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<ホド編>33.飛翔石

33.飛翔石



 「十字斬!」


 ザザン!!


 フェニックスの首が胴体から離れる。


 「今だ童!」


 「おう!」


 十字に切られた中心には脈打つ金属の塊、フェニックスの心臓でありアレックスたちが探し求めたものが鈍く光ってその姿を表している。

 勢いのままその金属の塊を掴みもぎ取る。


 「させません!」


 フェニックスは炎で切られた部分を修復しようとしている。


 「追憶の業火!」


 フェニックスは羽根でスノウごと自分の体を覆って業火の羽根を放つ。


 「そうくるよな!」


 カカカカン!カン!カン!キン!


 素早く且つ正確に剣で羽根を跳ね返す。


 (もっと速くだ!)


 「逃しません。エターナルメルトダウン!」


 フェニックスは鳥の形から球体のような熱フレアに変化した。


 「自爆か!スノウ殿!」


 エントワの言う通りフェニックスは自身のエネルギーを最大限熱変換した自爆によってスノウを葬り去るつもりらしい。


 「カカカカカ!再生に数年かかるが私にとっては一瞬。私にこの技を使わせた事を褒めてあげましょう。さぁ死ね!」


 ヒュゥゥゥゥン!!


 熱フレアが中心に向かってどんどん圧縮されていく。

 次の瞬間それが一気に弾ける。


 「ダブル・バリアオブウォタードーム重ね掛け!」


 ロムロナとニンフィーは水のドームをメンバーをカバーする形で重ね掛けて爆熱に備える。


 「爆熱が収まるまで重ね掛けてください!熱波が来ると同時に絶対零度魔法を!」


 エントワの指示に従って、さらに水のバリアドームをかけて壁を厚くしていく。


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 アレックスは闇のランプを超高速で擦り始める。


 プン‥‥ドッグォォォォォォォォォォォン!!


 あたりが真っ白になりチリも残さない超高熱波が部屋中に広がった。


 ズバァァァァァァァァァン‥‥‥


 「ダブル・アブソリュートゼロ!」


 超高熱波が徐々に収まり、ロムロナとニンフィーは再度絶対零度魔法を重ね掛けた事によって少しずつ部屋の温度が下がっていく。

 アレックス達は幾重にも重ねてかけられた水の壁とその中で、かけられた絶対零度魔法によってかろうじて軽度の火傷で済んだ。

 超高熱によって水の壁は一瞬にして消えるが、すぐさま新たな水の壁を詠唱し、さらにドーム内の温度を極限まで下げた事で中和され事なきを得たのだ。


 「スノウはどうなったぁ?」


 「スノウ殿!」


 「スノウ!」


 部屋に立ち込める蒸気が徐々に晴れていく。

 中心に影が二つ。


 「二つの影‥‥スノウとフェニックスか?!鳥野郎‥‥自爆したんじゃぁねぇのか?」


 蒸気が晴れる。


 立っていたのはスノウと首だけになったフェニックスだった。


 「カカカカカ。私とした事が‥‥つくづくイラつかせてくれますねあの蛇は‥‥」


 ジュワァァァ‥‥‥


 フェニックスの首は蝋燭の火が消えるように燃え尽きて無くなった。


 「スノウ殿が手に持っているのは‥‥」


 スノウは左手に携えている金属の塊を振り上げた。


 「うぉぉぉぉぉ!!」


 ついに念願の飛翔石を手に入れたのだ。


 バタン!


 緊張で感じなかった痛みが、ホッとした瞬間に戻ってきてあまりにの激痛に気絶して倒れた。 

 みんながスノウのところに詰め寄る。


 「スノウェェェアァァ!!おめぁよくやったなぁ!!!さすがだぜぇ!!!」


 嬉しさのまり泣き叫ぶアレックス。

 気絶したスノウの両肩を持って喜びのあまり前後に振っている。

 一瞬目覚めかけたが、アレックスの振り方が激しく再度気を失った。


 「スノウ!今、回復魔法かけるからね!」


 気遣ってくれるニンフィーにこういう時は一番優しくて素敵だとスノウは目覚め始めた意識の中で思っていた。


 「凄い!きみ凄いよ!」


 感激しているエスティ。


 「‥‥‥」


 エントワは腕を組みながらうなづいている。

 感無量といった表情だ。

 あの紳士にこういう反応されるのは悪くないとスノウは思った。


 「‥‥‥」


 無言で拳を握って俯くワサン。

 どことなく涙ぐんでいるように見えるが気のせいだとスノウは思った。

 あの刺々しいワサンがそんなしぐさ見せるはずもないと思ったからだ。


 「スノウボウヤぁぁ!!心が通じ合っちゃったわねぇぇぇ!!今ここで抱いてあげるわぁ!」


 「こ‥断る‥‥」


 流石に今のスノウにはいつものように切っぱり言い切る余裕はなかった。


 「しかしお前達の連携はなかなかだねぇ」


 オボロがスノウの髪からギョロリと目を開けて話始める。


 「あたしもワクワクしたよ。童、お前なかなか粋な事をするねぇ」


 「どういう事だぁ?」


 「ボウヤとあたしがオボロねーさんに会って戦った時‥‥ボウヤの残像とあたしの魔法残像で2回騙し打ちしたのね。でもその時はオボロねーさんに見切られちゃってて。一応肝を冷やしてもらったけどねぇ。それで、フェニックスと最初会話した時にオボロねーさんの方が負けたという話を聞いてボウヤったら少し頭にきたのね、オボロねーさんに見破られた連携で仕留めるってアイコンタクトしてきたのよぉ、うふふー」


 「おめぇ!あの戦いの中でばーさんのために仕込んだってのかぁ!」


 驚く一行。


 「ま、まぁそんなとこかな」


 (あそこまでうまく連携できるとは思ってなかったけどな‥‥)


 スノウの成長を嬉しく思ったのかアレックスがまたスノウの両肩を揺さぶろうとしたため、スノウが両手を前にだして ”やめてくれ” という動作で断ったため、アレックスは少し寂しそうな表情になった。

 話題を変えようとアレックスは飛翔石の話に触れる。


 「そうそう!飛翔石!見せてくれぇ!!念願の飛翔石!」


 「こら!デカイの!触るんじゃぁないよ!」


 「はいぃ!」


 (アレックスはこのババァの言う事はやけに素直に聞くなぁ‥‥)


 「世界竜の牙と同じ呪詛が込められているんだよ。下手に触るんじゃぁない。放射能と言われる体を蝕む見えない物質が大量に放出されているのだからね」


 「えぇぇ!!放射能!!」


 思わず放り投げるスノウ。


 「こら!お前馬鹿者か!投げるんじゃない!拾ってこい馬鹿者だね!!」


 「拾えるか!こっちは疲れて動けないんだぞ!」


 「なぁにを言ってんだよ。既にそこのおなごに回復してもらってるじゃないか。甘えているんじゃないよこの鼻くそが」


 スノウは仕方なく起き上がり、汚いものを摘むように人差し指と親指で飛翔石を拾ってくる。


 「シェムロム‥世界竜の牙は触れるものに消す事のできない切り裂く風を浴びせる。この童は木の幹‥‥そうさね、お前達がカルパと呼んでいる光の道を通って越界できる力を持っているからその風を押さえ込む事ができるんだよ。だが、このタガヴィマ、日の鳥の心臓はちょっと違う。持っていても余りある有害毒の放射能っていうのが漏れ出しているのさ。幸運にもこの童とあたしの魔力で放射能は抑えられるから余程近づかなければその害に冒される事はないがね。だから決して手に取ってみようなんて思うんじゃぁないよ?お前達の使う精霊魔法とやらでは治せない傷を負うからねぇ」


 「よぉし、みんなわかったな!ホウシャノウってのが出てるから気をつけろよぉ!」


 「お前が言うな!」


 一同が口を揃えてツッコミを入れる。


 「どうしてもスノウさんにハグしたい人は代わりに僕がハグします!」


 「お前も引っ込んでろ!」


 ライジの半分本気のギャグに一同が口を揃えてさらに厳しいツッコミを入れる。


 「さて、みなさん喜ぶのはまだ早い。ここからが本番です。とはいえ、このままあの三足烏サンズウーに対峙するのは無謀です。ここで体力を最大限まで回復してから出発しましょう。幸いこの部屋はフェニックスが我々を逃さないように扉に魔法をかけて閉めている。飛翔石を持ったスノウ殿がいれば開けられるでしょうが、三足烏サンズウーは開ける事はできないはず。まずはここでじっくり体力回復です」


 「よおし!ライジ!飯だ!うめぇもん作れよー!!」


 「あ、あのう‥‥僕も一応頑張ったうえに負傷してるんですけど‥‥」


 お構いなしにテントを張り、火を起こし始める一行。


 「たはは‥‥」


 「ライジ殿、貴殿も我らの仲間。今回の戦いでの活躍、皆を代表してお礼を申し上げます」


 「いぇ!!エントワ様!め、滅相もありません!」


 目に涙を溜めながら喜びを隠せないライジ。

 それを少し離れたところから見つめるエスティ。

 自分の部下が自分の師から褒められているのを見るのはなんともくすぐったくて、でも言い知れぬ嬉しさがある事を知った。



・・・・・


・・・



―――50階層―――


 ガン!ガン!ガン!


 「全くいつまでまたせんのかねー。あいつらは!」


 イライラしているカヤク。

 ワサンとの再戦が待ち遠しいのか壁をガンガン蹴っている。

 壁は削れて大きな穴が空いている。


 「隊長、ワサンによっぽどの事されたんだなぁ‥‥きっと」


 太った男、マイトがつぶやく。


 「チチチ。あたしカヤク様のあの軽くてヘラヘラしていて器のちっちゃいところが大好きよ」


 スタイル抜群の女、ダイナが笑顔で答える。

 少し離れたところに丸いスコープのようなレンズの付いた仮面を被ったひょろ長い男がおもむろに小石を拾い手のひらにのせて狙いを定める。

 もうひとつの手の指で ビン! と小石を弾いた。


 コーーン!


 カヤクの股間に小石がヒットする。

 言葉にならない叫びで股間を押さえながら縮こまるカヤク。

 しばらくすると別人のように冷静な表情になる。


 「キセキ、ダイナ、マイト。隊員達にウォームアップさせろ。おそらく明日か明後日にはやつらと戦闘になる。お前らも気を抜くなよ」


 「はい‥」


 (なんなんだろう、このやりとり。隊長がイライラしててもギョライ隊長が何かぶつけると異様なまでに冷静になるやつ)


 (いいのよ。冷静なカヤク様も大好き)


 小石を投げた男。

 丸いスコープのようなレンズの着いた仮面を被り、ひょろ長い体型で派手な色の迷彩柄のスーツを着ている。

 マイトにギョライ隊長と呼ばれたその男は三足烏・烈、ホウゲキの配下の第3分隊の隊長、ギョライだった。

 無口だが存在感は半端ない。

 見た目もそうだが、グサリと刺されそうな感覚を覚える存在だ。

 その横で部下に休むように指示を出しているのは、中肉中背で特殊な形状のサングラス身につけている男だった。

 ギョライ隊の副隊長のキライだ。

 無口なギョライの意思を汲み取って代わりに部下に指示を出している。


 「ゴゴガガガッガ!ゴガガガッッッガガガガ!!ゴッゲゲゲガーーー!!」


 奥からものすごい轟音が聞こえる。

 トンネル切削でもしているかのような轟音だ。

 ギョライはおもむろに立ち上がる。

 そして目の前に落ちている野球ボール大の石を拾う。

 左手を前に突き出し、人差し指と親指でハートマークを作る。

 どうやら人差し指と親指の交わる窪みを利用して狙いを定めているようだ。

 そして大きく振りかぶってピッチャーのように石を思いっきり投げつける。

 豪速球で飛んでいく石。


 ビュォォォォォォン!!‥‥ドッガン!


 豪速球から想像容易い衝撃音が聞こえた。

 石の飛んでいった先にいたのはいびきをかいて寝ていたホウゲキだった。

 そう、トンネル切削工事のような轟音は彼のいびきだったのだ。

 ギョライの放った石は寝ているホウゲキのこめかみにヒットした。

 その拍子でホウゲキは横を向く形になったがなぜかまだ寝ている。

 恐ろしい男だ。

 あれだけの衝撃でも目を覚まさない強靭な肉体というのか睡眠欲というのか。


 「と‥‥止まった。連隊長のいびきが‥‥」



・・・・・


・・・



―――処変わってフェニックスの間――――


 アレックス一行の面々はそれなりに傷を負っていたが、まずは回復魔法フル稼働で傷の治療と体力回復を行う。

 その後はゆっくり休んで魔力回復だった。

 ゲームでよくあるMP回復のなんたらっていうアイテムはこの世界には存在しないようだ。

 世界に充満している精霊の霊力を吸収して溜め込んでそれを使う。

 つまりその霊力が魔力という事らしい。

 魔力の回復には個人差があって、ニンフィーのように半精霊の存在の回復スピードは異常に早い。

 一方普通の人間は一晩ぐっすり寝てやっと魔力満タンという感じだ。

 しかもそれも魔力量、つまり魔力を溜め込む器、ゲームでいう最大MPによるから魔力の器が大きければ回復に時間がかかる。

 ニンフィーやロムロナは魔力の器が大きいが、回復スピードも早いから明日の朝までには全快するだろう。


 (あとアレックスは今回ランプ擦ってただけだから魔力消費はほぼないからいっか‥‥)


 「ムムゥ?!」


 なぜかアレックスがスノウを睨み不機嫌な顔をする。

 エントワ、ワサン、エスティは肉体強化魔法や回復魔法でそこそこ魔力消費しているが、使い切ったわけではないため、同じく明日朝までには全快するだろう。

 スノウも実はほぼ肉体強化系魔法しか使ってないから然程の消費量ではないが、そもそも魔力の器が小さいため魔力消費比率は高いはずだった。

 従って回復スピードというより器の小ささの方が問題と言えた。


 「スノウ。ちょっと来て」


 ニンフィーが呼ぶ。


 「自分の魔力の器と残存魔力量を感じ取れるようにしないと戦いで力尽きてしまうわ。ロムロナはそのあたり教えてくれた?」


 「いや、魔法とはとか一応説明はしてくれたけど、基本スパルタ教育で習うより慣れろって感じで‥‥」


 「そっか。あの子肝心な事教えないのよね。いいわ、私が教えてあげる」


 「おお!ありがとう!多分自分の魔力の器ってちっちゃいから前みたいにウィリウォーなんて使えないだろうし、そもそもクラスいくつの魔法まで使えて、魔力量的に使いこなせるクラスはいくつまでかってのも全然分かってないし、素市もとしダンジョン以降はほぼ肉体強化系しか使ってないから、正直自分自身何が使えてどれくらい唱えられるのか全くわからず‥‥」


 「了解。じゃぁ早速やってみよう?ここに座って?」


 「うん」


 スノウはニンフィーの髪の香りがふわっと香って顔を赤らめた。

 ロムロナのスパルタを思い出しまるで天国と地獄だなとスノウは思った。


 「難しい事じゃないわ。意識を自分の中に向ける。なんて言うのかな、自分の体の中に一本の筒みたいなのがあるのをイメージするの。自分の想像で筒をイメージするんじゃなくてあくまで勝手に浮かんでくるイメージね」


 「自分にロゴスの魔力感知をする感じ?」


 「ううん、ロゴスのソナーみたいな感知魔法はあくまでその存在を感知するもの。魔力の大きさも少しは感じる事もあるけど、魔力量を知る事はできないわ。魔法じゃなくて、自分自身で感じる事。これが基本」


 「よくわからないけど、やってみるよ」


 意識を自分の内側に集中してみる。


 「‥‥‥‥」


 (筒‥‥腸から胃、食道、そして喉から上に突き抜けて脳みそ、頭のてっぺん、そしてそこから上に突き抜ける感じか?)


 「ん?」


 (んん?)


 スノウは何かを感じたようだ。


 (なんか見えてきた。筒‥‥というより逆円錐状‥‥お茶碗みたいな感じの形?これが魔力を貯める器なのか?)


 「見えてきたみたいね」


 「ああ。でも筒じゃないな。なんかこう‥‥茶碗というか丼というか。あ、でも器の縁の部分がチカチカ光っている感じだ‥‥」


 「へんな形ね」


 「しかも、茶碗の下の部分にはひっくり返った茶碗がある‥‥合わさったのを見るとまるで砂時計みたいな感じに見える。なんだこれ‥‥」


 「砂時計‥‥なるほど」


 「なるほど?」


 「いえ、なんでもないわ。少し変わった形をしているけど、器は器。しかも器の縁が光っているっていったわね?おそらくそれは器が変化しているって事だと思う」


 「変化?」


 「変化というのは適切ではないかも。あなたの場合は器が成長して大きくなっているのだと思う。おそらく魔法を使えない状態を起点にしてそこから器が徐々に作られているっていう感じかな。この世界の魔力をもつ生き物は基本的に生まれた時に器の大きさは決まっているの。大きく括ると種族によって違う。ヒューマンは器が小さい。ヒューマンの中にも人それぞれ個人差はあるけどね。でも基本的に他の種族と比べて器は小さい。だから魔法もクラス3までしか使えない。それもヒューマンの中でも比較的魔力の器が大きくて魔法適正を持っている資質のある人ね。クラス4以上となると、そもそも唱える資質もないのだけど唱えたら足りない魔力を生命力で補ってしまうから死んでしまう」


 「へぇー。じゃぁアレックスやエントワ、エスティはクラス3までしか使えないのは本当なんだね。だからニンフィーやあのイルカ女はヒューマンじゃなくて魔力の高い種族だからクラス3より高度な魔法が使えるってことなのか」


 「そうね。ロムロナでもクラス4、私は半分精霊だからクラス5まで使える。それより高度な魔法になると純粋な精霊か神、上級以上の天使または悪魔ね」


 「神‥天使と悪魔‥やっぱいるんだね」


 「あら、あなた天使には既に会っているわよ。ヨルムンガンドの化身の指蛇と戦った後に会ったって言ってた黒服の女性‥‥あれはおそらく天使」


 「て、天使ぃ?!」


 「ええ。しかも最上級クラスの熾天使。おそらくラファエル」


 (き、聞いた事あるっていうか‥‥固有名詞がおれのいた世界にも有ったものが多すぎる。ヨルムンガンドに天使と悪魔、それにラファエル‥‥。おれのいた世界とどう繋がっているんだ?‥わからない‥‥ますますわからなくなってきた)


 「天使の話はまた今度ね。今は三足烏サンズウーに集中。とにかく、魔法には種族と個体で資質に差がある。あと、種別によっては影響範囲が大きく強いから扱えないものもあるわ。例えば、神秘精霊魔法ミュトス系。星や天候、死までを扱うから本当に限られた人にしか使えない。あとは原初精霊アルケー系魔法。これは光と重力、時空間を操る魔法。これも本当に限られた人にしか使えない。ちなみに私はどちらも使えないわ」


 「ニンフィーでも使えない魔法があるのか‥‥」


 「まぁね。わたしは万能じゃないし、そもそも水元素を元にした精霊の血が流れているからリゾーマタを得意としているだけで半分はエルフだからね。魔力は大きいけど、それだけ」


 「なるほどなぁ」


 「あとは異形精霊ゾス系ね。これはアルケーやミュトスに比べると多少使える種族は増えるわね。例えば素市ダンジョンでエスティが戦ったエルダーリッチはゾスを使っていたって聞いたわね」


 「そっか。でもまぁおれには関係ない話だろうなぁ。そんなすごい魔法使える気がしねーもん。ははは‥‥。あ!でもおれの使ったウィリゥォーはリゾーマタ水系のクラス5魔法じゃなかったっけ?なんでおれ、そんな高等魔法使えるんだろう‥いや、使えてないか。放った後ぶっ倒れたし、ははは‥‥」


 「そうね。越界できる力も持っているからあなたは何か特別なものを持っているのかもね、ふふふ」


 ニンフィーはそう言って少し嬉しそうに笑った。


 「そうそう、話を戻すと自分で自分の魔力の器の大きさとか、残存魔力を確認する事はできるけど、人の魔力は見られるの?」


 「いえ、他の存在の魔力の器や魔力量は見られない。いえ、それを見られる魔法はあるらしいけど、わたしは知らない。でも感知魔法を使うと感知する魔力の圧と距離でなんとなくの魔力量はわかると思うわ。」


 「なるほどね。それも訓練が必要な感じだね。見た目に騙されないようにしよう!ありがとうニンフィー!あのイルカ女と違って説明わかりやすいし、なんつっても優しい!癒されるよ」


 ニンフィーは無言だが、少し顔を赤らめて恥ずかしそうにどこかへ行ってしまった。


 (あれ‥なんか変な事言ったか?褒めたつもりだったけど女心はよくわからん。‥‥わかるわけないか!そういう経験ゼロだし!ははは‥‥。さて、そろそろ寝るかな)


 スノウは横になり眠る体制にはいる。

 おそらく明日昼前にはこの部屋を出て地上を目指し出発する。

 つまりいよいよ三足烏・烈と対峙するという事だ。

 もしかしたら明日死ぬかもしれない。

 この世界に来て得た自分の居場所。

 元の世界に戻っても居場所などない。

 ただただ時間を浪費して何も成し得ない日々があるだけ。

 どうせいつかは死ぬ。

 重要なのはいつ死ぬかじゃなく、悔いなく死ねるかだ。

 つまりどう生きるか。

 元の世界では心が死んでいた。

 後悔まみれの人生の終わりをいたずらに待つだけ。

 それに引き換えこの世界ではスノウは初めて生きている事を実感した。

 自分の居場所をくれたアレックスたちの為にこの命を使えるならそれはそれで本望だし、悔いはない。

 

 (そう、悔いなく死ねるなら、それが明日であってもいいんだ‥‥)


 スノウはそう考えていた。

 ヨルムンガンドの牢獄で仲間を疑って言いたい事を言い、情けない自分を曝け出したスノウ。

 そしてそんなスノウに正面から向きってくれたエントワやニンフィー、ロムロナ。

 裏切られないように他者を信じない人生より、裏切られても信じ切る事で得られる力。

 その力を知ったスノウは、初めて自分だけでなく他者のことも想って自分の死ぬ場所を考えるようになっていた。


 (おれは負けない。みんなで生き残ってヴィマナを飛ばすんだ。そのためにも今日は休まねば‥足手まとい‥‥にならずに‥‥あいつらのために100%でたたか‥‥える‥‥ように‥‥)


 別の部屋にも関わらず響いてくるアレックスの煩いいびきも気にならないとばかりに、吸い込まれるようにスノウは眠りにおちた。






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