表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
381/1110

<ケテル編> 76.神の咆哮(デヴァノーヴァ)

76.神の咆哮デヴァノーヴァ



 「スノウ!破壊可能領域から出るまで残り20秒だ」


 「上等だ!」


 (さぁ根性見せろよ、おれ!)


 スノウは神の息吹デヴァプラーナ発生装置の前に立ち、ホログラムのスクリーンを見ながらキーボードを叩いた。

 スクリーンには神の息吹デヴァプラーナ発生装置の角度をミトロが狙いを定めている操縦機と連動させる指示と出力調整ゲージが示されている。

 スノウは素早くミトロの操縦桿と繋いだ。


 ヴヴゥゥゥゥゥン!


 神の息吹デヴァプラーナ発生装置は、振動し始めたかと思うと形状が数秒で変化して、魔力砲の発射口が上空の隕石に向けられた状態となった。

 スノウはそのままホログラムキーボードを叩いている。

 シミュレーションを回して隕石を破壊する出力の計算をしていた。

 魔力が不足する分を風の威力で補うことで隕石が破壊できるかどうかを計算しているのだが、焦る中3度NGが出た状態で一つの結論を出す。


 (この割合で行くしかない。一か八かだがもう時間がない)


 「ミトロ!破壊可能領域を出る寸前で発射だ!外すなよ!」


 「了解した」


 そういうと、スノウは神の息吹デヴァプラーナ発生装置に手を当てた。


 ジュゥゥァァァン!


 急激に魔力ゲージが上昇していく。


 「マスター!何を?!」


 急激な魔力変動を感知したシアがスノウに向かって叫ぶ。


 「おれの魔力を使う!」


 「!!」


 シアは驚きの表情を浮かべた。


 「先ほどのアテナの手に込められた魔力量が三分の一だとしたら、まだ異常な程の魔力量が必要になることは明白!いかにマスターの魔力の器が大きく、残存魔力が十分にあったとしても、その装置を破壊可能域までチャージするのは不可能では?!何よりマスターの魔力が限界まで注ぎ込まれたらマスターのお命が危険に晒されます!どうか今すぐその行動を停止してください!」


 「だめだ!」


 「マスター!」


 「おれが犠牲になって皆が救われるか、全員死ぬか!今迫られている選択はそれだ。そして答えは明らかだ!それに魔力を搾り取られたところでおれが死ぬと決まったわけじゃない!」


グオォォォォォォ!!


 神の息吹デヴァプラーナ発生装置の魔力ゲージがぐんぐんと上昇していく。

 それに合わせてスノウから力が急激に抜けていくのも感じられた。

 魔力は生命力とは違う。

 生命力は生命そのものの生き死にを左右する器を表す。

 一方魔力は魔法を使う源であるが、加えて有機生命体としての体を動かす動力源にもなっている。

 気の力がその一つだ。

 生命力を使って活動する細胞ひとつひとつの動きを統合的に制御し動かす力の源が魔力なのだ。

 気の流れが悪化すると体が部分的に機能不全に陥ったりするのはこれがひとつの原因でもある。

 その魔力が底を尽くという状態は一体どういうものかは、スノウにもシアにも容易に想像が出来た。

 いや、完全に尽きた状態がどうなるのかまでは想像し得なかった。


 「おおおおおお!」


 急激な魔力吸収を受けてスノウの体は立つという姿勢を維持することも困難になっていた。

 生まれたての小鹿のようにガクガクと震える足はついに力を失い、スノウは力なくその場に倒れこんだ。

 それでも必死に神の息吹デヴァプラーナ発生装置に手を添えて魔力を供給し続けている。

 スノウの目は徐々に黒目が消えていき白目をむいた状態になる。

 口からは泡を吹き、体を流れる血液の動きが止まったことで意識が一気に失われその場に倒れた。


 ドッゴォォン!


 シアはエリスに強烈な蹴りを繰り出し、その隙に大きく跳躍しながらシアが身に着けているショートマントを切り、長いロープを作った。

 神衣カムイを纏っていないシアは穴から落下してしまうため、ショートマントを切ったロープで輪を作り、神の息吹デヴァプラーナ発生装置に引っ掛ける形で落下を防いだ。

 それを跳躍している間にやってのけた。


 「マスター!」


 シアはスノウの様子を確認した後、ホログラムスクリーンを見る。


 (風力と圧力を最大にしても隕石破壊に至らない。魔力があと少し足りない)


 「フランシア!残り10秒を切ったぞ!」


 ボレアスが叫ぶ。

 シアは自身の魔力を注ぎ込む。

 不足している魔力がごくわずかだったため、すぐに破壊可能域に達する。


 「ミトロ!撃って!」


 そう言うとシアは倒れているスノウを抱きかかえて、大きく跳躍し床のある場所で着地した。


 「承知した」


 ミトロはすぐさま発射行動に移る。


 グォォォォン!!


 凄まじい勢いで周囲から風が集まってきた。


 バシュゥゥゥン!!グォォォン!!


 超高圧風の魔力砲が隕石に向かって放たれた。

 不思議とドーム状の壁は破壊されず、まるで透過したように、激しい空気の揺らぎを伴ったレーザーが天に向かって伸びている。

 

 「キィィィィギャァァァァァ!!」


 エリスからエリスのものとは思えない耳をつんざくような奇声が発せられた。

 その顔は怒りの形相となっている。


 「マスター!」


 正座しているシアの膝の上で意識を失っているスノウをシアは必死に起こそうとしている。

 だが、目を覚ます気配がない。


 (脈はある。呼吸もしている。衰弱が激しいけど今なら助かる!)


 「到達まで5秒!」


 ボレアスが叫ぶ。


 「3‥‥2‥‥1!」


 上空に超爆発のような閃光が走る。

 まるで真昼の様にケテル全土を明るく照らした。

 そしてその光が消え去ると、隕石の欠片の赤い光点が4つ、方々に散ってケテル各地へ落下していく。

 その直後、爆発音が届く。


 ドッゴォォォォォォォォォォォン!!


 天界デヴァリエがその轟音で振動する。

 下界を見ると、先ほどちらばった赤い4つの光点が地上に落下したのが見える。

 その規模は小さく、恐らくは小さなクレーターを作る程度で済むことが見て取れた。


 「成功だ‥」


 「これでケテルの危機は去った・・・・私がこの少女メロにしがみ付いてここまで来たのはあの隕石からケテルを救うためだったのか」


 ボレアスもミトロも隕石破壊を喜ぶも、手放しで喜べない状況のようで複雑な雰囲気を醸し出している。


  「キィィィィギャァァァァァ!!」


 爬虫類のような動きで攻撃していたエリスが、更に人が変わったように恐ろしい形相でその場にいるスノウたちに襲い掛かる。


 「おのれぇぇ!」


 「!」


 まさにエリスが鋭い鉄の杭をスノウに突き刺そうと襲ってきたその時、シアが盾となり立ちはだかる。

 シアは死を覚悟した。


 グギャギャギャン!!


 エリスの鉄の杭の攻撃が空振りとなり、そのまま床をガリガリと削っていく。


 「この世界を救った英雄を殺させるわけにはいかぬ。この命に代えても!」


 ボレアスがスノウ、シア、ミトロを拾いそのまま下界に通ずる穴から風となって出て行った。

 間一髪のところでシアとスノウは救われた。


 「逃さん!」


 怒りの形相のエリスは風のボレアスを追って穴から飛び降りた。



 ・・・・・


 ・・・


 

 ーーーゼピュロス国ゼピュロス神殿ーーー


 「風が止まりやがった‥」


 神殿の屋根の上で上空を見ていたゼピュロスが言った。

 

 スタ‥


 「いよいよこの時が来たか」


 ゼピュロスのとなりに風の様に現れたのはアイオロスだった。


 「ええ。恐らく神の息吹デヴァプラーナが止まりましたよ」


 「そうか。しばらくは私の力も使って抑え込むことは出来るが、それもいつまでもつか‥」


 「それも厳しいぜ、アイオロス様‥」


 「ボレアスか?」


 「ええ。あいつも間もなく消滅するでしょうね。今生きてるのが奇跡なくれぇだ。ご乱心のアテナ様から魔力を取り返せればあるいは‥‥ですがねぇ」


 「至難の業だな‥。地上からだからはっきりとは見えなかったが、スノウとやらも瀕死の状態だ。そしてバルカンの命も風前の灯。一方アテナは恐らくかすり傷程度。おまけに怒りの頂点に達しているだろうな。アキレスとアカルはまだ動けるようだが、流石にアテナ相手に魔力を取り戻させるだけの力はないだろう。残念だがボレアスを助けることは出来ない」


 「全滅しかねませんね。加勢に行きますかい?」


 「いや、行きたいのはヤマヤマだが、私とお前が行ってはこの世界そのものが終わる。アキレスやアカルも馬鹿じゃない。ただ黙ってその場で命を落とすような真似はしないだろう」


 「アテナ様とエリスがもしここを攻めてきたら?」


 「その時は戦うしかない。こちらの戦力は私とお前、そしてギルガメッシュだ。倒すことが出来なくとも追い返すことくらいは出来るだろう」


 ゼピュロスは今回の隕石破壊で払った犠牲の多さと大きさを思い苦しい表情で下を向いた。



ーーーエウロス国 首都ゲズ とある宿屋ーーー


 宿屋の2階の出窓に座っている少女は夜空を見上げていた。

 その少女はトリアだった。

 

 「なんということ‥‥風が止まった。いえ、それよりもあの4つの赤い光点‥‥今行動しなければ‥」


 「おい、どうした嬢ちゃん」


 「いえ、なんでもないわヴェルおじさん。そんなことより情報は?」


 「いやぁさっぱりだな。やはりあの大統領は素上の分からねぇ怪しさ満載の野郎だっ‥ってなんだ?!なんか変だな」


 トリアに話しかけたのはヴェルガノだった。

 ヴェルガノも風が止まったことに気づいたのか異様な雰囲気に不気味がっていた。

 その後戻ってきたウィンチも同様だった。



ーーーゼピュロス国 人類議会ヒューパラメンタルロッヂ内の一室ーーー


 「風が止まったか」


 外を見ている男はそらから赤い光が落ちていくのを見ていた。


 「なんだ?あの光は‥‥」


 光は地上に到達する寸前で音もなく姿を消した。


 (なんだか嫌な予感がする。明日見に行ってい見るか)



・・・・・


・・・



 ケテルで風が止まったことは全世界の者たちが知ることになった。

 エレキ魔法で便利な生活を送っている者たちは真っ先に生活の至る所で受けていた恩恵が軒並み稼働を停止したことで一気に不便になったためすぐに気づいたが、それ以外の者たちもみな風が止まった事に気づき空を見上げていた。

 恐らくこの世界に生きている者のほとんどが風が止まるところを見た事がない上、止まることなど想像もしていなかったことだろう。

 風と共に生きてきた者たちは、恩恵ともいえる風を失い言い知れぬ不安に襲われた。


 そしてそのケテル全土に広がる不安が空に映し出されたかのように、巨大な黒雲が天から押し寄せてきた。


 人々は皆、この世の終わりだと更に恐怖を覚えた。

いつも読んで下さって本当にありがとうございます!

まもなくケテル編前編のクライマックスとなります。

楽しんでいただけていると嬉しいです。

面白いと思って頂けましたら、ブックマーク、高評価、レビューなどを頂けるととても嬉しく励みになります!

どうぞ宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ