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<ケテル編> 106.血の盟約

106.血の盟約



 霧の中から女が現れた。


 「あの女性がティアマト‥‥」


 「見た目に惑わされるなシンザ」


 シンザの呟きにスノウが警戒を促す。


 「その通りだ。あれは奴の頭部。奴の本質は竜だからな」


 ヘラクレスが小声で補足した。

 その後、目の前の女性が目を見開くことなく言葉を発した。


 「お前たち‥‥ここはもはやゼウスの地ではない。お前たちが自由に行き来出来る場所ではないのです。この地を欲するなら、再度我らに挑むがよいと伝えなさい」


 その言葉に反応してヘラクレスが前に出て答えた。


 「ティアマトよ。俺たちはゼウスの手の者でもやつに加勢する者でもない。むしろ俺はあの偉そうな態度がムカつくからボッコボコにしてやりたいくらいだ。ということで俺たちは俺たちの意思でここに来た。あのクソ親父とは関係ない」


 「ほう‥‥では何が望みですか?」


 「倒れない燭台だ」


 「レムゼブルノーの燭台‥‥あれはゼウスから献上された我のもの。それを返せと言うのですか?」


 「いや、あんたのものはあんたのものだ。借りたいだけだ」


 「無礼な!ただで貸すと思っているのか?」


 凛々しい男性の姿のラフムの顔が一瞬で口が避けて牙がせり出て来て恐ろしい形相となった状態で口を挟んできたが、ティアマトがそれを左手をあげて制すると、恐ろしい形相となったラフムの顔を元の男性の顔に戻っていった。


 「ただ借りに来たと‥‥神に宝物ほうもつを借りに来る度胸は認めます。ですが、それには代償が伴います。お前たちはその代償を払うことができますか?」


 「代償か。何を望むティアマトよ」


 ヘラクレスが問いかけた。


 「そうですね。ゼウスの首‥‥それが難しければアテナの首を差し出しなさい」


 「いいだろう!」


 即答だった。

 スノウはヘラクレスが何を考えて即答したのか分からなかった。


 「だが条件がある」


 「条件とは何ですか?」


 「先に燭台を貸してくれ」


 「何だと貴様!」


 マルドゥークが背中に生えている6本の獣の手を広げて威嚇している。

ティアマトはそれを制しして質問した。


 「先に貸せとは?」


 その問いに対してヘラクレスが答えた。


 「今ゼウスは行方をくらましてる。アテナはアルカ山頂でペルセウスたちと共にセプテントリオンとかいう集団を作ってこのケテルの支配を目論んでる。他にもいるぜ。南ではニュクスがタルタロスから戻って来やがった。アイオロスやゼピュロスも健在だ。地上の者たちも神々からの支配にうんざりしているやつらが、覇権を奪おうと暗躍している。つまりいずれこの世界でケテルの支配権を巡って大きな争いが始まるだろう。そうなればこのエークエスにも攻め込んでくるぜ。俺の予想じゃ勢力は大きく3つになると思っている。アテナもアイオロスもニュクスも元を辿ればカオスから生まれている。身内で戦うのは最後でいいって話になるだろう。地上の者どもも同じだ。脅威は神だとなれば協力してまずは神々を討ちにかかるだろう。そのな状況となった時、普通どこから潰す?おそらくオリンポスの神々と地上の者たちは結託してこのエークエスを潰しにかかるだろう。最も弱小だと思っている勢力から潰すのが定石だからな。俺ならそうする。‥‥となればお前らだけじゃ大変だろう?」


 「貴様!我らの力を侮っているな?!もはや我慢ならん!今ここで殺してやろう!」


 「まてマルドゥーク!こやつの言い分も一理ある。オリンポスの者どもと地上の者どもは長年支配する者とされる者として繋がっていたわけだ。おそらく地上の者は知恵を働かせるだろう。なるべく自分たちの敵を自分たちの手を使わずに減らそうとな。となれば姑息な地上の者どもはオリンポスの神に頼むみ込むだろう。自分たちを支配するそのお力をお貸し下さいとな。その標的はほぼ間違いなく我々だ」


 マルドゥークの怒りを抑えられない言葉を制してエンリルが意見を述べた。

 それに対してマルドゥークが返した。


 「ならば、まずはどちらかを殲滅してしまえばよいではないか。まずは長年風の恩恵マニフィセに与っていた地上の者どもを殲滅してしまえば良い」


 「それはよい考えだ。神技シンギも持たない者たちなど捻り潰すのは簡単だ。まさかそれを救おうとする馬鹿もいないだろうしね」


 ラハムがマルドゥークと同意見で重ねてきた。

 それに対してエンリルが声を荒げて返す。


 「支配してこそ神だ。支配される者がいなくては我らの力も徐々に衰えよう。それにハノキアには覇権を握る彼者の手の者たちもいる。異系の者どもも安住の地を求めいつこの地を攻めてくるか知れんのだぞ」


 「その時はその時だ。それまでに我らも力をつければ良かろう?何を臆しているのだエンリルよ」


 「先を読み知恵を使えと言っているのだ!」


 それらのやりとりを表情ひとつ変えずに黙って聞いていたティアマトは左手を上げて制した。


 「分かりました。レムゼブルノーの燭台はお前たちに貸しましょう。ですが条件は、このケテルで勢力争いが勃発し我らエークエスが戦いに赴く際に加勢すること。そしてその際相手がゼウスやアテナの時、その首を持って来なさい。これが条件です。それがのめないならレムゼブルノーの燭台は諦めることですね」


 「いいだろう!お前たちに加勢しゼウスかアテナの首を取って来てやる」


 「おい待て。俺はごめんだぞ。やりたきゃお前らが勝手にやれ。俺を巻き込むんじゃねぇ」


 ヘラクレスの言葉にディアボロスが割って入り、条件を断った。


 「好きにしろ。お前は元々俺たちの仲間でもなんでもねぇ。シルズに脅されてひぃひぃ怯えながら加わっただけの部外者だ。こいつは単に同行しているだけの存在だからこいつは対象から外す。これでいいな!」


 「ちっ!」


ヘラクレスの言葉に不満げな表情を浮かべるディアボロスだったが、仲間として条件を受けるメンバーに加えられるよりはマシだと思い黙って見ていた。


 「いいでしょう。お前の申し出を受けます。手を出しなさい」


 ティアマトのその言葉に応じてヘラクレスが手を出した。

 女の姿のティアマトは自身の腹の中に手を突っ込んだ。

 そして強引に何かを引っ張っている。


 グジュグジュジュ‥‥


 肉を抉るような音と共に何かが腹の中から引っ張り出されて来た。


 三叉の燭台だった。


 ティアマトは血だらけの燭台をヘラクレスに渡した。

 ヘラクレスはそれを受け取った。

 手にはティアマトの血がついてしまった。


 「貸し出す期限はお前に委ねましょう。いいですね。戦の際は必ず我らに加勢しゼウスかアテナの首、我に差し出しなさい」


 そう言うとティアマトは霧の中に消えた。


 「寛大な我らの母に感謝せよ。半端者と駒よ‥‥」


 「よいか?我らを裏切ることはできぬぞ‥‥」


 「戦いの際はお前をこき使ってやるから楽しみにしておきな‥‥キヒヒ」


 マルドゥーク、ラフム、ラハムが後に続いて霧の中に消えた。

 無言のままエアも地面の中に染み込む形で姿を消した。


 「ボレアスに伝えておけ。戦うなら容赦はしないとな」


 最後にエンリルがアンズーの姿に変化へんげして空高く飛んでいった。

 周囲から異系の神々の気配が消えたため、一行は街を出ることにした。

 街を出るまでの間は結界を張っているネルガルと照りつける太陽のシャマシュによって常に見張られているため、会話は控えて無言で街の入り口まで歩いた。

 街の入り口までたどり着くと、そのまま入り口から外に出る。

 出た瞬間に視界は通常の暗がりに戻った。

 少し離れた場所で兄弟の半神馬が待機しており、無事に戻ると一行は南へ進路をとって出発した。

 道中、今回全く出番の無かったスノウたちは状況を整理したいと思い、ヘラクレスに確認した。


 「あんな約束をしてしまって大丈夫なのか?」


 「あれって、僕たちもエークエスに加勢するってことですよね‥‥。この勢力争いの中で一勢力につくことをこの段階から決めてしまうのはリスクがあるんじゃないですか?」


 「神の勝手な言い分でしょう?私たちには関係ないわね。私たちはマスターの意思に従って動くのだから、エークエスに加勢しないとマスターが判断すれば加勢しなければいいのよ」


 スノウの質問にシンザが乗っかり、それをシアがエークエスへの加勢は守る必要なしときっぱりと言って退けた。

 それに対してヘラクレスが言葉を返した。


 「確かにそうだな。俺もそのつもりだった」


 「だった?どういうことだ?」


 「やられちまったよ‥‥」


 そう言うとヘラクレスは左手を見せた。


 「!」


 そこには紫色のあざが染み付いていた。


 「なんだよそれ‥‥」


 「呪縛だ」


 いつの間にか馬車の奥に座っているディアボロスが答えた。


 「何だお前、散々この馬車乗るの嫌だって言ってたのに結局乗ってんじゃねぇか」


 「悲惨な状況のお前を笑ってやる絶好の機会だからな。くせぇ空気も我慢できるってもんだぜ」


 「は!言ってろ。こんなの屁でもないからな!」


 「どういうことだよヘラクレス!」


 スノウが質問した。


 「神の呪縛ってやつだ。言い換えるなら盟約だな」


 「盟約?」


 「キザ野郎のように悪魔や天使は契約をする。契約は当事者間で結ぶもんだが、その内容を担保するのは大いなる意思とか呼ばれるもんだ。あいつらが縛られている秩序に基づいたルールってやつだな。精神に刻まれた抗いようのないそれこそ縛りだ。俺たちには関係ねぇ。だから俺たちは当事者間で約束を実行させる縛りを課さなきゃならない。それが盟約だな」


 「その痣‥‥ティアマトがお前に何かしたのか?」


 「そうだ。腹から血をどばどば出して燭台渡して来たろう?あの血だよ。血には力があるからな。あいつワザと腹から取り出したんだぜきっと」


 「もし約束を破ったらどうなるんだ?」


 「俺が教えてやるよ。そのあざは毒だ。まだ発動していないがな。約束を違えたと両者が認めた瞬間に発動する。その痣の部分の肉が腐り、骨を溶かす。凄まじい激痛と共にな。そして痣はみるみる内に全身に回って数日もしない内にそいつを殺すだろう。フハハ‥‥随分と愉快な土産を貰ったもんだ。油断したお前自身の責任だな。笑いが止まらねぇ」


 仲間ではないとはいえ、共に行動している者として協調性や思いやりのかけらもないディアボロスの言い分を聞いてスノウは怒りのあまり鬼神のオーラを発してフラガラッハに手をかけた。


 ガチャ‥


 ヘラクレスがそれを抑えた。


 「こいつの言う通りだ。これは俺の油断が招いた結果だ」


 「でも両者が認めた場合にのみ発動するんですよね。ヘラクレスさんが認めなければいいんじゃないですか?」


 シンザの質問に対してヘラクレスが答える。


 「そんな生ぬるいもんじゃねぇよ、神の力ってのはな。俺が少しでもティアマトを裏切ったと思っちまったら発動する。これは深層心理まで届いちまうからな。記憶喪失にでもなって全てすっかり忘れちまったらあるいは逃れられるかもしれないが、この痣がそれを許さないだろうしな」


 「ヘラクレスさん‥‥」


 シンザは同情して辛そうな表情を浮かべた。


 「そんな顔すんなシンザ。意外と俺は何とも思っちゃいない。むしろいずれゼウスはぶっ飛ばすつもりだったからな。そのついでにその首をあの女に渡せばいいだろ?まぁ想定の範囲内ってやつだ、わっはっは!」


 空元気でもなく本気でそう思っているように見えたためシンザは安心の表情を浮かべた。

 一方スノウはディアボロスに向かって鋭い目線を向けていた。


 「お前‥‥協力する気あんのか?‥‥誰とどんな契約をしたか知らねぇが、何もせず協力しないならここで殺してやるぞ‥‥」


 同行し始めてからずっと我慢してきたスノウだったが、ゲブラーから引きずっているディアボロスの数々の悪行に加えて先ほどの非協力的な対応で我慢の限界を超えてしまったのか、ディアボロスの前に立ち、凄まじい殺意のオーラを放ち始めた。

 そもそも、ディアボロスがスノウを拐わなければバルカンが命を落とすこともなかった。

 スノウにとってそのことがディアボロスに怒りを向ける最も大きな動機だった。

 あまりのオーラにヘラクレスは言葉を失っていた。

 スタっと立ち上がったシアが加勢するとばかりにスノウの横に立ち剣の柄に手を添えている。


 「何だやろうってのか?」


 「質問に答えろ下衆野郎」


 「ほう‥‥いいオーラ出すようになったじゃねぇか。ついこの間までひぃひぃ泣いてた引きこもり野郎がな。俺に協調性求めてんなら勘弁してくれ。そんな契約じゃねぇしそもそもお前たちと馴れ合うつもりは微塵もねぇんだよ。それにどの口が言ってんだ?マルクトじゃぁ協調性のかけらも持ち合わせてなかったお前がよ」


 「!!」


 ガカン!


 スノウは怒りのあまりフラガラッハを抜きディアボロスの顔面を掠る形で突き立てた。

 ディアボロスの頬が斬られ血が滴る。

 だが、表情ひとつ変えず相変わらず不敵な笑みを浮かべている。


 「図星つかれて怒ったか?それとも仲間に過去の無様な自分の姿晒されて焦ったか?」


 バッゴォォォン!!


 ディアボロスは凄まじい勢いで吹き飛んだ。

 シアが思い切り蹴り飛ばしたのだ。

 だが、馬車の内壁に激突する直前で得意の異次元への移動で姿を消し、逆方向から再度現れた。


 「やってくれるじゃねぇか女」


 ディアボロスの頬が鬱血している。

 一方のシアは無言無表情のまま再度ディアボロスに向かって攻撃をしかけ向かっていく。


 ドッゴン!


 シアの凄まじい正拳突きをディアボロスは片手で受け止めた。

 シアは構わずもう一方の拳をディアボロスに向けて放つ。


 ドッゴン!


 まるで連携攻撃のように両手の塞がったディアボロスに向かってスノウはフラガラッハを向けてゆっくりと近づける。


 「偉そうに言ってんじゃねぇよ悪魔風情が。このミッションでお前に加勢受けるメリットよりここで殺すメリットの方がデカいって分からねぇか?」


 スノウはフラガラッハをディアボロスの右目に突き刺そうとゆっくりと近づけていく。


 「スノウさん!」


 シンザが割って入った。


 「ダメっすよ!今こいつを殺したらこいつの仲間が邪魔しに来ます!そしたらバルカンさんを救うのに時間をロスしてしまいますよ!


 「邪魔すんのかシンザ」


 スノウの怒りの矛先が邪魔をするシンザにまで向けられた。


 バァン!


 突如スノウの背中に激痛が走った。

 ヘラクレスがスノウの背中に平手打ちを放ったのだ。


 「ヘラクレス‥手前ぇ‥」


 凄まじい怒りの眼差しがヘラクレスにも向けられた。


 「怒りで行動したらダメだ。相手を本当に殺したいなら冷静になれスノウ。怒りは力を与えるが判断力を鈍らせる。それに今のお前の力じゃこいつを完全に殺すことはできないぜ。なんつっても転生しやがるからな。永遠に消滅させたいんだろう?だったらその手段を探せ。なんなら手伝うけどな。そのためにはまずは冷静になれよ」


 スノウはヘラクレスの真剣な眼差しを見て、剣を収めた。

 彼の言う通りだった。

 ディアボロスをここで斬り刻んだところで復活されては意味がない。

 ヘラクレスの平手打ちの痛みがスノウを冷静にさせてくれた。

 スノウが剣を収めたのを見てシアも拳を下ろした。

 シンザはほっとした表情を浮かべてその場にへたりこんだ。


 「ちっ!余計な真似しやがって。せっかく面白い展開になったっつぅのによ」


 「契約破棄にでも持ち込めると思ったか?そんなことさせる訳ないだろうが。わっはっは!」


 ヘラクレスは豪快に笑っている。


 「クセェ息吐くんじゃねぇよ」


 そう言うとディアボロスは消えた。


 「ふぅ‥‥さて。まぁ座れよスノウ、フランシア」


 ヘラクレスに促されるままふたりは座った。


 「まずはバルカンを救うことだ。それが第一優先事項なんだろ?」


 「すまないヘラクレス。お前の言う通りだ」


 スノウは自分を振り返った。

 ゲブラーでウカの面をつけ狐面から鬼神面に変わった時も同様の状況になっていた。

 怒りがある一線を越えると対象を滅する衝動が抑えられなくなるようだった。

 それは目的が対象を滅することのみになるため、周囲の者を気遣うことができなくなる破壊の衝動にも似た感情のスパイクだった。


 「なるほどな。昔の俺もそうだったからよく分かる。怒りは力を与えてくれるからな。脳内に力を倍増させるホルモンが分泌されて、何倍もの力で相手を滅することが出来る。だが、それは諸刃の剣だぜ。守るべきものまで殺しかねないし、そもそもその力に頼ること自体、その力が発揮されていない時に出せる力を押さえ込んじまうからな」


 「どういう意味だ?」


 「怒った時に出せる力は本来持っている力だ。それを抑えなきゃならないうちはその力を自分のものとしていないって事だ。自分のものに出来てないならいつかお前自滅するぜ。これは口で説明して理解できるこっちゃないからな。お前自身が実戦で学び理解して会得しろ。ちなみに俺様は既に悟りの境地に至ってるがな!わっはっは!」


 バッゴォン!!


 シアの鉄拳がヘラクレスに放たれた。


 「イッテェな!フランシア!何もしてねぇだろうが!」


 「勿体ぶって情報をきちんと伝えてない罪よ。これは重罪。今ここで死になさい」


 「ちょいちょい待て待て!」


 そう言いながらヘラクレスは馬車の外に逃げ出した。


 「おい兄者。ヘレクラスの旦那、戦線離脱か?」

 「かもしれんな」

 「一応止まるか?」

 「いや構わん。突っ走るのみだ」

 「了解だぜ!」


 兄弟の半神馬はさらにスピードを上げた。


 「おいおい!待てコラァ!俺を置いていくんじゃねぇ!!」


 ヘラクレスが巨体を素早く動かして追いかけてくるが、それから逃げるようにバリオスとクサントスも本気で駆け出した。

 ちょっと馬車の外に逃れてやり過ごしてまた戻るつもりが、なかなか馬車に乗る事ができない羽目になった。

 一方スノウにはそんなやりとりが目に入っていない様子だった。


 (怒りを制御しろ‥‥いや違う‥‥何かが違う。押さえ込んだらこの力を自由に使えない気がする‥‥)


 スノウはこの怒りの衝動をコントロールする術を身につけないといつか自滅してしまうのではないかというヘラクレスの言葉を重く受け止めていた。




いつも読んで下さってありがとうございます!

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