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<ケテル編> 119.生還

119.生還



 「アカルさん‥‥」


 「心配すんな。あんなに強いやつがそう簡単にやられるわけねぇって!」


 不安な表情を浮かべるフランにロイグが励ますように言った。

 しかしロイグも心の中では不安でいっぱいだった。

 あの異様な得体の知れない存在にアカルが勝てる確信を持てなかったのだ。

 どういう原理なのか分からないが実際の景色と違うものを見せてくる。

 見せるだけはなく、実際に触ることもできてしまう。

 これまで何人かの神や半神に会ってきたが、このような芸当ができる者はいなかった。

 念の為、地上との出入り口はフランが扉を開けたままにして避難経路を確保し、地下都市への出入り口はロイグが開けたままにしている。

 扉を閉めると別の空間に繋がってしまいかねなかったからだ。

 クレアはフランのすぐ側に立ち、いつでも外に逃げられる状態としていた。

 しばらくそのまま警戒していると、遠くから走る足音が聞こえて来た。


 タッタッタッタッタ‥‥


 「誰か来るぞ!」


 「!」


 3人は警戒した。

 ロイグは途中で拾った鉄の棒を槍代わりにして構えている。


 「いいか!俺が “敵だ!” って叫んだらすぐその場から逃げろ!俺もこの扉を閉めて後を追う!」


 「うん、分かった!」


 タッタッタッタッタッタ‥‥


 走る足音が徐々に近づいてくる。


 ドクンドクンドクン‥‥


 3人の心拍が速まる。


 タッタッタッタッタ‥‥


 「!!」


 100メートルほど先の十字路から何者かが出て来てこちらに向きを変えて走ってくるのが見えた。

 砂埃が舞ったためはっきりとは見えなかったが、次第に埃が晴れるにつれてその姿が見え始めた。


 (誰だ‥‥)


 ロイグは目を細めて見つめる。


 「‥‥アカルだ!」


 「え?!やった!」


 「でも走っている音‥ひとりじゃないわよね?!」


 心配で降りて来て走って来ている者を見ているクレアの言葉にロイグはさらに目を凝らして見つめる。


 「!」


 するとその背後からバンダムが追いかけて来ていた。


 「お、おい!あの大男がアカルを追いかけてるぞ!」


 「え?!」


 「アカルがここに着いたら直ぐに扉を閉める!アカルと俺が階段登ったら直ぐにそっちの扉も閉められるように備えてくれ!扉閉めた後はクレアを担いで俺に乗れ!いいな!」


 「分かった!」


 ロイグの指示でクレアは再度フランの側まで上がって行った。

 緊張感が走る。

 アカルとバンダムの距離は10メートルほどに見えた。

 半神のアカルの走りは破壊後の障害物の多い通りであっても時速50キロメートルは出ているはずで、それを同速で追いかけるバンダムとの距離が10メートルとするとアカルを扉のこちら側に引き入れた後バンダムが入ってこられないように扉を閉める余裕は1秒もない。

 一瞬が勝負だった。


 「アカル!」


 ロイグが叫ぶ。

 アカルは走りながら左手親指を後方に向けて背後を見ろと合図している。


 「分かってる!大男だろ!急げ!」


 「‥!‥‥!!」


 アカルは何かを叫んでいるが走る足音と外から聞こえてくる風切り音ではっきりと聞こえない。


 「違う!もっと後ろだ!」


 やっと聞き取れた言葉に従ってバンダムの背後を見ると、無数の人影が奇怪な動きで追いかけているのが見えたのだ。


 「はぁ?!何だよあれ!」


 「ロイグ!私とバンダムが入ったら直ぐに扉を閉めろ!」


 「え?!その大男もか?!」


 「そうだ!彼は味方だ!」


 「信じられねぇ!あいつには変なのが乗り移ってた!」


 「大丈夫だ!私を信じろ!」


 もう目の前までアカルとバンダムが迫っていた。

 そして直ぐ後ろまで200〜300体の人影が引き連れられている。

 直ぐに決断しなければならなかった。

 アカルがあの得体の知れない存在に乗っ取られていてバンダムと結託して人影もろとも押し寄せているなら自分たちは確実に殺される。

 もしそうなら、今直ぐにでもこの扉を閉めなければならない。

 だが、アカルの言っていることが本当ならここで扉を閉めれば二人を見殺しにしてしまうことになる。

 瞬時に判断というロイグにとって最も苦手な瞬間だった。

 フランを頼りたかったが説明している時間がない。


 「おぉぉ!分かんねぇことは分かんねぇ!」


 ダッタッタ!!バタン!!


 アカルとバンダムが扉の中に入って来た直後にロイグは扉をしめた。


 「上だ!」


 アカルは頷きながら階段を登っていく。

 続いてバンダム、最後にロイグが扉から出た。

 それを見てフランが扉を閉めた。


 ガチャ!


 ロイグはフランの横に立ち、クレアを庇うようにして構えた。

 もちろんアカルとバンダムに警戒してのことだった。


 「お前本物のアカルか?!」


 「警戒するのも無理はないが、本物だ」


 両手を広げて敵意はないことを示しながらアカルが答えた。


 「じゃぁなんでバンダムが一緒にいるの?!」


 「フランかい?!フランなんだね?!」


 突如バンダムがフランの顔を見て驚いたような顔で笑みを浮かべて声を上げた。


 「!!」


 バンダムが自分を認識していることに驚くフラン。

 乗っ取られているなら自分を認識してこのような顔はしないはずだった。

 だが、得体の知れない存在が乗り移っていた状態だ。

 バンダムの記憶を見て喋っているのかもしれないとフランは警戒した。


 「君がバンダムだってのをどうやって信じればいい?」


 「ぼ、僕にそれを証明させようとしても無理だよ‥‥証明しようがない。信じてくれとしか言えないよ‥‥」


 「フラン、ロイグ。私が説明する。まず最初に言っておくがこやつも私も正真正銘正気であり乗っ取られてなどいない」


 そう言ったアカルは地下で何があったのかを説明し始めた。

 バンダムを乗っ取った存在はバンダムを完全には支配仕切れていなかったようで、動きにムラがあり一瞬の隙をついてバンダムに致命傷を与えた。

 致命傷を与えられた瞬間にバンダムを乗っ取っている存在は身の危険を感じ精神を本体に戻したのだという。

 アカルは応急処置で傷口を塞ぐとバンダムを抱えてその部屋から出た。

 異形の存在はそれ以降興味を示さなかったようで無事に地下施設を出ることに成功したが、出た瞬間無数の人影がにじり寄って来たらしい。

 そして、逃げるのに合わせて無数の人影が追って来たのだという。

 バンダムはその時の致命傷と思われた傷口を見せた。

 確かに脇腹に深い傷が入っているが、アカルが髪の毛を使って縫合したとのことで傷口が開くのは防がれていた。


 「その傷を致命傷だと思って体から抜け出したってこと?」


 「そうだよ。体を乗っ取られている間、僕も意識があってね。体はいうこときかなかったけど、殴ったり切られたりした時の感覚や痛みはあったんだ。そしてこの傷をつけられた時、血が吹き出したのを見て死ぬんだろうって思ったよ。そうしたら僕の体から嫌な感覚の何かが出ていって急に体が軽くなって自分で動かせるようになったんだ。おそらく表情も無表情から今みたいな普通の状態になったんだと思う。それを見たアカルさんが僕に急いで応急処置してくれたんだ。それで助かったんだよ」


 確かにその表情は乗っ取られていた時とは違い、豊かな表情となっている。


 「バンダム‥‥」


 クレアがバンダムに声をかけた。


 「クレア‥‥すまない‥‥僕にはこんな腕力があるのに君を守れなくて‥‥」


 「いいのよ‥‥あんなのアネモイ剣士だって太刀打ちできたかわからないもの‥‥」


 「とにかく、ここにいるのは不味い。信じてくれるならこのまま5人で安全なところへ移動すべきだと思うのだが信じてくるか?」


 「ええ、信じます」

 「うん‥‥」

 「わ、わかった‥‥とりあえずはな‥‥」



 クレアは信じたようだが、フランとロイグは完全には信じられていないようだった。

 しかし、逆に疑うべき決定的な点も見当たらなかったためひとまず信じることにした。

 フランはロイグに目で合図を送り、常に見張ることを伝えロイグは目で了解した。


 「さて、この後どうする?一旦ルガロンに戻るのがいいと思うのだけど‥‥」


 バンダムが意見してきた。

 確かにこのままここに止まっていても意味がないし、危険がないとも限らない。


 「ルガロンに戻ってもあそこには何もないぜ。だったらアイオリアのナーマの方がいいんじゃないか?」


 「そうだね。ここから一番近いのもナーマだしね」


 ロイグに続いてフランが言った。

 目で合図して、アイオロスやゼピュロス、ソニックやワサンのいるところに行き、アカルとバンダムが問題ないかどうかを見極めてもらい何かあれば対処してもらえると思ったのだ。


 「それがいいだろう。ルガロンに行っても期待できるものはないだろうしな」


 アカルの一言でナーマ行きが決まった。

 フランの依頼もありクレアをロイグの背中に乗せナーマに向けて出発することにした。


挿絵(By みてみん)



・・・・・


・・・



 スノウたちを乗せた装甲馬車は間も無くゲズに到着しようとしていた。


 「スノウ殿、間も無くゲズに着きますぞ」

 「歩きながら進んでたからこんなに時間掛かっちまったがしょうがねえよな?ダンナ」


 バリオスとクサントスが間も無くゲズに到着することを告げた。


 「おう、ふたりとも。アネモイ剣士協会支部があった場所まで行ってくれ」


 ヘラクレスが走行馬車から顔出して指示をだした。


 「了解しました」

 「うっす!」


 「あれがゲズか」

 「そうだ。あの大きな壁と建物が大統領府だった場所だ」


 一同はヘラクレスの指さした方向に目を向けた。

 その先には暗闇の中で薄っすらと姿を現した巨大な建物の影があった。

 所々灯りが灯っているため、建物の大きさが窺えたのだが同時にそれだけ人が住んでいることを示していた。

 アネモイ剣士協会支部だった建物はその大統領府からほど近い手前の街並みの一角にあったのだが、既に風の大破壊ヴァシュヴァラの影響で無数にあった家々は吹き飛ばされており、アネモイ剣士協会支部も辛うじて残っている状態だった。

 灯りが灯っているところを見るとどうやら剣士協会支部跡にも人がいるらしい。


 「誰かいるようだな。アネモイ剣士かサポーター、スタッフだと話は早いんだがな」


 「確かに全く関係ない者がいたらどうにもならない可能性があるな。というよりそもそもこの状態で食料を確保できるかもあるな」


 薄っすらと照らされる大統領府やその周辺の状況を見ると、破壊の度合いが激しく。まともに残っているのは大統領府のみだったのだ。


 「まぁ1日か2日分の食料が確保できりゃぁなんとかなるだろうさ。最悪ぶんどってもいいわけだしな、わっはっは!」


 「あなたアネモイ剣士でしょ?そんな横暴な態度でいいですか?」


 「俺はそれだけこの世界に貢献してきたんだぜ?それくらいやったって罰あたらねぇし、そんな罰を俺に課そうってやつがいたらそれこそぶちのめすがな、わっはっは!」


 「ははは‥‥なんだかヘラクレスさんと一緒だと何でもありだと勘違いしちゃいますよ」


 「もうそろそろ着くぞ。ヘラクレス、交渉役頼んでいいんだな?」


 スノウが話しかけるとシンザと戯れあっていたヘラクレスは頷いて装甲馬車から身を乗り出した。


 「よし、そこで止めろ」


 半神馬たちは馬車を止めた。


 「さぁて。何が出てくるか楽しみだな」


 「もはやぶちのめす気満々じゃないですか」


 「まぁな、わっはっは!」


 一同はアネモイ剣士協会支部だった建物に向かった。




いつも読んで下さって本当に有難うございます!

生還したアカルとバンダムのふたり。

これを一応信じることにしたフランとロイグですが、真偽を確かめるべくソニック達のいるナーマに戻る選択をしました。

これが世界の勢力図に影響を与えるきっかけになります。

楽しんでいただけたら幸いです!

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