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<ケテル編> 28.上位剣士と下位剣士の差

28.上位剣士と下位剣士の差



 「サワン!貴様の用心棒には万に一つの勝機もないですよ!」


 ペロトゥガは離れたところから吠えた。


 「サルペドンさんはかの有名なアネモイ剣士なのだからなぁ!」


 「ああ、あのヘラクレスさんのいるアネモイ剣士協会の方ですね」


 サワンの秘書のフラノが反応した。


 シュワン!!シュゥゥゥン‥‥ズバン!


 フラノは、サルペドンが投げた短剣を持っていたファイルで突き刺して止めた。


 「俺の前であの忌々しいヘラクレスの名を出すんじゃない‥‥今のは上手く受け切ったようだが、次は本気で攻撃する。女だろうと容赦はしない。殺されたくなければ影にでの隠れているんだな」


 シュゥゥン‥‥シャキン!


 突如カムスが凄まじい勢いで詰め寄り剣を振り下ろした。

 それをサルぺドンは鞘から抜きかけの剣で受ける。


 「余所見とは舐められたものだ」


 「舐めてはいないぞ。きちんとお前の事も警戒していたさ」


 「いいや、舐めているよ」


 ガシィィィン!


 「!」


 カムスは鞘の部分に蹴りを放ち剣と蹴圧でサルぺドンが受けている剣を押し込んでいる。


 ‥‥グググ‥‥グググ‥‥


 徐々に剣が押され、カムスの剣の刃がサルぺドンの首元に迫る。


 「鞘をつけたままの攻撃・防御は自分のスピードが遅いことを自ら証明している。そんな姿を相手に見せるというのは相手を舐めているか、自分の弱さを自覚していない者のすることだ」


 「くっ!‥ぬおおお!!」


 グニャリ‥‥ズザン!


 「!」


 カムスは驚きの表情を見せた。

 なぜなら、後少しで自身の剣の刃がサルぺドンの首元に食い込むところで、突如サルぺドンの体がまるで軟体動物のようにグニャリと曲がったからだ。

 カムスの剣は勢いそのままに地面に突き刺さった。


 「もらった!」


 シュワン!


 サルぺドンはグニャリと曲がった体で避けた後、ねじれた体を戻すようにしてそのままカムスに斬り込んだ。


 カァァン!


 「何ぃ?!」


 サルぺドンは信じられないといった表情になっている。

 なぜなら、サルぺドン振り下ろした剣をカムスは素手で受けたからだ。

 そしてその直後、サルぺドンはカムスの強烈な蹴りをくらった。


 ドッゴォォォォン!!


 大きく後方へ吹き飛ぶサルぺドン。


 「サルぺドンさん!」


 ペロトゥガの叫ぶ声が聞こえた。

 吹き飛びながらも体勢を整えて何とか足で着地し勢いを殺してしゃがんだ姿勢で痛みに耐えているサルぺドンは目の前にカムスの蹴りが飛んでいることに気づく。


 バッゴォォォォン!!


 気づいた時には遅く、避ける間も無くそのままさらに後方へ吹き飛ばされる。

 空中で体勢を整えようともがくが、その間カムス再度視界に入って来た。

 直後に剣の鋭い振りがサルぺドンを襲う。


 「ぬおお!」


 サルぺドンはあり得ない方向へ体を曲げてカムスの繰り出した剣撃をかろうじて避けた。

 そしてそのまま何とか地面を蹴り、大きく跳躍してカムスから距離をとって着地した。


 「き、貴様‥‥一体何者だ!」


 サルぺドンは息を切らしながら叫ぶ。


 「聞こえなかったか?私はカムス。サワンに雇われた用心棒だ。これでいいか?自己紹介は何度もするもんじゃない。それに私は自己紹介が苦手だ。これできっちり覚えてくれ」


 「ちぃ!」


 サルぺドンは思いっきり何かを投げた。

 まるで軟体動物のような関節がわからない動きで短剣を投げてよこした。


 シュゥゥゥン‥‥ガシィ!


 カムスはそれを軽々と掴んだ。


 「何だ?この短剣‥‥私にくれるのか?まぁいらないなら貰ってやろう。後で武具屋で売るがな。それよりその関節がなくなったような奇妙な柔軟性‥‥それは一体何だ?」


 「お、お前に言うはずないだろう‥‥」


 「それはそうだな。まぁいい、喋るようになるまで痛めつけるだけだがな」


 シュワン‥‥


 「!」


 カムスは話を言い終えたかと思った直後、サルぺドンの目の前に詰め寄っていた。

 まるで瞬間移動のような動きに完全反応出来ていないサルぺドンは死を覚悟した。


 ドッゴァァァン!ボギボギボギ‥‥


 鈍い音がした。

 カムスの掌底打ちが鳩尾に打ち込まれ、サルぺドンの複数の肋骨が折れた音だった。


 「がっはぁぁぁ!!」


 血を吐き後ろに倒れるサルぺドン。


 「お、おまえ‥‥は‥‥神か?‥‥半‥‥神‥‥か?」


 「人間だよ」


 「う、嘘‥だ‥半神の‥‥俺がニ‥ンゲン‥に負けるはずがはぁ!!」


 カムスは倒れているサルぺドンの腹部に右手を当てた。


 「止めか‥‥いいだろう‥‥殺せ‥‥俺‥は‥半神‥‥ニンゲンと‥同様に‥殺せる‥存在だ‥からな‥‥。ニンゲンに‥‥負けたと‥あれば‥もう‥アネモイ剣士として‥生きては‥」


 「煩いな。少しは黙ったらどうだ?」


 カムスはサルぺドンの腹部に当てた右手を軽く押し込むような動作をした。


 シュワン!!‥‥ゴリリ‥‥


 再度鈍い音がした。


 「!」


 サルぺドンは驚きの表情を浮かべた。


 「き、貴様‥何をした?!痛みが急に引いたぞ‥‥ほ、骨は折れている感覚があるにも関わらず痛みが消えた‥」


 「気だよ。っていっても分からないかもな。体を流れる波動だ。それで肋骨の簡易的な結合を試みた。しばらくは持つはずだ。これで安静にしていれば治りも早いだろう」


 「!!」


 サルぺドンはさらに驚く。


 「いつつ‥‥カ、カムスと言ったな‥‥これは情けか?俺がお前より弱いという事でかけた情けなのか?なぜ殺さない?!」


 「情け?違うな。お前には私に対して最初から恨みも殺意もなかった。そういう者と戦ったのなら、その戦いが終われば残るのは剣を交えた相手がそこにいるだけだ。お前はただ剣を交えた相手をいちいち殺すのか?」


 「‥‥‥‥‥‥」


 サルぺドンは言葉を失った。


 「お、俺は金欲しさにお前に剣を向けたのだぞ?」


 「ごちゃごちゃ煩い男だな‥‥金で雇われたから何だ。私はお前と剣を交えたのは少し楽しかった。お前が生きていればまた戦う事もあるだろう。その時が楽しみだと思っただけだ」


 「く‥‥か、完敗だ‥‥」


 「サルぺドン!!お前何速攻負けているのですかぁぁ?!」


 ペロトゥガは大金を払って雇ったアネモイ剣士が最も簡単に敗れた事で自分の立場が危うくなり、気が動転しながらも怒りを露わにした。

 そしてすぐさまその場から逃げようと後退りした。


 『!』


 カムス、サワン、フラノ、そしてサルぺドンは何かを察知したのか周囲を警戒した。


 

 ドォォォォォォォォォォォォォォン!!!



 突如雷でも落ちたかのような爆発音と共に凄まじい砂煙が巻き上がった。

 巻き上げられた砂埃が徐々に静まっていくと、そこには何か巨大な影が浮かび上がっていた。


 「カ、カムス!に、逃げろ!」


 サルぺドンが叫んだ。


 シュワン‥‥ガシィン!!


 「ぐっ!!」


 カムスが何者かに上半身を掴まれ持ち上げられた。


 「や、やめろ!ヘラクレス!」


 そこに現れたのはアネモイ剣士協会の上位剣士であるヘラクレスだった。


 ズバァァァン!!


 突如ヘラクレスの背中に大きく深い剣傷が刻まれた。

 フラノが凄まじい勢いで詰め寄り細剣を振り上げて斬ったのだ。


 「お前は確か‥フランシアだったな。バルカンはどうした?ここにはいないのか?‥‥まぁいい。お前だけでもこのようなところで再会するとは何たる幸運。前回は我が友フォロスの腕に免じて見逃してやったが、今回は俺の心を止める存在はないぞ」


 「やめろヘラクレス!」


 サルぺドンが叫ぶ。


 ブワン!!シュゥゥン‥‥ドッゴォォォォン!!


 カムスは強烈なパワーで投げられた。

 その凄まじい勢いでカムスは遠くの壁に減り込んだ。


 「下位剣士サルぺドン‥‥アネモイの面汚し‥‥お前如きが剣士面出来るのも俺の下僕にしてやっているからだぞ?折角の全能神の血もろくに活かせずにニンゲン如きに敗れおって。まぁでもお前の生命力が著しく低下したのを察知したおかげでフランシアとの再会を果たせたわけだ。そういう意味ではしっかりと役に立ってくれたということか。それに免じて殺さないでおいてやろう」


 「くっ‥‥」


 サルぺドンは震える手を抑えながら何も言えずに食いしばっていた。


 「へ、ヘラクレス殿!良いところに来てくれた!金はいくらでも払う!こやつらは大罪人です!どうかこやつらに正義の鉄槌を下して頂きたいぃ!」


 (フハハ!運が向いて来た!天は私に味方している!サワンめ!ざまぁ無い!やはり私はこんなところで終わる男では無かったのだ!悪人サワン一行が起こした策略に気づいたヘラクレスが正義の鉄槌を下し、私の潔白を証明してくれたと説明すれば煩い有力者や金持ち共も黙るに違いない!)


 逃げようとしたペロトゥガは千載一遇のチャンスとばかりに叫びながら訴えた。

 その声を聞いたヘラクレスは、ペロトゥガの方へ歩いて来た。


 「?」


 「ニンゲン。お前は俺を金で従わせようとしたのだな?」


 「え?!」


 ガシィ!


 ペロトゥガはヘラクレスに服の背中の部分を掴まれた。


 「罰としてお前の命を運に任せろ。良ければ死ねる。悪ければ生き延びて罪人として死ぬまで苦しむことになろう」


 ブワオォォン!!


 ヘラクレスはまるで槍投げのようにペロトゥガを彼の店の方へ投げた。

 声も出せないペロトゥガはまさに槍のように飛んでいった。


 ズバン!!


 隙をついて剣を振り下ろすフラノ。

 そしてその背後からカムスが剣を振り上げる。


 スババン!!


 ヘラクレスは体を半身回転させて、紙一重で致命傷を避けた。


 ブワン!! 

 ドッゴォン!!


 ヘラクレスの強烈な鉄拳がカムスに放たれ、同時に凄まじい力の蹴りがフラノに放たれた。


 「ほう‥‥カムスとやらもなかなかやるじゃないか!俺の “思いっきり投げ” でダメージゼロとはな!楽しませてくれる!」


 ヘラクレスは自分の放った拳と蹴りが見事に受け切られていることに満足気だった。

 しかも、既にヘラクレスに与えた剣傷は塞がっており、血も止まっていた。

 その後もカムスとフラノの攻撃が続くがヘラクレスはギリギリで致命傷にならないように躱しながら攻撃を繰り出している。


 それをカムスとフラノは避けながら攻撃を仕掛ける。

 どちらも譲らない凄まじい剣と拳の応酬になっている。

 だが、サルぺドンにはヘラクレスが圧倒的に強いと見えていた。

 カムスとフラノ2人がかりにも関わらず、ヘラクレスには致命傷を与えられていないからだ。


 ドォォォォン!!


 「んん!飽きた!お前らそろそろ本気を出せ!俺も本気を出してやるから!」


 ヘラクレスの強烈な蹴りにカムスとフラノは大きく後方に飛ばされた。

 だが、同時にヘラクレスも後方に飛び退いた。

 カムスの放った短剣が異様な気を放ってヘラクレスの心臓目掛けて飛ばされたからだ。


 (な、何だって?!この凄まじい戦いが本気じゃない‥‥?!)


 サルぺドンは驚愕した。

 ヘラクレスとの差の見えない圧倒的な戦力差は以前より認識はしていたが、先ほど剣を交えなす術なく自分を打ち負かしたカムスが、自分と戦った姿よりも遥かに高度な戦闘を行っているにも関わらず、それがまだ本気ではないというのだ。


 (カムス‥‥そしてあのフラノという女‥‥本当にニンゲンなのか?!)


 ドォォン!


 ヘラクレスが重量感ある爆音と共に地面に着地した。


 スタ‥‥


 カムスが地面に着地した隣にフラノも着地した。

 2人は剣を構えている。


 「カムス‥‥先程のその異様な呪詛のようなものを纏わせて投げた短剣‥‥それは神技しんぎか?」


 「?」


 ヘラクレスの質問を理解できなカムスは無視して構えをとった。

 そしてカムスの狐面が徐々に変化していく。

 狐の顔が崩れていき、恐ろしい形相の目が見え始めた。


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥


 と同時に急激に周囲の温度が下がり始めた。

 異常な温度低下だった。


 「ちっ!邪魔が入ったか」


 ヘラクレスは構えを解いた。

 カムスとフラノは構えを解いていないが、カムスの面は元の狐面に戻っていた。


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥‥シュワワワァァァァ!!


 突如吹いた冷たい突風に運ばれた靄のようなものがカムスとヘラクレスの間に集まっていく。


 シュワワァァ‥‥


 集まっていく靄は次第に何かの形を見せ始めた。

 徐々に形作っている靄は髭を生やした男性の顔になった。



 「何 を し て い る ヘ ラ ク レ ス」



 靄の中の顔から言葉が発せられた。

 その声は冷たく透き通るような感覚があるが、耳に聞こえて来たのは太く心臓に響くようなものだった。


 「いや、何もしてないぞ」



 「我 の 目 を 誤 魔 化 せ る と で も 思 っ て い る の か」



 「ちっ‥‥分かった分かった。大人しく戻る」



 「我 を 煩 わ せ る な ‥‥ 度 が 過 ぎ れ ば 貴 様 を 罰 さ な け れ ば な ら ん」



 そう言うとサッと靄の顔は消えた。


 「全く過保護かよ‥‥フランシア、また邪魔が入った。3度目の正直という言葉を聞いた事がある。次こそは決着がつけられそうだな。そしてカムス。お前のその強さ‥‥お前との再戦も楽しみにしているぞ」


 そう告げるとヘラクレスは力を溜めてしゃがみ、凄まじい跳躍を見せてそのまま飛んでいき、遠くに姿を消した。


 カムスとフラノはヘラクレスが消えた先をじっと見つめていた。






次のアップは木曜日ですが日付お気に掛ける跨ぐ可能性あります。


いつも読んでくださって本当に有難うございます!

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