てるか、という勝利を追求し続けてきた男なんだ。自分が強くなることと、自分が勝利することは違うからな」


 「はっきり言えハーク。チェスで言えばギルガメッシュはチェスのルールに従ってあらゆる思考を巡らせあらゆる手段を使って勝ちをもぎ取る。だが、ハークはチェスのルールを無視して勝とうとする。そうだろ?」


 「くっ!俺だってルールは守るわい!」


 『ははは!』


 突如割り込んできたシルゼヴァのコメントにバツ悪そうに答えたヘラクレスを見て、皆笑った。


 「ま、まぁよ!とにかくギルガメッシュのやつは俺が認める数少ない強者のひとりってこった」


 取り繕うようなヘラクレスをもう少し見ていたい気もしたスノウだったが、あまり時間が無いため、本題に引き戻すために話題を変えた。


 「わかった、ありがとう。それでソニック、おれ達はどうする?お前はこの軍の全体の指揮もしくは今回の作戦の責任を負っているんだよな?」


 「はい、ありがとうございます。スノウの仰る通りの状況ですので、この後は前衛軍まで出向いて状況を確認しようと思っています。人類議会ヒューパラメンタルがあれだけ本気で攻めてきていることとそのタイミングが良すぎることを考えると一抹の不安が過りますので・・・・」


 「つまり人域シヴァルザ・・・人類議会ヒューパラメンタルと亜人域ロプスが裏で繋がっている可能性がある・・・・そういうことだな?」


 「はい」


 「だが、人類議会のジン・ザンがあのまま引き下がっているとは思えないから、北軍に対してもそれなりに戦力を置いておく必要があるんじゃないか?」


 「そうですね、でもレヴルストラメンバーを除くと割ける人材もいないのが今の状況です」


 「私が行こう」


 ソニックの悩みに答えたのはアカルだった。


 「北軍は約4000の軍だ。指揮命令系統がしっかりと機能すれば、無駄な戦いを避けつつ時間稼ぎくらいは出来よう。その間にソニックが前衛軍の状況を把握した上で改めて指示を出してくれればいい。援軍走らせるにしても1日あれば兵の移動は可能だろうから、常に情報交換を鳥でやり取りすれば、何とか持ちこたえられるはずだ」


 「私もアカルと共に行きます」


 そう言いだしたのはバンダムだった。

 フランは弱気なバンダムが自分から戦場に赴くと言ったことに違和感を感じたが、その力強い表情からマパヴェでの一件が彼を変えたのではないかと思うようにした。


 「失礼だが・・・・」

 

 「私はバンダムと言います。元々はノトスで普通に生活していたのですが、生きるためにフランの母クレアと共にナーマにやってきたのです。ナーマでは兵が足りないという事でこの体格通りそれなりの力はあるので兵に志願しました」


 「こやつの怪力は私も認めている。ひとりで10人力ほどの力は発揮するだろうから役に立つはずだ」


 アカルも認めるその力に一同は興味を持った。


 「へぇぇ」


 最もその言葉に反応したヘラクレスが面白そうに両手を出してきた。

 いわゆるプロレスにおける手四つ状態に持ち込もうとしていた。

 バンダムはその意味を理解したようで、遠慮がちに手を振って断ろうとしていたが、ヘラクレスの嬉しそうな “逃がさないぞ”  と言わんばかりのプレッシャーに負けて手を組んだ。


 ググググ・・・・


 ヘラクレスは徐々に力を強めていく。

 それに対し辛そうな表情でバンダムはそれに抗っている。


 「うおおおお!」


 バンダムの雄叫びが出た。

 

 「お!」


 ヘラクレスの顔に嬉しそうな表情が浮かぶ。

 どうやらバンダムの力自慢は本物のようだった。


 グググ!


 「うおおお!」


 ヘラクレスは更に力を込めた。

 それに食らいつくようにバンダムは必至に堪えている。

 腕は膨れ上がり、筋肉の筋が見え血管は浮き出ている。

 ヘラクレスは更に力を込めた。


 「おお!ま、参りました!」


 結局バンダムのギブアップ宣言で力比べの手四つは終了したが、その状況からバンダムの力量は誰もが認める結果となった。

 レヴルストラメンバーは全員南軍の前衛本陣に向かうこととなり、アカルとバンダムは1000程の兵を連れて北軍入りすることとした。

 それぞれの使命をもって分かれて進むこととなった。



・・・・・


・・・



 「あれって峡谷の出口じゃねぇか?」


 クサントスが何か見えたのか、ソニックに話しかけた。


 「そうですね、あそこは言われる通り峡谷の出口です」


 ソニックたちは峡谷の道の端を走行し、部隊長たちと連絡を取りながら前衛軍の先陣を目指して走っていたのだが、いよいよその先陣部隊がいるであろう峡谷の出口が見えてきた位置まで来ていた。

 途中後衛軍を指揮していたユディスティラとも話をしたのだが、先ほどから前衛軍の動きがなく伝令係を遣わせているのだが、まだ連絡がないというのだ。

 急ぎ向かっていく新ストラ号だった。


 ドドド!ドドド!ドドド!ズザァァァ!


 勢いよく走っていた装甲馬車は急きょ停止した。


 「どうした?!」


 ヘラクレスが怒り口調でバリオスとクサントスに問いかけた。

 スノウたちも何があったのかと思い馬車の外に身を乗り出してみる。


 『!』


 装甲馬車に乗っているほぼ全員が驚愕の状況を目の当たりにした。

 なんとそこには地面に大の字になって倒れているギルガメッシュがいたのだ。

 その姿はボロボロだった。

 相当な戦闘が行われたに違いない。


 「ギルさん!・・・・一体これは?!」


 ソニックたちは状況が上手く呑み込めずにいたが、倒れているギルガメッシュのそばに異様な格好で立っている者がいた。


 「ま、まさかあいつは?!」


 スノウが何かに気づいたかのように言った。

 その表情は驚きと怒りに満ちたものだった。






いつも読んで下さって本当に有難う御座います。

次のアップは火曜日の予定です。

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