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<ケテル編> 19.再会

19.再開



 「こっちはかなり破壊が激しいな」


 ヴィークと共にウロザナに到着したソニックたちは街の破壊の激しさに驚く。

 確かに人々は精神的ダメージを受けてはいるようだが、その顔には悲しみに押しつぶされそうなワウザーンの人々のような感じではなく、早くも復興に向けて頑張る姿が感じられた。


 「そうですね。こっちにはヴァレファールと名乗る悪魔の集団20体ほどが現れて、人々を襲うというより、建物や店、とにかく生活に必要なものを片っ端から壊しまくった感じだときいてやす」


 バルカンの感想にヴィークが補足した。


 「お、来やした!」


 遠くから小柄な男がやってきた。

 そしてソニックたちの前に立つと、深々と一礼した。


 ザッ!!


 「これは遥々ウロザナへようこそ、ソニックさん、ソニアさん、シアさん、フランさん、ロイグさん、バルカンさん。私はロンダロンダ・ヴェルガーです。ロンロンとお呼びください。このウロザナで青年協会ロンロン団の団長を務めております。以後お見知りおきを」


 あまりに礼儀正しいので皆つられて深々と一礼した。

 ソニックとシアはソニアの存在、つまり同じ体にソニアとソニックが同居していることを既に知っていることに驚いた。


 (すごい情報伝達技術を持っているんだな)


 「ソニックさん。すいやせん。鳥を飛ばして知らさせていただきやした」


 (そういうことか‥‥)


 どうやらヴィークが段取り良く進めるために先だって鳥を飛ばしてこのロンロンと名乗った男へ情報を伝えていたようだ。

 ゲブラーでもよく使っていた情報伝達方法の鳥伝達という基本的な伝達方法が思いつかなかったことにソニックは少し自分を責めた。


 「それで、僕たちの仲間は‥‥」


 「もちろん、ご案内致します。こちらです」


 ソニックたちはロンロンと名乗った青年に案内されるままに歩いて行った。



・・・・・


・・・


 トントントン! カンカンカン!


 カカカカン!


 至る所で建物を直している音が聞こえる。


 トトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトン!!!

 カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカン!!!


 その中で一際速いリズムを刻んでトンカチで叩いている音が聞こえる。

 明らかに普通ではないスピードと手際の良さを想像させる。


 「あそこか」


 「それしかないわね」


 バルカンとシアが音の方向を見た。

 そして歩いていく。


 ワサンとシンザだった。


 2人はバルカンたちのオーラを感じ取ったのか、建物の屋根の上に立って振り向いた。

 その姿を見てバルカンの表情に喜びの笑みが生まれる。


 シュッ!‥‥スタ。


 ワサンとシンザは屋根から飛び降りてバルカンたちの前に着地した。


 ガシッ!!


 ワサンとバルカンは腕を合わせた。


 シンザは丁寧に一礼した。

 そしてソニックと握手を交わす。

 神の息吹デヴァプラーナに巻き込まれて散り散りになって以降、最後に示したシンザの合図を頼りにそれぞれ歩みを進め、こうしてやっとスノウ救出メンバーが揃ったのだった。


 「感動の再会って感じでもなさそうですが、色々とお話することもあるでしょうから安心して情報交換できる場所へご案内致します」


 ロンロンが切り出した。


 一行はロンロンが提供してくれた人類議会ヒューパラメンタルのウロザナロッヂ内の会議室にいた。


 「しかしよく生きていたもんだよな。あんな凄まじい暴風の神の息吹デヴァプラーナに吹き飛ばされたのにな‥‥いや、違うか。あんな暴風に吹き飛ばされてもびくともしないくらいじゃなければスノウは救えない‥‥そういうことだったな」


 「その通りだ。これでやっと万全の体制でスノウを救いに向かえる。とは言え、情報が命だ。早速それぞれが掴んだ情報を共有しよう」


・・・・・


・・・


 ワサン、シンザはゼピュロス国、否国リプスでの出来事を、バルカン、シアはフランとロイグを紹介しつつノトス国のリグ、否国アペリオのカイトン、そしてソニアックは禍外他人カゲビトのクゼルナを紹介しつつ否国カイキアのジジギーンでの出来事を共有した。


 現在このケテルを支配している神々、アネモイ剣士協会、ラフムやシャマシュといった旧神、そして風が支配している構図、神の息吹デヴァプラーナ砂嵐ヴァールカと砂嵐の衝突ヴァルカジュラといったこの世界の関係やしくみも共有できたが、スノウを探す手がかりにはならなかった。


 その後に共有されたのが、人類議会ヒューパラメンタルが得た情報だった。

 夜に無数の悪魔たちが降り立ち、南東へ向かったという。

 ウロザナの南東には出島と呼ばれる細い陸で繋がった島があるらしい。

 ヴィークたちによるとその出島は神の島と呼ばれ人は近寄らないとのことだった。

 その神の島にはエウロス国を統べる神エウロスが住まう神聖な場所であり、エウロス国の大統領しか入ることを許されない場所なのだという。

 そんな神聖な場所に向かって無数の悪魔たちが向かって行ったらしいという情報は、ネメシスやエリスといった突如現れた女神との関係を探る手がかりになるのと同時に、ゲブラーを襲った悪魔の軍団アディシェス軍を率いたディアボロスがいる可能性を推測させるものだったのだ。


ー神の島ー


挿絵(By みてみん)



 「僕たちに協力してくれる人類議会ヒューパラメンタルからのクエスト、ネメシスとエリスという2人の女神の真意‥‥全能神と呼ばれる存在に消滅させられたというエウロス神がいたであろう神の島に向かった多数の悪魔‥‥そこには悪魔との繋がりがあるのか‥‥‥これを突き詰める中でスノウに辿り着く可能性があると思うんです」


 ソニックの提案にシアが反応する。


 「確かにそうね。それに他に手がかりもない以上、この情報を頼りに進むしかないわ。ただし、罠である可能性は考慮すべきだわ」


 「そうですね。その罠の可能性はあるでしょう。ですが僕たちはそこへ行く必要があるようですよ。このビーコンもまた、その神の島なる場所を指していますから」


 シンザが託されたキューブを探知する装置のブレスレット型の輪の中で光の矢印は東南を指し示している。


 「決まりだな!」


 バルカンが立ち上がる。

 全員がそれに呼応して立ち上がる。

 手を合わせて気持ちを一つにする。



・・・・・


・・・・



―――翌日―――



 ヴィークから提供された馬車に乗り込んで神の島へ向かうバルカンたち。

 ロイグに跨って並走するフランは斥候のように周囲を確認しながら進む。

 2人はソニックたちと行動を共にできることを嬉しく思っているようだ。

 少年でありながらも、それぞれのメンバーが発する強者のオーラを感じ取っているようだ。

 だが、フランとロイグはまだ戦闘力も低い少年であるため、ソニックの指示でクゼルナが2人の影に潜んでサポートしていた。



・・・・・


・・・



―――とある空間―――


 真っ白な空間に赤い皮張りのソファがふたつ斜めに向かい合う形で置かれている。


 その一つにはオーガロードのズイホウが足を組んで座っている。


 そしてもうひとつのソファにはアミゼン・ユメがだらけた体勢で座っている。


 「だめだわ‥‥しぶと過ぎる」


 ユメが呆れた表情でため息混じりに言葉を発した。


 「アノマリーを追って面倒なやつらがこの地へ来ている。さっさと手筈通りに進めろ」


 ズイホウは怒り気味に返した。

 もちろんズイホウの姿はしているが、精神はディアボロス配下のサルガタナスである。


 「分かってるわよ。でもこれ以上やったら死ぬわよあれ」


 「アノマリーが死ぬというのか?少々の傷も急速に自然治癒する特異体質だぞ」


 「馬鹿じゃないの?肉体の話じゃないわよ。精神が死ぬって言ってんの。人間は精神が死んだら体も死ぬんだから。私は精神を骨抜きして何も考えられない廃人にさせようとしてるのよ。微妙な匙加減さじかげんが必要なの。それこそ100メートル上空から小石を小さな穴に放り込むくらい繊細な調整が必要なの。あんたみたいに大雑把に殺すことしかできないのと一緒にしないでよ」


 「ちっ!」


 (このニンゲン‥‥調子に乗りやがって。用済みになったら魂を吸い尽くしてやる)


 サルガタナスは苛ついた表情のまま黙り込んだ。


 ジュワン‥‥


 白いスーツに褐色肌、そしてタトゥーが見える男が空間の歪みから現れた。


 ササッ‥‥


 サルガタナスはすぐさまソファから降りて膝をついて頭を垂れた。

 現れたのはディアボロスだった。


 ドサッ‥‥


 鋭いオーラが緊張感を生んでいる。

 だれた座り方をしているユメもその表情は強張っている。


 「仕方ないな。これ以上は計画に支障が出る」


 「できるよ!あと少しだから!」


 (クソ!このニンゲン、さっきと言ってることが違うだろうが!)


 サルガタナスは頭を垂れながら舌打ちした。


 「いや‥‥インタビリスを甘く見るな。アノマリーを普通のニンゲンと見なしては、計画を見誤る。別の手段を検討する。‥‥サルガタナス」


 「は!」


 「あとは上手く対応しておけ」


 「承知しました」


 そういうとディアボロスは消えた。


 ドカ!


 ユメはソファを蹴り始める。


 ドカ!ドカ!ドカ!


 「クソ!なんなんだよあのスノウってやつ!殺してやりたい!クソ!」


 ゆっくりと立ち上がったサルガタナスはほくそ笑んでいた。



・・・・・


・・・



―――1日後―――



 ソニックたちは海にたどり着いた。

 幅10メートルほどの回廊のような陸が神の島と呼ばれている離れ小島に続いている。


 「ここを渡れば神の島‥‥いよいよスノウさんがいるかもしれませんが、罠に警戒して進みましょう」


 シンザがブレスレット型の探知装置を示しながら言った。

 一行は慎重に馬車を進めた。






少しアップが遅くなりました。

次のアップは日曜日です。


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