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<ケテル編> 35. ノトス神

35.ノトス神



「なぜ我がノトスだと分かったのだ?」


 少年の姿をした神ノトスは執務机に座っている紳士ではなく、自分をノトスだと言い当てたスノウに興味を持った様で質問した。


 「理由は2つです」


 スノウは答え始めた。


 「ひとつは単純に貴方の様な少年がこの様な場にいる事が不自然だという事です。この様な場所に幼い子がいる場合、その方は身分の高いケースが殆んどです。仮にそちらに座られている方が親であれば、客人が来たら子には別室に行く様に言いつけるはず。それをしないと言う事は貴方がこの場にいる必要があるからです。つまり、貴方がこの場で受け答えるべきご本人である可能性が高い。そうなればそちらの紳士は貴方を守る役割・・・・そう推測したのです」


 「なるほど。もう一つの理由とは?」


 「本です。貴方が取ろうとしていた本に記されているマーク・・・・それは風力によってある力を生み出す仕組みを記した本ではないですか?いくら子供が興味を持つ可能性があるとしてもその本を理解するのはかなり難しい。つまり貴方はそれが理解できるだけの知識レベルの方だという事・・・・ここで推測が確証に変わりました」


 「スノウとやら、貴様中々の洞察力を持っているではないか。気に入ったぞ」


 ノトス神はそう言いながら本をスノウの方に示した。

 本の表紙には電気のマークと風のマークが書かれていた。


 「貴様はこの本が何であるかをこのマークから理解したと言ったな。この世界にこのマークを見ただけで何が書いてあるかを理解出来る者は殆どいないだろう。・・・・よし、貴様の探し物調査とやらに力を貸してやろうじゃないか。そのかわりこの本の内容について話がしたい。今日の夜、もう一度ここへ来るが良い。配下の者たちには話を通しておく。顔パスでここまで来られるようにしよう」


 一気に事が進んだことで、スノウは少し面食らったが悪い話ではないため、先ずは状況が進展したと考えた。

 一方のアルジュナは怪訝そうな表情を浮かべている。


 「どうしたんですかジュナ?貴方はノトス神をご存知なはず。それにしては気づかなかった様な表情ですが」


 「其方の若者は観察眼を持っている様だな。その通りだ。こやつアルジュナは我に気付いていなかった」


 ソニックのアルジュナに対する質問にノトス神が答えた。


 「当たり前じゃないですかー!以前までは此方の紳士のお姿だったでしょう?久しぶりに伺ってみれば、そんな少年の姿になっていて・・・・誰だって変な感覚になるでしょう?」


 「お前は相も変わらず観察眼と想像力が乏しいのう。我は神だぞ?しかも我の命を狙う輩が多いのも知っておろう?そうなれば姿を変えてもおかしくは無いではないか」


 「そうですけどー」


 「恐れながらノトス神。ジュナは拗ねているのだと思います。自分が気づかなかった事を最も簡単にスノウが気づき、自分が紹介するはずだったにも関わらず、自分を介さずにすっかり挨拶が済んで夜の訪問まで取り付けられてしまい、自分の出る幕が無くなってしまったので」


 「そうなのか?」


 「そ、そんなわけないでしょー」


 「はぁ・・・・アルジュナよ、お前は一体いくつなのだ?しかも半神でありアネモイの剣士であるぞ?全く情けない。だがまぁ、貴様は思考は鈍いが魅力ある者を惹きつける力に長けている様だな。今すぐに剣士など辞めて、ここでスカウトの仕事をしろ」


 「え?!い、嫌ですー!お断りします!それにそんな事になったら師匠に殺されますからー」


 「はっはっは!そうだな。そう言えばカルナはどうした?一緒ではないのか?」


 アルジュナは急に真剣な表情に変わった。


 「実は・・・・」



・・・・・


・・・


 

 アルジュナはエウロスでの出来事をノトス神に説明した。

 一同は別室に移りソファに座っている。


 「なるほど。俄には信じがたい話であるな。だが、エウロス居ればネメシスやエリスが彼の地に容易く入り込む事も無かろう。全能神がエウロスを滅したと言う事は無いまでも、エウロスの身に何かが起きている事は確かだな」


 「はい」


 スノウはディアボロスの存在を説明するか迷っていた。

 仮にも大魔王を認識しており、神も知らない状態で暗躍していることを話せば自分が何者かについても説明が必要になるからだ。

 この世界ケテルの情報が不足している今、迂闊に自分達の素性を話すのは命取りになりかねない。

 

 (おれだけなら何とかなるかもしれないが、仲間全員を守り抜くのは極めて難しくなる・・・・このノトス神が信頼に足る人物かどうかを見極めないとならない)


 スノウは会話の行く末を黙って聞いていることにした。

 ソニックは空気の読める男であり、常にスノウが何を考えているかを意識しているため、スノウが様子見と判断したと理解し、同様に黙って話を聞いていた。


 「ボレアスには報告済みか?」


 「はいー。そのボレアス様の指示でアキレスさんとアカル師匠、カルナ、俺が手分けして調査してるんですから」


 「・・・・・・・・」


 ノトス神は暫く沈黙した。

 何かを考えている様だ。


 「其々何処へ調査しに行っているのだ?」


 「え?え、えっと、師匠が確かエウロスだったかと思います。アキレスさんがボレアスで・・・・カルナはゼピュロスでしたよ」


 「ふむ・・・・すまないが、嫌な予感がする。明確には言えないが、今このケテルで暗躍している何かがこの世界そのものを混乱に陥れようとしている様な感覚だ」


 「予知ですか?」


 「いや違う。最早先読みは出来なくなっている。闇なのだ・・・・」


 「闇?それって未来は無い・・・・そんな風に聞こえますけど?」


 「それもまた一つの方向性だ。闇とは光を閉ざした状態だ。光のないところで人の営みは長くは続かない。実りある作物が獲れなくなるからだ。その先にあるのは飢えだ。戦争も起こる可能性だってある。もしくは地下奥深くに生きる望みを託す事だってあり得よう。もしくはこの世界に神のみが残りそれ以外は消え去ってしまうなど、可能性は一つではない」


 「・・・・ま、またー脅かさないでいくださいよー!ノトス様がいる限りそんな事にはならないでしょー!」


 再度思考を巡らせたノトスはスノウに話しかけた。


 「すまぬが暫く此奴の側に居てはもらえぬか?貴様が強き者であるのは、視えている。あのアキレスやヘラクレスをも退ける力を持っているであろう。その代わり貴様の探すものが何を見つけ出し、もしこの神殿や街にある物であれば貴様にくれてやる。どうだ?」


 急展開に再度面食らったが、スノウはノトスの申し出を受ける事にした。


 「おれの強さを少々買い被られているのではと思いますがお受けしましょう。ですが、探し物は複数あるようなので、ジュナには此方の探し物にも付き合っていただく事になりますが宜しいですか?」


 「ああ、構わん。・・・・探し物とは貴様本人の探し物ではないのだな?」


 「はい。共に旅をしている・・・・少し特殊な者でして・・・・」


 「そうか、では夜に其奴も連れてくるがいい」


 「あ、ありがとうございます」


 「じゃぁ俺たちは一旦これで宿にでも戻りますめー。スノウとその仲間の2人で夜に伺うでいいんだっけスノウ?」


 「もう1人だけ仲間を同行させたいのですが宜しいでしょうか?おれと探し物をしている者ともう1人です」


 「構わん」


 「ありがとうございます」


 スノウは深々と頭を下げて礼をするとその場を去ろうと扉の方へ向かって歩き出した。


 「そこの貴様」


 ノトスはソニックを呼び止めた。


 「貴様・・・・悩みを抱えている様だな。少しここに残るがよい」


 ソニックは一瞬怪訝そうな表情を浮かべスノウに目線を向けたが、スノウが軽く頷いたため安心したのかいつもの表情を取り戻し返事をした」


 「はい、分かりました」


 「それじゃソニック、廊下の奥で待っているよ」


 「はい、スノウ」


 スノウとアルジュナは部屋から退出した。






次のアップは土曜日の予定です。


いつも読んでくださって本当にありがとうございます!

楽しんで頂けるように頑張ります!

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