<ゲブラー編> 170.オーガロードにとっての恐怖は‥‥
170.オーガロードにとっての恐怖は‥‥
『あおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
『おおおおおおおおおおおおおおおお!!』
南の獣人軍からの空気を振動させるような雄叫びが聞こえ、東のジオウガ軍からは勝鬨をあげる声が響いていた。
「我がジオウガ軍と南の獣人軍は勝ったようだな。だが。ここで負ければ彼らはマルトスによってこの街の奥に潜んでいる万を超えるエルフの軍勢を差し向けられて全滅する可能性が高くなる」
「ここの制圧のなく真の勝利はないと言うことですね」
「そう言う事だ」
目の前の両腕剣の男に注意を向けつつギーザナとザラメスが会話した。
ドゴゴォォン!!
ガガン!!
バゴォォォン!!
凄まじい剣の応酬が続いている。
両腕剣の男の技は華麗で凄まじい速さもあり、流れるような剣捌きでザラメスとギーザナを圧倒している。
カキキン!!
ゴカン!!
ギーザナとザラメスの間に立ち、それぞれ剣で攻撃している。
両腕剣の背中は異常な程に筋肉が発達しているようで、しなやかに且つ力強く躍動する筋肉の伸縮によって鋭く素早い伸びのある剣撃が繰り出されており、ギーザナもザラメスも間合いを図る事が難しいのか、次第に体に傷を付けられ始めた。
「フェンレン・ファリア!」
ザラメスは炎の爪を右足に発生させて、剣撃に織り交ぜて炎の爪の蹴りを繰り出す。
ガキキン!シュワン‥‥ザババン!!
「うぐぅ!」
「ザラメス!」
ザラメスの放った蹴りは確実に死角から両腕剣のアキレス腱を捉えていたが不自然な体勢でその攻撃をかわすとありえない体幹で剣撃を繰り出し、ザラメスの胸を斬った。
「大丈夫!合わせて!」
だが、体勢崩していたザラメスは逆にそれが功を奏して斬られた傷を浅くしてかわすことができた。
シャバン!
その反動を利用して更にザラメスが炎爪蹴りと剣撃を同時に繰り出した。
と同時にギーザナは剣を両腕剣の男が避けきれない角度で振り下ろす。
ジュワン‥‥サララン‥‥
異常な角度で体を曲げる両腕剣の男は見事に紙一重のところで避けた。
だが最後にザラメスが苦し紛れに炎爪蹴りを放ち飛ばしたものが両腕剣の男の腿に刺さって燃えた。
ジュウウワァァァ!!
一瞬だけ両腕剣の男の動きが止まる。
その隙を逃さずギーザナが剣を振り下ろす。
ガキン!!
だが、凄まじい体幹と力で簡単にギーザナの重い一撃を受け止めたあと、強烈な蹴りを放ちギーザナを吹き飛ばす。
ザラメスは再度剣撃を繰り出しながら炎爪蹴りを放ち、炎爪を飛ばした。
ジョヴァン!!
今度は腕剣で軽々と炎爪を斬り消した。
「‥‥」
ザラメスは少し距離をとった。
「どうしたザラメス!まさか怖気付いたのではあるまいな?」
「私に考えがあります!1分時間を下さい!」
そう言うとザラメスは後方に下がって兵の影に消えた。
「ばかな!勝手な真似を!エルフとはなんとわがままなやつだ!」
そう言いながらギーザナは剣を鞘に収めて、近くに転がっている槍を足で器用に蹴り上げて手に取り構えた。
「さぁ、どこぞの名のある剣士だった存在よ。かかってこい!」
ガキキン!!
シャカカン!!
カキキキン!!
リーチの長い槍で距離を取りながら攻撃する事で急所をつかれないように防御を伴った攻撃でなんとか凌ごうとするギーザナだった。
その判断は的確で、両腕剣の男は速さと力は凄まじいのだが、腕に剣が付けられているため、通常の剣のリーチよりも短く、更に槍との攻防ではその差は更に広がる上、ギーザナの槍捌きが突きが中心のため捉えづらく距離感を見誤る事もあり、両腕剣の男は体に槍の傷が増えていくのを嫌ってか不用意にギーザナの懐に入れずにいたからだ。
「うおおおお!!」
ジャジャジャジャジャジャジャジャ!!
だがギーザナの槍の突き攻撃の癖を見抜いてきたのか、例の如くありえない関節の曲がりや異常な体幹から次第に避けれられ始め少しずつ距離を詰められている。
「ちぃ!」
(ザラメスめ!何をしている!このままでは私でも抑えきれずにいずれ致命傷を負うことになるぞ!)
ガキキン!キキン!ガキキキン!‥‥ザンッ!!
「ぐっ!」
ついにギーザナは両腕剣の刃に捉えられ脇腹を斬られた。
「ふん!」
傷が浅かったのか、ギーザナは脇腹に力を込めて止血した。
だが、その一瞬の隙をついて両腕剣の男がギーザナの間合いに入り剣を突き立ててきた。
グザァ!
「うぐおおおおおお!」
ギーザナの雄叫びが響く。
「捕らえたぞ!」
ギーザナは右肩を斬られながらもそのまま両腕剣の男に詰め寄りそのまま両腕剣の男の腕を掴み、背後に回って背中から腹に手を回し掴んで大きく跳躍する。
「輪撃炎下厳」
ギーザナは両腕剣を背中から抱えた形で回転しながら20メートルほど大きく飛び上がる。
ギーザナの腕はまるで溶岩が赤く燃え盛るような色に変わっていく。
ジュワアァァァァ!!
両腕剣の男の腹が徐々に焼けて焦げていく。
そしてそのまま回転しながらまるでバックドロップのように地面に頭を向けて旧落下していく。
ドォォォン!!
スタ‥‥
両腕剣の男は少し離れた場所で可憐に着地する。
背中から腹の部分にかけてギーザナの腕が締め付けていた部分の皮膚は重度の火傷で赤黒くなり煙を発していた。
ボタ‥‥ボタ‥‥
一方のギーザナは足元に血が滴っている。
見るとギーザナの左腕が関節部分から千切れかかっている。
それを右手で止血を兼ねて抑えて掴んでいる。
「流石に強いな。あれから逃れるとはな」
空中でギーザナの腕をあわや切断という深さで剣で斬り、力を失った拘束から逃れて地上に激突する衝撃を避けたのだった。
だが、腕が千切れそうになっているにも関わらずギーザナは表情ひとつ変えず、汗もかかずに平然として両腕剣の男の次の攻撃に警戒している。
お構いなしと言わんばかりに両腕剣の男がギーザナに向かって凄まじい速さで詰め寄ってくる。
ズザン!!‥‥ドン!!
突如両腕剣の男が地面に倒れ込んだ。
ググ‥‥ググ‥‥
両腕剣の男はうつ伏せ状態で右の背中から炎の大きな矢刺さっており、その矢が地面にまで深く刺さっているためそのまま身動きが取れない状態でもがいている。
「ザラメスか」
ギーザナは探す事なく、目の前の両腕剣の男の一挙手一投足に集中している。
「死角からの不意打ち!こいつにはこれしか聞きません!」
ザラメスの言葉にギーザナは軽く頷いた。
ザザン!
両腕剣の男は力任せに地面から立ち上がる。
ブジュオォァァァ‥‥
胸から血が噴き出ている。
地面に刺さっている大きく太い炎の矢は燃え尽きた。
両腕剣の男は周囲をキョロキョロと見回している。
ズザン!!
今度は両腕剣の男の太腿に炎の矢が突き刺さる。
その勢いで側面方向に吹き飛んだ。
ドッゴォォン!!
「やったか?!」
吹き飛んだ両腕剣の男はすぐさま起き上がった。
「化け物め‥‥」
そして何やら小声で呟き始める。
みるみる内に両腕剣の男の剣が赤く変色していく。
そして眩い光を放ったかと思うと、その剣を矢が飛んできた方向に向けた
バシュン!‥‥ドゴォォォン!!
「なに?!」
両腕剣の男の剣先から炎のビームのようなものが発せられ、ザラメスが矢を放ったと思われる場所に一瞬で飛んで行き建物の屋根付近は派手に破壊した。
シュゥゥン‥‥バシュン!‥‥ドゴォォォン!!
ザラメスは移動しながら両腕剣の男の死角から炎の矢を放っているが、凄まじい速さで知覚され剣のビームで矢を破壊し、そのままザラメスがいたであろうところを破壊した。
(反則だろ!何者だよ!)
ザラメスは間一髪で剣のビームを避けた。
その後も立て続けに当てずっぽうのように至るところにビームを放つ両腕剣の男を目の前にしてなす術なくギーザナは動けずにいた。
(ありえん‥‥この私が恐怖している‥‥。このオーガ・ロードの私が恐怖‥‥。私は戦士だぞ!私が感じている恐怖とはなんだ?死ぬことか?それとも負けることか?‥‥死や勝ち負けなど結果に過ぎない‥‥私にとっての唯一の恐怖は‥‥全力を出さずに負け悔いを残すことだ!)
「仕方ないな。貴様ほどの強者‥‥腕の一本くらいはくれてやろう!ザラメス必ず致命傷を与えるのだぞ!」
そう言うとギーザナは地を這うような低い体勢で一気に両腕剣の男に詰め寄り背後から先ほどと同様に掴みかかろうとするが、両腕剣の男にはその動きを見切られており剣先を向けられる。
バシュウウ‥‥
ビームが放たれるが、その軌道はギーザナを避けて更に方向を変えた。
なんと、両腕剣の男はギーザナの腕に顔面を殴られてその反動で剣先の向きがブレてしまったのだ。
ギーザナの腕は地を這う突進の直前に自らの手によって引きちぎられ、腰に巻いている縄が結ばれ、まるでモーニングスターのように弧を描いて放たれたのだ。
それが両腕剣の死角からの攻撃となり、ビームの軌道を変えさえたのだ。
そしてそのままギーザナは両腕剣の男の背後から残された右腕で両腕剣の右腕を掴み、両足で両腕剣の左腕を挟み込む形で寝技に持ち込んだ。
グググ‥‥
如何に両腕剣の男の力強いとはいえ、オーガロードの本気の絞め技を軽々と外すことは出来ず、完全に固められた。
(ギーザナさん。それは共に射ってくれってことですよね?)
(そうだ。必ず仕留めろ)
テレパシーが使えるわけでもないので、会話が出来ていたわけではないが、心の中の言葉はこの瞬間繋がり、ギーザナの覚悟をザラメスは理解して渾身の炎の矢を放った。
シュウゥゥゥゥン‥‥ズザン!!
両腕剣の男の鳩尾付近にザラメスの放った炎の矢が凄まじい勢いで突き刺さり、そのまま貫通した。
バッゴォォォォン!!
そして矢に閉じ込められていた炎魔法の爆裂破が一気に放たれた。
あたりが煙で覆われる。
ザラメスは建物の屋根から降りて様子を見にいく。
煙が徐々に流されていくにつれて何かの影が露わになっていく。
「!!」
ボタ‥‥ボタ‥‥ボタ‥‥
両腕剣の男が鳩尾から血を流しながら立っている。
そこから少し離れた場所にギーザナが倒れ込んでいる。
ギーザナの生死は不明だった。
「な、なんなんだよ‥‥一体‥‥」
ゆっくりとザラメスの方へ歩いてくる両腕剣の男に一瞬たじろぐザラメス。
だが、ギーザナに目をやると下唇を噛んで我を取り戻す。
(ギーザナさん‥‥)
ザラメスは剣を抜いて構えた。
少しアップが遅れました。
次は水曜日の予定ですが、同じく日付跨ぐ可能性あります。
いつも読んでくださって本当にありがとうございます。
ゲブラー編クライマックスまで一気に書き上げる予定です。
楽しんでいただけたら高評価頂けるととてもモチベーションが上がります!
どうぞよろしくお願いします!




