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<ゲブラー編> 160.クラス5魔法

160.クラス5魔法



 一瞬でナラカ第一階層トウカツのエリアが更地になった。

 怒りで凄まじい力を放出したヤマラージャの影響だ。

 トウカツに住んでいた者やナラカ軍兵士たちは既にオアシスや第2階層のコクジョウや地上に分散避難したため、塵にならずにすんでいる。

 更地となったトウカツの中央に一人ヤマラージャが下を向いて立っている。


 シュワン‥‥


 「イカれてるのかい?ここは自分の城だろう?自分で吹き飛ばしてどうするんだよ」


 ヤマラージャの背後から聞こえてきたのはサルガタナスの声だった。


 ズァヴァァァァァァ!!


 サルガタナスの手刀によってヤマラージャの右肩から左脇腹まで一気に抉り切られる。


 ドッバァァァァァ‥‥


 大量の血が噴き出るが、まるで逆再生のように全てが元通りに戻っていく。


 「チィ!厄介な縛りだな‥‥!!」


 ガシィ!


 サルガタナスの手刀をヤマラージャに掴まれる。


 「は、離せ!」


 サルガタナスの腕ごと体を再生させるヤマラージャの左脇腹にはまるで脇腹から手が生えているような状態になった。


 ズバン!!


 ヤマラージャはサルガタナスの手を切断した。


 ズボァ!


 「おいおい!勝手に私の手を斬るんじゃない」


 ドゴァァァン!!


 サルガタナスは強烈な蹴りをヤマラージャの顔面に喰らわせる。

 その衝撃でヤマラージャは回転しながら吹き飛んでいく。


 「さて、あの死なないゴキブリみたいなやつをどうやって塵に還すか。ヘクトルはなかなかどうして賢かったな。8層のマグマにどぶ漬けさせていたのだからな‥‥ジノ・レストレーション」


 そう独り言を呟きながらヤマラージャに斬られた手を拾い切断面にくっ付けるようにあてがうと、まるで生き物のように血管や皮膚が再生させていった。


 ドッゴォォォォン!!


 突如サルガタナスの顔面が歪み、その勢いで体が真横に回転しながら吹き飛ばされる。


 ガシィィィィィィ!!


 右手で地面を掴むように引っ掛かるようなところ探して回転を止めて着地するサルガタナス。

 凄まじい力でヤマラージャに殴られたのだ。


 「お返しってことか?」


 ドッゴォォォォン!!


 バッゴォォォン!!


 ヤマラージャの強烈な連続パンチが炸裂する。


 ドッゴォォォォン!!


 バッゴォォォン!!


 サルガタナスは攻撃を受けるので精一杯という状態になっている。


 (まぁいい。こいつをここで足止めするのが私の役目だ。時間までこうやって戯れていればいい)



・・・・・


・・・


 一方アルマロスを迎え撃ったエミロクたち。


 「なかなか面倒ですね」


 シロクの脳に映像を送り込む炎魔法と、シミョウの脳に音を送り込む炎魔法に撹乱されてエミロクからの錫杖攻撃を受け続けているアルマロス。


 《観念しろ》

 《お前に勝ち目はない》

 《諦めて冥府へ帰れ》

 《ここはお前の居場所じゃない》


 シミョウから立て続けに発せられるエコーのかかる声はシミョウの特殊炎魔法の一つで熱に音波を込めたものだ。

 シロクもまた特殊炎魔法を使うが、様々な色がチカチカと移り変わる映像を熱にこめてアルマロスの脳に送っている。


 ザン!カカン!シャカン!カカカン!


 アルマロスは体の間接がないのではと思えるような不気味な動きで剣を振るが、エミロクは立っている位置から1ミリも動かずに受け、攻撃を繰り出している。


 「埒があきません。‥‥アトミックデトネーション」


 アルマロスは剣を振り回しながら、軽々とリゾーマタのクラス4魔法の原子爆発を引き起こすアトミックデトネーションを練り放出した。


 「バリアオブメギドウォール」


 アルマロスが放出する原子爆発魔法を抑え込むように特殊な光の壁が生まれ収束させていく。


 シュゥゥゥゥゥゥ‥‥


 そして小さなエネルギー体になった。


 シュウン!


 それをエミロクは大量の息を吸うようにして口の中に吸い込んだ。


 「これは参りましたね。あなたニンゲンじゃありませんね?」


 剣と錫杖の応酬の中、全く動じずに普通に会話をするアルマロス。


 「あなたに答える必要はございませんよ」


 「先ほどのバリア魔法はリゾーマタのクラス4。ニンゲンは扱えて精々クラス3ですからね。あなた一体何者ですか?」


 シミョウとシロクは二人の会話を理解できなかったが、とにかくアルマロスの異常な強さに気を抜けず、脳へ妨害映像と妨害音声を流し続けている。


 「あなたこそ一介の悪魔に身をやつしている場合ではないのでは?高尚な真理を持っていたと聞いていますが?」


 「口が過ぎるようだ。少し飽きた。そろそろ終わりにさせてもらいますよ」


 そう言うとアルマロスは剣と錫杖の応酬の最中、目を瞑って魔法を詠唱し始めた。


 「エンドオブザワールド」


 「!!」


 これまで無表情というよりほんのりと微笑みを浮かべた表情だったエミロクは般若のような形相に変わる。


 「シミョウ!シロク!直ぐに退避してください!ここから逃げて!」


 「もう遅い。あなたが長々と会話するものだから、クラス5の魔力を練ることができましたよ。魔力増幅を感知できなかったあなたの責任だ」


 ヴヴヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥン‥‥シュワン!‥‥


 黒い光がアルマロスに集まってきた直後、地面から無数の黒い雫のような点がスローモーションのように浮き上がる。

 エミロクはシミョウとシロクを素早く蹴り、遠くへ吹き飛ばし自身も後方に凄まじい跳躍を見せて退避した。


 直後、無数の黒い雫のような点は、一気にどす黒いエネルギー爆発を引き起こす。


 ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!



・・・・・


・・・


 ヒーンの脳裏に流れ込んできた映像はここで途切れていた。


 (おそらく僕がナラカに入る前にアルマロスは地上へ出てどこかへ向かってしまっているね‥‥シロクがあの状態だとすると、シミョウも‥‥)


 「クソ!」


 珍しく暴言を吐くヒーン。

 だが、あの映像を見る限り、例え自分がその場に間に合っていたとしても、成す術なくシロクと同様に命を落としていただろう。

 間に合わなかったことより、自分の無力さに苛立っていたのだ。


 「エミロクは‥‥」


 ヒーンがここに来るまでにエミロクを見ることはなかった。

 あの映像からはエミロクは後方、つまりナラカ入り口の方へ飛び退いていた。


 (ということは無事で、アルマロスを追っているのかもしれない‥‥)


 ヒーンは口数少ないエミロクが本当は恐ろしいほどの戦闘力を持っていることを密かに感じていた。

 とても自分では敵うレベルではないと心で自然と納得するほどの戦力差があったのだ。

 そのため、あの攻撃で命を落とすとは考えられず、アルマロスを追ったと見るのが妥当だった。


 (とすれば、後はこの下には総司令とサルガタナスとかいうデーモンロードがいるはずか‥‥)


 ヒーンは慎重に階段を降りていった。




・・・・・


・・・


―――ゲブラー北部ゼネレス ジーグリーテ南―――



 ルシウス、スレン率いるネザレン軍―。


 「報告!」


 スレンの指示で偵察に出ていた兵が戻ってきた。


 ガタ!


 美しい装飾の施された騎馬車の上でふんぞり還っていたスレンが起き上がる。


 「誰だ!?誰がきている?!」


 「は!ペルセネス・スーン・ガンターマン卿にございます!」


 「そうか!流石は父上だ!あのエルフきっての武闘派の当主自らを差し向けるとは!これは本気だぜぇ!?本気での低脳なオーガ共を殲滅に来られた!」


 喜ぶスレンの近くで顔を覆っているルシウス。


 (バレていない‥‥という事は彼らはクリアテにいるということだな)


 コン、ココン‥‥


 ルシウスの座っている横の騎馬車の外板に何かが当たる音がした。

 周りを見渡したルシウスはスレンに気づかれないように馬車を降り、ジーグリーテの中の木に覆われたところへ向かった。


 そこは外からは見えにくい場所になっていた。


 「ルシウス卿」


 ルシウスの直ぐ背後から声がする。


 「君か‥‥ディル」


 ルシウスが振り向いたところにいたのはディルだった。


 「ペルセネス卿が来られたな」


 「はい。マルトス‥‥卿はこれが単なるオーガの侵攻とは捉えておらず、革命軍によるゾルグへの反乱と見ているようですが、ゼネレスはあくまで反乱に加担しないスタンス。この反乱に乗じてオーガがゼネレスを攻めてきたとでも思っているようです」


 「父は気づいていないんだね?」


 「はい、今のところ。気づいていればマルトス‥卿自ら出向くはずですからね」


 「済まない。私にとってはあのような人でも父だ。だが君にとっては憎むべき相手ということだね」


 「い、いえ‥」


 「私に遠慮することはない。これはラガナレス家の痴話喧嘩レベルではない。本当はゲブラー全土の話なのだろうけど、今はエルフの将来しか考える余裕がないからね。まずは足元を固めなければならない」


 「そのためにも‥‥」


 「ああ。頼んだよ。私は作戦通りグムーン自治区軍を引っ張り出す」


 「よろしくお願いします」


 そういうとディルは消えた。

 ルシウスは本陣に戻る。



 「スレン」


 「はぁ?まだいたのかよ、無能な兄者」


 「その無能な兄は動きの悪いグムーン自治区軍を指揮しようと思う。兵力も少ない上、動きが悪い。南で交戦中の改造生物軍と獣人軍のケリがついた後、こちらに攻撃を仕掛けてくるかもしれないからね」


 「来るわけねぇだろうが!ヴァカか!改造生物はゾルグの援軍だぞ?!しかもあの異常性。獣人どもに負ける訳がねぇんだよ。まぁいい。とっとと行け!お前にはあの下民どもの指揮がお似合いだ!」


 「わかった。それでは兵を300貰っていく」


 「勝手にしろ」


 ルシウスはグムーン自治区へ向かった。

 当初出していた2万の兵はグムーン自治区の前で街を守るように配備されており、残りの兵も自治区内各所に配備されている。



・・・・・


・・・



 しばらくしてルシウスはグムーン自治区長であるラング・リュウシャーの元へ訪れていた。


 「これはルシアス卿!このようなオーガとの交戦の最中に立ち寄っていただけるとは!仰っていただければお迎えにあがりましたものを!」


 「いいでんすよ自治区長。それよりお願いがあって参りました」


 「こ、これは上流血統家の方からのお願いとあれば断ることもできません。何なりとお申し付けください!」


 ラングはラガナレス家によってグムーン自治区が発足されたことでラガナレス家、特にマルトスに頭が上がらない状態だった。

 ディルの度重なる忠告を理解しつつも、支援してくれているラガナレス家を蔑ろにはできなかったのだ。


 「実は現在交戦中のオーガとの戦いの状況としてはクリアテからの援軍はあるものの、徐々に厳しい戦況となっていましてね。特に戦火の中心から西側にオーガの退路を作られてしまう可能性があるのと、西側からオーガの援軍が来るようなことがあると一気に形成逆転となる恐れがあるのです」


 「なんと?!」


 「よってグムーン自治区軍2万と自治区内に配備されいてる5千の兵を私に指揮させていただき出兵させてもらえないだろうか?」


 「!!」


 ラングは驚きの表情を浮かべる。


 「で、ですが‥‥街の警備が必要では‥‥」


 (きた!)


 「どうしましたか?」


 「あ、いえ」


 「ご懸念があるなら言って頂きたい。私もあなた方の意向を無視して兵を出すことはできないのですから」


 「こ、これは失礼いたしました。いえ、自治区の警護はお父上のマルトス卿のご指示でして、兵を早々に引き上げて街を守るようにとの仰せでして」


 ルシウスは心の中で貴重な証言を得たと満足したが表情には出さずに話を続けた。


 「そうでしたか。でもご安心下さい。私は父からグムーン軍を出すようにとの連絡を受けたのですから」


 「そ、そうでしたか!い、いやぁそれならそうと仰って頂ければ!軍の分隊長たちには直ぐに指示を出しますのでいつでもご指示頂ければ!」


 「ありがとうございます。それでは一刻を争うので1時間以内にグムーン自治区南の平原に2万5千の兵を集めておいてください。自治区の警護はほぼ不要です。オーガの侵入さえなければ街は安泰ですし、もし!ネザレン・クリアテ連合軍及びグムーン自治区軍が敗れるようなことがあれば、この自治区にいくら兵を置こうとも街の壊滅は避けられない。それであれば、街を守る意味で全ての兵を出兵させる‥‥これが作戦です」


 「なるほど!確かに仰る通りだ。それでは直ぐに準備に取り掛かります」


 「頼みましたよ」




・・・・・


・・・



 1時間後、グムーン自治区軍2万5千が街の南の平原に隊列を組んで待機している中、ルシアスが登場した。

 グムーン自治区軍はグムーン自治区から西へ30キロメートルの地点まで進軍した。

 オーガの援軍が来る場合、ここで阻止するためだ。



・・・・・


・・・



―――クリアテ ラガナレス家領地内マルトス卿の屋敷―――


 コンコン‥‥


 「入れ」


 ガチャ‥‥


 入ってきたのはレーン一族を代表した評議委員であり、ジルボア家当主のネルベス・レーン・ジルボアだった。


 「おお、ネルベス卿。どうしましたか?突然来るなど珍しい」


 明らかに突然の訪問に対して苛立っている様子のマルトスにネルベスは若干怯えながら話しかけた。


 「マ、マルトス卿‥‥少し不穏な動きを感じたのでお耳に入れようと思い無礼を承知で参りました」


 「ほう?不穏な動き?」


 「はい」


 この二人の関係。

 本来なら評議委員に選ばれる一族の代表者は一族の中で最も権威あり発言力のあるものが選出される。

当然レーン一族で代表となっているネルベスが権威も発言力もマルトスより上だ‥‥というのは表向きで、裏では完全なる主従関係が築かれていた。

 当然マルトスが主でネルベスが従という関係性だ。


 「グムーン自治区に配備している2万5千の兵が一斉にグムーンから出兵したとのことです」


 ガタン!!


 思わずマルトスは立ち上がる。

 椅子のガタついた音でネルベスはビクッと体を震わせて恐怖の表情を浮かべた。


 「指示は誰が?」


 「ラ、ラングです」


 「‥‥‥おかしいですね。あやつは私の指示以外で勝手に行動するような男ではない。私がそう躾けてありますからね。私は確かに “自治区を警備せよ” と指示を出した。私の指示を覆し、ラングに承諾させて軍を出させた者がいるようだ」


 少し考えるような素振りを見せるマルトス。


 「軍を指揮しているのは?」


 「ご、御子息のルシウス卿です」


 バキン!!


 マルトスが思わず持っていたペンをへし折った音でさらにネルベスはビクついて震え出した。

 マルトスのこめかみは血管が浮き上がり、明らかに怒りの表情を浮かべている。


 「スレンは何をしているのだ。なぜルシウスに勝手な行動を許している‥‥。ペルセネスの単細胞を動かすのは危険だし、そもそもオーガどもの殲滅で手が空かないはずだ」


 (他に任せられる者はいない‥‥クソ!!)


 「私が出ます。申し訳ないが、評議会に出兵許可をとってもらえるか?」


 「は、はい!」


 「ネルベス卿!」


 「は、はいぃぃ!」


 「可及的速やかに‥‥頼みましたよ」



1時間経たずして出兵許可を取り付けてマルトス自ら兵をあげてグムーン自治区に向けて出発した。







次のアップは日曜日の予定です。

ここからクライマックスに向けて目まぐるしく展開していきます。


いつも読んでくださってありがとうございます!

高評価頂けるととてもモチベーションが上がりますのでよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 悪魔が魔王や大魔王になるには、何かしらの条件があったりはしますか。以前にベルフェゴールが人間を大量虐殺して魔王になったというご指摘がありましたので気になり質問させていただきます。
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