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<ケテル編> 100.魔王と神殺し

100.魔王と神殺し



 体が勝手に反応し、スノウはフラガラッハに手をかけた。

 すぐにでも目の前に現れたものを切り刻む体勢が整っている。

 全身の細胞が攻撃色に変わり破壊の気が練られ、全霊を持って尽きるまで叩きのめす攻撃に移るのに必要なのものはほんの些細なきっかけでよかった。


 「待てスノウ」


 シルゼヴァの止める声に反応することなくスノウは目の前に現れた者に集中している。

 スノウがそこまで全神経を向けて攻撃態勢を取る相手。

 それはゲブラーでスノウの行動を悉く妨げ、ついには自分をこのケテルに攫い、仲間がケテルへ越界せざるを得ない状況を作り出し、挙句にバルカンの命まで奪う原因を作った男。


 魔の蠢く深淵の大魔王ディアボロスだった。


 相変わらずの白いスーツから覗く悍ましい模様のタトゥーが見える姿で、スノウの全身を削がれるような凄まじい殺意のオーラに晒されているにも関わらず不敵な笑みを浮かべながら平然と立っている。


 「なかなかのオーラを放てるようになったじゃないかアノマリー」


 スノウはその言葉に答えず、目の前の男を斬り刻む攻撃に入るきっかけを待っていた。


 「戦いのラッパでも待ってんのか?俺に準備の時間を与えるとは随分とお優しいもんだ。その甘さがバルカンを殺‥」


 ガキキン!!!!


 ディアボロスの口からバルカンという言葉がきっかけとなりスノウはフラガラッハを引き抜き、凄まじい早さと重さの強烈な一振りを繰り出した。

 その攻撃をシルゼヴァが剣でディアボロスの顔の目の前で止めた。

 目の前にフラガラッハの鋭く研がれた刃が迫っているにも関わらずディアボロスは瞬き一つせずに不敵な笑みを浮かべ続けている。


 「待ってと言っているぞスノウ」


 シルゼヴァが制して少し距離を取らせた。


 「‥‥‥‥」


 スノウは目線をディアボロスから外すことなく無言で殺意のオーラを放ち続けている。


 パララン‥‥


 シルゼヴァの剣にヒビが入ったかと思うと次の瞬間粉々に砕けて床に散らばった。


 「ほぅ‥‥あのまま斬られていたら俺もこうなっていたって言いてぇのかアノマリー」


 凄まじい攻撃に触発されたのか、ディアボロスからも深い闇のオーラが放たれ始めた。

 吸い込まれたら最後抜け出すことのできないと感じる恐怖そのものといったオーラだ。


 「お前も気を鎮めろアスタロト」


 「その名で呼ぶんじゃねぇよ、余所者が」


 ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!


 突如シルゼヴァが壁を蹴り始めた。

 岩を削り出して作った横穴住居であるため、壁を蹴る振動が住居全体に伝わり、地震のように揺れ出した。

 天井からパラパラと砂や岩のかけらが落ちてくる。

 通常いくら思い切り蹴ったところで、これだけ巨大な山脈に地震を引き起こすほどの衝撃は与えられない。

 それだけシルゼヴァの蹴りの威力の凄まじさが分かるものであり、そうなって初めてスノウもディアボロスも目の前の男が怒りを露わにしていることに気づいた。


 「どいつもこいつも俺がやめろと言っているにも関わらず何故やめない」


 ガン!ガン!ガン!ガン!


 「わ、分かったシルゼヴァ!一旦落ち着くからお前も落ち着いてくれ!」


 スノウが慌てて話しかけた。


 「そうか。分かればいい」


 シルゼヴァは何もなかったかのように平静を取り戻し答えた。


 「ふたりともそこに座れよ」


 「ちっ!」


 ディアボアロスは舌打ちをして座った。

 スノウもディアボロスを警戒しつつ座った。


 「シルゼヴァ。まさかこいつがバルカンを助ける旅の協力者って言うんじゃないだろうな?」


 「不服か?」


 「そういう問題じゃない。こいつが何者だか知ってて言っているのか?こいつは生き物を笑って殺す。殺す相手が苦しむ表情を浮かべるのを見たくて平気で他の者も殺す。命を奪うことはあっても命を救うことができるやつでは決してないんだぜ?」


 スノウは怒りを噛み殺しながら声を荒げずにシルゼヴァに言葉を返した。


 「褒め言葉として受け取っておくぜ」


 それに対して挑発的な言葉を差し込むディアボロスに、視線を向けることはなかったが怒りのあまりスノウのこめかみに血管が浮き出た。


 「アスタロト。お前もいちいち挑発的なことを言うな。話が進まなくなるだろう?スノウ、こいつを使う使わないはお前が決めろ。だが、先ほどの言ったがエークエスとツィゴスは手強いぞ。単純な腕力や戦闘力では歯が立たないことも想定されるからな。過去のしがらみはあるだろうが、バルカンを救えないリスクが高まれば目的そのものが達成し得ない。感情を除けばこいつを連れていくのは極めて合理的だ」


 最もな意見だった。

 それはスノウ自身もよく理解できたし、ディアボロスの強さは未知数だが確実に神に匹敵するほどの実力を持っているはずだった。

 それは単純な戦闘力という意味だけでなく、神技シンギと呼ばれるような神が持つ特殊能力のようなものを含めた意味だ。

 ディアボロスがいればバルカンを救う4つのアイテムを入手数できる可能性が格段に上がる。

 だが、心がその思考の整理を妨げる。

 ディアボロスによって命を落とした多くの者達の顔が脳裏に浮かび、その度に怒りが沸き起こる。


 「不要なら帰るが?」


 ディアボロスはつまらなそうな表情を浮かべながら言った。

 その言葉にイラつきながらもスノウは決意を固めた。


 「いいだろう。こいつを使ってやる。ただし条件がある」


 「何だ?」


 直接の会話では揉めて面倒になる可能性があるため、仕方なくシルゼヴァがスノウの要求に反応した。


 「こいつを使うのはバルカンの火がエターナルキャンドルに移されてから3日後までだ。それまではおれたちレヴルストラメンバーへの協力者としておれ達に危害を加えないことと、おれ達の目的に従って協力してもらう。もちろんユメやサルガタナス他お前のお仲間も含めてだ。それが守れないなら協力は不要だ」


 「その3日とは何だ?」


 ディアボロスが質問した。


 「バルカンを安定にした場所に置くのと、お前を殺す準備を整える期間だよ」


 「フハハ!上等だ。その条件でお前と契約してやろう」


 「契約?おれの従者にでもなってくれるのか?それなら永久的に契約してやるよ」


 「勘違いするな。俺はお前に従うんじゃねぇ。とある契約に基づいているだけだ。目的が達成されればその瞬間にお前を殺すことだって出来る。そういう関係だ。馴れ合えるなんて思うんじゃねぇぞ」


 「安心したよ。こっちもお前と馴れ合うなんてのは願い下げだからな」


 パン!


 シルゼヴァは手を叩いた。

 いがみあう会話を止めるために手を叩いたのだろうが、その衝撃で壁に小さな亀裂が入った。


 「さて、話は纏ったようだな。ハークとアスタロトがいれば問題ないだろう。さっきも言った通り朱雀種は俺が探ってやる。出発は明日でいいだろう。ここは狭い。お前は明日の朝に再度、この部屋にくればいい」


 「ちっ!いちいち俺に指図するんじゃねぇよ余所者が。止められてさえいなければ今ここでお前を殺すことだって出来るんだぜ」


 「威勢がいいのは結構だが喋りすぎると面倒だと気付かないか?」


 「うるせぇな‥‥覚えておくぞシルゼヴァ」


 そう言ってディアボロスは煙のように消えた。

 一方スノウは改めてシルゼヴァがなぜここまでしてくれるのかを考えた。

 そしてどうやってこれだけの情報を集められたのかについても。

 まるで自分やバルカンの今の状況を予め知っていたかのような都合の良すぎる情報量だったからだ。

 聞いてみるしかないと思いスノウは質問した。


 「どうしてそこまで色々と情報を持っているんだ?他のアネモイ剣士達に調べさせた情報ってことか?君は下位剣士だったよな。確かに他の剣士たちに比べて別格の強さは認めるが、他の剣士たちが君の言うことを聞いて情報収集するのは立場上ないんじゃないのか?」


 「剣士ランクか。あんなものは俺にとっては面倒な自尊心を満足させるせめぎ合いでしかない。俺が首を縦に振れば俺がトップになるが、興味がないだけだ。そんなものがなくとも皆俺の言うことは聞く。要は躾だ」


 「‥‥‥‥わかった。だが、アネモイ剣士たちだけじゃ知り得ない情報もあるようだが‥‥」


 「これだよ」


 シルゼヴァは自身の額にある目を指差した。


 「第三のサードアイだ。こいつは便利でな。知りたいことに繋がる起点を認識するとそこから出来事の線を辿ることでその知りたい情報が得られるんだ。つまり俺はお前と言う起点から方々に散っている様々な情報を得ているということだ。これには時間の概念は存在しない。全ての時空にある情報が、同レベルで俺の脳内に放り込まれてくる。だから時期を表現する場合は多少ずれることもある。それにそもそも視えるヴィジョンは可能性のひとつでしかない。複雑な選択の重なりとその影響で辿り着く点は選択と重なり分岐の数だけ予測精度は下がるんだ」


 「‥‥‥‥」


 何となく言っていることは理解できたが、スノウの知る常識の範疇を超えていたため、それ以上の質問はしなかった。

 もしここにスメラギがいたなら、食い入るようにシルゼヴァの話を聞いたに違いなかった。


 「とにかくありがとう。バルカンを失ったと諦めていたが希望の光が見えた。君が何を考えているのかは知らないが、まずは礼を言いたい」


 「気にするな。俺もまたお前の起点の先につながる存在だと見えただけだ。それにしてもお前は不思議なやつだ。何もないのに多くを持っている。何もないのに多くを惹きつける‥‥」


 「?」


 何を言っているのか分からなかったため、スノウは質問しようとしたが、遮るようにシルゼヴァが話を続けた。


 「お、そういえば、ハークのやつに言ってなかったな。伝えてくるとしよう。先ほどの通り明朝出発だ。それまで準備を整えておけ。ここにあるものは何でも持っていくがいい」


 そう言ってシルゼヴァは部屋から出て行ってしまった。


 「‥‥‥‥」


 スノウは一旦シア、シンザに説明し整理することにした。



・・・・・


・・・



 ガタン!


 シンザは思わず立ち上がって驚きと嫌悪の表情を露わにした。


 「あり得ないでしょう!?なぜあの大魔王が僕たちに協力するんですか?!」


 スノウは、自身が療養していた部屋でシアとシンザに先ほどの状況を説明した。

 それに対して真っ先に反応したのはシンザだった。

 ゲブラーでディアボロスのアディシェス軍によって多くの者が殺されている事実から信じられないと言った反応で声を荒げて言った。


 「分からない。おれ達とは別の存在との契約が‥‥とか言っていた。それが何者かかは知らないし、聞く気もないけどな」


 「信用できるのでしょうか?」


 シアが質問した。


 「それも分からない。いや、それじゃだめだな‥‥。これは過去に聞いた情報からの推測だが、天使や悪魔は契約で縛れるはずだ。そして大魔王も悪魔の上位階級に過ぎない。やつの言った契約は従わざるを得ないものなのだろう。そしてもう一つ。エターナルキャンドルにバルカンの火を移したあと3日は襲わないという契約をおれと結んだ。同時に複数の契約を結べるのかは分からないが、やつはそれを受けている。この仮説が正しいとすれば、バルカンの炎の安全を確保して3日後までやつはおれ達に手出しは出来ないことになる」


 「私も聞いたことがあります。天使と悪魔、彼らにとって契約は彼らの存在自身に影響を与える力があると。従ってその契約を破るようなことがあると、存在その者が消滅すると聞いています。彼らにとってその契約の相手や内容が知られることは致命的な結果に繋がりかねません。おそらく問い正しても言うことはないでしょうね」


 「シアさん。確かにその通りかもしれませんけど、その契約ってのには解釈があると思うんですよ。殺す行為に直結しなくても、契約が完了して以降に役立つ罠を仕掛けることは可能なんじゃないですか?あいつらまるで時間を止めたかのような特殊な技も使いますし」


 「!」


 スノウは驚きの表情を見せた。


 「そうなのか?!時を止める?!‥‥てかお前なぜそんなこと知ってるんだ?」


 「?!‥‥何ででしょう‥‥どこかで聞いたのかな‥‥でもこれだけは言えます!あいつは危険です!」


 スノウは仲間になって以降初めてシンザを怪しんだ。


 (改めて考えたらこいつ‥‥シファールの手下なんだよな‥‥シファール自体異常なオーラを放つ得体の知れない人物だし、こいつがシファールからどんな指示を与えられているか分からない‥‥‥‥い、いや、違う‥‥こいつは仲間だ。生まれ育った世界に帰れるかも分からずにわざわざおれを救うためにこのケテルに来て、死を覚悟するような戦いにも参加している‥‥おれが信じてやらなくてどうする?!)


 スノウはシンザを怪しんだ自分を恥じた。

 だが、スノウが怪しむのも当然だった。

 ゲブラーでシンザは元々シファールの指示で東の国ハーポネスに潜入し、スパイのような活動を行っていた。

 そしてその指示を与えたシファール・ヴェンシャーレ。

 彼はゾルグ王国の宰相だが、ヘクトルから絶大なる信頼を得ていた人物でもあり、最強のグラディファイサーを決めるグランヘクサリオスの表彰式の際に人知を超えた次元の違うオーラを放っていた。

 後から聞いた話だったが、スノウを救うためにケテルへの越界を行う際もまるで全てを知っているかのように越界装置に導き越界させることに成功している。

 得体の知れない人物の下でスパイ活動を行っていたシンザ。

 スノウの頭の中でスパイの側面を持ったシンザとレヴルストラメンバーのシンザの2面が交錯し判断を難しくしていた。

 レヴルストラ1stにスパイとして加わったライジが実は三足烏サンズウー・烈の第一分隊長ジライだったことも脳裏に過ぎっている。

 だが、疑って失う楽さより信じて得る苦しさをスノウは選んだ。

 その方が自分の気持ちに素直に行動できるからだった。

 アレックスやエントワがどこの馬の骨とも分からない自分を信じたように。


 「分かった。お前の言うことも最もだ。十分警戒して対処しよう。だがおれ達が相手をするのはニュクスやティアマトといった古の神々だ。何とか蝋燭アイテムを入手しなければならないが、そのためにはやつを利用することが必要だと思っている。シンザお前がしっかり観て、お前の判断で危険だと思った際はおれ達に教えてくれ。おれはお前の感覚を信じることにする。それでどうだ?」


 シンザはその言葉を聞いて目を潤ませた。

 論理的思考に長けたシンザが自身の感覚で発言したことをスノウが信じてくれたからだ。

 理屈ではなく自分の感覚を信頼した言葉がシンザに喜びと更なるスノウへの信頼を生んだ。


 「わかりました。しっかりと観ます。もちろんバルカンさんを救う目的を最優先にします」


 「ありがとう」



・・・・・


・・・



 スノウたち3人はその日の午後、旅の準備を進めていた。

 部屋で荷物をまとめているところに突如押しつぶされるようなオーラが襲ってきた。


 「!」

 「マスター!」


 シアがスノウの名を叫んだ。

 と同時にドアが破壊され、スノウが何者かによって鷲掴みにされた。


 ガシィ!


 そのまま凄まじい速さでどこかに引っ張られる。

 その横にシアが剣を抜いて走ってきた。


 バッ!


 それをスノウは左手のひらを見せて制した。


 (大丈夫だ)


 そのまま何者かに引っ張られたスノウは突如大きく跳躍した重力変動を感じた。

 周囲に目を向けるとグザリアだった一体が一望できる遥か上空の空中にいることを知り、その重力変動が起こった理由を理解した。

 横穴住居から飛びおりていたのだ。

 正確には大きく跳躍したため飛び上がったという方が正しい表現だろう。


 (大丈夫じゃなかった!!)


 スノウはシアを制したことを少し後悔したが、仕方なくこの後の対処を冷静に考えた。

 そして自分を掴みそのままとんでもない高さから跳躍した何者かと共に急降下を始める。

 あっという間に地面が迫る。


 グイ!ガシ!グリン‥‥ガガン!ギュゥゥ‥‥


 「いでで!」


 スノウは自分を掴んでいる手のうち小指を掴み捻りあげ、掴む力が少し緩んだ隙をついて、体を回転させながらその腕にしがみつくような形で足を挟むと、掴んでいる小指を思い切り折る方向に引っ張った。

 そしてそのまま足を相手の後頭部に当て、相手の顔が地面に向くように体勢を変えた。


 ズゥゥゥゥゥン!!


 凄まじい衝撃で地面が抉れ、その衝突波によって瓦礫や砂が周囲に広がるようにして散っていった。


 グググ‥‥


 突如襲ってきた相手の頭部は地面に埋まっている。

 スノウは相手の埋まっている頭部に足を乗せた状態で腕を捻りあげるような形でうまく着地した。


 ゴゴゴ‥‥ドッガァァァン!!


 人間やドワーフ、オーガなら即死、半神でも戦闘不能になるほどの致命傷となる衝撃だったが、相手はスノウを抱えたまま起き上がった。


 「おおおおおおおお!!」


 ブワン!


 掴まれている左腕を思い切り振り回してスノウを弾き飛ばす。

 空中でうまく体勢を整えてスノウは華麗に着地した。


 ズザン!

 ズザン!


 スノウは立ち上がり相手を見据えた。

 相手も立ち上がり顎を摩りながらスノウを見ている。


 「やるじゃねぇかスノウ!」


 「あの衝撃を受けて無事とは神殺しは伊達じゃないなヘラクレス!」


 そう、スノウを突如襲ったのはヘラクレスだった。


 「合格だ!」


 「?」


 ヘラクレスが突如言った言葉の意味が分からずスノウは怪訝そうな表情を浮かべた。


 「長らく意識が無かったようだし、体鈍ってんじゃないかと思ってな!もしこれくらいのことで怪我でもするようなら同行するのは断るつもりだったんだが、どうやら問題なさそうだ」


 「ははは‥‥」


 そういうことかと心の中でスノウは思った。

 これが彼流の完治祝いなのだろう。

 そして言葉通り、自分が同行するに相応しい実力を持ったものかを確かめたのだ。


 (やれやれ‥‥騒々し旅になりそうだ)


 先が思いやられる感覚に襲われたスノウは少しうんざりした表情になった。


 「身支度中すまなかったな。部屋に届けてやるから掴まれ」


 トン!‥‥スタ!


 ヘラクレスの右腕に掴まると、そのまま大きくしゃがんだ。

 そして次の瞬間凄まじい加速度を感じた。

 凄まじい力で跳躍したのだ。

 まるでウインドシールドがない戦闘機に乗っているかのような速さで山脈上部の横穴住居まで飛んでいく。


 ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‥‥スタ‥‥


 あっという間に元の場所まで戻ってきた。


 ズビュウゥゥン!!‥‥グザリ!!


 戻るや否やヘラクレスに向かって剣先が襲いかかる。

 シアの放った剣突だった。

 剣先はヘラクレスの右肩に突き刺さった。


 「!」


 (動かない!)


 刺した剣がヘラクレスの筋肉によって締め付けられ動かなくなったのだ。


 パキン!!


 そしてそのまま上半身を捻るようにしてヘラクレスはシアの剣をそのまま折ってしまった。


 「!」


 「おい‥‥お前ともあろう者が随分とお粗末な剣を使ってんだな、フランシア」


 確かに現在使っている剣は普通に市販されている単なる高価な剣だった。


 「まぁいい。俺のコレクションからいいの見繕って弁償してやるよ。それじゃ明日からよろしくだぜ、スノウ、フランシア」


 そう言うとヘラクレスは奥へ歩いて行った。


 「一体何だったんだ‥‥あの脳筋‥‥」


 「さぁ。脳筋‥‥脳が実際に筋肉組織で形成されているということではなく、あのような力だけが全てのような馬鹿力な者が力自慢をした際の比喩表現で、実際には脳みそが筋肉で出来ているわけではないということですね」


 「‥‥‥‥」


 シアの訳の分からない反応に言葉が出ないスノウに対しシンザは少し寂しそうな表情を浮かべていた。


 (僕の名前‥‥呼ばれなかった‥‥)





いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

次のアップは日曜日の予定です。

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どうぞよろしくお願いい致します!

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