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<ケテル編> 22.アルカ山の神々の画策

22.アルカ山の神々の画策



―――ボレアス国の北にあるアルカ山の頂上付近―――



 ケテルの最北端にある高くそびえた山。


 アルカ山。


 巨大な針のように尖っており、雲を突き抜けるほど高い。

 山の頂上にある大きな神殿には3つの椅子があり、そこに座っている3つの影があった。


 ひとつは人の形をしているが全身が燃える炎の姿をしたアポロン

 もう一つは3メートル近い巨体で黄金に輝く仮面をかぶっている軍神アレス。

 そして3体めは両目を縫われている異様な姿をしている美しい女神アテナだった。


 「唯一神の駒め‥‥エウロスを殺したな」


 「確信はあるのか?アポロン」


 怒れる炎の姿のアポロンに仮面の軍神アレスが問いかけた。


 「我らオリンポスの神々があれを殺めることがあるわけないだろう?ボレアスたちも牽制しあっているが、あやつらは均衡を保ってこそこのケテルを維持できるのだからあやつらがどうこうすることはない。アネモイどもはボレアスの統制下にある」


 「旧神の成れ果てどもか?」


 「馬鹿な!あの様な下劣な者たちにエウロスが後れを取るはすがない!となればあの大魔王を名乗る気取った地を這う悪魔しかないだろう?!」


 「アテナ、あなたはどう思うのですか?」


 両目を縫われている美しい女性はしばらく黙って上を向いていたが、ゆっくりと前を向きながら、言葉を発した。


 「エウロスを殺すことはこの世界の均衡を崩す行為。恵の雨を失ったこのケテルの末路は飢饉によるモータルどもの滅亡です。このケテルを支配したいのであれば、そのようなことはしないでしょう。そして、エウロスを殺せる者でそれを知らぬものはおりません」


 「では誰が?!」


 アポロンが詰める様に質問する。

 割って入られた事に苛立ったアテナは眉間に少しシワを寄せた。

 アレスはアポロンを制する。


 「‥‥ですが、もしそれを知りながらエウロスを殺したのなら‥‥恵の雨を降らす力、もしくはそれに匹敵する力を持った者‥‥」


 「我らと同様の神以外ありえませんぞ!アテナ」


 アレスが思わず声を荒げる。

 それにアテナは苛立ち更に眉間にシワを寄せた。


 「分からないのですか?エウロスが殺された直後、都合よく現れた悪魔どもをタイミングよく滅した者を」


 『まさか!』


 驚くアポロンとアレス。


 コツ‥‥コツ‥‥コツ‥‥


 神殿入り口あたりから足音が聞こえ始めたため、アレスとアポロンは警戒し、椅子から立ち上がる。


 「き、貴様は!」


 「何しに来たのだ!ネメシス!」


 「あらあら‥‥随分な言われようだわ」


 現れたのは顔のない女神ネメシスだった。

 背中には鳥の羽がついており、顔がない不気味さを除けば天使そのものだった。


 「何様ですかネメシス。あなたはこの神殿に入ることを禁じら得ているはず。父上の逆鱗に触れればそれこそ文字通り全能神の怒りに触れて塵と化しますよ」


 皮肉混じりにアテナはネメシスを軽く威嚇した。


 「それは困るわね。でも、エウロスがいなくなった今、あの国の守護神は不在となってしまった‥‥。私はそれがとても心配なのです」


 「あなたは心配する立場ではありませんよ。戯言が過ぎる様なら父上に代わって今この場で私があなたを滅してもよいのです。私にはその権限が与えられていることはあなたも知っているのでしょう?」


 「ええ。もちろんよ。そしてこの場に来たのは、ゼウスや貴方に逆らうためじゃない。エウロスを暫定的に守護することになったと報告しに来たのですから」


 「誰も認めていないぞネメシス!あれは名乗ればなれる役割ではないのだ!」


 アポロンが怒りを隠さずに発言した。


 「暑苦しいわねあなたはいつだって‥‥。もちろん知っているわ。でもねぇ、エウロス国の大統領をはじめ、多くの国民が私とエリスをエウロスに代わる守護神として任命してしまったのよ」


 「馬鹿な!」

 「世迷言を!本当にそのような事があるとすればもはやニンゲンに神は不要だ!」


 「アポロン、アレス。口が過ぎるようです」


 『も、申し訳ありません‥』


 アテナは一瞬ため息をついて再度話し始めた。


 「ニンゲンが認めたのなら仕方ありません。彼ら自身が自分たちを守る神を選ぶ権利がある。あなたが選ばれたのなら誠心誠意尽くしなさい」


 「あら、随分聞き分けがよいのねアテナ。まぁとりあえず許可が降りた様で安心したわ。これで一応ケテルの四方を守る神の一員として、定期的にこの神殿には来るわね。それじゃぁ」


 ネメシスはそう言うと、テラスの方向へ走り出した。


 タッ‥タッ‥タッ‥タッ‥タッ‥バサァ!!


 そしてそのままテラスから飛び降りる様に跳躍し、大きな羽を広げて飛び去っていってしまった。




 「まさかネメシスとエリスがあの様な行動に出るとは‥‥」


 「一体何を考えているのだネメシスは!」


 アレスとアポロンは怒りを露わにしている。

 それらの言葉にアテナは言う。


 「想定内です。裏ではディアボロスと繋がっていると見た方がよいですね。ですが、ニンゲンがあの者を守護の神と選んだのであれば私たちにそれを覆す権利はありません」


 「しかし!」


 アポロンは納得できないのか体の炎が一段の燃え盛っている。


 「覆しはしません。あの者たちが自分たちの守護の神には相応しくないと思わせればよい」


 「どうやって?!」


 アテナわずかに笑みを浮かべた後、口の前に手のひらを上にむけて差し出したところへ軽く息を吹きかけた。


 シュルルルルゥゥゥゥ‥‥


 「お呼びでしょうかアテナ様」


 突如アテナの背後に風の様に現れた存在が言葉を発した。


 「何者だ?!」


 アレスが立ち上がる。

 それをアテナは手を軽く下げて制した。


「この者はハルパー。半神です。父上と名工の鍛えた剣の間に生まれた者です。父上が私の影として遣わしてくださった者です」


 「半神!!そのような穢れ者をこの神殿に入れるなど気でも触れました?!」


 アポロンは炎を更に猛々しく燃やして言った。

 それをアレスが制しながら質問を変えた。

 このままでは今の失言でアポロンがアテナに殺されかねなかったからだ。


 「その者がどうかしたのですか?!」


 「‥‥‥‥」


 アテナはアポロンの発言によって沸き上がってきた怒りの感情を抑えた。


 「この者をこの世界に越界してきた‥‥今は6体のニンゲンでしたね。その者たちとの接触させます」


 「あのニンゲンの越界者が何だと言うのですか?」


 「以前言ったでしょう?ディアボロスの張った夢の結界を得のに越界者たちを使えば良いと。あの中にはアノマリーがいます。上手く使えば夢の結界を消し去ることも可能です。元々の計画では、越界者5人がアノマリーを救出するのをこのハルパーが影からサポートし、アノマリーと接触させ彼らの結束の力によって夢の世界の結界は破壊する予定だったのです。それを察知したのか、エリスが邪魔だてをして白々しくアノマリーを越界者たちに返してしまったため、計画が狂ってしまった‥」


 「エリス‥!」


 「まさかあの者、アテナの計画に気づいての行動ということなのでしょうか?」


 「分かりません。よってこのハルパーをアノマリーたちに接触させ、彼らにネメシスとエリスの計画を探らせると共に、忌々しい夢の結界を解かせるのです」


 「なるほど」


 「馬鹿な‥‥そのような半神に出来るものか!」


 ズチャッ‥‥


 「!」


 突如、アポロンの首元に鋭い刃が突きつけられた。

 刃を突きつけているのはハルパーだった。

 その刃は手のひらから伸びている。

 体内に刃があり、その刃を自由に操ることができるようだ。

 それよりもアポロンが脅威を感じたのは、気配を感じさせずに近づき、感知できない殺意を持って刃を首元に突きつけたことだった。

 刃が自身の首元に触れた瞬間に初めて殺意が感じられ、その瞬間アポロンは死を覚悟した。


 「‥‥‥‥」


 「分かったでしょう?半神は侮れません。ボレアスが私たちと対等に話をしてくるのも、アネモイの半神どもがいるからです」


 「確かにペルセウス、ヘラクレスやアキレスは厄介だ‥‥」


 アテナは座ったまま手を前に出した。


 「ハルパー」


 「は!」


 いつの間にかハルパーはアテナの前に跪いていた。


 「アノマリーに接触し信用を勝ち取り、あやつらにディアボロスの夢の結界を破壊する様に仕向け、ネメシス、エリスの策略を突き止めさせよ」


 「承知しました。用が済みましたら殺しても?」


 「構いません。越界者などこのケテルにはいないも同じ‥‥好きに使いなさい」


 「ありがたき幸せ」


 そう言うと、ハルパーは消え去った。



・・・・・


・・・



―――とある一室―――



 どことも分からない部屋に大きなベッドが二つ並んでいる。

 一つのベッドには顔のない翼の生えた者がうつ伏せに寝ている。

 背中に生えている羽を使い魔のような者たちに手入れさせている。

 顔のない女神、ネメシスだった。


 そしてもう一つのベッドには、薄灰色の肌に紺色に白い縁模様の入ったローブを纏い、腰からは白く眩く輝く美しい羽が生やしている者がうつ伏せになり、同じ様に使い魔たちに羽の手入れをさせている。

 眼球の色が白黒反転している目を持つ女神エリスだった。


 「それで、どうだったの?あの堅物たちは」


 エリスが問いかけた。


 「はぁ‥‥想像できるでしょう?まぁあの子達の足りない頭なりに私たちがディアボロスと繋がっているのは疑っているようね」


 「へぇ‥‥。まぁアテナならそれくらいは想像できそうね」


 「そうね。そして私たちのエウロス統治については異論なしだそうよ」


 「ははは!全く悲しいほど堅物ね‥‥。ニンゲンに敬意を払ったところで何の得もないのに」


 「迂闊なことを言う者じゃないわエリス。でも、利用できるものは利用する。私たちの目的を果たすためならね。だからあの子にも踊ってもらいましょう」


 「いいわね!でもあまり派手に動くと厄介なのが出てきそうね」


 「ゼウス‥‥あれの登場はまだ早いわね。私たちの準備がまだ整っていないから」


 「急ぎましょう。気持ちは逸るけどチャンスは一度だから慎重に」


 「そうね」


・・・・・


・・・



―――ウロザナロッヂーーー



 スノウ達は、作戦会議を行った。

 越界するために手がかりとなるのは、ゲブラーにいて現在ケテルにいるはずのディアボロスだった。

 ディアボロスに会って越界方法を吐かせればという話になった。

 神の島にいると推測されるが、あの場所へ行くためには女神エリスとネメシスに許可を得なければならないという壁に直面した。

 一度対峙した女神エリスの強さと態度から、あの女神達が許可をするとは思えなかったのだ。


 「大統領なら説得できるんじゃないか?」


 スノウの言葉に皆納得した。

 大統領は女神を任命する権限があるらしいので当然女神に謁見したり、許可をだしてもったりといった事ができると推測したのだ。


 「となれば次の行き先は首都ゲズだな」


 バルカンが言った。


 「だが、その前にこの辺りで良さそうな戦闘場所を見つけてフランとロイグのレベルを上げる必要があるな」


 スノウが提案した。

 皆頷いている。


「こいつらとの約束もあるし、そもそもこの先には強敵がわんさと現れるだろうからな。生き残るためにはレベルを上げる必要があるな」


 バルカンがフランたちを見ながら説明した。

 シアにも越界の能力はあるのだが、昨晩スノウとシアで話をしてゲートを開き越界できる能力については伏せることにした。

 現在はそのエネルギーが枯渇していて使えないことと、十分にエネルギーを得られたとしてもシアとスノウ以外はカルパを渡ることができないため、他のメンバーを不安にさせたくないという理由からだった。

 ただし、最後の手段として、いざと言う時に使える様にエネルギーを補充することにした。


 「そして、神の島へ入れるとなれば、ネメシスやエリスに会うこともあるだろう。その中でやつらが何を考えているのかを探り、人類議会ヒューパラメンタルのやつらに情報を与えてやればいい。どうだろうか?」


 スノウの提案に皆賛同した。



 翌日、スノウたちは一路、首都ゲズに向けて出発した。





アップが遅くなってしまい申し訳ありません。

次は木曜日アップの予定ですが、日付跨ぐ可能性ありますことご容赦ください。


いつも読んでくださって本当にありがとうございます!

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