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<ゲブラー編> 180.カタクリズム

180.カタクリズム



 「合わせろザムザ!」


 白い稲妻を帯びたローブ男の刀の斬撃を避けようと後方に退くタローマティの背後から蹴りを喰らわして斬撃の軌道に押し戻すザムザ。


 ザバン!!


 「来るぞザムザ!」


 タローマティの顔一面から黒い光のレーザーが黒い稲妻を纏いながら放たれる。


 ビギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥


 黒いレーザーがタローマティの顔の向きに応じて縦横無尽に放たれる。

 ローブ男とザムザはそれをギリギリでかわす。


 ドッゴォォォォォォォォォン‥‥


 遠くで山が崩れる音が聞こえる。


 ローブ男は地面を這う様にしてタローマティに詰め寄る。


 「ザムザ援護だ!」


 真上から急降下で蹴りを繰り出すザムザの攻撃を受けて頭部が体にめり込むタローマティの背後に回り込んだローブ男は背後からタローマティの首を鎖骨ごと刀を横振りして斬る。


 ズザァァン!!


 ローブ男はすぐさま跳躍してタローマティの頭部を掴むと地面に向かって叩きつけて、顔から発せられているレーザーをタローマティの体に向けて放つ。


 バジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!


 タローマティの体は一気に蒸発して胴体と両腕、羽の部分が消失した。


 「ザムザ!」


 ザムザは一気に回転し始めて羽から鱗粉を竜巻の様に発生させる。


 ジュウウゥゥゥゥゥゥワァァァァァァァァァン‥‥


 鱗粉の竜巻がタローマティを包む。


 「キィィィィィェェェェェェェェ!!」


 頭部と足だけになったタローマティはまるでブレーキ音のような金切声を上げた。


 「ヨシツネ!」


 アールマティが叫ぶ。

 ローブ男の背後から首のない別の黒い影が現れる。

 黒い影は体を異常な角度で捻りながら、背中の鎌の羽でローブ男に鋭い斬撃攻撃を加える。


 シュゥゥゥゥン‥‥


 ローブ男はギリギリのところで羽鎌攻撃を避け、そのまま手から炎魔法を放ち、黒い体に攻撃を加えながらそまま離れた場所まで飛びのいた。


 ボシュウゥゥゥゥ‥‥


 頭部のない黒い影はタローマティの頭部を拾うとまるでそれを粘土をくっつける様に載せた。

 黒い触手のようなものがまとわりつき、黒い影はまるでそれぞれの部位が意識を持つ様に震えて実体化した。


 「ふむ。なかなか倒すのは骨が折れるね」


 「そう簡単に滅せられたら、アムシャ・スプンタは手こずっていないわね。でもそろそろあの子の魔力も尽きてきた頃でしょう。一気に叩くのがよいわね」


 タローマティを囲むようにしてアールマティ、ローブ男、ザムザ、エスカ、コウガが立っている。


 「ギギィ」


 タローマティは表情の見えない真っ黒な顔からなぜかニヤリとした笑みを浮かべたことが分かる思念波のようなものを送ったかと思うと、何やら呪文を詠唱し始めた。



 「アザルガスガレ!ジールガイザーラン!ヴェジオ!」


 タローマティは何かの呪文を詠唱すると、自身の影の中にまるで水面に飛び込む様な形で沈んでいった。

 その跳ねた水滴の様な黒い球体が1メートル付近のところで止まり、クルクルと回転し始めたかと思うと、一気に大きくなる。


 「アーティ!ザムザ!」


 「ええ!」


 アールマティーとザムザはローブ男と共に両手を広げた。


 (両手を広げなさい!)


 同時にアールマティの声がエスカ、コウガの頭の中に響く。

 五人が両手を広げると光の線が両手を通してつながりタローマティの黒い球体を囲む様にして光の円を作り出した。


 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‥‥


 光の円はそのまま壁になり光の円柱が現れる。


 中心では臨界点に達した黒い球体が一気に弾ける。


 ドロロォォォォ‥‥バァァァン!!


 凄まじい黒い波動の破壊波が爆発する様に広がるが、光の円柱に抑え込まれて上に伸びていく。


 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!


 ザザン!!!!


 一瞬で凍りつく様に黒い波動破は固形化して破壊の波動が消えた。


 シュゥゥゥゥン‥‥


 黒い破壊波を抑え込んでいた五人は手をおろした。

 アールマティ、ローブ男、ザムザの力で形成された光の壁の威力で体力を消耗したエスカとコウガはその馬にしゃがみこんだ。

 特にコウガはエスカとは比べ物にならないほどの体力を消耗した様子で、しゃがんだまま気を失っている。


 「エスカ!」


 アールマティが叫ぶ。


 エスカの背後に不気味な笑みを浮かべている黒い顔が見えたからだ。


 「トウメイの前にお前を道連れにする。お前も天帝の犬なのだろう?」


 不気味な顔の主は、怨霊ノウマンだった。

 タローマティの放った黒い波動が固形化した塔のような物体に阻まれて、エスカの状況が見えてる位置にいるのはコウガとアールマティだったが、コウガは気絶しており、アールマティしかエスカの状況に対処できる者はいなかった。


 しかし、光の壁を作ったことで魔力消費が激しかったのか、一瞬初動が遅れた。


 (間に合わない!あの怨霊を攻撃してもエスカに当たってしまう‥‥!)


 エスカの耳や鼻、口から黒い煙となって憑依しようと試みる怨霊ノウマン。

 エスカの目が白目になり、徐々に黒ずんでいく。


 「あがが‥‥」


 憑依しようとする怨霊ノウマンの侵入を拒むエスカの精神は争うのも虚しく、徐々に押さえ込まれていく。


 (だめか‥‥)


 エスカが諦めかけたその時。


 (諦めてはいけませんよ)


 ガッ!


 突如白い煙が怨霊ノウマンの顔の部分を掴んだ。

 斬っても斬れない、掴むこともできなかった怨霊ノウマンを掴んだその白い煙はそのままエスカから離れていく。


 ザザッ!‥‥スタ!


 エスカの前に立ち盾となって構えるアールマティ。

 その影から見えた白い煙が徐々に何かを形作っていく。

 曖昧な形ではあるものの、エスカにははっきりとその存在が何者か理解できた。


 白い煙の主はリュウソウだった。

 荘厳なオーラと共に怨霊ノウマンの首を掴んで離さずに徐々に上に登っていく。


 「何者だ貴様!離せ!あの女に取り憑いてトウメイを討たねばならないのだ!離せ!貴様もとり殺してくれる!」


 「無駄です、ノウマン将軍」


 「き、貴様は‥‥リュウソウ!離せ!離せ!私の言うことが聞けないのか?!」


 「貴方はもはや私に命令できる存在ではありません。さぁ行きましょう、光り輝く地へ」


 「い、嫌だ!痛い!やめろ!」


 「いいえ、一緒に行くのです。彼の地が貴方を受け入れてくれるかはわかりませんがね」


 「や、やめろー!シャァァァァァ!!」


 怨霊ノウマンを掴んだ白い煙のリュウソウは天に登っていった。

 エスカに優しい微笑みを残して。


 「リュウソウ‥‥」


 最後の最後まで誰かの命を救うために戦うリュウソウの姿を見て、エスカは涙を流して言った。


 「あの子は威霊となったのね。そして強い思いを持っていたから貴方を救いにやってきた。威霊となった直後はまだ力を定着できていないはずだから地上に降りることですら精神体内に走る激痛は想像を超えるのに。とても意志の強い子なのね」


 「そう。彼は私たちの仲間で最も優しく真っ直ぐな‥‥そして強い人だった」


 エスカは涙を流しながら優しく微笑んだ。



・・・・・


・・・



―――ゾルグ平原東―――



 ディアボロスはトールとの凄まじい戦いによって、周囲にいたはずのハーポネス軍消滅しているのはもちろんのこと、アディシェス軍の悪魔すらほとんど冥府へ還されていた。


 ディアボロスはリゾーマタのクラス5の魔法スーパノヴァを放つ。

 トールを球体が包みその中で超新星爆発が起こる。


 バゴォォォォォォォォォォォォォン!!


 ズゥゥゥゥゥゥゥン‥‥ドォォォォォォン!!


 ガガガガガ!!


 超爆発の球体の中から球体を破るようにミョルニルが飛んできてディアボロスに衝突するが、ディアボロスは両手を前に出して衝突を抑えている。


 「ちぃ!厄介なハンマーだな!」


 ジャァァァァン!!


 ディアボロスはなんとかミョルニルの軌道を横に外らせて弾くが、追跡弾のように後方で方向を変えて戻ってくるのを確認し、スーパーノヴァを解除してそのまま爆発の球体があった場所の向こう側へ移動する。


 ガシン!!


 スーパノヴァで超爆発に巻き込まれていたはずのトールは上半身の鎧が溶けて消えていたが、余裕の表情でミョルニルを手にもって、もう片方の手を腰にあててディアボロスの方を向いている。


 「ちょどいいサウナだったな。お前も入ってくりゃ良かったんじゃないか?裸の付き合いってやつだ」


 「噂以上のタフネスだな」


 「お前もやるぞ。ミョルニルを受けるとは流石は大魔王だ」


 「‥‥」


 ディアボロスは何かを感じ取ったようで、西の方へ意識を向けた。


 「ちっ!」


 そして舌打ちした。


 「どこまでもうっとおしいなお前ら‥‥」


 ディアボロスはシャツのボタンを外しながら辺りを見回して言う。


 「全く何と言う損失だ‥‥。まぁ最初から捨て駒ではあったが、これほどとはな。‥‥しかもネビロスがやられた様だ。これでは計画が修正できない状況になりかねねぇ。悪いがここで引かせてもらう」


 「その計画ってのを聞く前に逃すわけにはいかないな」


 トールはミョルニルを振り回し始める。


 「冗談じゃねぇよ。お前との戯れあいはこれで終いだ」


 そう言うとディアボロスは自身の前にボールを持つ様に手を出す。

 すると両手のひらの中に赤い球体が生まれる。


 「!」


 トールは振り回しているミョルニルをディアボロスに向けて投げつけた。


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン‥‥‥ギャギャギャギャギャ!!


 飛んでいったミョルニルはディアボロスの目の前で何か見えない力で阻まれているかのように震えながら音を立てて止まっている。

 トールはそれを “戻ってこい” という仕草をして引き戻す。


 ガシ!‥‥ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンユン‥‥‥


 トールはミョルニルを振り回す。


 「これ以上は邪魔をしてくれるなよトール。お前のお仲間にも言っておけ」


 ディアボロスがそう言うと両掌の中にあった赤い球体は ヒュン と小さな音を立ててトールの方へ飛んでいった。


 「カタクリズム」


 シュゥゥン‥‥ドゴゴゴゴゴ!!ガガガガガガン!!!ドゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォン!!!ガガガガァァァァァァン!!!


 地が割れ、割れた地面は方々で激しい沈下と隆起を繰り返し、ぶつかり合い、直径1キロメートルほどにも及ぶ超巨大な渦の様なクレーターに似た大崩壊を巻き起こした。


 ドゴゴゴゴ!!ガガガガガガン!!!ドゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォン!!!ガガガガァァァァン!!!


 リゾーマタのクラス6魔法、高位神や熾天使、大魔王級以上にしか扱えない領域の魔法が放たれた。


 カタクリズム。


 天地崩壊を呼び起こす恐ろしい魔法を放ちディアボロスは消えた。

 大地はハーポネスの兵士たちの亡骸やアディシェスの悪魔兵たちの残骸だけでなく、木々やそのたあらゆる動植物の全てを地底の奥底に飲み込んだ。


 しばらくして、超巨大な爪痕を残して崩壊は止まった。


 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‥‥


 トールが岩の上に降り立つ。


 ミョルニルを上に飛ばしそれに掴まって遥か上空に避難したため、この魔法の影響を受けなかったのだ。


 「こんなに自然を壊しやがって。しかし凄まじい力だな‥‥お陰でまんまと逃げられちまったなぁ‥ははは」


 トールはミョルニルを腰にくくりつけて腕を組んだ。


 「ミトラ。いよいよお前の虚しい願いの戦いにも終止符が打たれるのかもしれないな」


 あたりに通常の風が戻ってきた。


 「まぁせいぜい足掻いてみせればいい。俺にできるのはここまでだ」


 トールは天に登る稲妻となって消えた。






次のアップは日曜日の予定です。

ゲブラー全土で繰り広げられていたヘクトルを倒すためのそれぞれの戦いやストーリーは終息し、いよいよグランヘクサリオス決勝からのクライマックスに突入します。

楽しんで頂ける様に書けたらと思います。


いつも読んでくださってありがとうございます!


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